11 / 14
第十話 ネタバラシが楽しみだなあ(ニチャァ......
しおりを挟む
「え?報酬なら出ませんよ?」
何当然のことを、と、きょとんとするピンク髪の受付嬢シェリー。
「「はあ!?」」
今俺たちは、依頼達成の旨をギルドに報告しにきているところだ。
クラーケンの胃から出てきたブレスレットを、ケターシャが受付のシェリーに渡すが、(俺は初対面の時に嫌われちまった)「未達成になります」と返されてしまった。
「おいケターシャ!どうなってんだ!?このブレスレットが証拠になるんじゃなかったのか?」
ブレスレットを見つけてきた時の言葉を思い出しながら、カウンターに両手をつき項垂れる、ケターシャに問い掛ける。
「……すまん、わからん。シェリー、説明してもらえるか?」
「はい。えーっと、依頼内容が、クラーミアン海域の調査と、失踪した商船の調査ですね。」
カウンターの引き出しから資料を取り出すと、パラパラと目当てのページを探し始める。
ページを見つけると、文章を指でなぞりながら、少し考えて話し出した。
「んーー。クラーケンが商船を襲ったとのことですが、肝心のクラーケンとは砂浜で遭遇されたんですよね。ただの異常行動なのか、はたまた縄張りを追われ逃げてきたのか。どちらにしてもなんらかの情報が欲しいので、お手数ですが、再度の調査をお願い致します」
「シェリーって言ったか?もう一度調査に行きたいのは山々なんだが……肝心の船がボロボロになっちまった。報酬が出ないってんじゃ修理も新しい船も無理だ」
「でしたら、クラーケンの亡骸を売ってはいかがでしょうか?」
「なるほど、その手があった!」
ケターシャが目を輝かせ唸った。
「あ?クラーケンの死体が売れんのか?」
「はい、当ギルドでは買取を行っておりませんが、解体業者の紹介と手配は可能です。内臓や目玉などが綺麗な状態であれば、高値で売れます」
「おおっまじか!ってあれ?どうしたよケターシャ?」
今度は冷や汗を流しながら唸っている。どうしたんだよ、と小突いても目が泳ぐだけだ。
「ウェイブス、私達はクラーケンを殺す時どうやったか思い出せ」
「は?」
どうやったって……ケターシャが床吹き飛ばして、クラーケンの姿が見えたところを俺とアインで―――あっ
「わかったか?ついでにどうやってこ・れ・を見つけたかも思い出せ」
シェリーに返されたブレスレットを、ひらひらとさせる。
そこまで言われて初めて、ケターシャが冷や汗をかいていた理由を理解した。
俺自身、血の気が引いていくのを感じた。
「目玉は潰しちまったし、内臓も多分ぐちゃぐちゃってことじゃねーか!?」
「そのとうりだ」
目玉が潰れて内臓もぐちゃぐちゃ、と聞いて、シェリーは筆を止めた。
解体業者とやらを手配するための書類だろうか。羽ペンを置いて、ため息混じりに話し始めた。
「そのような状態ですと……買取価格を解体料、手配料が上回るかと。でしたらどうしましょうか―――あ、ギルドマスターがお帰りになられました」
俺は反射的に入り口の方を見やったが、ギルドマスターことセリヒの姿はない。
どこにいるのかとキョロキョロ見渡していると、ケターシャが吹き出して、口角をつりあげる。
「さっき教えただろ?セリヒは私と同じ竜人だ。竜が、ギルドマスターをするような地位の高い者が、のこのこ歩いて移動するわけないだろ」
クックッと笑いながら、天井を指差した。
「ギルドマスターは、空からお帰りだ」
「へーー」
空から帰ってきたのに、シェリーはなぜ分かったんだ?とか考えていると、思っていた反応と違ったのか、ケターシャは面白くなさそうにする。
この面倒な女をよそに、シェリーはなにやらブツブツと独り言を言っていた。
