海賊歴30年、初めて銃を弾かれた〜異世界に召喚された海賊だけど、勇者に銃が効かないのは聞いてません〜

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第十話 ネタバラシが楽しみだなあ(ニチャァ......

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「え?報酬なら出ませんよ?」

 何当然のことを、と、きょとんとするピンク髪の受付嬢シェリー。
 
「「はあ!?」」

 今俺たちは、依頼達成の旨をギルドに報告しにきているところだ。

 クラーケンの胃から出てきたブレスレットを、ケターシャが受付のシェリーに渡すが、(俺は初対面の時に嫌われちまった)「未達成になります」と返されてしまった。

「おいケターシャ!どうなってんだ!?このブレスレットが証拠になるんじゃなかったのか?」

 ブレスレットを見つけてきた時の言葉を思い出しながら、カウンターに両手をつき項垂れる、ケターシャに問い掛ける。

「……すまん、わからん。シェリー、説明してもらえるか?」

「はい。えーっと、依頼内容が、クラーミアン海域の調査と、失踪した商船の調査ですね。」

 カウンターの引き出しから資料を取り出すと、パラパラと目当てのページを探し始める。

 ページを見つけると、文章を指でなぞりながら、少し考えて話し出した。

「んーー。クラーケンが商船を襲ったとのことですが、肝心のクラーケンとは砂浜で遭遇されたんですよね。ただの異常行動なのか、はたまた縄張りを追われ逃げてきたのか。どちらにしてもなんらかの情報が欲しいので、お手数ですが、再度の調査をお願い致します」

