海賊歴30年、初めて銃を弾かれた〜異世界に召喚された海賊だけど、勇者に銃が効かないのは聞いてません〜

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第十一話 そもそもなぁ

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 カチッ―――ビュンッ―――ガキンッ

「「「……」」」

 何処からか飛んできた矢が、ゲイルの目の前で壁に突き刺さる。

 ゲイルは、ギ、ギギッ、とゆっくり振り返り、頬に出来た傷に手を当てながら震えた。

「……金銀財宝ザックザクの宝の山、安心安全とかぬかしてたよなぁ?なんだよ、これ?」

 壁に刺さった矢と俺を交互に見る野朗共。

 無言の圧力が、可愛い部下たちからこれでもかと向けられる。

 耐えきれなくなった俺は、握り拳を自身の頭にコツンとぶつけ、

「てへ☆」

「「「殺すッ」」」

 一斉に腰の剣へ手を伸ばした野朗共を背に、俺は神速で駆け出す。

「だいたいテメェらが悪いんだぞ!?俺の心労を気にも留めず、酒盛りをエンジョイしやがってっ!!」

「「「あ"?」」」

 俺の言い分を聞こうともしない部下たちに涙しつつ、次々と飛んでくる剣やら石やらを避けるのに集中する。

「ケターシャぁ、お前からもなにか言ってくれよ!!」

 遠くで巻き込まれないようにしていたケターシャの姿が目に入り、助けを求めた。

「はあ、それぐらいにしておけ。この遺跡について説明してやる」

 渋々諦めた野朗共が、ぶつぶつ文句たれながら武器を下ろす。

「いつか殺す」

「寝顔に落書きしてやる」

 俺は木の影からキョロキョロと安全確認をし、全員が武器を下ろしたのを確認して「悪かった悪かった」と皆の輪の中に戻った。

「それで?なんでこんな危険な遺跡に僕たちは来たんだい?」

 何気に俺を追いかけていなかったユートが、危険、を強調して俺を睨みながら尋ねる。

「ああ、それはだな――」

 遺跡に来た理由の説明を終えた所で、アインが不思議そうに話し出した。

「……その精霊使いさん?を待つなら、この遺跡に入る必要は、ないんじゃ?」

「それはそうなんだが……俺らがまだ一文無しだってのが、どうしても気になってな」

 アインと俺の話どっちにも、確かにとうんうん頷く野朗共。

 実際、俺らの金事情はどんどん笑い事じゃなくなってきている。

 薬中と死闘を繰り広げてから今日で……十五日ってとこか。

 薬中と出会う直前に宴をしていたのもあって、食料は早々に尽きてしまった。

 俺ら総勢二十人分の食糧費、酒代、ケターシャにつけてもらっている分がそろそろやべえ。

 俺としてはちょっとした危険くらい乗り越えて、一発当てたいところなんだが……

 なんとなしに、実際に危険な目に遭ったゲイルに視線が集まる。

「お、俺は絶対に嫌だからなっ」

『この根性なしがッ』

『このロリコンめっ』

 遺跡入って稼ごうぜ派閥からの、舌打ちと心無い陰口を聞き流し、明後日の方を見つめるゲイル。

「なあケターシャ、俺らはどれくらい金を借りてる?」

「あー、そうだなあ。言うほど貸して無いとは思うがっ!?」

 懐から取り出した手帳を見て、顔をしかめるケターシャ。

 思ったより金額が大きかったらしい。

 震える手で渡された手帳を、恐る恐る開く。

「おおうっ………って、これ俺らにも分かりやすくするとどれくらいだ?」

 この町で使われている通貨は、俺らの全く知らんやつだ。

「お前らにも分かりやすく言うと……」

 ケターシャは腕を組んで考え込み、ゆらゆら揺れて、「あ!」っと閃く。

「クラーケン五体分くらい?」

「「「そんなに!?」」」

 クラーケンってあのクラーケンだろ!?やばい、やばすぎるぜ。一刻も早く、お宝見つけるなり、仕事して稼ぐなりしねーと!