相手がいるわけでもないのに、返事をしたり相槌を打っているのが不思議で見つめていると、俺の視線に気づいて、咳払いしながら俺とケターシャを見やった。
「―――はい――――了解です。え?あ、はい、ではそのように。………んっん、失礼しました。えっと、お2人を、ギルドマスターがお呼びです」
「「は?」」
「いやー、災難だったね!まさか出航する前にクラーケンに出くわすとは笑。勇者といい、クラーケンといい、珍しい者を寄せ付ける才能があるんだね!」
前回案内された時のようにセリヒの執務室へ向かうと、やけに上機嫌なセリヒがすぐさま絡んできた。
そこに突っ込むと、セリヒは食い気味に語り始める。
「ふふっ。今日は古い友人に会いに行っててね!最近執務ばっかりで息が詰まってたから、いい息抜きになったよ。あいつ、いい歳のくせに手合わせしようなんて言い出してさ」
「セリヒさん、話を止めて悪いんですが。私達に何か用があったのでは?」
目をパチクリとさせて、そうだったそうだったと微笑するセリヒ。
いやあ、こんな姿を見てたらついギルドマスターだなんてこと忘れちまうな。普通にしてれば、年頃の小娘となんら変わんねえ。
こういう幼い面も見せつつ、時折鋭い雰囲気を醸し出すのが不思議だ。
「船も無ければ金もない。クラーケンを売ろうにも、状態が悪い。ならそのクラーケンを生贄に、精霊でも契約したらどうだい?」
精霊?また知らない要素が出てきたぞ?
精霊っていったらあれか、エルフだとか、サラマンダーのことか。
伝説や、船乗り達の語り草になっている、有名な精霊達を脳裏に浮かべた。
「船の守護霊になってもらって、修復も頼めばいいさ。ああ、ウェイブス君は知らないのか。えーっと精霊ってのは……見せた方がはやいね」
セリヒが指を鳴らすと、俺らの足元が淡く紫色に光りだし、そこに一輪の花が咲いた。
その花はみるみるうちに蔓と葉を茂らせ、怪しく蠢きながら何かを形作っていく。
脚ができ、胴ができ、尾ができ、最後に頭まで形成したところで、蔓は動きを止めた。
「狼か?」
俺の声に反応するように、植物の身体をした狼は閉じていた眼を開いた。
ちょこんと座って、くあーっと欠伸をし、主人、セリヒの指示を待つようにジッと見つめた。
「この子はトップ、この建物の防衛システムを担っている精霊だよ」
そういって狼に近づき、優しい表情で頭を撫で始める。
「ふえー、すっげえな。なんつーか、神秘的で。……俺も撫でていいか?」
狼の頭に手を伸ばすと、一本の蔓にペチンと叩かれ、シュン……とした。
セリヒが手を動かすごとに、キュッキュッと鳴り、触らずとも狼の毛並みの悪さが分かった。
ふと、何故か驚いた様子のケターシャに気づく。こいつも精霊見るの初めてだったのか?それとも撫でてみたいのか?とか思っていると、セリヒもケターシャの様子に気づいた。
「おや、不思議かい?ケターシャ」
「はい、精霊と仲の良い竜人なんて初めてみました」
「ふふふ。まあそこは、私だからね」
ケターシャは、ドヤ!と胸を張るセリヒにおおーと拍手しながら、どういうことかわかっていない俺に説明してくれる。
「竜、竜人は精霊に嫌われるのが普通なんだ。精霊の力を借りる「魔法」が使えないのもそれが関係してるんだが……見ての通りギルドマスターは例外みたいだ」
再度キュッキュッ言わせてるのを見て、尊敬の眼差しを向ける。
ケターシャが前に、『私は魔法が使えない』と言っていたことを思い出した。
「精霊ってのはこういう感じだよ。肝心の契約の仕方だけど、勇者に任せるといいよ。あれは精霊との相性が非常にいいからね」
「勇者に?」
薬中ゆうしゃが精霊と相性がいいだあ?
