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最終章・護衛令嬢、婚約者に返り咲く!?
エピローグ:『で』ではなくて、『が』がいい。
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「何見てるんだ?」
「フレン様」
明け方に目が冷めてしまった私は、上掛けを服に見立てて羽織り寝室のサイドテーブルの前に立つ。
私が起きたことに気付いたらしいフレン様も後ろからついてきて、そんな私を上掛けごと抱き締めながらサイドテーブルを覗き――
「……えっ」
「ふふ、最初に投げられた短剣と、フレン様の胸に刺さった短剣です」
「ピロートークに適した話題って知ってる?」
「一回軽く寝たので該当しないのでは?」
並べられた二つの短剣を前に少しだけ眉をひそめた。
「なんか、寄り添ってて私たちみたいだなって」
「えらい物騒だし尖ってんだけど、というか凶器」
「でもほら、隣同士で並んで……なんか似てません?」
そうかぁ? なんて首を傾げつつも、フレン様もじっとその短剣を見つめて。
「まぁ、お互い最初は尖ってたのかもしれないな。俺は信じられる相手がいなかったしオリアナだって」
「えぇ? そんな思春期みたいな例えされましても……」
「オリアナが! 言い出したんだよッ」
なんでだよ、と文句を言いながら、ぷっと思い切り吹き出されると、そんな彼に釣られて私も小さく吹き出してしまう。
“確かに最初はそうだったのかも”
誰かが明確に悪い訳じゃない。
いつか絵本の中の王子様と結婚するんだとそうずっと思い、カミジール殿下に相応しい力をつけるべく鍛練を重ねて。
そしてやっと与えられた国一番の称号は、私を簡単に絶望へ突き落とした。
“勘違いした父も、ちゃんと話さなかった私も良くないところは沢山あったわ”
明確に誰が悪い、ということがないことも私を苦しめ、ずっと胸に引っかかっていて。
『その言葉には、もう乗りません!』と何度も何度も口にしたのに。
「オリアナ?」
結局私はフレン様の言葉に乗り、そしてかけがえのない人を手に入れたから。
「色々ありましたけど、幸せだなって考えてました」
「そうか」
耳元でフレン様が笑った気配がし、私の頬を彼の銀髪がふわりとくすぐる。
「ウェディングドレス、上半身は騎士服をモチーフにして詰め襟にしてもいいかもな」
「詰め襟、ですか?」
「そしたらこの痕も隠れるし」
「そもそも見えるところにつけないで……ひゃっ」
昨晩フレン様に強く吸われた首筋。
おそらく痕がついているだろうソコを再びフレン様の唇が優しく滑り、チロリと舐められる。
たったそれだけのことで、私の体は昨晩の熱を思い出しふるりと震えて――
――ゴリ、と腰に当たる固いものに気が付いた。
「………………」
ちら、とそこへ視線を落とし、やっと私を抱き締めるフレン様が何も身につけていないことに気が付いて。
「へ、変態!! なんで何も着てないんですか!」
「オリアナだって着てないだろ」
「私は上掛け羽織ってますけど!?」
「オリアナが上掛けを羽織ってったから俺が羽織れるもんなくなったんだけど!?」
むむ、と思わずにらみ合うように互いの顔を突き合わせる。
そしてそんなやり取りが出来るこの距離がなんだか少し楽しくて。
「……ドレスは、フレン様の好みのを着たいです」
「じゃあ脱がしやすいやつ…………いだっ!」
「なんですか?」
「オリアナに、一番似合うやつ……!」
「はい、了解いたしました」
“私に似合うやつか”
それはどんなデザインだろうか。
“フレン様が言ってた騎士服をモチーフにしたものも私らしいかも?”
なんて考える私に告げられたのは。
「ふわふわとしたお姫様みたいなやつがいいんじゃないか?」
「お姫様、みたいな……ですか?」
お姫様、という単語にドキリとする。
守られるか弱い令嬢ではなく守る矛である自覚があるからこそ、その言葉に少し萎縮してしまったのだが。
「俺にとってのお姫様だからな」
「お姫様……?」
“私が?”
