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第一章 サハル砂漠編
16 白髪の少年
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「……なっ」
俺が辿り着いたその場所は、かつて俺と薬鯨の過ごした場所とは思えない程、
残骸な状態だった。
薬鯨がいた祠はボロボロに壊されており、もう跡形もなかった。
「薬鯨は……どこに……」
俺は、薬鯨を見殺しにしたのか……?
奥に続く道を歩いていく。
この先には、少し開けた空間があったのだが、そこにきっと薬鯨は避難しているだろう。
大丈夫だ。
奥にたどり着くと、そこには白髪の少年と、剣に刺さった薬鯨がいた。
辺りは血にまみれ、岩や鉱石に血が付いていて、戦った形跡が残っていた。
少年が剣を振り下ろすと、薬鯨は地面に叩きつけられるように落ちた。
「嘘……だろ…」
薬鯨は目を開かない。
こちらを見てはくれない。
「うぁぁぁぁぁぁああぁああぁあぁぁ」
俺は叫んだ。
その直後、コンマ数秒後、いや、刹那の内にその少年は俺の目の前に来た。
「なぜこの場所を知っている?」
耳元で囁かれる。
俺は渾身の想いで、加護を使い、その少年に触れようとした。
しかし、一瞬にして姿は消え、俺の加護は不発に終わった。
「…!? なぜ加護を持っている?」
少年は少し驚いた様子で、こちらを見る。
「答える筋合いはありません、なぜこんなことをするんですか。
なぜ殺すんですか」
俺はとてつもなく憤怒の感情を覚えていた。
こいつが鯨たちを殺そうとしている奴らの内の一人で、
空鯨をやったのも間違いなくこいつらだ。
「ならば、俺も答える義理はない。
芽は積んでおく主義なんだ、悪く思わないでくれ」
少年がそういった瞬間、彼の姿が消えた。
「逃げるのか! 出て来い!」
俺は叫んだ。
「お前じゃ加護を使いこなせない」
気が付いた瞬間、少年は俺の後ろにいた。
一瞬にして移動し、ここまで来たのだ。
全くもって、姿が見えなかった。
「……っ!!」
俺は振り向くと同時に拳をふるったが、彼の姿はそこにはなかった。
「この程度も追えないようじゃ、話にならない」
「…っっ」
彼は俺の背後を取っていた。
殺そうと思えば、すぐに殺せるのだろう。
「そろそろ終わりだ、この場に来たことを後悔しろ」
俺は死ぬ覚悟をした。
グサッと肉に刃が刺さる感覚を肌で感じた。
「お前……っ」
俺はただで死ぬ気はなかった。
俺の体に刺さった剣を握り、彼の動きを止めた。
そして、俺は天使の指輪を付けた手で彼を殴った。
「よし、一発……」
「……チッ…」
彼は剣を力尽くで抜き、俺から距離を取った。
「そのまま死ね、恨むなら薬鯨に関わった自分を恨むんだな」
そう言って、彼は去ろうとした。
「〝還元〟」
俺は、武具の力を使った。
「…くっ……
何をした?」
彼はこちらを睨んだ。
俺も一か八かの賭けで、初めて試してみたが、どうやら上手くいったみたいだった。
俺はもうすぐ死ぬだろう。しかし、そんな致命傷を負った人間の痛みを〝還元〟したら、
かなりのダメージになるだろう。
そして、俺は先ほど彼の右頬を殴った際に、天使の指輪の力を込めておいた。
案の定、上手くいったが、彼には全くもって効いていない様子だった。
「小細工を仕掛けたくらいでいい気になるなよ」
彼はそう言って、こちらをまた睨んだ。
その殺意は驚くもので、身動き一つとれないほどに体が固まった。
「白い……鱗……?」
俺は少年の頬を見て、不思議に思った。
血が出るのではなく、肌が少し欠け、薄白い輝きを放っている。
「……ッ!!!」
彼は剣をしまい、自身の頬を手で隠した。
「お前は薬鯨とともにここで眠れ」
段々と彼の周りには霧が経ちこみ始め、彼の姿は見えなくなった。
「……霧……?」
辺りも一面、霧に包まれ始めた。
俺は腹からとてつもない量の血が溢れ出ている。
もう意識もはっきりとしない。
何度目だろうか、俺は意識を失って、眠った。
俺が辿り着いたその場所は、かつて俺と薬鯨の過ごした場所とは思えない程、
残骸な状態だった。
薬鯨がいた祠はボロボロに壊されており、もう跡形もなかった。
「薬鯨は……どこに……」
俺は、薬鯨を見殺しにしたのか……?
