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#Another side S⁶《シックス》
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S⁶本部、社長室。
室内にはボスの他にもう一人、女性の姿があった。
「いやあ、先日はご苦労さん」
「全くです。どうして私が……。MGCの時も、結局社内に保管されていた天の結晶が奪われない様に動いたのはわたしなんですよ?」
「まあまあ。戦線の制圧をしてくれたのは来海ちゃんたちだし、そこは勘弁してくれよ」
「……ま、もう終わった事なので構いませんけれど。でも、偶々わたしが職場見学の引率で居て良かったですね」
「そうだねえ。たまたま、ねえ……」
と、ボスは報告資料に目を通した後、また口を開く。
「――さて、来海ちゃんから上がった報告によると、第二非検体ベータによるプラスエス職員宅放火と、ローゲ――火室桐裕が家族を失った超能力事件、あの火災と時期が一致している。
そして、これは僕ら側では既知の情報だったが、火室桐祐の父、火室祐雅はプラスエスの元職員だ。
この事実を繋げていくと、ある1つの推論が導き出せる。
“火室一家が焼死した原因は、長男桐祐の第六感症候群発症によるものではなく、ベータの凶行よる物なのではないか”――というのが、来海ちゃんの推理という訳だ。
――で、だ。この件について、君はどう思う? “ヴァイオレット”」
ボスは目の前の女性――ヴァイオレットへと、そう問いかける。
「わたしに聞くんですか? もうわたしは組織を離れた身ですから、関係ないと思いますけれど」
「関係ない事はないでしょお。今日君にわざわざ出向いてもらったのだって、コードネーム:アルファ関連でお願いしたい事があったからだしねえ」
アルファのS⁶入りを聞いたヴァイオレットは、小さく溜息を溢す。
「あんな小さな子も使うんですね」
「うちは人手不足だからねえ。それに、あの拡張された強大な力は放置できないから、監視と言う意味もある」
「……火室君を引き入れたのも、監視対象として、ですか?」
「そうだねえ……」
ボスは一瞬の沈黙の後、再び口を開く。
「まず理由の一点として、彼はアルファと同じ様に、日常生活で障害になり得るスキルを有していたからだ。
発火能力――それは人を害し得るスキルだが、制圧、捕縛、時には殺害を必要とするうちでは輝ける才能だ。
今はまだその時ではないが、後に彼には戦闘班を率いてもらうつもりだよ。
もう一点は、元プラスエス職員の息子だったからだ。
プラスエスの残党がまだ息をしているっていうのは分かっていたが、なかなか尻尾を掴めなかった。だから、彼なら何かしら成てくれるんじゃないかと期待していたんだ。
実際、解放戦線を隠れ蓑としていたプラスエス残党たちナンバーツーらを処分出来たし、ウイルス薬“プラスエス”も世に出る前に回収出来た。
どうだい? 僕の慧眼もなかなかの物だろう?」
ヴァイオレットもボスの手腕を疑ってはいなかった。
エージェント時代にもよくあった事で、もう慣れていた。今更ボスの勘が的中した事に対して、わざわざ賛辞を贈る事も無い。
代わりとして溜息を返す。
「――で、君の意見も聞きたい訳だけど。どう?」
ヴァイオレットは渋々と言った様子だが、まず確認を取る。
「火室祐雅がベータ、ガンマらの担当職員であり、彼らの復讐の対象になり得たとうのは、間違いないんですね?」
「ああ。そこは裏が取れている。火室祐雅の名は第一、第二、第三非検体の担当の職員として名簿に名を連ねていたよ」
「そうですか」
ならば、とヴァイオレットは答える。
「……そうですね。一見正解ですが、惜しいです。もう一声と言ったところでしょうか」
「ほう。と、言うと?」
「一見筋の通った推理に思えますが、不可思議な点があります。火室家の火災の原因がベータなのだとしたら、火室君だけが見逃されたというのはおかしな話です。彼はどうして生き延びることが出来たのでしょうか」
「それはあれじゃないの、彼が自分のスキルで撃退した――いや、それは無理か」
ボスは言いかけた言葉を、すぐに自ら否定する。
「はい。プラスエスによって拡張されたベータのスキルの方が出力は上です。同じスキル同士で勝ち目なんて有りません」
「なるほどねえ。ベータが火室家を襲い、火室桐祐が撃退。そういう筋書きだとするなら、火室桐祐には同等かそれ以上のスキルが必要であり、それは同じ発火能力ではあり得ない。つまり――」
結論が出たとして、ボスは机をトンと叩く。
「――火室桐祐の本当のスキルは発火能力ではない」
ヴァイオレットも頷く。
「はい、おそらくは。ただ、学院の生徒名簿にも発火能力として記されていますし、何より火室君本人の自覚としてもそうでしょう。嘘を吐いている訳では無いと思います」
「本人ですら勘違い――いや、思い込んでしまっている……。彼の真のスキルが何なのか――それは、きっと件の火室君一家焼死事件がカギとなるんだろうねえ」
「ええ。それを転機として、彼は第六感症候群を発症していますから。であれば、その事件に関わっているであろう元非検体の子たちが何か知っているかもしれません」
「元非検体、ベータとガンマ、か――」
ボスは少し考えた後、再び口を開く。
「――じゃあ、次の任務はこれだ」
――エージェント:ローゲ、並びにエージェント:ウォールナットに通達。
