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2.セーフティゾーンとは全てにおいてのセーフティではない
望みが無さすぎる。
その返事を聞いたリリーはもうその話には触れなかった。
いつかする私の結婚は政略結婚。
我が家門がルイーズ殿下側についていないから、というようにリリーは思ったのだろう。
もちろん望みがない理由は、添い寝以上の関係にミクロもならないからだ。
むしろ娘の私室に住まわせているくらいなので、家としてもルイーズ殿下との婚姻は望ましいとすら思っているはずだが。
「跡継ぎが作れないのは···致命的···」
その結論に深いため息を吐いた。
未成年を主張している殿下はもちろん健全な青年な訳で、それを毎晩腕枕付きの添い寝、それでも安らかに朝を迎えられるということは私の事を全く、まっっったくそういう対象に見れないからという理由なのではないだろうか。
そしてその事実を毎夜突き付けられていてアピールなんて出来る訳もなく···
「さっきは危険な夜、なんて言ったけどさ」
「?」
「気晴らしがてら、身分なんて忘れて遊びに行ってみない?私もずっと側についているから!」
「リリー···」
仮面舞踏会、かぁ···。
どうせ望みがないのなら、確かに気晴らしは悪くないかも、と考える。
それに何より、リリーのその気遣いが嬉しくて。
「そうね、行ってみようかしら?」
「そうこなくっちゃ!」
「で、でも私そういうとこ行くの初めてなんだから絶対側にいてよね!」
「もちろんよ、うっかり公女様が連れ込まれて···なんてスキャンダルには私が絶対させないわ!」
力強く笑うリリーの笑顔に釣られて私からも笑いが溢れた。
サバサバとした少し男らしい彼女は、本当に本当に私の大切な友人だ。
リリーから誘われた仮面舞踏会の日はあっという間に来た。
別に悪いことをしている訳ではないのだが、流石に仮面舞踏会に行く、なんて言うのは少し気恥ずかしく感じて皆には「ただの舞踏会」と話してあった。
「本日もとてもお美しいです、お嬢様」
「ありがとう!流石の腕前ね」
メイドの手で着飾って貰い、少し浮かれた気持ちで鏡の中の自分と目を合わせる。
リリーが迎えに来てくたと侍従が伝えに来てくれたので、階下に降りる前にこっそりと私室に向かった。
「今日も綺麗だね、エメ。でもどうしたの?もしかして見せに来てくれたのかな?」
「ち、違いますルイス殿下、私はその···忘れ物を取りに寄っただけですわ」
「何を忘れたの?」
きょとんとしたルイス王子の方に体を向け、ドレスのスカートでサイドテーブルを隠しつつこっそり“忘れ物”である“仮面”を取る。
····つもりだったのだが。
「····?·····!?!?」
こそこそと引き出しを探るが一向に見つかる気配がない。
“確かにここに入れたのに···!”
焦りから思わず引き出しを確認しようと振り向こうとした時だった。
「探してるのは、コレかなぁ?」
くすりと笑いながら見せられたのは紛れもなく私が用意した仮面で。
「あ···っ!?」
「舞踏会、確かに嘘じゃないもんね、頭に“仮面”の二文字が付くみたいだけど」
「····ぐぅぬ」
こんな風にバレるなら、いっそ先に···いや、仮面をリリーに用意して貰えば良かった···!
後悔してももう遅い。
そしてこうなったからには仕方ない。
「····仮面舞踏会だと伝えていなかったのは申し訳ありませんでした。しかし仮面舞踏会に行く事自体は何も悪いことではありません」
「まぁ、確かにそうだね。でも、全員ではないにしろ“そういう目的”で利用している者も少なくないよ?」
「私ももう成人している立派な大人です、それに婚約者もおりませんので何も問題にはならないかと」
ま、まぁそんな関係になるつもり全くないけども!ただの気晴らしだし!
