俺のせいでえっちな呪いにかけられた同僚騎士に責任を取りに行ったら、与えられたは夜通しの⋯説教!?泣いた

春瀬湖子

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増殖は禁断のお味

12.便利なツールは注意も必要

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スライム無効化に成功したその晩。
非番返上で出動した俺達は明日も休み⋯だったのだが、討伐不可能とされていたスライムを無効化した立役者にうっかりなってしまった為に報告書の提出が必要で。


“そこまでは、わかる⋯。わかるんだけど⋯”


「⋯で、出来た!どうかな?」
「どれどれ⋯。ふむ、反省文か?」
「うぅっ」

相方のキャロンの部屋で向き合っているその書類は、日頃向き合っているのが始末書なせいかどう頑張っても何故か反省文にしかならず⋯
俺ことエイベル・ロッカは今日も今日とていつものごとく項垂れていた。


「報告書って難しいな⋯」
「事実を書くだけだろう」
「それはそうなんだけど⋯」

“あの時はキャロンを失いたくてがむしゃらで⋯”

ほぼ思い付きだけで全力の強化魔法をスライムに打ち込んだ。
それが結果的にはいい方に転んだ⋯けども⋯!

「キャロンの言う通り、普通に考えたらやっちゃダメな事だったよなぁ~⋯」

はぁ、とため息を吐きながら机に突っ伏すと、後ろで仁王立ちしていたキャロンがいつの間にかコトリとカフェオレを入れてくれていた。

ふわりと香る甘いコーヒーに少し心が落ち着いてくるが⋯


「まぁ、他の魔物に応用が効くかと言われれば恐らく無理だな。敵を強化するとか普通にあり得ない」

冷静に断言され、落ち着いた心が急降下しあうぅと思わず呻いてしまう。

“だよなぁ、わざわざ魔物を強化してから討伐に挑むってどんなマゾだよって話だし⋯”

だからこそ他の魔物には応用しないようにとか、思い付きではやるべきではないというリスク掲示が多くなり反省文のようになってしまう訳で⋯


「だがまぁ、今回はスライムの性質上上手く行ったんだ。書き辛いなら自分が討伐した、と思うんじゃなく自分を別人と思って客観視してみたらどうだ?」
「自分を客観視⋯」
「エイベルは自分がしたと思うから、ああすればよかったとかこうすればよかったとかをぐるぐる考えてしまうんだろう。もう一人別人がいたような感じで状況報告すればいいんじゃないか」
「なるほど⋯」

確かにそう考えれば上手くまとめられるかもしれないなと思った俺は、その状況をなんとか脳内で作り出そうとするが――


“⋯そういやスライムって酸だったよな、じわじわとキャロンの服が溶けて下半身が⋯”
「って、考えるのはそこじゃない!」

“強化魔法⋯、なんでキャロンの体が物理的じゃなく性的に硬化したんだ⋯?”
「って、それも今は考えるべきじゃない!」

“というか下半身の服全部溶けたはずなのに、なんで簡易テントみたいにちまっとだけ溶けきらずに乗ってー⋯”
「って、だから今は⋯っ」
「⋯おい、いつまで遊んでるんだ?」
「ひょえっ!」


客観的に思い出そうとすればするほど、何故かそんな事ばかりが思い浮かんでしまって。

“だってなんかあまりにも強烈だったから⋯!”
なんて言い訳を当然口にすることは出来ず、お説教モードに移行しつつあるキャロンの気をなんとか逸らせないかと持ってきた資料に視線を移した俺は。


「⋯あ、れ?」
「?」

資料として自室から持ち込んだ本の中に、魔法書が交じっていることに気が付いた。


「間違えて持ってきちゃったのかな」
「なんだそれ、魔法書か?」
「うん、昔買ったやつだと思う」

魔法師は天性の属性魔法をいくつか持っていて、そしてその魔法にしか適正がない。
例えば俺なら火と強化魔法が使えるのだが、逆に言えば適正のない水属性魔法などは使えないのだが⋯


「属性補助か。はじめてみたな」
「他の属性魔法も使えるようになるから便利なんだよね」

魔法書には属性変換の魔法が込められており、使いたい魔法が載っているページに自身の属性魔法を乗せることで発動する。

「まぁ戦闘では使えないんだけどね、載ってるの生活魔法ばっかだし」
「そうなのか」


興味深そうにパラパラと魔法書をキャロンが捲りはじめたので、それを横から俺も覗き込んだ。

珍しそうに眺めるキャロンがいつもより幼く見えて少し楽しい。


“騎士であるキャロンは魔力がないもんな”
魔法書は自分の属性を別の属性へ変換して使うため、魔力があること前提のもので。

“騎士団に配属されてからは、魔法を戦闘で使うから魔法書なんて使う機会なんてなかったけど⋯”

