【完結】六専特区の一般生徒《スキルホルダー》 ~20XX年、光の雨によって超能力に目覚めた子供たち~

赤木さなぎ

文字の大きさ
66 / 79

#Another side 林森森

しおりを挟む
「――全く、あんな話を聞いて、大人しくしてられないでござるよ」

 林森森はやし しげるは真白先生と来海と別れた後、真っ直ぐ裏山へと向かった。

「火室殿と来海殿、ついでに真白先生まで秘密組織のエージェント? しかも、変な宗教団体に火室殿が拉致られた? ふざけるな! でござる!」

 裏山の秘密基地。
 幽霊騒動の一件以降足を運ぶ事も無くなっていたが、久方ぶりに訪れた。
 ブルーシートは雨水が溜まりずり落ちて来ていて、手を入れないと前と同じ様に秘密基地として使う事は出来ないだろう。
 しかし、今回林の目的は秘密基地ではない。

「先生も言っていたでござる。切れる手札は切るべきだと。拙者も、友人たちの為に一肌脱ぐでござるよ!」

 足を肩幅に開き、腰を落とす。
 両手はピースで目元に構え、

「はああああぁぁぁぁ~~~!!」

 全力で叫んだ。
 林の視界は一気に遠方へと飛んで行き、直線状に不可視の視線のビームが走る。

 そのスキル、遠隔透視はあらゆる物体を貫通して、直線上の先を見ることが出来る。
 その出力は天然ものでありながらもチート級、離島である特区の更に先、本島にまで及ぶ。
 しかし――、

「ぐっ、ぐぬぅ……やはり、コントロールが難しいでござる」

 天の光信仰教会の本部とされる教会は場所が分かっている。
 しかし、そのどこに火室桐祐かむろ きりゅうが連れ去られたのかが分からないのだ。
 
 だから、林は自分のスキルを使ってその場所を探ろうとした。
 位置と方角は分かっている。細かいコントロールが出来れば、教会内部を丸裸に出来るはずなのだ。
 だけど、上手く見えない。

 空か、コンクリートの壁か、関係ない家か、見えるのは直線上にある訳の分からない物ばかり。

「精神統一、精神統一でござる……」

 エージェントや友人の危険や、様々な思考が渦巻いて、一種の興奮状態にあった林は元より苦手なスキルを上手くコントロール出来なかった。
 
 すると、背後の茂がガサリと揺れる。

「ぬっ!? 何奴!? ――って、ぐえっ!」

 振り返ろうとして、すっ転んだ。
 スキルを使ったまま、近くが全く見えない平衡感覚もおかしな状態でいきなり動けば当然だ。
 林の視界は地面の中へ。

 びっくりしすぎてすぐにスキルをオフにも出来ない。
 そのままばたばたとしていると、声を掛けられた。

「もりちゃん、まだスキルのコントロール苦手なんだね。それに、ここの秘密基地もまだ残ってたんだ。懐かしいぜ」

 若い男の声だった。

「ぬ、お主は……?」
「別に、ただの通りすがりの一般生徒さ。それよりも、良い事してあげようか」
「ぬ、イイコトでござるか……? そういうのは可愛い女子に――」
「違う違う。言葉のニュアンスが全然違うって。親友たちの為に一肌脱ごうって話さ」
「ひ、一肌!?」
「……まあ、いいや。じっとしてな」

 すると、声の主は林の首筋に手を触れる。

「ひやっ!?」
「変な声出すな。じっとしてろって言ったでしょ?」

 それから数秒間手を触れた後、すっと離れて行った。
 すると、

「ぬ、視界が戻ったでござる!」

 林はがばっと顔を上げる。しかし、そこには誰の姿も無かった。
 代わりに、森の奥のどこからともなく、声がした。

「じゃあね、もりちゃん。それで女の子の着替えとか、覗いちゃ駄目だぜ?」

 そして、林はすぐに自分に起こった変化に気付いた。

「この感覚は……頭が冴えるでござる! あんなに暴れ馬だったスキルが、まるで手足の様に! 名も無き一般生徒、感謝するでござるよ!」

 一息に立ち上がって、再びあのポーズ。
 足を肩幅に開いて、両手はピースで目元に構える。

「はああああぁぁぁぁ~~~!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...