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第四章:可愛い恋敵
18.小さな自称正妻ちゃん
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それは突然にやってきた。
「貴女が白さまの恋人!? しんっじられない! おばさんじゃないの!!」
「お、おば……」
“私まだ21歳なんだけど”
まるで黒く艶やかな髪がふわりとウェーブし、まるで宝石のように輝く黒目が美しい。
赤く染まった唇は小さく、うっすら染まる頬は可愛さを引き立てている。
まさに美少女。
そしてそんな美少女の背中には髪や瞳と同じ艶やかな黒い羽があった。
「私は貴女が白さまの恋人だなんて絶対認めないわ! 白さまと結婚するのは私なんだから!!」
「あはは、楓ちゃんってば可愛いなぁ」
仮初めではあるが、一応恋人としてこんちゃんの家で過ごさせて貰っている私にそんな啖呵を切った彼女ににこにこと笑うこんちゃんも嬉しそう。
つまり私にとって目の前のこの美少女がはじめての恋のライバルというやつなのだろう、……が。
“どうみても七歳くらい……!”
「うんうん、楓ちゃんも大きくなったら好きな人がちゃんと出来るからねぇ」
「ですからッ! それがッ! 白さまだと申しておりますのですわぁ~!!」
にこにこ笑うこんちゃんの返答に、その場で地団駄を踏む彼女は年相応。
むしろ最近の子供ってませてると聞くので、もしかしたら子供っぽい方なのかもしれないと思うほどですらあった。
“何のあやかしなんだろう”
見た目からわかるのは彼女に羽があるというくらいで、すぐにピンと来るあやかしが思い出せなかった私は昔テレビでよく観ていた妖怪アニメを必死に思い出しつつそっとこんちゃんへと近付く。
内緒話をするようにこんちゃんの方へ手を添えて顔を近付けると、察してくれたこんちゃんも顔を傾けて耳を近付けてくれた。
「なんですの、見せつけておりますの!?」
「ぅえっ!? そ、そういうつもりじゃっ」
「じゃあどういうつもりなんですの!! 不愉快ですわ、そもそも貴女、名前くらい名乗ったらどうなの!」
ビシッという効果音が付きそうな勢いで指摘された私は、相手が幼い女の子だというのに思わず気圧されて慌てて名乗った。
「きっ、桐生優子です……!」
「そう。私は烏天狗の一族当主の娘、黒曜楓よ。桐生……なんて名前聞いたことないのだけれど、そんな家妖狐にいたかしら?」
「あぁ、その羽は烏天狗――って、え?」
“妖狐?”
気になっていた答えに納得した私だったが、そのまま続けられた言葉にぽかんとしてしまう。
桐生という妖狐の一族がいるかどうかは別として、私はあくまでも迷い込んでしまったただの人間。
それなのに彼女の言い方だと、まるで私が妖狐に見えているようで。
「え? えぇっと……」
「うん、ちょっと遠方の方だけどね」
「そうなんですの? ふぅん、つまりは田舎者ってことね!」
「えっ、えぇ?」
そしてそんな会話にしれっと乗ったこんちゃんにぎょっとした私に気付いたこんちゃんが、いつものように赤い瞳を三日月型のスッと細めた。
“こ、この顔は……!”
何度も見たこの表情は、彼にとって『楽しいこと』を意味する表情。
簡単に言えば、誰かをからかって遊ぶ時の――!
「言ったでしょ? 狐は化けるのが得意だって」
「!!」
その発言にガクリと項垂れる。
どういう仕組みはわからないが、どうやら私はこんちゃんの妖術で目の前にいるこの美少女には彼と同じ妖狐に見えているらしかった。
“なんでそんなにややこしいことを!”
抗議の気持ちを込めてギロリと睨むが、何をどう思ったのか突然わざとらしいくらいの微笑みを貼り付けたこんちゃんが、これまたわざとらしく私の頭を撫でて――
「ちょっと!! 私がいるのにいちゃつかないでくださいますっ!?」
「ひぇっ」
「今は確かに貴女が恋人かもしれませんが、正妻は私です! 貴女なんてせいぜい愛妾にしかなれませんッ!」
「愛妾!?」
およそ七歳の少女の口から出るべきではない言葉が飛び出し愕然とする。
「楓ちゃん」
諭すようにこんちゃんに名を呼ばれた彼女がビクリと肩を跳ねさせた。
「俺にはゆっこだけだから、ごめんね?」
「そこじゃなくないっ!?」
てっきり愛妾について言及するのかと思っていたせいで思いっきりツッコミをいれてしまう。
そんな私をキッと見た楓ちゃんは、つかつかと私の目の前まで歩き、そして再びビシッという効果音が付きそうな勢いで私に詰め寄って。
「貴女ごときの何がいいのか、見極めさせていただきますわ……!」
なんて宣言をしたのだった。
「貴女が白さまの恋人!? しんっじられない! おばさんじゃないの!!」
「お、おば……」
“私まだ21歳なんだけど”
まるで黒く艶やかな髪がふわりとウェーブし、まるで宝石のように輝く黒目が美しい。
赤く染まった唇は小さく、うっすら染まる頬は可愛さを引き立てている。
まさに美少女。
そしてそんな美少女の背中には髪や瞳と同じ艶やかな黒い羽があった。
「私は貴女が白さまの恋人だなんて絶対認めないわ! 白さまと結婚するのは私なんだから!!」
「あはは、楓ちゃんってば可愛いなぁ」
仮初めではあるが、一応恋人としてこんちゃんの家で過ごさせて貰っている私にそんな啖呵を切った彼女ににこにこと笑うこんちゃんも嬉しそう。
つまり私にとって目の前のこの美少女がはじめての恋のライバルというやつなのだろう、……が。
“どうみても七歳くらい……!”
