異世界に外交官として派遣された件について

ずいこく

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序章 まさかの人事外交官へ

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東京、霞ヶ関。
日本国の中枢機能が集まるここでは、日夜官僚達が熾烈な残業に勤しんでいた。
強制労働省や不夜城、ホテルオオクラの哀しきあだ名を鑑みればその熾烈さにも納得が行く事だろう。

~そしてその不夜城達は、あるスキャンダルで揺れていたのである~
外務省。日本国の外交行政を担う重要省庁の一つである。

臨時国会会期中、そして厳しい国会日程故に野党からの質問通達書を待ちながら夜が更けていく中で、外務省国際機関室室長の木場慧は呼び出しを受けていた。
首相官邸に、しかもバンキシャにバレないようにである。
21時とかなり遅い中月明かりでほのかに煌めく省所有である黒塗りと高級車で首相官邸に入り込んだ。
マイナンバーカードを兼ねる国家公務員身分証を守衛にかざしながら、足早に入り込み、5階の首相執務室の前で一息着く。
腕時計で時間を確認し、意を決してノックをした。
重々しい声での返事を確認し踏み入れると、錚々たるご面々であった。
内閣人事局局長の伊藤、官房長官の吉成、そして総理である坂崎である。
全員お揃いで深く刻まれた眉間の皺は、この面談の重要さを木場に警告していた。
「坂崎総理。外務省国際機関室の木場ですが如何なさいましたか」
と言うとただ指でソファーを指し、座る事を指示したのであった。
「やけに疲れた顔をしているな。民権党から質問通達がまだ来ないのか。」
流石国対族の大物である吉成らしく、鋭く指摘して来た。
「はい。先方にも働き方改革、ゆう活推進の運びで早期に出すことを依頼しているのですがね...」
と神妙に答えると、
内閣人事局局長が半笑いしながら悲しい事を言ってきた。
「あいつらなんぞ俺たち官僚を苦しめるためにしか質問しないじゃあないか」と。
これには場の空気もふっと緩んだが、総理たる坂崎が重く口を開く事で、空気は即座に引き締まった。
「なんにしろご苦労さまな事だ。しかし、君に来てもらった理由はヤツらとクソ国会には関係がない話でね。」
やはりこの国のトップ、権力に群がる魑魅魍魎を抑え総理になる男として何を語ってもオーラは出るものなのだ。
「昨今発生した問題で国防会議でも話し合われているが、異世界からの外交官が来たことは君も承知しているだろう。」
国民にはひた隠しにし、マスコミをも締め上げて水も漏れぬ情報管理にしているが外務官僚たる木場は重々承知の話であった。
しかしながらふと違和感を覚えていた。次官や審議官、局長などではなくやや左遷ポストである国際機関室室長の自分が呼び出された事にである。
こちら怪訝な顔を見てか理由について説明にしてきた。
「先方さんは技術支援も求めていてね。
技術支援と行政改革をして欲しいらしくそんな人材は国交省への出向歴があるキミしかいないだろうからね。」
相変わらず飄々とした態度で人事局長は話す。
だからと言ってホイホイと見知らぬ異世界に行けと言うのか...
「君の気持ちも分かる。しかしこの国家を揺るがす事態に君以外に適任はいない。」
と威厳溢れる態度で総理に詰め寄られたら断り様もないだろう。
「それに君は家族を亡くしたからね。少し気分転換した方がいいんじゃないか?」
流石同窓の先輩たる吉成の耳は早い。 
ここまで言われて断る事は無理だろう。
「一つだけ聞かせてください。この事は発表されない事になる予定と存じますが私の人事異動発表はどのようになるのでしょうか。」
すると待ってましたと言わんばかりにお調子者の人事局長が答える。
「さっすが~頭切れる室長様!君はどこか適当な独法に飛んだ扱いにしておいて、その後退職扱いにしておくよ。ただこちらに戻ってきたら即座に外務省官房長にさせる。それが条件だ。」
悪く、ない。しかし肝心なことを聞いていない。
「任期と随行員、そしてあちらでの生活について少々詳しくお教え下さい。」
「残念ながら派遣はキミだけだ。なんでもあちら側で事務員は用意する意向だそうでね。キミには在ナジミア帝国大使兼ナジミア国王陛下最高顧問ポストでの待遇を受けてもらう。家政婦と秘書付きで住居も与えられるから安心したまえ。任期は3年だ。」
とすらすらと答える人事局長に圧倒されながら考えたが最後の仕事としてもいいのかもな、と自らが到底望めない出世の事を考えながら聞いていた。妻と娘を亡くし自暴自棄になり、仕事に意義を見いだせなくなってきていた自分にはぴったりではないか。自虐的に考えながらおもむろに口を開いていた。
「有難く引受させていただきます。」
そしてほっとした顔をした3人を見ながら、もう少し経つと当分食べられなくなる寿司やすき焼きなどの夕食メニューを思案していた。
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