「俺は一人でも遺跡に行くぞ!!お宝見つけた時は分けてやんねーからな!!」

「……私も行く」

「ッ!?どうしてだいアイン!?さっきは遺跡に入る必要ないって……」

 ユートの言う通り、最初は遺跡入るの反対派閥だったくせに、俺につられて立ち上がるアイン。

「……最近、お金がなくて節約しないといけなかったから、遠慮して満足いくまで食べれてない……」

『『『あんだけ食っといて!?』』』

 普段から暴食するアインを見ているだけに、皆の心の声が一致した。

 アインの彼氏はと言うと、奴でさえ目をかっ開いて驚いている。

「ケターシャの話を聞いて考えが変わった、これ以上我慢できそうにないの。……目の前にお宝(飯)があるのなら、私はどんな危険もいとわない」

 こ、こいつ飯のためにそこまでっ

 覚悟を決めた目の食い意地ちゃんに、俺らは涙した。

「アイン、君がそこまで言うのなら、もちろん僕も行くよ!」

「ああ!」

「俺だって!」

 アインの覚悟に応えて、次々と立ち上がる野朗共。

 一人乗り遅れたハゲが、「お、おい?嘘だろみんな?」と、味方を探してキョロキョロする。もちろんいない。

 お前はどうするんだ?と野朗共皆の視線が集まり、ゲイルは少し堪えたが、すぐに耐えきれなくなった。

「い、行けばいいんだろ、行けば!!」

 俺らとは別の涙を流し、立ち上がるゲイル。そんなゲイルを横目に、俺はケターシャに遺跡について詳しく教えてもらうことにした。

「お前らは本当に仲がいいな。遺跡についてだが……危険な状態になったのは実は最近のことなんだ」

「は?どういうことだ?」

「罠自体は元から遺跡にあったんだが、罠が補充されたり、魔物が徘徊するようになったのは、最近のことなんだ」

「なにか問題があるのか?」

 少し勿体ぶって話すケターシャに違和感を感じたが、だから何?と何を伝えたいのかわからなかった。

 そこに何か気付いた様子のユートが、もしかして……と口を挟む。

「もしかして、遺跡について全然知らない、そもそも遺跡の情報が無いってことかい?」

「まじかよ!?」

 驚いた俺たちがバッ!とケターシャの方を見やると、ケターシャは申し訳なさそうに頷いた。

「何か危ないものが住み着いたってのは分かるんだが……罠の種類だとか、魔物の特徴なんかは全くもって知らん」

「金銀財宝があるかどうかも分かんねーのか……?」

 恐る恐る尋ねると、いやそんなことはないぞとケターシャ。

「実際に探検した冒険者が、宝石を持ち帰って豪遊してるってウワサを聞いたことがある」

「なら問題ねえ!!」

 大体、簡単にお宝をゲットしても味気ないってもんだ。

 未知の危険な冒険だなんて、俺らの子供心をくすぐりまくるじゃねーか!

 同じ事を思ったのか、野朗共の顔つきを見ると目がキラキラしてやがる。

「なあ、キャプテン。この遺跡罠以外にも化物が出るんだろ?ドラッキー連れて来て戦わせたらいいんじゃねーか?」

 ドラッキー?なんだそれ。

 キョトンする俺に、言ってなかったっけとゲイルが説明してくれる。

「ほら、あの薬中の名前だよ。いつまでも薬中って呼びにくいしな、みんなで考えたんだよ」

「あのな、あの勇者にはきちんとケント・スズキって名前が……」

 後ろでぶつぶつ言ってるケターシャはさておき、いい案だと久しぶりにハゲに対して感心した。

「お、確かに連れて来たらいいかもな。ちょっと船に戻って連れて来てくれよ?俺は精霊使いが来るかもしれねーからここを離れられないし」

「あ?めんどくせーけど、確かにそうか」

 本当は連れて来るのがだるかっただけだが、適当にそれっぽく理由をつけて任せる。

 それもそうだなと、ゲイルを筆頭に数人が船へと戻って行った。

「さて、勇者が来るまでどうする?遺跡には入らないだろ?」

「あー、そうだなあ」

 頭をぽりぽり掻きながら、太陽の位置を確認する。

「まだ時間はあるが、ゲイルたちが戻って来る頃には日が沈むだろ。かといってここを離れて船に戻るなりするのもめんどくせーし、今日はここで野宿だ。その準備でもしてよーぜ」