「私、フレン様より強いですけど」
「それは確かに」
「筋肉だってがっつりありますし」
「努力した結果だろ」
「それに」
「あのさ」
肩を軽く引かれ、くるりと振り向かされると同時にふわりと抱き上げられて。
「強いお姫様も、筋肉モリモリのお姫様も探せばいるしそれでいいんだよ」
「それで、いい……」
「オリアナがいいって何回言わせるんだ?」
少し不服そうに見つめられるが、彼のそんな表情すら可愛く感じる。
“私は、私のままで――”
筋肉もあるし、鍛練で出来たマメもある。
指の皮膚は固くてゴツゴツしているけれど。
「……何回でも言われたいです、フレン様になら」
私でいい、ではなく、私がいい、と彼が選んでくれたから。
“憧れていた絵本の中の王子様とは少し違うけど”
「フレン様が、私の……私だけの王子様です」
「ま、俺は正真正銘の王子なんだけどな」
「すぐ意地悪言う!」
「事実を伝えただけだっつの」
はは、と笑い合い、そっと唇が重なって。
フレン様が選んだ、ふりふりでふわふわの絵で描いたようなウェディングドレスに騎士らしく帯剣した私が、護衛として彼の半歩後ろではなく妻として隣に立つのも、あと少し――……
「フレン様」
明け方に目が冷めてしまった私は、上掛けを服に見立てて羽織り寝室のサイドテーブルの前に立つ。
私が起きたことに気付いたらしいフレン様も後ろからついてきて、そんな私を上掛けごと抱き締めながらサイドテーブルを覗き――
「……えっ」
「ふふ、最初に投げられた短剣と、フレン様の胸に刺さった短剣です」
「ピロートークに適した話題って知ってる?」
「一回軽く寝たので該当しないのでは?」
並べられた二つの短剣を前に少しだけ眉をひそめた。
「なんか、寄り添ってて私たちみたいだなって」
「えらい物騒だし尖ってんだけど、というか凶器」
「でもほら、隣同士で並んで……なんか似てません?」
そうかぁ? なんて首を傾げつつも、フレン様もじっとその短剣を見つめて。
「まぁ、お互い最初は尖ってたのかもしれないな。俺は信じられる相手がいなかったしオリアナだって」
「えぇ? そんな思春期みたいな例えされましても……」
「オリアナが! 言い出したんだよッ」
なんでだよ、と文句を言いながら、ぷっと思い切り吹き出されると、そんな彼に釣られて私も小さく吹き出してしまう。
“確かに最初はそうだったのかも”
誰かが明確に悪い訳じゃない。
いつか絵本の中の王子様と結婚するんだとそうずっと思い、カミジール殿下に相応しい力をつけるべく鍛練を重ねて。
そしてやっと与えられた国一番の称号は、私を簡単に絶望へ突き落とした。
“勘違いした父も、ちゃんと話さなかった私も良くないところは沢山あったわ”
明確に誰が悪い、ということがないことも私を苦しめ、ずっと胸に引っかかっていて。
『その言葉には、もう乗りません!』と何度も何度も口にしたのに。
「オリアナ?」
結局私はフレン様の言葉に乗り、そしてかけがえのない人を手に入れたから。
「色々ありましたけど、幸せだなって考えてました」
「そうか」
耳元でフレン様が笑った気配がし、私の頬を彼の銀髪がふわりとくすぐる。
「ウェディングドレス、上半身は騎士服をモチーフにして詰め襟にしてもいいかもな」
「詰め襟、ですか?」
「そしたらこの痕も隠れるし」
「そもそも見えるところにつけないで……ひゃっ」
昨晩フレン様に強く吸われた首筋。
おそらく痕がついているだろうソコを再びフレン様の唇が優しく滑り、チロリと舐められる。
たったそれだけのことで、私の体は昨晩の熱を思い出しふるりと震えて――
――ゴリ、と腰に当たる固いものに気が付いた。
「………………」
ちら、とそこへ視線を落とし、やっと私を抱き締めるフレン様が何も身につけていないことに気が付いて。
「へ、変態!! なんで何も着てないんですか!」
「オリアナだって着てないだろ」
「私は上掛け羽織ってますけど!?」
「オリアナが上掛けを羽織ってったから俺が羽織れるもんなくなったんだけど!?」
むむ、と思わずにらみ合うように互いの顔を突き合わせる。
そしてそんなやり取りが出来るこの距離がなんだか少し楽しくて。
「……ドレスは、フレン様の好みのを着たいです」
「じゃあ脱がしやすいやつ…………いだっ!」
「なんですか?」
「オリアナに、一番似合うやつ……!」
「はい、了解いたしました」
“私に似合うやつか”
それはどんなデザインだろうか。
“フレン様が言ってた騎士服をモチーフにしたものも私らしいかも?”
なんて考える私に告げられたのは。
「ふわふわとしたお姫様みたいなやつがいいんじゃないか?」
「お姫様、みたいな……ですか?」
お姫様、という単語にドキリとする。
守られるか弱い令嬢ではなく守る矛である自覚があるからこそ、その言葉に少し萎縮してしまったのだが。
「俺にとってのお姫様だからな」
「お姫様……?」
“私が?”
「私、フレン様より強いですけど」
「それは確かに」
「筋肉だってがっつりありますし」
「努力した結果だろ」
「それに」
「あのさ」
肩を軽く引かれ、くるりと振り向かされると同時にふわりと抱き上げられて。
「強いお姫様も、筋肉モリモリのお姫様も探せばいるしそれでいいんだよ」
「それで、いい……」
「オリアナがいいって何回言わせるんだ?」
少し不服そうに見つめられるが、彼のそんな表情すら可愛く感じる。
“私は、私のままで――”
筋肉もあるし、鍛練で出来たマメもある。
指の皮膚は固くてゴツゴツしているけれど。
「……何回でも言われたいです、フレン様になら」
私でいい、ではなく、私がいい、と彼が選んでくれたから。
“憧れていた絵本の中の王子様とは少し違うけど”
「フレン様が、私の……私だけの王子様です」
「ま、俺は正真正銘の王子なんだけどな」
「すぐ意地悪言う!」
「事実を伝えただけだっつの」
はは、と笑い合い、そっと唇が重なって。
フレン様が選んだ、ふりふりでふわふわの絵で描いたようなウェディングドレスに騎士らしく帯剣した私が、護衛として彼の半歩後ろではなく妻として隣に立つのも、あと少し――……
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