でもこれくらい言えば、いくら殿下といえど言い返せないはず···
それに少しくらい嫉妬してくれたら···
そう思いチラリと視線を向けると、相変わらずいつもの微笑みのままだった。
その変わらない表情にツキンと小さく胸が痛む。
「じゃあ、エメはそうなってもいいって思ってるんだ?」
「思ってる、とまでは言いませんが···」
「わかった。はい、これは返すけど、十分気をつけてね?変な男についていかないように」
あっさりと返された仮面が、なんだか鉛のようにずっしり手に沈む。
なんだか重たくなった心を引きずって私室を出ようとした時だった。
「エメ、私の誕生日覚えてる?」
おもむろにそんな言葉を投げられ思わず振り向く。
「もちろんです、明日が殿下の20歳の誕生日ですわ。殿下の成人祭は来週を予定しているということもしっかり記憶しております」
「覚えていてくれて嬉しいよ。ねぇ、エメに一番に誕生日を祝って欲しいんだけどいいかな?」
そんなことを改めて聞かれて思わずぽかんとしてしまう。
祝うも何も、ここが私の私室で私の私室に殿下は住んでいるのだ。
どう転んでも私が一番に祝う事になるのは明白。
そこまで考えて、ふと気付く。
つまり、殿下は···
「畏まりました。必ず一番にお祝い申し上げますわ」
“ちゃんと帰って来てね!”って言ってるのね!?!?
そう結論付けて思わず頬が弛んだ。
先ほどまで重く感じた仮面の重さはもう感じない。
ころっと機嫌が直ってしまった私は、軽やかに「すぐに帰って参りますから!」と部屋から出たのだった。
その時、天幕に隠れた殿下の表情は見えなかった。
そして体験する初めての仮面舞踏会。
私の側にはもちろんリリーが········いなかった。
「甘かったわ···」
思わずため息が漏れる。
サバサバしたハッキリキッパリ男らしいリリー。
サクッと好みの男性を見つけた彼女は、「ごっめんね!でもこの机のとこがセーフティゾーンだから!私だと思ってかじりついてて!」と、にこやかに友情と恋を天秤にかけあっさりと恋を取ったのだ。
リリーの言った通り、立食テーブルでの声かけはマナー違反とされているらしくこの机の近くにいる限り誰からも声をかけられる事はなかった。
それでなくても、あっさり捨てられた腹いせに、とガツガツ料理を食べ続けている令嬢なんて声をかけたくはないだろうが。
一人くらいとはダンスを踊ってみようかな、と思ったのだがなんとなくそんな気分にもならなかったのでひたすら食に走った。
まさか公女がこんなにガツガツ食べ漁ってるとも思わないだろうし、身分も隠せて一石二鳥だ。
「もう帰ろうかな···」
帰ったら殿下が待っていてくれている。
どうせ今日もいつも通り添い寝だけ。
それでも私に一番に祝って欲しいと言ってくれた。
なんだか無性にルイーズ王子の顔が見たくなり、セーフティゾーンであるテーブルから移動しようとした時だった。
「··············う、ぅぐ」
セーフティゾーンだったはずの立食テーブルは、コルセットで絞められた令嬢の胃袋にとってある意味セーフティとは反対の位置に属していた。
移動しようと体を捻ったせいで変に力が入ったせいか、ものすごくさっきの食べ物達が体内を右往左往している。
ヤバイ。これはヤバイ。かなりヤバイ。
「失礼、顔色が悪いようですが大丈夫ですか?」
優しげな声と共に漆黒の髪が目に飛び込んできた。
「あ、貴方は···?」
「いけませんよ、お嬢様。ここは仮面舞踏会なんですから」
ふふふ、と笑いながら差しのべられた手に何故か自然と手を重ねた私は、絞められたコルセットの苦しさからそのまま気を失ってしまった。
「ん、んぅ·····」
ぼんやりする頭を抱えつつ上半身を起こしてハッとする。
ドレスを着ていない。
慌てて顔を触ると仮面もしていなかった。
「え、あ····な、なんで···あれ?」
「お目覚めですか?」
混乱している私に気付き声をかけてくれたのは、倒れそうになった時に手を差し伸べてくれた黒髪の男性···
仮面の装飾や服からそれなりにしっかりとした高位貴族だろうとわかるが、それどころではない。
「こ、ここは!?私のドレスは!?」
「ここは会場の休憩室ですよ。鍵もかかっておりますのでご安心ください」
しれっと逆に安心できない情報を与えられてパニックになる。
「な、なんで、私、もしかして!?シました!?!?」
仮面が外されているので私が誰かはもうバレているだろうがお上品にしている場合ではない。