「「「アイアイサー」」」

 野宿の準備、と聞いて野朗共がテキパキと動き出す。

 今の時期(正確にはわからないが)、寒さ対策が必要ないから、準備することなんてほとんどない。

 俺らが宿を取れずに野宿ってのは慣れてるのもあって、ゲイルたちの戻る頃、日が沈む頃にはすっかり準備が整った。

「探してる奴は来たのか?」

 薬中ことドラッキーを繋ぐ、鎖を引いたゲイルが近寄って来る。

「いや、まだ来てねえ。そいつ、ドラッキーだっけか?見張りもかねて、番犬変わりにどっか繋いどけ」

「分かった。おら、行くぞ」

「ギッ…」
 
 鎖を引っ張られて大人しくついていくドラッキー。最近は夜に騒ぎ立てることも少なくなって、大分大人しくなった。

 そういえば、あいつも精霊との相性がいいってセリヒが言ってたな。

 今の大人しさを見れば、ワンチャン精霊との契約とやらもできそうではあるが……

 昼の騒ぎ具合を思い出し、やっぱ無理だと悟りため息を吐く。

「ため息を吐きたいの私だ、ウェイブス」

 背後からの声に振り返ると、疲れた目をしたケターシャが突っ立っていた。

「いくら宿が取れないからって、遺跡のすぐそばで野宿するか普通?それに勇者だって薬漬けにしていなければ、契約してそこで終わりだったのに」

「それを言い出したら、お前がセリヒみたいに精霊と相性がよければすぐ済んだぞ」

「あのなあ……!」

 あの人は特別なんだとキレるケターシャを宥める。

「悪かったって、あ、ほらもう一回竜の姿見してくれよ!カッコよかったしもう一回観たいしさ」

 今俺とケターシャは、野朗共とは離れた場所で話している。

 焚き火を囲って騒ぐ野郎共の声が、遠くから聞こえる。

 野郎共の方をチラッと見て、見せるだけなら……と上着を脱ぎ出す。

「火を吐いたりはしないからな?そもそもあまり人に見せる物ではないんだ」

「わかったから」

 そう言って一歩下がり待機する俺に、ケターシャはやれやれと目を閉じて、祈るような形で手を組んだ。

 以前のように、淡い光がケターシャを包み、その肌が赤く染まって鱗も生えて来る。

「おおー」

 さすがに前ほどテンションが上がることはなかったが、やはりこの竜の姿には目を見張るものがある。

 月明かりに照らされたケターシャの姿はどこか神秘的で、気圧される様な雰囲気に、鳥肌がたった。

 俺がケターシャの姿に見惚れていると、唐突にケターシャが、暗闇に向かって警戒した態勢をとった。

「気をつけろ、なにか……来る!!」

 ケターシャのただならぬ雰囲気に、俺も剣を抜き構える。

――ザッ、ザッ

 確かに、誰かが歩み寄って来る音が聞こえる。

 ゆっくり近づいて来る音を聞いて、俺は違和感に気づく。

 敵からは必ず聞こえるはずの、カチャカチャという金属音が聞こえない。

 武器を携帯していない?ただの一般人じゃ………

 今までの経験から、敵ではないんじゃないかと、少し警戒を解く。

 だがケターシャを見るとまだ警戒したままだ。

 得体の知れない奴がさらに近づいて来て、俺もケターシャの警戒する理由がわかった。

『血の匂いがする……!!』

 あともう少しで姿が見えると言うところで、何かは歩みを止めた。

 俺もケターシャも臨戦態勢だ。

「……レティオン、レティオン様ですよね?」

 消え細る様な、希望の込もった声が聞こえて来た
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