行方不明の第二非検体ベータ、そして第三非検体ガンマの捜索。
生存が確認出来た場合、直ちに保護せよ。
室内にはボスの他にもう一人、女性の姿があった。
「いやあ、先日はご苦労さん」
「全くです。どうして私が……。MGCの時も、結局社内に保管されていた天の結晶が奪われない様に動いたのはわたしなんですよ?」
「まあまあ。戦線の制圧をしてくれたのは来海ちゃんたちだし、そこは勘弁してくれよ」
「……ま、もう終わった事なので構いませんけれど。でも、偶々わたしが職場見学の引率で居て良かったですね」
「そうだねえ。たまたま、ねえ……」
と、ボスは報告資料に目を通した後、また口を開く。
「――さて、来海ちゃんから上がった報告によると、第二非検体ベータによるプラスエス職員宅放火と、ローゲ――火室桐裕が家族を失った超能力事件、あの火災と時期が一致している。
そして、これは僕ら側では既知の情報だったが、火室桐祐の父、火室祐雅はプラスエスの元職員だ。
この事実を繋げていくと、ある1つの推論が導き出せる。
“火室一家が焼死した原因は、長男桐祐の第六感症候群発症によるものではなく、ベータの凶行よる物なのではないか”――というのが、来海ちゃんの推理という訳だ。
――で、だ。この件について、君はどう思う? “ヴァイオレット”」
ボスは目の前の女性――ヴァイオレットへと、そう問いかける。
「わたしに聞くんですか? もうわたしは組織を離れた身ですから、関係ないと思いますけれど」
「関係ない事はないでしょお。今日君にわざわざ出向いてもらったのだって、コードネーム:アルファ関連でお願いしたい事があったからだしねえ」
アルファのS⁶入りを聞いたヴァイオレットは、小さく溜息を溢す。
「あんな小さな子も使うんですね」
「うちは人手不足だからねえ。それに、あの拡張された強大な力は放置できないから、監視と言う意味もある」
「……火室君を引き入れたのも、監視対象として、ですか?」
「そうだねえ……」
ボスは一瞬の沈黙の後、再び口を開く。
「まず理由の一点として、彼はアルファと同じ様に、日常生活で障害になり得るスキルを有していたからだ。
発火能力――それは人を害し得るスキルだが、制圧、捕縛、時には殺害を必要とするうちでは輝ける才能だ。
今はまだその時ではないが、後に彼には戦闘班を率いてもらうつもりだよ。
もう一点は、元プラスエス職員の息子だったからだ。
プラスエスの残党がまだ息をしているっていうのは分かっていたが、なかなか尻尾を掴めなかった。だから、彼なら何かしら成てくれるんじゃないかと期待していたんだ。
実際、解放戦線を隠れ蓑としていたプラスエス残党たちナンバーツーらを処分出来たし、ウイルス薬“プラスエス”も世に出る前に回収出来た。
どうだい? 僕の慧眼もなかなかの物だろう?」
ヴァイオレットもボスの手腕を疑ってはいなかった。
エージェント時代にもよくあった事で、もう慣れていた。今更ボスの勘が的中した事に対して、わざわざ賛辞を贈る事も無い。
代わりとして溜息を返す。
「――で、君の意見も聞きたい訳だけど。どう?」
ヴァイオレットは渋々と言った様子だが、まず確認を取る。
「火室祐雅がベータ、ガンマらの担当職員であり、彼らの復讐の対象になり得たとうのは、間違いないんですね?」
「ああ。そこは裏が取れている。火室祐雅の名は第一、第二、第三非検体の担当の職員として名簿に名を連ねていたよ」
「そうですか」
ならば、とヴァイオレットは答える。
「……そうですね。一見正解ですが、惜しいです。もう一声と言ったところでしょうか」
「ほう。と、言うと?」
「一見筋の通った推理に思えますが、不可思議な点があります。火室家の火災の原因がベータなのだとしたら、火室君だけが見逃されたというのはおかしな話です。彼はどうして生き延びることが出来たのでしょうか」
「それはあれじゃないの、彼が自分のスキルで撃退した――いや、それは無理か」
ボスは言いかけた言葉を、すぐに自ら否定する。
「はい。プラスエスによって拡張されたベータのスキルの方が出力は上です。同じスキル同士で勝ち目なんて有りません」
「なるほどねえ。ベータが火室家を襲い、火室桐祐が撃退。そういう筋書きだとするなら、火室桐祐には同等かそれ以上のスキルが必要であり、それは同じ発火能力ではあり得ない。つまり――」
結論が出たとして、ボスは机をトンと叩く。
「――火室桐祐の本当のスキルは発火能力ではない」
ヴァイオレットも頷く。
「はい、おそらくは。ただ、学院の生徒名簿にも発火能力として記されていますし、何より火室君本人の自覚としてもそうでしょう。嘘を吐いている訳では無いと思います」
「本人ですら勘違い――いや、思い込んでしまっている……。彼の真のスキルが何なのか――それは、きっと件の火室君一家焼死事件がカギとなるんだろうねえ」
「ええ。それを転機として、彼は第六感症候群を発症していますから。であれば、その事件に関わっているであろう元非検体の子たちが何か知っているかもしれません」
「元非検体、ベータとガンマ、か――」
ボスは少し考えた後、再び口を開く。
「――じゃあ、次の任務はこれだ」
――エージェント:ローゲ、並びにエージェント:ウォールナットに通達。
行方不明の第二非検体ベータ、そして第三非検体ガンマの捜索。
生存が確認出来た場合、直ちに保護せよ。
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