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第一章 サハル砂漠編
1 始まりの合図
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【≪二次審査オーディションの結果≫
鈴木悠汰様
この度は弊社の歌手オーディションを受けてくださり、誠にありがとうございます。
今回のオーディションでは、残念ながら、落選となりました。
またのご応募をお待ちしております。
これからのご活躍期待しております。】
レッスンの帰り道でメールを開いた。
こんなようなメールを見るのは何度目だろう。
自分の夢を追いかけたいと親に無理言って、上京してきたものの、
何一つ成果が出ていないのが現状である。
「後悔の無いように生きろってよく言うが、人生は妥協の繰り返しだぞ」
そう父が耳が痛くなるほど言い聞かせてきたのを思い出す。
自分自身、夢が叶うと本気で思っていたかと聞かれれば、
はっきりそうとも言えないが、挑戦しなきゃ叶う事も叶わないとは思う。
「たくさんのお金を稼いでから、好きな事は趣味でやればいいじゃない。
きっといい企業に勤めたり、公務員になれば何だって出来るわよ」
母は、好きな事は趣味で十分というスタンスを変えたことがなかった。
確かに、お金があったら何でも出来るのかもしれない。
ただ、好きでもない事を仕事にしたいとは思えない。
世の中たくさんの人が好きじゃない仕事をやっているというのが事実なのかもしれない。
それでも俺は、好きな事をやっぱり仕事にしたい。
そんな事を思い出したり、考えたりしていたら、家に着いた。
歌のレッスンと、カラオケなどでの自主練の後は、
バイトの夜勤だった。
軽くシャワーを浴び、家を出る準備をした。
バイト先に向かう途中で、ネットで新しいオーディションを探していると、
[新規歌手オーディション!!
〝15歳~20歳〟までの原石を募集中]
という広告があった。
「20歳までかぁー」
もう今年で28歳を迎えてしまう俺はきっと、
芸能界ではもうお年寄りの部類なのだろう、と最近は強く思う。
どうせこの先だらだらと夢を目指し続けても夢は叶わないんだろうと実感する。
真剣に就職先探すべきか、と心の中で思った。
それよりいっそのこと死んでしまった方が誰にも迷惑をかけないのかもしれない。
「生きるのってめんどうだな」
自分のやりたい事をやり続けても、それが叶って上手くいくとは限らないし、
やりたくない事をやり続けて、そうやって自分を誤魔化して、妥協の連続を繰り返すことが、
生きるっていうことなのかもしれないと思う。
この先どうなるんだろう。
ファァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン
!!!
大きなトラックのクラクションの音を聞いた途端、
振り向く間もなく、気付いたら生暖かい赤い液が垂れ続けていた。
なんだか寒い、ふわふわして目が見えない。
かすかに見える赤色の信号。
歩きスマホってやっぱりよくないな。
それに気付かずに信号を渡っていたのかもしれない
あぁ、死ぬのかな、俺。
あぁ、なんだかんだでもっと歌歌いたかったな、
色んな人を幸せにできる声が欲しかったな。
様々な事に思いを巡らせたのも束の間、
ハァっと目が覚めた。
目を開けるとそこには綺麗な明け方の空が見えた。
はるか遠くに、大きな鯨が飛んでいる。
「うわぁ~、綺麗だなぁ~」
ここがいわゆる桃源郷ってやつなのかな?
