最強ギルドの斧使いが呪われた山を攻略します!ティルナノーグサーガ『ブルジァ家の秘密』

路地裏の喫茶店

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第三章・我が儘お嬢様

亡者の群れ

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登場人物:

グラウリー:呪われた山バルティモナを攻略した一行隊長パーティーリーダー斧戦士ウォーリアー
ラヴィ:女性鍛治師ブラックスミス。悩んでいる
バニング:暗殺者アサシン
マチス:老練な短槍使いフェンサー
トッティ:若い鈍器使いメイサー
ボケボケマン:オークマスクの魔導師メイジ
エイジ:蒼の魔導師ブルーメイジ
トム: 商人マーチャント
ギマル:部族出身の斧戦士ウォーリアー
ベル・ブルジァ:豪商リドルトの姪



33

「起きろ、奴等が現れたっ!」
 闇にグラウリーの怒号が木霊する。ティルナノーグ面々のうち見張りの五人は素早く臨戦態勢を取り、また仮眠についていた者達も毛布を放り出すと傍らの武器を拾い上げる。冒険者の眠りは浅い。またたくまに彼等は焚き木とベルを中心にして円陣を組んだ。

 彼等をいつの間にか囲んでいたのは、漆黒の空洞をぽっかりとその顔に開けている骸骨戦士と屍肉を引きずる死者達。それはあやかしの森に打ち捨てられた死体達だ。

「またアンデットか!死の超越者デスオーバーロードはどこだ?」
「……見当たらない」
「トム、ラヴィ、ベル――お嬢様を起こしてくれ。彼女の秘宝の力が要る」
「わかりました!」

「ホラ、ベルちゃん!起きなアカン。大変や――!」
 トムとラヴィが必至にベルの体を揺すった。しかし体を大きく揺らしてもベルはうなされるだけで中々眼を覚まさない。そうする間に魍魎達は携えた武器を振り上げ彼等に迫ってきた。

「ベルが起きない!?くそっ、みんな円陣を絶対に崩さないでくれ!」
「わかった!」
「火を絶やすな!」
 緊張した空気が走る。基本的にアンデットは火を嫌う習性がある。パチパチとはぜる紅蓮の灯火が彼等はもうとうの昔に現世を去った人間なのだとまざまざと照らし出すからであった。
彼等亡者は緩慢な動作で戦士達に近寄って来――しかしその歩みの遅さこそがかえってあるはずのない光景を実に目の当りにして、じわりじわりと腹の底から染み出す様な恐怖を醸すのだ。


 彼等は文字通り恐怖と言うものを知らぬがごとくにじり寄ると、戦士達の攻撃範囲まで後一歩、という所で急にその速度を増して獲物を振り下ろしながら突っ込んできた!

「――!」初撃を戦斧で受け止めたギマルだったが、その打ち込みは存外に速い。続けざま放たれる薙ぎ払いを再び受け止めると、隙を突いて骨盤の辺りを強烈に殴り払った。骸骨戦士はバキインという乾いた音を立てて粉々に砕け散る。

 しかしその一体を倒すや否や再び新手の屍鬼が現われる。
一体一体はさほど大した物ではないが、続けざまに、のろのろと現われる骸達はどことなく行列をなして一心不乱に行進を続ける蟻を連想させて。冒険者達はそこに盲目の目的意志――彼等を殺し死肉を食らおうと言う――意志、というものが死霊にそぐわないとすれば、それを操る怪異が傀儡に念じ込めた深い怨気――を感じ取るのだった。

「きりがない。やっこさんまだ現われないって事は、俺達をまず消耗させようという魂胆かよ!」
 エイジが火球をぶつけ、死霊を黄泉に立ち戻らせる魔法ターニングアンデットのルーンを切った。
その影響を受けた何体かの死霊がその場に崩れ落ち、再び元の永眠にさらされる。

「エイジ、ボケボケマン、魔導は温存しながら戦ってくれ!奴がもし現われた時はお前達の魔導の力が不可欠になってくる!」
「わかってるさグラウリー!だが――!」
そう叫ぶ間にも次々に亡者は彼等を襲う。


「どうしてこんなに起こしてるのに起きないんでしょうか――」
 トムはベルの肩を必至に揺すりながら叫ぶ。
「わからない――わからないけど……このベルちゃんの顔は、ただごとやない……!ベルちゃん!」
ラヴィもベルの頬を強く叩く。しかしベルのいらえはない。

「待って――。確かにお嬢様の様子がおかしいが――秘宝を誰が使っても――」
「――! そうか……」

 焚き木の焔を反射させて、トムの眼鏡が白く光る。トムの言葉を理解したラヴィが頷くと、素早くトムはベルの腰の後ろに着いているポシェットに手を伸ばした。
「失礼!――これだ」
 謎の水晶球と蒼い石。二つのバルティモナの秘宝のうち水晶球の方はベルが常に身に着けていた。トムはうまく水晶球を取り出すと、グラウリーに聞いた話を思い出して水晶球を高く掲げた!

「水晶球よ、光を発してください!」
森にトムの声が響いた――…………!





 ………しかし水晶球はいくら掲げても、一筋の光も発しはしなかったのだった。

「ど、どうして――…」
 トムは水晶球を覗き込んだり、振ってみたりするのだが何の反応も得られない。

「あにやってんだトム!遊んでねーでさっさと秘宝のパワーでフォローしてくれ!」
エイジが後ろを振り返り叫ぶ。
「あ、遊んでるわけでは……」
「トムさん、貸して!」
 トムがおろおろとしていると、ラヴィがトムの手から水晶を引っ手繰り、掲げた。

「………」しかし水晶球は再び何の反応も無かった。きらきらとした星のような小さな光が水晶の中で僅かに明滅を繰り返すだけだった。
「まさか……お嬢様じゃないと扱えないのか――!?」
トムはうなされて未だ眠りについているベルを見やり呟いた。

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