精霊を発見しだい、ヒャッハアア!!と飛び掛かり、八つ裂きにする薬中の姿が目に浮かんだ。
同じ情景が浮かんだんだろう。ケターシャに『行けると思うか?』と視線を送ると、首をブンブンと横に振った。
「え?なになにどうしたの?なにか都合が悪い?」
狼を撫でる手を止めるセリヒに、俺は今の勇者の状態と、懸念される問題点についてセリヒに説明した。
俺が話し終えるまで、セリヒは黙って時折頷きながら聞いた。
話し終えると、セリヒはグリンッと勢いよくケターシャを捉えた。
「ケターシャ~?どうして隠してた~?」
「いやっ、そのっ、隠してた訳じゃ……」
眼を泳がせまくって、アワアワと焦る姿に、セリヒはため息を吐いた。
どうやら、俺達が勇者と戦い「勝利した」ところまでしか話していなかったらしい。
薬漬け、薬漬けねえ……と頭を抱えるセリヒ。
「取り敢えず、正教会の連中にばれちゃいけないよ。女神の寵愛を受けた勇者を薬漬けにしたと知れたら……余裕で殺されるよ?」
「その時私は現場にいなかったわけですので、バレた場合はコイツを置いて逃げます」
「おい」
もっともなことだが、堂々と見捨てる宣言をしたケターシャの頭をペシりと叩く。
「ふう、その話はまた後でするとして……勇者が使えないとなると、精霊使いが必要だね。わかった、私の友人を紹介しよう。ちょうどこの都に来ているらしいんだ」
「お、そりゃラッキーだな。そいつはどこに居るんだ?」
「それが分からなくてね……遺跡の調査をしにエルレイまで来てるってのは聞いてるんだけど」
「じゃあその遺跡に行ってみればいーじゃねーか」
セリヒは少し考える素振りを見せ、一拍置いて頷いた。
「……うーん、まあいいか。そうだね!行ってみるといいさ!」
セリヒはサラサラっと手紙を書いて、「ほれ、紹介状」と手渡し、じゃあ行ってらっしゃいと言う。
は?それだけか?と疑問に思い、遺跡の場所とか教えてくれないのかと尋ねる。
「ケターシャが知ってると思うよ!有名な遺跡だから!」
とだけ言われて、執務室から追い出されてしまった。
「なんだ、セリヒのやつ?…ところで、遺跡ってどんなとこなんだ?まさか場所を知らないとか言うなよな」
「まあそう急かすな。ここいらで遺跡といったらあそこしかない」
俺の問いにすぐには答えず、クラーケンの胃の中から出てきたブレスレットを取り出した。
「これがエルレイの特産品だと教えたな?これは今から向かう遺跡から入手されるものだ。多くの冒険者がお宝目当てに探検し、発見された遺物によってこの街は栄えている。ただ……」
「ただ?」
「ものすごく危険な場所だ。人喰いの魔物が常に徘徊し、侵入者を拒む罠がそこら中に設置されてある」
「おおう……」
セリヒが一瞬悩んでた理由はこれか!
