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#Another side 林森森
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「――全く、あんな話を聞いて、大人しくしてられないでござるよ」
林森森は真白先生と来海と別れた後、真っ直ぐ裏山へと向かった。
「火室殿と来海殿、ついでに真白先生まで秘密組織のエージェント? しかも、変な宗教団体に火室殿が拉致られた? ふざけるな! でござる!」
裏山の秘密基地。
幽霊騒動の一件以降足を運ぶ事も無くなっていたが、久方ぶりに訪れた。
ブルーシートは雨水が溜まりずり落ちて来ていて、手を入れないと前と同じ様に秘密基地として使う事は出来ないだろう。
しかし、今回林の目的は秘密基地ではない。
「先生も言っていたでござる。切れる手札は切るべきだと。拙者も、友人たちの為に一肌脱ぐでござるよ!」
足を肩幅に開き、腰を落とす。
両手はピースで目元に構え、
「はああああぁぁぁぁ~~~!!」
全力で叫んだ。
林の視界は一気に遠方へと飛んで行き、直線状に不可視の視線のビームが走る。
そのスキル、遠隔透視はあらゆる物体を貫通して、直線上の先を見ることが出来る。
その出力は天然ものでありながらもチート級、離島である特区の更に先、本島にまで及ぶ。
しかし――、
「ぐっ、ぐぬぅ……やはり、コントロールが難しいでござる」
天の光信仰教会の本部とされる教会は場所が分かっている。
しかし、そのどこに火室桐祐が連れ去られたのかが分からないのだ。
だから、林は自分のスキルを使ってその場所を探ろうとした。
位置と方角は分かっている。細かいコントロールが出来れば、教会内部を丸裸に出来るはずなのだ。
だけど、上手く見えない。
空か、コンクリートの壁か、関係ない家か、見えるのは直線上にある訳の分からない物ばかり。
「精神統一、精神統一でござる……」
エージェントや友人の危険や、様々な思考が渦巻いて、一種の興奮状態にあった林は元より苦手なスキルを上手くコントロール出来なかった。
すると、背後の茂がガサリと揺れる。
「ぬっ!? 何奴!? ――って、ぐえっ!」
振り返ろうとして、すっ転んだ。
スキルを使ったまま、近くが全く見えない平衡感覚もおかしな状態でいきなり動けば当然だ。
林の視界は地面の中へ。
びっくりしすぎてすぐにスキルをオフにも出来ない。
そのままばたばたとしていると、声を掛けられた。
「もりちゃん、まだスキルのコントロール苦手なんだね。それに、ここの秘密基地もまだ残ってたんだ。懐かしいぜ」
若い男の声だった。
「ぬ、お主は……?」
「別に、ただの通りすがりの一般生徒さ。それよりも、良い事してあげようか」
「ぬ、イイコトでござるか……? そういうのは可愛い女子に――」
「違う違う。言葉のニュアンスが全然違うって。親友たちの為に一肌脱ごうって話さ」
「ひ、一肌!?」
「……まあ、いいや。じっとしてな」
すると、声の主は林の首筋に手を触れる。
「ひやっ!?」
「変な声出すな。じっとしてろって言ったでしょ?」
それから数秒間手を触れた後、すっと離れて行った。
すると、
「ぬ、視界が戻ったでござる!」
林はがばっと顔を上げる。しかし、そこには誰の姿も無かった。
代わりに、森の奥のどこからともなく、声がした。
「じゃあね、もりちゃん。それで女の子の着替えとか、覗いちゃ駄目だぜ?」
そして、林はすぐに自分に起こった変化に気付いた。
「この感覚は……頭が冴えるでござる! あんなに暴れ馬だったスキルが、まるで手足の様に! 名も無き一般生徒、感謝するでござるよ!」
一息に立ち上がって、再びあのポーズ。
足を肩幅に開いて、両手はピースで目元に構える。
「はああああぁぁぁぁ~~~!!」
林森森は真白先生と来海と別れた後、真っ直ぐ裏山へと向かった。
「火室殿と来海殿、ついでに真白先生まで秘密組織のエージェント? しかも、変な宗教団体に火室殿が拉致られた? ふざけるな! でござる!」
裏山の秘密基地。
幽霊騒動の一件以降足を運ぶ事も無くなっていたが、久方ぶりに訪れた。
ブルーシートは雨水が溜まりずり落ちて来ていて、手を入れないと前と同じ様に秘密基地として使う事は出来ないだろう。
しかし、今回林の目的は秘密基地ではない。
「先生も言っていたでござる。切れる手札は切るべきだと。拙者も、友人たちの為に一肌脱ぐでござるよ!」
足を肩幅に開き、腰を落とす。
両手はピースで目元に構え、
「はああああぁぁぁぁ~~~!!」
全力で叫んだ。
林の視界は一気に遠方へと飛んで行き、直線状に不可視の視線のビームが走る。
そのスキル、遠隔透視はあらゆる物体を貫通して、直線上の先を見ることが出来る。
その出力は天然ものでありながらもチート級、離島である特区の更に先、本島にまで及ぶ。
しかし――、
「ぐっ、ぐぬぅ……やはり、コントロールが難しいでござる」
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しかし、そのどこに火室桐祐が連れ去られたのかが分からないのだ。
だから、林は自分のスキルを使ってその場所を探ろうとした。
位置と方角は分かっている。細かいコントロールが出来れば、教会内部を丸裸に出来るはずなのだ。
だけど、上手く見えない。
空か、コンクリートの壁か、関係ない家か、見えるのは直線上にある訳の分からない物ばかり。
「精神統一、精神統一でござる……」
エージェントや友人の危険や、様々な思考が渦巻いて、一種の興奮状態にあった林は元より苦手なスキルを上手くコントロール出来なかった。
すると、背後の茂がガサリと揺れる。
「ぬっ!? 何奴!? ――って、ぐえっ!」
振り返ろうとして、すっ転んだ。
スキルを使ったまま、近くが全く見えない平衡感覚もおかしな状態でいきなり動けば当然だ。
林の視界は地面の中へ。
びっくりしすぎてすぐにスキルをオフにも出来ない。
そのままばたばたとしていると、声を掛けられた。
「もりちゃん、まだスキルのコントロール苦手なんだね。それに、ここの秘密基地もまだ残ってたんだ。懐かしいぜ」
若い男の声だった。
「ぬ、お主は……?」
「別に、ただの通りすがりの一般生徒さ。それよりも、良い事してあげようか」
「ぬ、イイコトでござるか……? そういうのは可愛い女子に――」
「違う違う。言葉のニュアンスが全然違うって。親友たちの為に一肌脱ごうって話さ」
「ひ、一肌!?」
「……まあ、いいや。じっとしてな」
すると、声の主は林の首筋に手を触れる。
「ひやっ!?」
「変な声出すな。じっとしてろって言ったでしょ?」
それから数秒間手を触れた後、すっと離れて行った。
すると、
「ぬ、視界が戻ったでござる!」
林はがばっと顔を上げる。しかし、そこには誰の姿も無かった。
代わりに、森の奥のどこからともなく、声がした。
「じゃあね、もりちゃん。それで女の子の着替えとか、覗いちゃ駄目だぜ?」
そして、林はすぐに自分に起こった変化に気付いた。
「この感覚は……頭が冴えるでござる! あんなに暴れ馬だったスキルが、まるで手足の様に! 名も無き一般生徒、感謝するでござるよ!」
一息に立ち上がって、再びあのポーズ。
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「はああああぁぁぁぁ~~~!!」
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