と思って空を眺めていると、その鯨が鳴き始めた。
大きな低温が響き渡り、違う方向からも鳴き声が聴こえてくる。
それに合わせて目を瞑って鼻歌を歌ってみる。
とてもリズムがゆっくりではあるが、鳴き声と合わせて歌う事で、
なんともいえないバラード調のいい音色が奏でられた。
ここでこれから一生歌い続けるのも悪くないと思った。
自分なりに歌を歌おうと思い、声を出そうとするが、なぜだか声が出ない。
「あれ?? 声が、出ない……」
この世界でも俺は歌を歌う事が出来ないのか。
いつもそうだ、俺がやろうとすることは報われない。
努力をしたって、皆口先だけで褒めてくれるだけだ。
ただ、才能がない事実や一番になれないという事は自分自身が一番よくわかっている。
それでも、桃源郷にまで来て歌が歌えないなんてひどい話じゃないか。
「フォォェェェェ―――――――――ン」
とても大きな鯨の鳴き声が響き渡った。
耳をふさがないと立っていられないほど大きな音だった。
遠くを眺めると大きな大きな鯨が見えた。
何か腹部の辺りが赤い。あれは、血だ。
遠くにいた鯨を眺めると血まみれになって、空から地上へと落ちていく。
見えなくなってから数秒後、ドンッという大きな音と共に大地が揺れた。
鯨が一頭死んだ。
鈴木悠汰様
この度は弊社の歌手オーディションを受けてくださり、誠にありがとうございます。
今回のオーディションでは、残念ながら、落選となりました。
またのご応募をお待ちしております。
これからのご活躍期待しております。】
レッスンの帰り道でメールを開いた。
こんなようなメールを見るのは何度目だろう。
自分の夢を追いかけたいと親に無理言って、上京してきたものの、
何一つ成果が出ていないのが現状である。
「後悔の無いように生きろってよく言うが、人生は妥協の繰り返しだぞ」
そう父が耳が痛くなるほど言い聞かせてきたのを思い出す。
自分自身、夢が叶うと本気で思っていたかと聞かれれば、
はっきりそうとも言えないが、挑戦しなきゃ叶う事も叶わないとは思う。
「たくさんのお金を稼いでから、好きな事は趣味でやればいいじゃない。
きっといい企業に勤めたり、公務員になれば何だって出来るわよ」
母は、好きな事は趣味で十分というスタンスを変えたことがなかった。
確かに、お金があったら何でも出来るのかもしれない。
ただ、好きでもない事を仕事にしたいとは思えない。
世の中たくさんの人が好きじゃない仕事をやっているというのが事実なのかもしれない。
それでも俺は、好きな事をやっぱり仕事にしたい。
そんな事を思い出したり、考えたりしていたら、家に着いた。
歌のレッスンと、カラオケなどでの自主練の後は、
バイトの夜勤だった。
軽くシャワーを浴び、家を出る準備をした。
バイト先に向かう途中で、ネットで新しいオーディションを探していると、
[新規歌手オーディション!!
〝15歳~20歳〟までの原石を募集中]
という広告があった。
「20歳までかぁー」
もう今年で28歳を迎えてしまう俺はきっと、
芸能界ではもうお年寄りの部類なのだろう、と最近は強く思う。
どうせこの先だらだらと夢を目指し続けても夢は叶わないんだろうと実感する。
真剣に就職先探すべきか、と心の中で思った。
それよりいっそのこと死んでしまった方が誰にも迷惑をかけないのかもしれない。
「生きるのってめんどうだな」
自分のやりたい事をやり続けても、それが叶って上手くいくとは限らないし、
やりたくない事をやり続けて、そうやって自分を誤魔化して、妥協の連続を繰り返すことが、
生きるっていうことなのかもしれないと思う。
この先どうなるんだろう。
ファァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン
!!!
大きなトラックのクラクションの音を聞いた途端、
振り向く間もなく、気付いたら生暖かい赤い液が垂れ続けていた。
なんだか寒い、ふわふわして目が見えない。
かすかに見える赤色の信号。
歩きスマホってやっぱりよくないな。
それに気付かずに信号を渡っていたのかもしれない
あぁ、死ぬのかな、俺。
あぁ、なんだかんだでもっと歌歌いたかったな、
色んな人を幸せにできる声が欲しかったな。
様々な事に思いを巡らせたのも束の間、
ハァっと目が覚めた。
目を開けるとそこには綺麗な明け方の空が見えた。
はるか遠くに、大きな鯨が飛んでいる。
「うわぁ~、綺麗だなぁ~」
ここがいわゆる桃源郷ってやつなのかな?
と思って空を眺めていると、その鯨が鳴き始めた。
大きな低温が響き渡り、違う方向からも鳴き声が聴こえてくる。
それに合わせて目を瞑って鼻歌を歌ってみる。
とてもリズムがゆっくりではあるが、鳴き声と合わせて歌う事で、
なんともいえないバラード調のいい音色が奏でられた。
ここでこれから一生歌い続けるのも悪くないと思った。
自分なりに歌を歌おうと思い、声を出そうとするが、なぜだか声が出ない。
「あれ?? 声が、出ない……」
この世界でも俺は歌を歌う事が出来ないのか。
いつもそうだ、俺がやろうとすることは報われない。
努力をしたって、皆口先だけで褒めてくれるだけだ。
ただ、才能がない事実や一番になれないという事は自分自身が一番よくわかっている。
それでも、桃源郷にまで来て歌が歌えないなんてひどい話じゃないか。
「フォォェェェェ―――――――――ン」
とても大きな鯨の鳴き声が響き渡った。
耳をふさがないと立っていられないほど大きな音だった。
遠くを眺めると大きな大きな鯨が見えた。
何か腹部の辺りが赤い。あれは、血だ。
遠くにいた鯨を眺めると血まみれになって、空から地上へと落ちていく。
見えなくなってから数秒後、ドンッという大きな音と共に大地が揺れた。
鯨が一頭死んだ。
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