聞く限り命が危うそうな場所に行かせようとしといて、なにが「まあいいか!」だ!俺が文句言う前に部屋から追い出しやがってっ。
俺が行き場のない怒りを露わにしていると、ケターシャがまあまあ、と俺を宥める。
「それはそれとして、どうする?別に遺跡に向かわなくとも、セリヒさんの言う友人には出会えるとは思うが」
「ああんっ!?行くに決まってんだろ!精霊使いとやらを見つけるついでに、遺物漁って稼いでやる!!」
「ふっ、お前ならそう言うと思ったよ。金に関しては、今こうしてる間にも必要額が増えていってるわけだしな」
ケターシャの指差す方を見ると、金が入るからと浮かれて(報酬の金はまだもらっていない)酒場で宴会モードの野朗共がいた。
額に太い青筋が浮かぶのを感じながら、良いことを思いついて、思わず笑みがこぼれた。
酒場に払う金の問題はさておき、今は呑気に酒飲んでる野朗共だ。
「お前らーー?金銀財宝ザックザクの、遺跡があるってよ♪」
俺は心の中でほくそ笑みながら、呆れるケターシャを背に野朗共の所に駆け寄っていった。
何当然のことを、と、きょとんとするピンク髪の受付嬢シェリー。
「「はあ!?」」
今俺たちは、依頼達成の旨をギルドに報告しにきているところだ。
クラーケンの胃から出てきたブレスレットを、ケターシャが受付のシェリーに渡すが、(俺は初対面の時に嫌われちまった)「未達成になります」と返されてしまった。
「おいケターシャ!どうなってんだ!?このブレスレットが証拠になるんじゃなかったのか?」
ブレスレットを見つけてきた時の言葉を思い出しながら、カウンターに両手をつき項垂れる、ケターシャに問い掛ける。
「……すまん、わからん。シェリー、説明してもらえるか?」
「はい。えーっと、依頼内容が、クラーミアン海域の調査と、失踪した商船の調査ですね。」
カウンターの引き出しから資料を取り出すと、パラパラと目当てのページを探し始める。
ページを見つけると、文章を指でなぞりながら、少し考えて話し出した。
「んーー。クラーケンが商船を襲ったとのことですが、肝心のクラーケンとは砂浜で遭遇されたんですよね。ただの異常行動なのか、はたまた縄張りを追われ逃げてきたのか。どちらにしてもなんらかの情報が欲しいので、お手数ですが、再度の調査をお願い致します」
「シェリーって言ったか?もう一度調査に行きたいのは山々なんだが……肝心の船がボロボロになっちまった。報酬が出ないってんじゃ修理も新しい船も無理だ」
「でしたら、クラーケンの亡骸を売ってはいかがでしょうか?」
「なるほど、その手があった!」
ケターシャが目を輝かせ唸った。
「あ?クラーケンの死体が売れんのか?」
「はい、当ギルドでは買取を行っておりませんが、解体業者の紹介と手配は可能です。内臓や目玉などが綺麗な状態であれば、高値で売れます」
「おおっまじか!ってあれ?どうしたよケターシャ?」
今度は冷や汗を流しながら唸っている。どうしたんだよ、と小突いても目が泳ぐだけだ。
「ウェイブス、私達はクラーケンを殺す時どうやったか思い出せ」
「は?」
どうやったって……ケターシャが床吹き飛ばして、クラーケンの姿が見えたところを俺とアインで―――あっ
「わかったか?ついでにどうやってこ・れ・を見つけたかも思い出せ」
シェリーに返されたブレスレットを、ひらひらとさせる。
そこまで言われて初めて、ケターシャが冷や汗をかいていた理由を理解した。
俺自身、血の気が引いていくのを感じた。
「目玉は潰しちまったし、内臓も多分ぐちゃぐちゃってことじゃねーか!?」
「そのとうりだ」
目玉が潰れて内臓もぐちゃぐちゃ、と聞いて、シェリーは筆を止めた。
解体業者とやらを手配するための書類だろうか。羽ペンを置いて、ため息混じりに話し始めた。
「そのような状態ですと……買取価格を解体料、手配料が上回るかと。でしたらどうしましょうか―――あ、ギルドマスターがお帰りになられました」
俺は反射的に入り口の方を見やったが、ギルドマスターことセリヒの姿はない。
どこにいるのかとキョロキョロ見渡していると、ケターシャが吹き出して、口角をつりあげる。