率直に大事な事を確認する。
あまりにも明け透けな質問をされたからか、男性はぽかんとしたようだったがそんなこと構っている場合ではない。
「ドレス!私のドレスはどこですか!?そしてヤッたの!?ヤッてないの!?あと今何時!?私今日中に帰らなくちゃいけないんですけど!!」
怒鳴るように再度質問を投げると、固まっていた男性が急に大笑いし始めた。
「あはは!エメラルド嬢は面白いですね。質問に答える前に、何故今日中に拘るのかお伺いしても?」
「はぁ!?貴方には関係ありません!」
「答えてくださらないのなら私も答えませんが?」
「なっ!!」
その卑怯な物言いに苛立ちながらも渋々答える。
「帰ると約束したからですわ」
「それは恋人と?」
恋人、と言われ胸が苦しくなる。
「·····違います。でも、私の····想いを寄せる相手ですわ」
見ず知らずの人だからだろうか。
適当に父とでも嘘を言えばいいのに何故か正直に答えてしまい、しまったと思った。
こちらの身分がバレている以上、今の回答を悪意をもって現在の状況と併せて噂にされたら···!
そう危惧したが、彼は「そうですか」と一言返しただけだった。
「わ、私は答えましたわ」
「····ドレスは私が脱がせ、そこのソファに掛けてあります。脱がせた理由はコルセットを外すため。私が脱がせなければ今頃そのドレスは消化しきれなかった食べ物で····ね?」
そう言われ体内を右往左往していたものがすっかり楽になっている事に気付いた。
コルセットを外してくれたおかげでしっかり飲み込めたのだろう。
そして脱がした理由がソレだったのならば、私はまだ純潔のままだ。
色んな意味でホッとしたのだが。
「あと、時刻ですが日付が変わるまであと5分ほどですね」
「ご、5分!?」
その答えに一気に青ざめた。
その返事を聞いたリリーはもうその話には触れなかった。
いつかする私の結婚は政略結婚。
我が家門がルイーズ殿下側についていないから、というようにリリーは思ったのだろう。
もちろん望みがない理由は、添い寝以上の関係にミクロもならないからだ。
むしろ娘の私室に住まわせているくらいなので、家としてもルイーズ殿下との婚姻は望ましいとすら思っているはずだが。
「跡継ぎが作れないのは···致命的···」
その結論に深いため息を吐いた。
未成年を主張している殿下はもちろん健全な青年な訳で、それを毎晩腕枕付きの添い寝、それでも安らかに朝を迎えられるということは私の事を全く、まっっったくそういう対象に見れないからという理由なのではないだろうか。
そしてその事実を毎夜突き付けられていてアピールなんて出来る訳もなく···
「さっきは危険な夜、なんて言ったけどさ」
「?」
「気晴らしがてら、身分なんて忘れて遊びに行ってみない?私もずっと側についているから!」
「リリー···」
仮面舞踏会、かぁ···。
どうせ望みがないのなら、確かに気晴らしは悪くないかも、と考える。
それに何より、リリーのその気遣いが嬉しくて。
「そうね、行ってみようかしら?」
「そうこなくっちゃ!」
「で、でも私そういうとこ行くの初めてなんだから絶対側にいてよね!」
「もちろんよ、うっかり公女様が連れ込まれて···なんてスキャンダルには私が絶対させないわ!」
力強く笑うリリーの笑顔に釣られて私からも笑いが溢れた。
サバサバとした少し男らしい彼女は、本当に本当に私の大切な友人だ。
リリーから誘われた仮面舞踏会の日はあっという間に来た。
別に悪いことをしている訳ではないのだが、流石に仮面舞踏会に行く、なんて言うのは少し気恥ずかしく感じて皆には「ただの舞踏会」と話してあった。
「本日もとてもお美しいです、お嬢様」
「ありがとう!流石の腕前ね」
メイドの手で着飾って貰い、少し浮かれた気持ちで鏡の中の自分と目を合わせる。
リリーが迎えに来てくたと侍従が伝えに来てくれたので、階下に降りる前にこっそりと私室に向かった。
「今日も綺麗だね、エメ。でもどうしたの?もしかして見せに来てくれたのかな?」
「ち、違いますルイス殿下、私はその···忘れ物を取りに寄っただけですわ」
「何を忘れたの?」
きょとんとしたルイス王子の方に体を向け、ドレスのスカートでサイドテーブルを隠しつつこっそり“忘れ物”である“仮面”を取る。
····つもりだったのだが。
「····?·····!?!?」
こそこそと引き出しを探るが一向に見つかる気配がない。
“確かにここに入れたのに···!”
