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最終章・えぇっ、本気だったんですか!?
最終話:えぇっ、本気だったんですか!?
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泊まって行けばいいのに、なんて散々言われ後ろ髪を引かれつつも帰った侯爵家。
やはり疲れもあったのか、ジルの部屋で仮眠は取ったというのに一瞬で深い眠りに落ちた私は、翌日ざわめく邸内の違和感で目を覚ました。
「え、何……」
ぼんやりとしながら起き上がると、まだ早朝と言ってもいい時間。
侍女が起こしにくるのもまだ先だろう時間だったが、流石にこの騒がしさに疑問を持った私は首を傾げながら階下へと降り――……
「あ、おはようルチア」
「じ、ジル!?」
「体の調子はどうかな? 安心して、今日は僕がずっと抱っこして移動するね」
「え、移動って……え?」
“私何かジルと約束してたかしら?”
怪訝に思いながらチラリとジルの隣に立つ父を見ると、まるで全て諦めたかのように表情が死んでいてギョッとする。
その隣に立つ兄は何かを考え込んでいるし、母はどこか楽しそうに眺めていた。
「さぁ、準備を整えてすぐに向かおうね。必要なものは全て持ってきてるから」
「必要なもの?」
「もちろん君のウェディングドレスだよ!」
「え、えぇえっ!!?」
◇◇◇
「ま、まさかこんな急に……」
自身に起きたことが未だに信じられず愕然としてしまう。
それもそのはず、私は今教会にいるのだ。
“ど、どうしてこうなったの”
朝起きたら邸内が騒がしく、不思議に思っているとジルが私の着るウェディングドレスと共に現れた。
もうそれだけで意味がわからないのだが、わかることがもうひとつ。
どうやら私は今から結婚するということである。
「昨日言った通りだよ、『明日にでも結婚したい』って」
「えぇっ!? 本気だったんですか!?」
「ずっとそう言ってたじゃないか」
にこりと笑うジルがあまりにもいつも通りで、そしてこの彼の笑顔こそ本気の時の笑顔なのかと今更ながらにやっと気付く。
“まさか昨日の話も本気だったなんて”
「第一、僕が何度ルチアにプロポーズしたと思っているの?」
「え、だって本気だなんて……」
「187.5回だよ!? 一回くらい信じてくれたっていいのに……!」
「その『.5』って何ですか!?」
「最後まで言わせて貰えなかったやつだ!」
“わぁ……”
どこか現実感がなく呆然としたまま見つめる扉。
この扉をジルと開き、歩いた先にいる司祭の前で永遠を誓えば私たちの婚姻は成立する。
もちろん結婚披露パーティーは大々的に別途開催することになってはいるのだが。
「……嫌だった?」
呆然としている私の表情を窺うようにジルがそう聞いてくる。
その少し不安そうな様子すらも愛おしい。
“結局私はこの顔に弱いのよね”
クスリと思わず笑った私は、隣に立つ彼の腕に自身の腕をぎゅっと絡めて抱き付いた。
最初はただの肉壁だと思っていた。
いつか現れる彼の運命の人。その人が現れるまでの仮初めの婚約者。
加護もなく、王家の盾にも影にもなれなかった私にジルが与えてくれた壁役としての仕事なのだと、ずっとそう思っていたけれど。
“最初からずっと彼は本気だったのね”
ずっとずっと、私という個を見てくれていた彼だから。
私もずっと、もしまた彼が加護を失うようなことがあったとしても。
「ジルのことが大好きだなって思っていただけよ!」
そう答えると、まるで花が綻ぶような笑顔を向けられる。
その笑顔を見るだけで私の胸はじわりと熱くなった。
きっと私は、これから先もずっとこの最愛の人を想い続けるのだろう。
そして願わくば、ふたりの想いがこれからも永遠に続きますように――……
やはり疲れもあったのか、ジルの部屋で仮眠は取ったというのに一瞬で深い眠りに落ちた私は、翌日ざわめく邸内の違和感で目を覚ました。
「え、何……」
ぼんやりとしながら起き上がると、まだ早朝と言ってもいい時間。
侍女が起こしにくるのもまだ先だろう時間だったが、流石にこの騒がしさに疑問を持った私は首を傾げながら階下へと降り――……
「あ、おはようルチア」
「じ、ジル!?」
「体の調子はどうかな? 安心して、今日は僕がずっと抱っこして移動するね」
「え、移動って……え?」
“私何かジルと約束してたかしら?”
怪訝に思いながらチラリとジルの隣に立つ父を見ると、まるで全て諦めたかのように表情が死んでいてギョッとする。
その隣に立つ兄は何かを考え込んでいるし、母はどこか楽しそうに眺めていた。
「さぁ、準備を整えてすぐに向かおうね。必要なものは全て持ってきてるから」
「必要なもの?」
「もちろん君のウェディングドレスだよ!」
「え、えぇえっ!!?」
◇◇◇
「ま、まさかこんな急に……」
自身に起きたことが未だに信じられず愕然としてしまう。
それもそのはず、私は今教会にいるのだ。
“ど、どうしてこうなったの”
朝起きたら邸内が騒がしく、不思議に思っているとジルが私の着るウェディングドレスと共に現れた。
もうそれだけで意味がわからないのだが、わかることがもうひとつ。
どうやら私は今から結婚するということである。
「昨日言った通りだよ、『明日にでも結婚したい』って」
「えぇっ!? 本気だったんですか!?」
「ずっとそう言ってたじゃないか」
にこりと笑うジルがあまりにもいつも通りで、そしてこの彼の笑顔こそ本気の時の笑顔なのかと今更ながらにやっと気付く。
“まさか昨日の話も本気だったなんて”
「第一、僕が何度ルチアにプロポーズしたと思っているの?」
「え、だって本気だなんて……」
「187.5回だよ!? 一回くらい信じてくれたっていいのに……!」
「その『.5』って何ですか!?」
「最後まで言わせて貰えなかったやつだ!」
“わぁ……”
どこか現実感がなく呆然としたまま見つめる扉。
この扉をジルと開き、歩いた先にいる司祭の前で永遠を誓えば私たちの婚姻は成立する。
もちろん結婚披露パーティーは大々的に別途開催することになってはいるのだが。
「……嫌だった?」
呆然としている私の表情を窺うようにジルがそう聞いてくる。
その少し不安そうな様子すらも愛おしい。
“結局私はこの顔に弱いのよね”
クスリと思わず笑った私は、隣に立つ彼の腕に自身の腕をぎゅっと絡めて抱き付いた。
最初はただの肉壁だと思っていた。
いつか現れる彼の運命の人。その人が現れるまでの仮初めの婚約者。
加護もなく、王家の盾にも影にもなれなかった私にジルが与えてくれた壁役としての仕事なのだと、ずっとそう思っていたけれど。
“最初からずっと彼は本気だったのね”
ずっとずっと、私という個を見てくれていた彼だから。
私もずっと、もしまた彼が加護を失うようなことがあったとしても。
「ジルのことが大好きだなって思っていただけよ!」
そう答えると、まるで花が綻ぶような笑顔を向けられる。
その笑顔を見るだけで私の胸はじわりと熱くなった。
きっと私は、これから先もずっとこの最愛の人を想い続けるのだろう。
そして願わくば、ふたりの想いがこれからも永遠に続きますように――……
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