「うんうん、楓ちゃんも大きくなったら好きな人がちゃんと出来るからねぇ」
「ですからッ! それがッ! 白さまだと申しておりますのですわぁ~!!」
にこにこ笑うこんちゃんの返答に、その場で地団駄を踏む彼女は年相応。
むしろ最近の子供ってませてると聞くので、もしかしたら子供っぽい方なのかもしれないと思うほどですらあった。
“何のあやかしなんだろう”
見た目からわかるのは彼女に羽があるというくらいで、すぐにピンと来るあやかしが思い出せなかった私は昔テレビでよく観ていた妖怪アニメを必死に思い出しつつそっとこんちゃんへと近付く。
内緒話をするようにこんちゃんの方へ手を添えて顔を近付けると、察してくれたこんちゃんも顔を傾けて耳を近付けてくれた。
「なんですの、見せつけておりますの!?」
「ぅえっ!? そ、そういうつもりじゃっ」
「じゃあどういうつもりなんですの!! 不愉快ですわ、そもそも貴女、名前くらい名乗ったらどうなの!」
ビシッという効果音が付きそうな勢いで指摘された私は、相手が幼い女の子だというのに思わず気圧されて慌てて名乗った。
「きっ、桐生優子です……!」
「そう。私は烏天狗の一族当主の娘、黒曜楓よ。桐生……なんて名前聞いたことないのだけれど、そんな家妖狐にいたかしら?」
「あぁ、その羽は烏天狗――って、え?」
“妖狐?”
気になっていた答えに納得した私だったが、そのまま続けられた言葉にぽかんとしてしまう。
桐生という妖狐の一族がいるかどうかは別として、私はあくまでも迷い込んでしまったただの人間。
それなのに彼女の言い方だと、まるで私が妖狐に見えているようで。
「え? えぇっと……」
「うん、ちょっと遠方の方だけどね」
「そうなんですの? ふぅん、つまりは田舎者ってことね!」
「えっ、えぇ?」
そしてそんな会話にしれっと乗ったこんちゃんにぎょっとした私に気付いたこんちゃんが、いつものように赤い瞳を三日月型のスッと細めた。
“こ、この顔は……!”
何度も見たこの表情は、彼にとって『楽しいこと』を意味する表情。
簡単に言えば、誰かをからかって遊ぶ時の――!
「言ったでしょ? 狐は化けるのが得意だって」
「!!」
その発言にガクリと項垂れる。
どういう仕組みはわからないが、どうやら私はこんちゃんの妖術で目の前にいるこの美少女には彼と同じ妖狐に見えているらしかった。
“なんでそんなにややこしいことを!”
抗議の気持ちを込めてギロリと睨むが、何をどう思ったのか突然わざとらしいくらいの微笑みを貼り付けたこんちゃんが、これまたわざとらしく私の頭を撫でて――
「ちょっと!! 私がいるのにいちゃつかないでくださいますっ!?」
「ひぇっ」
「今は確かに貴女が恋人かもしれませんが、正妻は私です! 貴女なんてせいぜい愛妾にしかなれませんッ!」
「愛妾!?」
およそ七歳の少女の口から出るべきではない言葉が飛び出し愕然とする。
「楓ちゃん」
諭すようにこんちゃんに名を呼ばれた彼女がビクリと肩を跳ねさせた。
「俺にはゆっこだけだから、ごめんね?」
「そこじゃなくないっ!?」
てっきり愛妾について言及するのかと思っていたせいで思いっきりツッコミをいれてしまう。
そんな私をキッと見た楓ちゃんは、つかつかと私の目の前まで歩き、そして再びビシッという効果音が付きそうな勢いで私に詰め寄って。
「貴女ごときの何がいいのか、見極めさせていただきますわ……!」
なんて宣言をしたのだった。
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