「シェリーって言ったか?もう一度調査に行きたいのは山々なんだが……肝心の船がボロボロになっちまった。報酬が出ないってんじゃ修理も新しい船も無理だ」

「でしたら、クラーケンの亡骸を売ってはいかがでしょうか?」

「なるほど、その手があった!」

 ケターシャが目を輝かせ唸った。

「あ?クラーケンの死体が売れんのか?」

「はい、当ギルドでは買取を行っておりませんが、解体業者の紹介と手配は可能です。内臓や目玉などが綺麗な状態であれば、高値で売れます」

「おおっまじか!ってあれ?どうしたよケターシャ?」

 今度は冷や汗を流しながら唸っている。どうしたんだよ、と小突いても目が泳ぐだけだ。

「ウェイブス、私達はクラーケンを殺す時どうやったか思い出せ」

「は?」

 どうやったって……ケターシャが床吹き飛ばして、クラーケンの姿が見えたところを俺とアインで―――あっ

「わかったか?ついでにどうやってこ・れ・を見つけたかも思い出せ」

 シェリーに返されたブレスレットを、ひらひらとさせる。

 そこまで言われて初めて、ケターシャが冷や汗をかいていた理由を理解した。

 俺自身、血の気が引いていくのを感じた。

「目玉は潰しちまったし、内臓も多分ぐちゃぐちゃってことじゃねーか!?」

「そのとうりだ」

 目玉が潰れて内臓もぐちゃぐちゃ、と聞いて、シェリーは筆を止めた。

 解体業者とやらを手配するための書類だろうか。羽ペンを置いて、ため息混じりに話し始めた。

「そのような状態ですと……買取価格を解体料、手配料が上回るかと。でしたらどうしましょうか―――あ、ギルドマスターがお帰りになられました」

 俺は反射的に入り口の方を見やったが、ギルドマスターことセリヒの姿はない。

 どこにいるのかとキョロキョロ見渡していると、ケターシャが吹き出して、口角をつりあげる。

「さっき教えただろ?セリヒは私と同じ竜人だ。竜が、ギルドマスターをするような地位の高い者が、のこのこ歩いて移動するわけないだろ」

 クックッと笑いながら、天井を指差した。

「ギルドマスターは、空からお帰りだ」

「へーー」

 空から帰ってきたのに、シェリーはなぜ分かったんだ?とか考えていると、思っていた反応と違ったのか、ケターシャは面白くなさそうにする。

 この面倒な女をよそに、シェリーはなにやらブツブツと独り言を言っていた。

 相手がいるわけでもないのに、返事をしたり相槌を打っているのが不思議で見つめていると、俺の視線に気づいて、咳払いしながら俺とケターシャを見やった。

「―――はい――――了解です。え?あ、はい、ではそのように。………んっん、失礼しました。えっと、お2人を、ギルドマスターがお呼びです」

「「は?」」

「いやー、災難だったね!まさか出航する前にクラーケンに出くわすとは笑。勇者といい、クラーケンといい、珍しい者を寄せ付ける才能があるんだね!」

 前回案内された時のようにセリヒの執務室へ向かうと、やけに上機嫌なセリヒがすぐさま絡んできた。

 そこに突っ込むと、セリヒは食い気味に語り始める。

「ふふっ。今日は古い友人に会いに行っててね!最近執務ばっかりで息が詰まってたから、いい息抜きになったよ。あいつ、いい歳のくせに手合わせしようなんて言い出してさ」

「セリヒさん、話を止めて悪いんですが。私達に何か用があったのでは?」

 目をパチクリとさせて、そうだったそうだったと微笑するセリヒ。

 いやあ、こんな姿を見てたらついギルドマスターだなんてこと忘れちまうな。普通にしてれば、年頃の小娘となんら変わんねえ。

 こういう幼い面も見せつつ、時折鋭い雰囲気を醸し出すのが不思議だ。

「船も無ければ金もない。クラーケンを売ろうにも、状態が悪い。ならそのクラーケンを生贄に、精霊でも契約したらどうだい?」

 精霊?また知らない要素が出てきたぞ?

 精霊っていったらあれか、エルフだとか、サラマンダーのことか。

 伝説や、船乗り達の語り草になっている、有名な精霊達を脳裏に浮かべた。

「船の守護霊になってもらって、修復も頼めばいいさ。ああ、ウェイブス君は知らないのか。えーっと精霊ってのは……見せた方がはやいね」

 セリヒが指を鳴らすと、俺らの足元が淡く紫色に光りだし、そこに一輪の花が咲いた。

 その花はみるみるうちに蔓と葉を茂らせ、怪しく蠢きながら何かを形作っていく。

 脚ができ、胴ができ、尾ができ、最後に頭まで形成したところで、蔓は動きを止めた。

「狼か?」

 俺の声に反応するように、植物の身体をした狼は閉じていた眼を開いた。

 ちょこんと座って、くあーっと欠伸をし、主人、セリヒの指示を待つようにジッと見つめた。

「この子はトップ、この建物の防衛システムを担っている精霊だよ」

 そういって狼に近づき、優しい表情で頭を撫で始める。

「ふえー、すっげえな。なんつーか、神秘的で。……俺も撫でていいか?」

 狼の頭に手を伸ばすと、一本の蔓にペチンと叩かれ、シュン……とした。

 セリヒが手を動かすごとに、キュッキュッと鳴り、触らずとも狼の毛並みの悪さが分かった。

 ふと、何故か驚いた様子のケターシャに気づく。こいつも精霊見るの初めてだったのか?それとも撫でてみたいのか?とか思っていると、セリヒもケターシャの様子に気づいた。

「おや、不思議かい?ケターシャ」

「はい、精霊と仲の良い竜人なんて初めてみました」

「ふふふ。まあそこは、私だからね」

 ケターシャは、ドヤ!と胸を張るセリヒにおおーと拍手しながら、どういうことかわかっていない俺に説明してくれる。

「竜、竜人は精霊に嫌われるのが普通なんだ。精霊の力を借りる「魔法」が使えないのもそれが関係してるんだが……見ての通りギルドマスターは例外みたいだ」

 再度キュッキュッ言わせてるのを見て、尊敬の眼差しを向ける。

 ケターシャが前に、『私は魔法が使えない』と言っていたことを思い出した。

「精霊ってのはこういう感じだよ。肝心の契約の仕方だけど、勇者に任せるといいよ。あれは精霊との相性が非常にいいからね」

「勇者に?」

 薬中ゆうしゃが精霊と相性がいいだあ?

