四煌の顕現者:ゼクス・ファーヴニルの復讐譚

鶴生世乃

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第2章 希望と憎悪

三貴神

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 両親を見送って、俺は学園門から踵を返す。
 守衛が驚いた顔でこちらを見つめているが、まあ気にすることはない。

 最初に向かうべきは、やはり医務室だろう。アマツの様態を確認して、冷撫を安心させる必要がある。
 ダッシュダッシュ。

「およよ? ゼクス・ファーヴニルくんじゃないか」

 ――そんな変な反応を示す、俺の知り合いは1人しかいない。
 亜舞照あまて奏鳳かなほだ。

 俺は彼女を認識しながら、そのまま医務室のある校舎に向かって足を止めないでおくと、奏鳳は慌ててついてきた。

「ちょっと止まって」
「断る」

 後ろで「ねぇ」「お話し聞いて」「止まって」なんて声が聞こえてくるが、取り敢えずは無視を決め込む。
 俺は今から医務室に向かわなければならぬのだ。
 冷撫を安心させないと。

「――泣くよ? 奏鳳ちゃん泣いちゃうよ?」
「なんだよ」

 脅しに、立ち止まると。既に彼女は息切れしかけていた。
 ちょっと流石にやりすぎたか。

 特定の人物には極悪非道な俺でも、恨みのない人を泣かせるようなことはしたくない。
 取り敢えず彼女を待ってみると、「わーい」と。
 先程の泣き顔はどこへやら、子供のように喜んだ奏鳳は、俺に対して両手を広げて襲いかかってくるではないか。

 俺は思いっきり後ろに下がって、距離を取る。
 奏鳳は心なしか寂しそうな顔をしていた。

「冗談なのに」
「してもいい冗談と、してはいけない冗談があるの、分かるか?」

 普通に、俺は他の人と接する事くらいは出来る。
 それでも、一気にパーソナルスペースを詰められると拒否反応を起こす。

 部屋に招き入れておいてパーソナルスペースもクソもあるか、と問われればちょっと微妙な所ではあるが。
 多分、まだ人間不信の欠片が残っているんだと思う。

「ちょっと今は、ちょっと」
「それはごめん。……君のきもちを考えてあげられなかったね」

 俺が本気で嫌な顔をしていたんだろう。
 それに気づいた彼女が頭を下げた。

「で、何?」
「ちょっと紹介したい人が居るんだけど、大丈夫?」

 紹介したい人? 俺に?
 何が何だか分からないが、今から医務室に行かなければならないことを伝える。

 それを相手も理解しているようで、「でも、少し時間がほしいんだ」と。

 俺を貶めようとしている? いや……んー。
 その純真無垢な瞳を見つめていたら、そんなはずはないと考えてしまうんだけれど。

「――分かった」
「それはよかった……。みんなー!」

 ……みんな?
 と、俺が違和感を覚える前に。
 姿を現したのは女性3人と……、おまけのような男が1人。

 全員、只ならぬオーラを放っているのは確かだ。
 そしてそろいもそろって容姿が整っていやがる。

「一人ずつ紹介するね、まずはこちらが須鎖乃すさの皐月サツキ

 呼ばれた少女が、直角90度に腰を曲げた。
 
 ――まあ、名前くらいは知っている。
 こっちは【八顕】が一角、【闇】を司る須鎖乃家の子。

 やっぱり、須鎖乃と亜舞照は日本神話の三貴神から取ってきてるんだろうな。

  艶やかでキラキラしている長い髪は、後ろで一本に束ねられている。
 そして須鎖乃サツキは、制服を改造していた。――儀式用の神楽の衣装みたいな状況になっているが、学園側は何も言わないんだろうか。
 ――言えないの間違いか。

 どちらかと言えば改造はしているものの、服装も相まって堅物なイメージだ。
 改造はしているので台無しであるが。

「よろしく」
「お、おお」
「次にこっちが、月姫詠つきよみ斬灯りと

 月姫詠姓……。ということは、この子もか。
 【八顕】が一角、【光】を司る月姫詠家。

 こちらは日本人形のような、しかし銀髪。それよりも目を引くのは……。
 須鎖乃さんと負けず劣らずド派手に改造すた制服である。

 ほぼ和服だ。多分生地とかも違う何かで出来ている。
 ――本当に、何も言わなくて良いんだろうか。

「どこ見てるの?」

 訝しげにじっと見つめていると、また月姫詠斬灯もこちらを訝しげな顔をしていた。
 俺は肩をすくめて、一言。

「制服」
「胸じゃなくて?」

 容姿はうん。確かに胸は大きいのだろう。――だけれど、そのスタイルがあっているのか俺にはよく分からない。
 トランジスタグラマーってやつだとおもう。背は確実に奏鳳や須鎖乃より低い。

 そして胸の部分がなんだか、均整が取れていない。

「ないな」
「酷い」

 初対面なのに酷いことを言ってしまったかも知れない、と思いはすれど。
 どうみてもとんちんかんで、場違いな制服を見つめていたら「胸を見てるの?」と聞いてくるからお互い様だろう。

 俺は【三貴神さんきしん】から目を離し、最後の女性に目を移す。
 そして絶句する。




 ――なんだこの……なんだ。



 『ハイブリッド完璧美少女』は、と。
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