奥に続く道を歩いていく。
この先には、少し開けた空間があったのだが、そこにきっと薬鯨は避難しているだろう。
大丈夫だ。
奥にたどり着くと、そこには白髪の少年と、剣に刺さった薬鯨がいた。
辺りは血にまみれ、岩や鉱石に血が付いていて、戦った形跡が残っていた。
少年が剣を振り下ろすと、薬鯨は地面に叩きつけられるように落ちた。
「嘘……だろ…」
薬鯨は目を開かない。
こちらを見てはくれない。
「うぁぁぁぁぁぁああぁああぁあぁぁ」
俺は叫んだ。
その直後、コンマ数秒後、いや、刹那の内にその少年は俺の目の前に来た。
「なぜこの場所を知っている?」
耳元で囁かれる。
俺は渾身の想いで、加護を使い、その少年に触れようとした。
しかし、一瞬にして姿は消え、俺の加護は不発に終わった。
「…!? なぜ加護を持っている?」
少年は少し驚いた様子で、こちらを見る。
「答える筋合いはありません、なぜこんなことをするんですか。
なぜ殺すんですか」
俺はとてつもなく憤怒の感情を覚えていた。
こいつが鯨たちを殺そうとしている奴らの内の一人で、
空鯨をやったのも間違いなくこいつらだ。
「ならば、俺も答える義理はない。
芽は積んでおく主義なんだ、悪く思わないでくれ」
少年がそういった瞬間、彼の姿が消えた。
「逃げるのか! 出て来い!」
俺は叫んだ。
「お前じゃ加護を使いこなせない」
気が付いた瞬間、少年は俺の後ろにいた。
一瞬にして移動し、ここまで来たのだ。
全くもって、姿が見えなかった。
「……っ!!」
俺は振り向くと同時に拳をふるったが、彼の姿はそこにはなかった。
「この程度も追えないようじゃ、話にならない」
「…っっ」
彼は俺の背後を取っていた。
殺そうと思えば、すぐに殺せるのだろう。
「そろそろ終わりだ、この場に来たことを後悔しろ」
俺は死ぬ覚悟をした。
グサッと肉に刃が刺さる感覚を肌で感じた。
「お前……っ」
俺はただで死ぬ気はなかった。
俺の体に刺さった剣を握り、彼の動きを止めた。
そして、俺は天使の指輪を付けた手で彼を殴った。
「よし、一発……」
「……チッ…」
彼は剣を力尽くで抜き、俺から距離を取った。
「そのまま死ね、恨むなら薬鯨に関わった自分を恨むんだな」
そう言って、彼は去ろうとした。
「〝還元〟」
俺は、武具の力を使った。
「…くっ……
何をした?」
彼はこちらを睨んだ。
俺も一か八かの賭けで、初めて試してみたが、どうやら上手くいったみたいだった。
俺はもうすぐ死ぬだろう。しかし、そんな致命傷を負った人間の痛みを〝還元〟したら、
かなりのダメージになるだろう。
そして、俺は先ほど彼の右頬を殴った際に、天使の指輪の力を込めておいた。
案の定、上手くいったが、彼には全くもって効いていない様子だった。
「小細工を仕掛けたくらいでいい気になるなよ」
彼はそう言って、こちらをまた睨んだ。
その殺意は驚くもので、身動き一つとれないほどに体が固まった。
「白い……鱗……?」
俺は少年の頬を見て、不思議に思った。
血が出るのではなく、肌が少し欠け、薄白い輝きを放っている。
「……ッ!!!」
彼は剣をしまい、自身の頬を手で隠した。
「お前は薬鯨とともにここで眠れ」
段々と彼の周りには霧が経ちこみ始め、彼の姿は見えなくなった。
「……霧……?」
辺りも一面、霧に包まれ始めた。
俺は腹からとてつもない量の血が溢れ出ている。
もう意識もはっきりとしない。
何度目だろうか、俺は意識を失って、眠った。
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