焦りから思わず引き出しを確認しようと振り向こうとした時だった。
「探してるのは、コレかなぁ?」
くすりと笑いながら見せられたのは紛れもなく私が用意した仮面で。
「あ···っ!?」
「舞踏会、確かに嘘じゃないもんね、頭に“仮面”の二文字が付くみたいだけど」
「····ぐぅぬ」
こんな風にバレるなら、いっそ先に···いや、仮面をリリーに用意して貰えば良かった···!
後悔してももう遅い。
そしてこうなったからには仕方ない。
「····仮面舞踏会だと伝えていなかったのは申し訳ありませんでした。しかし仮面舞踏会に行く事自体は何も悪いことではありません」
「まぁ、確かにそうだね。でも、全員ではないにしろ“そういう目的”で利用している者も少なくないよ?」
「私ももう成人している立派な大人です、それに婚約者もおりませんので何も問題にはならないかと」
ま、まぁそんな関係になるつもり全くないけども!ただの気晴らしだし!
でもこれくらい言えば、いくら殿下といえど言い返せないはず···
それに少しくらい嫉妬してくれたら···
そう思いチラリと視線を向けると、相変わらずいつもの微笑みのままだった。
その変わらない表情にツキンと小さく胸が痛む。
「じゃあ、エメはそうなってもいいって思ってるんだ?」
「思ってる、とまでは言いませんが···」
「わかった。はい、これは返すけど、十分気をつけてね?変な男についていかないように」
あっさりと返された仮面が、なんだか鉛のようにずっしり手に沈む。
なんだか重たくなった心を引きずって私室を出ようとした時だった。
「エメ、私の誕生日覚えてる?」
おもむろにそんな言葉を投げられ思わず振り向く。
「もちろんです、明日が殿下の20歳の誕生日ですわ。殿下の成人祭は来週を予定しているということもしっかり記憶しております」
「覚えていてくれて嬉しいよ。ねぇ、エメに一番に誕生日を祝って欲しいんだけどいいかな?」
そんなことを改めて聞かれて思わずぽかんとしてしまう。
祝うも何も、ここが私の私室で私の私室に殿下は住んでいるのだ。
どう転んでも私が一番に祝う事になるのは明白。
そこまで考えて、ふと気付く。
つまり、殿下は···
「畏まりました。必ず一番にお祝い申し上げますわ」
“ちゃんと帰って来てね!”って言ってるのね!?!?