 精霊を発見しだい、ヒャッハアア!!と飛び掛かり、八つ裂きにする薬中の姿が目に浮かんだ。

 同じ情景が浮かんだんだろう。ケターシャに『行けると思うか?』と視線を送ると、首をブンブンと横に振った。

「え?なになにどうしたの?なにか都合が悪い?」

 狼を撫でる手を止めるセリヒに、俺は今の勇者の状態と、懸念される問題点についてセリヒに説明した。

 俺が話し終えるまで、セリヒは黙って時折頷きながら聞いた。

 話し終えると、セリヒはグリンッと勢いよくケターシャを捉えた。

「ケターシャ~?どうして隠してた~?」

「いやっ、そのっ、隠してた訳じゃ……」

 眼を泳がせまくって、アワアワと焦る姿に、セリヒはため息を吐いた。

 どうやら、俺達が勇者と戦い「勝利した」ところまでしか話していなかったらしい。

 薬漬け、薬漬けねえ……と頭を抱えるセリヒ。

「取り敢えず、正教会の連中にばれちゃいけないよ。女神の寵愛を受けた勇者を薬漬けにしたと知れたら……余裕で殺されるよ?」

「その時私は現場にいなかったわけですので、バレた場合はコイツを置いて逃げます」

「おい」

 もっともなことだが、堂々と見捨てる宣言をしたケターシャの頭をペシりと叩く。

「ふう、その話はまた後でするとして……勇者が使えないとなると、精霊使いが必要だね。わかった、私の友人を紹介しよう。ちょうどこの都に来ているらしいんだ」

「お、そりゃラッキーだな。そいつはどこに居るんだ?」

「それが分からなくてね……遺跡の調査をしにエルレイまで来てるってのは聞いてるんだけど」

「じゃあその遺跡に行ってみればいーじゃねーか」

 セリヒは少し考える素振りを見せ、一拍置いて頷いた。

「……うーん、まあいいか。そうだね!行ってみるといいさ!」

 セリヒはサラサラっと手紙を書いて、「ほれ、紹介状」と手渡し、じゃあ行ってらっしゃいと言う。

 は?それだけか?と疑問に思い、遺跡の場所とか教えてくれないのかと尋ねる。

「ケターシャが知ってると思うよ!有名な遺跡だから!」

 とだけ言われて、執務室から追い出されてしまった。

「なんだ、セリヒのやつ?…ところで、遺跡ってどんなとこなんだ?まさか場所を知らないとか言うなよな」

「まあそう急かすな。ここいらで遺跡といったらあそこしかない」

 俺の問いにすぐには答えず、クラーケンの胃の中から出てきたブレスレットを取り出した。

「これがエルレイの特産品だと教えたな?これは今から向かう遺跡から入手されるものだ。多くの冒険者がお宝目当てに探検し、発見された遺物によってこの街は栄えている。ただ……」
 
「ただ?」

「ものすごく危険な場所だ。人喰いの魔物が常に徘徊し、侵入者を拒む罠がそこら中に設置されてある」

「おおう……」

 セリヒが一瞬悩んでた理由はこれか!

 聞く限り命が危うそうな場所に行かせようとしといて、なにが「まあいいか!」だ!俺が文句言う前に部屋から追い出しやがってっ。

 俺が行き場のない怒りを露わにしていると、ケターシャがまあまあ、と俺を宥める。

「それはそれとして、どうする?別に遺跡に向かわなくとも、セリヒさんの言う友人には出会えるとは思うが」

「ああんっ!?行くに決まってんだろ!精霊使いとやらを見つけるついでに、遺物漁って稼いでやる!!」

「ふっ、お前ならそう言うと思ったよ。金に関しては、今こうしてる間にも必要額が増えていってるわけだしな」

 ケターシャの指差す方を見ると、金が入るからと浮かれて(報酬の金はまだもらっていない)酒場で宴会モードの野朗共がいた。

 額に太い青筋が浮かぶのを感じながら、良いことを思いついて、思わず笑みがこぼれた。

 酒場に払う金の問題はさておき、今は呑気に酒飲んでる野朗共だ。

「お前らーー?金銀財宝ザックザクの、遺跡があるってよ♪」

 俺は心の中でほくそ笑みながら、呆れるケターシャを背に野朗共の所に駆け寄っていった。
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