「さっき教えただろ?セリヒは私と同じ竜人だ。竜が、ギルドマスターをするような地位の高い者が、のこのこ歩いて移動するわけないだろ」
クックッと笑いながら、天井を指差した。
「ギルドマスターは、空からお帰りだ」
「へーー」
空から帰ってきたのに、シェリーはなぜ分かったんだ?とか考えていると、思っていた反応と違ったのか、ケターシャは面白くなさそうにする。
この面倒な女をよそに、シェリーはなにやらブツブツと独り言を言っていた。
相手がいるわけでもないのに、返事をしたり相槌を打っているのが不思議で見つめていると、俺の視線に気づいて、咳払いしながら俺とケターシャを見やった。
「―――はい――――了解です。え?あ、はい、ではそのように。………んっん、失礼しました。えっと、お2人を、ギルドマスターがお呼びです」
「「は?」」
「いやー、災難だったね!まさか出航する前にクラーケンに出くわすとは笑。勇者といい、クラーケンといい、珍しい者を寄せ付ける才能があるんだね!」
前回案内された時のようにセリヒの執務室へ向かうと、やけに上機嫌なセリヒがすぐさま絡んできた。
そこに突っ込むと、セリヒは食い気味に語り始める。
「ふふっ。今日は古い友人に会いに行っててね!最近執務ばっかりで息が詰まってたから、いい息抜きになったよ。あいつ、いい歳のくせに手合わせしようなんて言い出してさ」
「セリヒさん、話を止めて悪いんですが。私達に何か用があったのでは?」
目をパチクリとさせて、そうだったそうだったと微笑するセリヒ。
いやあ、こんな姿を見てたらついギルドマスターだなんてこと忘れちまうな。普通にしてれば、年頃の小娘となんら変わんねえ。
こういう幼い面も見せつつ、時折鋭い雰囲気を醸し出すのが不思議だ。
「船も無ければ金もない。クラーケンを売ろうにも、状態が悪い。ならそのクラーケンを生贄に、精霊でも契約したらどうだい?」
精霊?また知らない要素が出てきたぞ?
精霊っていったらあれか、エルフだとか、サラマンダーのことか。
伝説や、船乗り達の語り草になっている、有名な精霊達を脳裏に浮かべた。
「船の守護霊になってもらって、修復も頼めばいいさ。ああ、ウェイブス君は知らないのか。えーっと精霊ってのは……見せた方がはやいね」
セリヒが指を鳴らすと、俺らの足元が淡く紫色に光りだし、そこに一輪の花が咲いた。
その花はみるみるうちに蔓と葉を茂らせ、怪しく蠢きながら何かを形作っていく。
脚ができ、胴ができ、尾ができ、最後に頭まで形成したところで、蔓は動きを止めた。
「狼か?」
俺の声に反応するように、植物の身体をした狼は閉じていた眼を開いた。
ちょこんと座って、くあーっと欠伸をし、主人、セリヒの指示を待つようにジッと見つめた。
「この子はトップ、この建物の防衛システムを担っている精霊だよ」
そういって狼に近づき、優しい表情で頭を撫で始める。
「ふえー、すっげえな。なんつーか、神秘的で。……俺も撫でていいか?」
狼の頭に手を伸ばすと、一本の蔓にペチンと叩かれ、シュン……とした。
セリヒが手を動かすごとに、キュッキュッと鳴り、触らずとも狼の毛並みの悪さが分かった。
ふと、何故か驚いた様子のケターシャに気づく。こいつも精霊見るの初めてだったのか?それとも撫でてみたいのか?とか思っていると、セリヒもケターシャの様子に気づいた。
「おや、不思議かい?ケターシャ」
「はい、精霊と仲の良い竜人なんて初めてみました」
「ふふふ。まあそこは、私だからね」
ケターシャは、ドヤ!と胸を張るセリヒにおおーと拍手しながら、どういうことかわかっていない俺に説明してくれる。
「竜、竜人は精霊に嫌われるのが普通なんだ。精霊の力を借りる「魔法」が使えないのもそれが関係してるんだが……見ての通りギルドマスターは例外みたいだ」
再度キュッキュッ言わせてるのを見て、尊敬の眼差しを向ける。
ケターシャが前に、『私は魔法が使えない』と言っていたことを思い出した。
「精霊ってのはこういう感じだよ。肝心の契約の仕方だけど、勇者に任せるといいよ。あれは精霊との相性が非常にいいからね」
「勇者に?」
薬中ゆうしゃが精霊と相性がいいだあ?