珍しそうに眺めるキャロンに気を良くした俺は、少し得意気に彼の顔を覗き込んだ。


「折角だからなんか使ってみようか?キャロン困ってることない??」
「困ってることか⋯」
「まぁ、そんなたいした魔法載ってないんだけどさ」

昔買ったその魔法書に載っていたのは、水をお湯にするものや、タオルから風が出て髪の毛を爆速で乾かせるようにするものと⋯


「⋯これなんていいんじゃないか?」
「ん?」

ページを捲る手を止めたキャロンは、さっきまでの興味津々な表情ではなくどこか意地悪そうにニッと笑っていて。

「え⋯、っと、どれどれ?『すぐに焦る人向け、自分を冷静に見る事のできる分析魔法』⋯って!!」
「今のエイベルにピッタリだろ?」
「そ⋯っ、れは、そうだけど⋯!これ強化魔法の一種じゃん!俺その属性持ってるしぃ⋯!」

案の定見せられた魔法は、キャロンではなく俺に向けられたものだった。


「ならさっさと発動すれば報告書が反省文なんかにならなかったんじゃないか?」
「俺は自分にじゃなくて人に強化かける方が得意なんだって!」
「つまり自分にかけるのは苦手ってことだな?」
「うっ」

あっさりと言い当てられ口ごもる。

“それはまぁ⋯そうなんだけど⋯!”

魔法書は適切な魔法を発動させるための補助の役割もあるし、確かにさっさと報告書を書き上げなくては休暇に入れないのも事実な訳で。


“俺だけならまだしも、キャロンにまで休日返上させる訳にはいかないもんなぁ⋯”


ここはキャロンの言葉に従って、自分を冷静に見つめ反省文ではなくちゃんとした報告書を仕上げるべきかもしれないな⋯なんて思った俺は、そっと魔法書に自身の魔力を乗せる。


“この魔法、俺の属性と一致してるから変換魔法って発動しない⋯のかな?”

ふとそんな疑問が頭に過るが、今気にすべきはキャロンとの休暇だとすぐに考え直した俺は気にせず魔法書に魔力をどんどん流し込んだ。


“でも、冷静な俺ってどんなだ?脳内で俺が二人に増えて状況を冷静に分析する⋯?それってトラブルも2倍になったりとか⋯”

「えっ、こわ!」
「っ!?どうかしたのか、大丈夫か!?」

変な想像をして思わず本音が口から零れると、すかさずその言葉に反応したキャロンが心配そうに俺の横に駆け寄ってくれて。

そしてその気持ちが少し擽ったくも嬉しく感じる。


“⋯どうせなら、俺じゃなくキャロンが増えたらいいのになぁ”


それはほんの少し過っただけの冗談に近い気持ちだったのだが――


「――ッ、う⋯っ!?」
「ふぇっ!?き、キャロン!?」


突然呻き声を上げたキャロンに動揺した俺は慌てて魔法を止めようとするが魔法書がぐんぐん俺の魔力を吸って止まらない。

「え⋯っ、な、なに!?なんでなんで!どういうことだ⋯!?」


本来なら別の属性を変換する魔法がかけられている魔法書。

“ま、まさか属性が一致していたせいで変換魔法が誤作動を起こしてるのか⋯!?”

そんな推測をしてみてももうバグってしまっているものは仕方なく、俺は自身の手に張り付くようにして魔力を吸い込む魔法書をなんとか引き剥がす為に⋯


「ふ、ファイア!」


自身の天性の属性魔法である炎魔法をぶつけ物理的に魔法書の暴走を止めた。

“止めたというより燃やしただけだけど⋯”

幸い魔法書の発動が止まったタイミングで炎も消え、火事にもならなかった事に心底ホッとし⋯そしてすぐにハッとする。


「キャロンは!!?」


慌ててこの部屋の主であり俺の起こすトラブルの一番の被害者でもある相方の姿を探しー⋯


「ど、どういうこと?」
「「それは俺が知りたいんだが」」


何故か俺の後ろでいつもの如く仁王立ちした“2人の”キャロンを発見するのだった。
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