そう結論付けて思わず頬が弛んだ。
先ほどまで重く感じた仮面の重さはもう感じない。
ころっと機嫌が直ってしまった私は、軽やかに「すぐに帰って参りますから!」と部屋から出たのだった。
その時、天幕に隠れた殿下の表情は見えなかった。
そして体験する初めての仮面舞踏会。
私の側にはもちろんリリーが········いなかった。
「甘かったわ···」
思わずため息が漏れる。
サバサバしたハッキリキッパリ男らしいリリー。
サクッと好みの男性を見つけた彼女は、「ごっめんね!でもこの机のとこがセーフティゾーンだから!私だと思ってかじりついてて!」と、にこやかに友情と恋を天秤にかけあっさりと恋を取ったのだ。
リリーの言った通り、立食テーブルでの声かけはマナー違反とされているらしくこの机の近くにいる限り誰からも声をかけられる事はなかった。
それでなくても、あっさり捨てられた腹いせに、とガツガツ料理を食べ続けている令嬢なんて声をかけたくはないだろうが。
一人くらいとはダンスを踊ってみようかな、と思ったのだがなんとなくそんな気分にもならなかったのでひたすら食に走った。
まさか公女がこんなにガツガツ食べ漁ってるとも思わないだろうし、身分も隠せて一石二鳥だ。
「もう帰ろうかな···」
帰ったら殿下が待っていてくれている。
どうせ今日もいつも通り添い寝だけ。
それでも私に一番に祝って欲しいと言ってくれた。
なんだか無性にルイーズ王子の顔が見たくなり、セーフティゾーンであるテーブルから移動しようとした時だった。
「··············う、ぅぐ」
セーフティゾーンだったはずの立食テーブルは、コルセットで絞められた令嬢の胃袋にとってある意味セーフティとは反対の位置に属していた。
移動しようと体を捻ったせいで変に力が入ったせいか、ものすごくさっきの食べ物達が体内を右往左往している。
ヤバイ。これはヤバイ。かなりヤバイ。
「失礼、顔色が悪いようですが大丈夫ですか?」
優しげな声と共に漆黒の髪が目に飛び込んできた。
「あ、貴方は···?」
「いけませんよ、お嬢様。ここは仮面舞踏会なんですから」
ふふふ、と笑いながら差しのべられた手に何故か自然と手を重ねた私は、絞められたコルセットの苦しさからそのまま気を失ってしまった。
「ん、んぅ·····」
ぼんやりする頭を抱えつつ上半身を起こしてハッとする。
ドレスを着ていない。
慌てて顔を触ると仮面もしていなかった。
「え、あ····な、なんで···あれ?」
「お目覚めですか?」
混乱している私に気付き声をかけてくれたのは、倒れそうになった時に手を差し伸べてくれた黒髪の男性···
仮面の装飾や服からそれなりにしっかりとした高位貴族だろうとわかるが、それどころではない。
「こ、ここは!?私のドレスは!?」
「ここは会場の休憩室ですよ。鍵もかかっておりますのでご安心ください」
しれっと逆に安心できない情報を与えられてパニックになる。
「な、なんで、私、もしかして!?シました!?!?」
仮面が外されているので私が誰かはもうバレているだろうがお上品にしている場合ではない。
率直に大事な事を確認する。
あまりにも明け透けな質問をされたからか、男性はぽかんとしたようだったがそんなこと構っている場合ではない。
「ドレス!私のドレスはどこですか!?そしてヤッたの!?ヤッてないの!?あと今何時!?私今日中に帰らなくちゃいけないんですけど!!」
怒鳴るように再度質問を投げると、固まっていた男性が急に大笑いし始めた。
「あはは!エメラルド嬢は面白いですね。質問に答える前に、何故今日中に拘るのかお伺いしても?」
「はぁ!?貴方には関係ありません!」
「答えてくださらないのなら私も答えませんが?」
「なっ!!」
その卑怯な物言いに苛立ちながらも渋々答える。
「帰ると約束したからですわ」
「それは恋人と?」
恋人、と言われ胸が苦しくなる。
「·····違います。でも、私の····想いを寄せる相手ですわ」
見ず知らずの人だからだろうか。
適当に父とでも嘘を言えばいいのに何故か正直に答えてしまい、しまったと思った。
こちらの身分がバレている以上、今の回答を悪意をもって現在の状況と併せて噂にされたら···!
そう危惧したが、彼は「そうですか」と一言返しただけだった。
「わ、私は答えましたわ」
「····ドレスは私が脱がせ、そこのソファに掛けてあります。脱がせた理由はコルセットを外すため。私が脱がせなければ今頃そのドレスは消化しきれなかった食べ物で····ね?」
そう言われ体内を右往左往していたものがすっかり楽になっている事に気付いた。
コルセットを外してくれたおかげでしっかり飲み込めたのだろう。
そして脱がした理由がソレだったのならば、私はまだ純潔のままだ。
色んな意味でホッとしたのだが。
「あと、時刻ですが日付が変わるまであと5分ほどですね」
「ご、5分!?」
その答えに一気に青ざめた。
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