精霊を発見しだい、ヒャッハアア!!と飛び掛かり、八つ裂きにする薬中の姿が目に浮かんだ。
同じ情景が浮かんだんだろう。ケターシャに『行けると思うか?』と視線を送ると、首をブンブンと横に振った。
「え?なになにどうしたの?なにか都合が悪い?」
狼を撫でる手を止めるセリヒに、俺は今の勇者の状態と、懸念される問題点についてセリヒに説明した。
俺が話し終えるまで、セリヒは黙って時折頷きながら聞いた。
話し終えると、セリヒはグリンッと勢いよくケターシャを捉えた。
「ケターシャ~?どうして隠してた~?」
「いやっ、そのっ、隠してた訳じゃ……」
眼を泳がせまくって、アワアワと焦る姿に、セリヒはため息を吐いた。
どうやら、俺達が勇者と戦い「勝利した」ところまでしか話していなかったらしい。
薬漬け、薬漬けねえ……と頭を抱えるセリヒ。
「取り敢えず、正教会の連中にばれちゃいけないよ。女神の寵愛を受けた勇者を薬漬けにしたと知れたら……余裕で殺されるよ?」
「その時私は現場にいなかったわけですので、バレた場合はコイツを置いて逃げます」
「おい」
もっともなことだが、堂々と見捨てる宣言をしたケターシャの頭をペシりと叩く。
「ふう、その話はまた後でするとして……勇者が使えないとなると、精霊使いが必要だね。わかった、私の友人を紹介しよう。ちょうどこの都に来ているらしいんだ」
「お、そりゃラッキーだな。そいつはどこに居るんだ?」
「それが分からなくてね……遺跡の調査をしにエルレイまで来てるってのは聞いてるんだけど」
「じゃあその遺跡に行ってみればいーじゃねーか」
セリヒは少し考える素振りを見せ、一拍置いて頷いた。
「……うーん、まあいいか。そうだね!行ってみるといいさ!」
セリヒはサラサラっと手紙を書いて、「ほれ、紹介状」と手渡し、じゃあ行ってらっしゃいと言う。
は?それだけか?と疑問に思い、遺跡の場所とか教えてくれないのかと尋ねる。
「ケターシャが知ってると思うよ!有名な遺跡だから!」
とだけ言われて、執務室から追い出されてしまった。
「なんだ、セリヒのやつ?…ところで、遺跡ってどんなとこなんだ?まさか場所を知らないとか言うなよな」
「まあそう急かすな。ここいらで遺跡といったらあそこしかない」
俺の問いにすぐには答えず、クラーケンの胃の中から出てきたブレスレットを取り出した。
「これがエルレイの特産品だと教えたな?これは今から向かう遺跡から入手されるものだ。多くの冒険者がお宝目当てに探検し、発見された遺物によってこの街は栄えている。ただ……」
「ただ?」
「ものすごく危険な場所だ。人喰いの魔物が常に徘徊し、侵入者を拒む罠がそこら中に設置されてある」
「おおう……」
セリヒが一瞬悩んでた理由はこれか!
聞く限り命が危うそうな場所に行かせようとしといて、なにが「まあいいか!」だ!俺が文句言う前に部屋から追い出しやがってっ。
俺が行き場のない怒りを露わにしていると、ケターシャがまあまあ、と俺を宥める。
「それはそれとして、どうする?別に遺跡に向かわなくとも、セリヒさんの言う友人には出会えるとは思うが」
「ああんっ!?行くに決まってんだろ!精霊使いとやらを見つけるついでに、遺物漁って稼いでやる!!」
「ふっ、お前ならそう言うと思ったよ。金に関しては、今こうしてる間にも必要額が増えていってるわけだしな」
ケターシャの指差す方を見ると、金が入るからと浮かれて(報酬の金はまだもらっていない)酒場で宴会モードの野朗共がいた。
額に太い青筋が浮かぶのを感じながら、良いことを思いついて、思わず笑みがこぼれた。
酒場に払う金の問題はさておき、今は呑気に酒飲んでる野朗共だ。
「お前らーー?金銀財宝ザックザクの、遺跡があるってよ♪」
俺は心の中でほくそ笑みながら、呆れるケターシャを背に野朗共の所に駆け寄っていった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる