ネイビー トーン

輪念 希

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その後の収録で、綾斗はあれから一カ月経って、咄嗟の機転で大月の成功を支えた。大月からの信頼を得て、社内でも綾斗の存在感は光った。
高飛車な性格はそのままだが、大月をちゃんと先輩として見るようになり、仕事のパートナーとしての仲はとても充実していた。
だが、綾斗と神城はあれっきり殆ど接点もなく、綾斗が何かと神城を意識するが神城には今まで通りの子供扱いでかわされてしまっている。
原作者の小野江マリナが書く日常は、単語一つ一つで綾斗がじわじわと追い詰められていくのを描いていた。
モヤモヤした気持ちのままの綾斗は、残業を公言して夜遅くまで会社に居残って神城が来るのを待ってみたりもしたが、神城が現れることは無かった。

そんなある日。
『僕と神城さんで、ですか?』
綾斗は部長に呼び出され、神城と同行して京都に最近設けた支社を見学しに行くように命じられた。
『ああ。神城君に一度顔を出して貰いたいっていうのは前々から決まっていた事だ。ついでだし君も行きなさい。ホラここに入社して間もない頃、君は神城君につきたいと私に言ってきただろう?そろそろ大月君以外の仕事を見てもいい頃だしな。といっても今回はただの見学だがね』
三条さんが部長役をするときは、少し嗄れた声を出して赤羽とは完全に別人だった。
『ですが…』
『神城君にも今日中に私から言っておくよ。明日と急だが、新幹線なら行って帰ってこれるだろう。二人分のチケットを先に取っておくといい』
『はい。わかりました』
綾斗は部長室を出てぼんやりと自分のデスクに戻る。
{神城さんとか…気まずいな…}
『おーい岸。部長からきいたか?』
栖本さんの声は本当に目が覚める。
『はい』
『良かったじゃねーの。エースと一緒に社会見学なんて。まあ俺はちょっと寂しいけどな!なーんて!』
『…一緒に来ますか?いいですよ?別に』
『お、なんだ、どうした?いつものドSくれねーのか?』
「元気ないな」を「いつものドS」と言ったのは栖本さんのアドリブだ。
栖本さんは俺の綾斗をしっかりと掴んでくれていた。
『だって…』
『あん?』
そこに神城が外回りから帰って来た。
『はい、今戻ったところですけど。はい、すぐに行きます。っだよ面倒なオヤジだな』
{神城さん。電話の相手って部長かな…}
『きーしくーん!』
『あ、もううるさい。仕事して下さいよ大月さん』
『なんだお前っ!ホント可愛くねーな。それ待ってたんだけどよ』
『うるさいです』
俺はつい栖本さんのアドリブに笑った。

{あ、神城さん。早かったな}
『岸。部長にきいたか?チケット頼めるか?』
『はい。今サイト開いたところです』
『朝イチ行って夕方にはとっとと帰って来るぞ』
『じゃあ、七時の新幹線でいいですか?』
『ああ、頼んだ。俺はこのまま出て直帰するから、明日の朝、駅で』
『はい…』
{神城さん、全く気にしてないんだ?僕と行くの嫌じゃないんだ…}
『そーそー。俺、八つ橋とかいらねえからな』
『美味しいの、いっぱい買って来てあげますね』
『…え!?ホント!?』


『はい。これでいきます。そのまま行ける?』
大西監督は俺に確認したが俺は頷く。
栖本さんはここで今日は出番終了だが、仏頂面で椅子に戻り、まだ帰るつもりはなさそうだ。三条さんも同じく。


『はい、じゃあ神城と綾斗。一応橋下君と二岡君もスタンバってて』
橋下さんは言われる前から俺の横、栖本さんが居たマイク前に来る。


{翌朝、僕は神城さんとの一日にワクワクしていた。父さんが作った二人分の弁当を素直に持って、駅に向かった}

モノローグの通り、俺自身も少し楽しい気持ちでいた。

『岸』
『お早うございます神城さん。あ、これチケットです』
『ああ。ん?なんだソレ』
青柳さんは声をこもらせて朝イチの雰囲気を出す。きっと神城は朝に弱いのだろう。生活習慣を考えれば当然だ。
『弁当です。神城さんどうせ朝食べてないでしょ?』
綾斗は今、神城がどんな気持ちで自分といるのかを知りたいだろう。だから会社で会う時よりも明るく話す。
『デカイな、遠足じゃないぞ?』
『父に言ってもらえます?』
{神城さん笑ってる…良かった}

『豪華過ぎないか?』
『いつもこんな感じです』
『愛されてるな』
『そんなことより、いま速報見てるんですが、台風接近してますね昨日より速くなってます。予定だと明日だったのに』
『台風?そういやそうだったな。どれ』
{うわ、近い…}
『まあ当たっても深夜だろう。夕方には帰りの新幹線の中だ。なんとか帰れる』
『そうですね…』
『ん?お前、なんか』
『はい?』
『いい匂いするな』
『なは!!』
{僕、きっと真っ赤になってる!}
綾斗は今、神城を独り占めしている気分だろうか。
『なに言ってるんですか!早く、これ、ほら!二段目もありますから。お茶はコレ』
気が利く女子社員の如く世話を焼いて、少しでも自分を見て欲しいのかも知れない。
『朝からこんなに食えるか』
『ち、父に言って…』
『お前、一人っ子だろ』
{直視するのやめて!}
『か、過保護って言いたいんですね。そうですよ。母が死んでから父と僕だけです。超絶過保護ですけど?』
『そうか』
『それだけ!?』
『過保護ってのもそうだが、お前も甘え過ぎだぞ。社会人になったんだろ?』
『あ…』
{なんか…今までで一番グサッと来た。だらしないって思ってるのかな…}
『ま、どっか危なっかしくて可愛いのは認めるがな』
{だから子供扱いなんだな、この人}
神城は綾斗の気持ちに気付かない。
あんなキスを経て、それでも神城と繋がっていようとする健気さを。
『どうした、そっぽ向いて』
『いいえ。寝てていいですよ。起こしますから』
『…じゃ、頼むぞ』
『はい』
もう駅での気分の明るさも翳ってしまいそうだ。


『神城先輩!!』
橋下さんが張った声で場を切り替える。
俺は特に大西監督に休憩を申し入れなかった。
『津崎か。元気そうだな相変わらず』
青柳さんも続行する。
『会いたかったですよ先輩!』
『たった一年ぶりだろ。大袈裟だ』
{そう言いながら神城さん、少し嬉しそうだ}
『こちらの方は?あ!もしかして噂のキューティーボーイですか!?』
『キューティー…?』
{それって僕のこと?}
綾斗は津崎の存在に疎外感を感じているだろう。
『ああ、まあソレだな。だが今はやめろ。今年入社の岸だ。岸、こいつは…』
『津崎です。俺もまだ二年目ですが、ここに来る前は本社で神城先輩に付かせてもらってました』
橋下さんは晴臣とは違って津崎を元気いっぱいの熱血青年で演じる。
{この人、なんか可愛い…}
綾斗は初めて神城絡みの嫉妬を覚える。
『神城先輩全くメール返してくれないんだから寂しかったですよ?本社のみなさん元気ですか?』
『ああ、部長もな。岸はいま大月に付いて仕事してる』
『大月さんかー!岸さん、面白いし面倒見いいでしょあの人!』
『ええ、まあ…』
{大月さんのことも詳しいのか…。当たり前か}
『俺も入社した当時は大月さんによくメシ奢ってもらいましたよ!』
『そう、ですか…』
{なんだろう…なんか嫌だ}
『あれ、岸さん?あんまり元気ない?』
『あ、いや。そんなことは』
『津崎、そろそろ通してくれないか?まだ俺たちオフィスにあと一歩入れていないんだが』
『ははは!すみません先輩!どうぞどうぞ、ご案内します』

{その後もこの津崎さんと一緒に新社屋を回った。津崎さんは本当に神城さんに会いたかったようでずっと二人にしか分からない会話をしている}

『あれはお前が悪かっただろ?』
『えー!神城先輩ですよ!途中で急に俺だけ置いていったでしょ!?社内の人間に対してはめんどくさがって。そういうトコありますよ?先輩』
『外面が命だからな俺は』
『それでエースなら文句も言えませんけどねー。あ、次どうします?食堂見ます?凄いんですよ岸さん!ウチのメニュー!』
綾斗はもう、明るくて一見無害な津崎が疎ましいと思っている。
『あの!神城さん』
『あ?どうした?』
神城に対しても、だ。
『僕、一人で見て回っていいですか?迷惑かけないようにするんで…』
『岸さん?つまらないですか?俺の案内』
『そうじゃなくって!お手洗いも、お借りしたいので』
『トイレは全フロアーの西の奥です。行きましょっか!』
『いえ、先に行ってて下さい。では。何かあればスマホで』
『分かった。迷子になるなよ?』
『そうですね』
『あ!行っちゃった』


休憩を入れられるタイミングだったが俺は続行した。他の誰も手を上げなかった。

{大人気ないけど…。仮ネーム持ってるし不審者にはならないだろう。にしても流石に綺麗だな、ここ。新しい建物の匂いもまだ残ってる}

『岸君、かな?』
二岡さんは今度は爽やかなイケメン声で登場する。
『あ、はい。本社から来ました岸ですが…』
『俺は営業部の横山。神城と同期だ』
{ウチの営業部ってもしかして顔で選んでるのかな…}
『横山さん、ですね』
『一人で何してるの?キューティーボーイ』
『う…。それって、ちょっと馬鹿にしてます?』
『違うよ。有名なんだよ?岸君。本社にすっごく綺麗なコが入って来たってね。本社に江夏っているだろう、俺と仲良いんだけど本社でも君を狙ってる女子多いんだって言ってた』
{そんなの知らなかった…}
『男子もね』
『男子…?』
『良かった良かった。その分だとまだ無事か。そうだ、良いところ案内してあげるよ。ほら付いて来な』
『え?あ、はい!』
普段気の強い綾斗が、何故か横山への警戒心を欠いている。
それはきっと横山の存在を知らず知らずのうちに嫉妬からの「救い」のように思ってしまったからだろう。


青柳さんが手を上げた。
『止めて』
大西監督の声で皆が一度緊張を解く。
「高井、休憩しろ。明日の為だ」
「…はい」

10分休憩。俺は水を飲みに行ってからすぐに一番左奥の椅子に座って台本を読んだ。
他の人達は一階に行ったり椅子に座っていたりとそれぞれ過ごしていたが、時間になるとすっと集まる。
三条さんと栖本さんも入って来た。どうやら本当に最後まで居るつもりらしい。


『すごいですね!この図書室!』
綾斗は狭い世界から一歩出たような、そんな気持ちで機嫌を直している。
『うん、こっちでは社員のメンタルも健やかにって話しだそうだ。ノー残業は徹底してるし、各階の休憩室も観葉植物を沢山置いたりして。俺なんか自分の家より落ち着くよ』
『羨ましい。本社はもう殺風景ですから。観葉植物かぁ僕もデスクに置いてみようかな…』
大月のデスクを掃除してポトスでも置くつもりになったりしているだろう。
『植物好きなのかい?』
『あ、いえ。自分じゃすぐに枯らしてしまって。でも、会社なら責任持って育てられるかも知れません』
ついうっかり家では自分がだらしない事を吐露してしまう程度に横山を信用している。
『そっか。やってみるといいよ』
『はい!』
『でもほかの社員にとっては君が観葉植物みたく癒しの存在かも知れないよ?』
『え、僕、ですか?』
『だって岸君、思った以上に綺麗だったからさ』
{え?急に近いな横山さん…}
『僕なんてまだ、何の役にも立ってないですよ』
『そう?まあ、本社は昔かたぎの成績で何もかも決められちゃう場所だからね』
『けど、成績が全てじゃないですか?営業なんて』
『毒されてるなー。岸君何ヶ月かこっちに通えば?殺伐とした本社じゃ見えないものも見えるよ』
『研修ってことですか?』
『うん。その時は俺のサポートしてくれる?癒しも兼ねて』
『僕に決定権はないですが…』
『神城と一緒にいたんじゃ使い捨てにされて終わっちゃうよ?』
二岡さんは普段のイメージからは程遠い意地悪で甘ったるい声を出した。
『…使い、捨て?』
{横山さん…神城さんのこと嫌いなのかな…}
綾斗はまだ神城を疑わない。
『あいつが君みたいな子にまだ手出してないとは思えないんだけど』
『ど、どういう…』

『あ!いたいた!岸さーん!』
{津崎さん…}
『電話出ろよバカ』
{神城さん}
『電話?あ!すみません。気づかなくて』
{ずっと鳴ってたのか、全く気づかなかった…}
『久しぶりだな神城』
『ああ。横山か長崎支社じゃなかったのか』
『今じゃここのエースだよ。誰かさんが本社から動けないもんで俺がジプシーやってるんだぞ』
『お前もすぐにここに縛られるさ』
『岸さん横山さんとお知り合いだったんですか?』
『いえ、少し前に』
『お二人がイチャこいてるの見兼ねて一人ぼっちになったところをハンターの俺に引っ掛かっちゃったんだよ。色々教えてたんだ』
『ちょっと、僕そんなこと一言も!』
{それじゃまるで僕が妬いたみたいに聞こえるじゃないか!}
『そうだった?でも俺と居ると楽だったろ?』
『そ…それは…』
{一人でふらふら回るよりは確かに心強くはあったけど…}
横山をいい人だと思いながらも、神城が居る事で横山の存在はすぐに霞んでいる。
『おい岸、そろそろメシ行くぞ昼からはちゃんと仕事だ』
『え?もうお昼ですか?でも僕あまりお腹空いてな…』
『いいから来い』
『ちょっと神城さん?』



『で、何でお前らまで来る』
『いいじゃないですか!この店教えたの俺でしょ?てか台風すごいですね。神城先輩たち帰れます?』
綾斗はきっと津崎まで付いて来たことが残念だったはずだ。
『臨時のホテル代くらいどうってことないだろう。本社は金持ってんだし神城様だしな』
『嫌味か横山』
『たぶん大丈夫ですよ神城さん。ホラまだ新幹線動いてます』
『君のスマホ?番号交換しようか』
『え?横山さんと?』
{勤め先も違うし、今日会ったばかりで話が合うかどうかも分からないのに?}
『岸、お前は気象ロボットか。そんなもん見てないでさっさと食えよ?置いていくぞ?』
『でた!先輩の置いてけぼり!俺も何度もくらってますから、気をつけて下さいよ岸さん』
『…置いてけばいいでしょう』
『何拗ねてる』
『拗ねてません!』
『それがですね、北海道ですよ?北海道でもパートナー置いて行くくらいですから。しっかり手綱握ってないと』
『お前は本当に一匹オオカミだもんな。子連れたくないのは分かるが、少しは身内にも営業スマイル振舞ったらどうだ』
『ちゃんとやってるぞ』
『どーだか!神城先輩って仕事馬鹿なのにぶっちゃけ仲間を仲間と思ってないんですよ!覚えてます?インフルエンザにかかって会社休んだとき。俺が心配して家まで行ってあげたのに寝惚けて「お前どこで会ったやつだっけ」なんて言ったの!俺けっこう後輩として尽くしてたのに酷すぎるでしょ!?』
『覚えてないぞ』
『ホントヘコんだんですからねあれ!半年も一緒にいる人に営業部の津崎真士ですって改めて名乗るのって!名刺まで見せて!』
『悪かった悪かった』
{また津崎さんとの思い出話ばっかり…。今じゃ神城さん誰もパートナー付けないって言い切っちゃってるし}
『覚えてないのに謝ってるし!でも懐かしいなー神城先輩といた頃』
{みんな神城さんに憧れてるんだ…}
『岸君。食べないのかい?』
{横山さんもきっと神城さんにライバル心がある。京都支社のエースか。なんかみんなカッコイイな…}
『岸君?』
『…横山さんの番号、教えてくれますか?』
綾斗はここで初めて神城から逃げるという道を選びかけている。
『いいよ。スマホ、貸して』



{僕と神城さんは午後はずっと部長クラスの役員と懇談を済ませて、京都支社を出たのは夜の六時だった。ノー残業を守って横山さんも津崎さんも帰っている}
『ダメだやっぱり運転見合わせだと!』
『どうします!?』
『とにかくどっか店に入るぞ!』
『はい!』
{駅まで戻ったものの、速度を上げた台風の直撃を受けて、帰りの新幹線どころか全ての交通機関がストップしてしまっていた}
『すみませんでした!僕がもっとちゃんと速報を見ていれば!』
『仕事中にスマホ弄るバカいないだろ?お、ここでいいか!』
{シャッターを閉めてしまう店が多い中、半分だけシャッターを開けて「OPEN」の札を中からぶら下げていた一軒の小さなカフェに飛び込んだ}
『ったくとんでもねえな。岸、大丈夫か?』
『ええ、僕は平気です。にしても凄い雨風…』
{こんなに重いガラス戸が軽々と中へ押されて強い雨と風が吹き込んで来てる}


『ではそれでお願いします。はい。はい近くに居ますのですぐチェックイン出来ます。はい、どうも。はい』
『どうだ?空いてたか?』
『ええ。なんとかベッドのある部屋で夜を越せますよ神城さん』
{軽食を撮ってコーヒーを飲みながら神城さんと僕はビジネスホテルを確保した}
『にしても、よくこんな日に二部屋も空室があったな』
『まさか、二部屋なんてありませんよ。明日の朝6時には追い出されますし。だけど天井があってこの雨風が凌げるんですから文句言えない』
『一部屋、なのか?』
『そうですよ?どうかしましたか?』
『どうしたじゃないだろう。もう一部屋別のホテルでもいいから探すぞ』
『え?もう無理ですよ台風の急な上陸で近辺のホテルなんてとっくに埋まってます。この一部屋だって奇跡でしょ?』
『とにかくダメだ』
『どうして?』
『ああ、お前はもういいぞ。タクシーでも呼んでホテルに行け 』
『な…。ホテル、探してるんですか?』
『ああ』
{神城さん、そこまで僕との同室を嫌がることないのに…}
『聞いてるのか?お前も今日は疲れたろ…って、なんだその顔』
『…キスして来たのそっちのくせに、そっちが距離取るなんて失礼すぎませんか?』
『おい…』
『今どきキスなんかで気まずいなんて。僕は何とも思ってないのに』
{嘘だけど…}
『バカ、店員が居るだろ』
『何をヒソヒソと。恥ずかしいんですか?恥ずかしいと思うような事だったんですね?』
『恥ずかしいとかって話じゃないだろ。落ち着け』
『僕と二人っきりになりたくないからずっと津崎さん挟んでたんですね。へえー。それならそう言えばよかったのに。僕、そんなの…』
『何の話だ?』
『もういいです。ホテルあなたが使って下さい』
『は?』
『ご馳走様でした。払って下さいね。また本社で。お疲れ様でした』
『おい岸!』
{僕はカッとなってその子供じみた勢いのまま、荒れ狂う嵐の中、後先考えずに店を飛び出していた}


{全身を殴りつけてくる雨風の中、必死で前のめりになって走る}

『行く当てなんてないのに…』
{銀杏の木が目の前で二つに折れて、その暴れる枝が僕の頬を切った}
『どこに行けば…あ!』
{弁当箱を入れていた紙袋が風に取られて破け、二段の重が道に転がって滑って行く}
『父さん…』
{握っていたものが鞄だけになって、僕は立ち尽くした。守ってくれていた父さんの存在を無くしたように思い不安になる。空は真っ暗で黒い雲が渦を巻いている}
『寒い。なんとかしなきゃ…あそこの陰で…』
綾斗はビルの隙間に逃げ込む。
『ここなら少し、風を避けられる…。今のうちに地図を見よう』
{スマホを上着で覆いながら操作していると、急に父さんの声が聞きたくなった}
『ダメだ…今かけたって心配させるだけだ…』
{だけど僕は地図を見る気力も無くしてビルの壁に持たれ、大きな粒を顔に受けながら黒くて狭い空を呆然と見上げていた}


『岸!!』

『おい!岸!!』

{誰かの声で意識を取り戻した僕は、駆け寄ってくる神城さんの姿を見た}

『神城…さん』
『血が出てるぞ!?頬か、ったく!何やってる!!』
青柳さんは声を荒げている。
『もう、いいから…。ホテルに行って下さい』
『うるさい!これがなかったら気付かなかったんだぞ!!』
『…それ…』
{神城さんの手には父さんの弁当箱の一段が握られていた}
『父さんの…』
『お前いつからここで寝てたんだ!身体が冷たいじゃないか!今タクシー呼ぶからこっち来い!』
『嫌だ!離して!』
『落ち着けバカ!』
『痛い!』
『こうならマシだろ』
{神城さんは僕を温めるように背中から抱いて、雨で壊れてしまうかも知れないのにスマホで色んなタクシー会社に電話してまわる}
『…んなさい神城さん』
『いいから』
心配する甘い声で俺まで一度びくりと身を震わせてしまった。
俺の背中は綾斗と違って寒かった。
だからこそ、今の綾斗がどれだけ神城に救われているのかが分かる。

俯瞰で映像が見えるようだった。

嵐の中、商業地域のビルの間で、神城に丸められるように抱かれた綾斗の姿。
きっとどんな天井や壁よりも神城の腕は綾斗を守っている。
『ごめんなさい…』
俺はつい台詞を付け足していた。


『どうして誰にも言わずに出たんだい?ゆうじくん』

(ごめんなさい)

あの時、あの公園で。
あの大人が余所余所しく手を握るのではなくて、一瞬でも神城のように背を抱いてくれていたなら。

俺は理由を口にしてしまっただろう。



『傷、痛むか?』
電話の台詞を終えた青柳さんがアドリブを入れたのに、
『ごめんなさい…』
俺はそれしか返せなかった。
『もうすぐタクシーがくる。何とか一台出してくれた。それに乗ってホテルに行こう』
『はい』
『もう、逃げるなよ?』
その声は耳の奥にすとんと落とされたようで、神城が綾斗をより抱きしめたのが分かった。
『…うん』

俺は、痛恨のミスをした。
最後の台詞から充分間を置いて大西監督が止めた。

「す、すみません…」
綾斗は「はい」と言わなければならなかったのだ。最後の最後にやってしまった。
俺は酷い罪悪感に苛まれた。最後に綾斗のキャラをぶち壊してしまったからだけじゃなく、きっと自分を重ねてしまったのだという事に対してだ。
『最後かな?別にいいんじゃない?ね、青柳君』
俺は恐る恐る青柳さんを見た。
『いいんじゃないですかね』
そう言った青柳さんは前を向いたままふっと空中を見上げていた。

ここで他のみんなが録音室を出た。

『休憩はいいかな?』
大西監督の確認だ。
『このまま。いけるな?高井』
青柳さんは俺をちらりと見る。
このままの空気でベッドシーンに行きたいのだろう。
『はい』

『じゃあ、始めて』

正直、俺は、追い込まれていた。
青柳さんと、神城の空気に。

怖い、と思っていた。

『シャワーを浴びて来い。あとでソレ手当てしてやるから』
『大丈夫です…神城さん、先にどうぞ』
『言う事を聞け。それと、消毒する前にあんまり自分で触るなよ?跡が残るぞ』
『…はい。では、お先に失礼します』
{神城さんが呼んでくれたタクシーで辿り着いたビジネスホテル。二人ともずぶ濡れで酷い状態だった}
『迷惑、かけちゃった…』
{神城さんは僕がカフェを出たすぐ後から、僕を探してくれてたみたいだった}
『甘えすぎって、今朝言われたばかりなのに…』
台詞の一つ一つが苦しくて、俺はどうすればいいのか分からなかった。

俺が演じている綾斗と、現実の俺が混じり始めている。

理由はもう、分かっている。
青柳さんの、ネイビーの声のせいだろう。
やけに胸に刺さってくる。青柳さんが神城として何か台詞を読む度に、綾斗を通り越して俺に突き刺さるのだ。
(いや、俺が綾斗になれていないからか…)
シャワーの音をつける間が過ぎても俺はまだ揺ら揺らしている。
{とにかく今夜は早く寝て、早朝にここを出ないと}
もはやモノローグなのか台詞なのかも曖昧で。
神城と一つの部屋にいる綾斗の緊張を痛いほど感じる。
俺は次の台詞までに急いでマイクから顔を逸らして出来る限り静かに短い深呼吸をする。
『神城さん、ありがとうございました。どうぞ』
『ちゃんと温まったのか?』
{神城さんは濡れた服を脱いで僕と同じ、薄いブルーのバスローブ姿になっていた}
『はい。もう平気です』
『ならこっち来い。先に手当だ』
『いえ、自分でしますから。神城さんも早くシャワーに』
『頑固だなお前。面倒くさいぞ?』
『う…』
『いいか、勝手に触るなよ?待ってろ。俺がする』
{勝手にって、僕の顔なんだけど…}
『うう、はい。もう…分かりましたよ』
必要以上に甘えた声になり、俺は焦って髪を搔き上げる。
(落ち着け…マジで)

{神城さんが出てくるまでの間に僕は鞄の中身を全て机の上に出し、タオルで拭いた}
『僕も神城さんみたいなハードケースタイプにしようかな』
{それでも時間が余って、鏡で頬の傷を確認した}
『思ってたより酷いな…』
{浅いけど右の頬いっぱいに漢字の一がある。父さんが何か言って来そうだ}
『触るなって言ったろ』
『わっと!神城さん!びっくりさせないで下さいよ!って、ちょっと!』
{神城さんが僕の横に来て、僕との身長差を鏡で知った。こんなにも広い胸の中にいたのか、僕…}
『痛いのか?』
『いえ…そんなには』
俺は次のモノローグを遅らせてしまう。
『…勿体ねえな、この顔に』
これは青柳さんのアドリブ。
急に甘くて、俺はまた足の先が熱くなるのを感じた。
『別に…顔なんてどうでもいいのに』
俺の感想を言ってしまった。
(しまった…)
綾斗ならもう少し違った言い方をしたはずだ。
『女性なら…これは酷いと思いますけどね』
慌てて間に合わせる。
『まあ、そうだな』
青柳さんの神城は少し笑って繋いでくれた。
俺は何とか青柳さんについて行く。
{なんだか神城さんがずっと近くて、意識してしまう…}
『ほら、そこに座れ。消毒しよう』
『あ、はい…すみません』
幸いなことに、綾斗が自分の顔をどう思っているのかは台本の中では言及していなかったはずだ。記憶にない。
だが俺は綾斗にとって余計な背景を足してしまっただろう。
(照れたりするべきだったのに…)
『染みるか?』
『いいえ…』
{顔が近くて、僕、どうしたらいいんだろう}
『いた…』
『悪い。大丈夫か?』
{髪を避ける手が暖かくて、気持ちいい…}
『あなたにまで、甘えて、すみません』
『今まで誰と誰に甘えたんだ?』
『え?』
『いや』
神城は小さく笑う。
『なんですか?言って』
{僕は神城さんが何か隠したようでムキになって食い下がった}
『言って?ちゃんと。神城さん』
『こっち見てどうする。貼れないだろうが…』
青柳さんの語尾が掠れて俺はまた熱くなる。
(やっぱり上手いな…この人)
『ねえ…言って』
『横山に何かされたか?』
『横山さん?何かって?』
『ならいい。ほら、終わったぞ』
『あ』
『でっかいな。ははは』
『普通、笑います?…でも確かに』
『こら、触るな』
{神城さんの手…大っきいな…}
『お前、なんで拗ねてた?』
ネイビーの甘い声。
(これ、ダメだ俺…)
『拗ねて…ません』
『手当て終わったろ、こっち見ろよ』
『…イヤ』

『綾斗』

透明な泉に連続してネイビーが落ちてくる。水面を乱すように大きく波紋を広げて。
俺は台本には無いが、台本の流れに見合い過ぎた息を溢してしまった。
(ヤバい…俺…)
キスまでまだ少しあるのに、綾斗が勝手に誘っているようになってしまう。
この後の会話が不自然になる、と混乱していた俺だったが、
キスの音がした。
俺は突然で、図ったわけでもなくびくりとした息継ぎをした。
青柳さんは会話を飛ばしたのだ。
俺が横目で青柳さんを見ると、青柳さんは続けろと言わんばかりに手で合図した。
『神城さん…』
どこから繋いでいいのか分からず俺は青柳さんに頼ってしまう。
『じっとしてろ』
少し先の台詞だ。
『やだ…キス、しないで…』
しばらくキスをする。
『もう、しないで…てば…』
『なんで機嫌悪かった?』
青柳さんはここで台詞の順序を正す。
綾斗の『そっち見れない』を仕方なく飛ばしたようだ。
『ん…なんのこと、ですか?僕なにも…』
キスの最中に挟まなければならなくなった会話。
(どうしよう…最低、俺)
『妬いたのか?津崎に…』
『ちがう…そんなのちがう…僕は、なにも…』
本来ならここでキスをされる予定だった。流れは台本に戻る。
『嫌か?』
『神城さん…』
『嫌なら振り払っていい』
『そんな…ずる、い』
{神城さんは僕に決めさせようとしてるんだ。僕が断れないの知ってるのか…}
『綾斗』
『ずるい!…るいよ神城さん…!僕のこと…面白がってるんだ…!』
俺の鼓動が激しくなる。息が上がっても問題がないシーンで助かった。
『違う!』
『あ!』
『そうじゃない…』
{どうして神城さん、こんなに苦しそうなんだろう…胸が痛い}
『神城さん…。そんな顔、しないで…』
『綾斗…?』
『僕、僕でいいなら…あげる』
『お前…』
『あなたが隠してること…僕に教えて下さい…』
『綾斗』
(ダメだ…熱い!)

気付けば、俺は手を上げていた。

『はい…止めようか』
大西監督が不満そうに言った。
視界の端で青柳さんがため息を吐いた。
俺が「待って」をするのをやはりどこかで予想していたのだろう。

「…す、みません…」

俺の体は足のつま先から腰まで熱くて、手のひらも耳も熱い。
床の温度の方が低いと本能的に感じて俺はその場で膝を付いた。

『明日にしましょう大西さん。その方がいい』
青柳さんは呆れていた。
『もうこんな時間か。そうだなもう今日は終わりにしようか。お疲れ様』

(最悪だ…)

「おい」
「…はい」
悔しくて青柳さんの声に俺は顔も上げられず床を見ていた。
「家、誰か居るのか?」
「…いいえ」
「寝るまでに電話なり独り言でも言って多少は喉起こしてろよ?出なくなるぞそれ」
「はい」
事実、声のボリュームは大きくて喉も絶好調のようなのに「馬鹿になっている」という感じがしていた。
喉が太く開いてしまったようで、ノーコン状態だった。
「お疲れ様」
「お疲れ様でした…」
青柳さんが出て行くと暫くして二岡さんが近づいて来た。
「お疲れ様。…大丈夫?」
俺はいちいち答えていたくなかった。
苛々してどうしようもない。
「クソ…!」
台本を投げてしまい二岡さんが驚いた。
「高井君…」
その時、二岡さん以外の気配がして俺はそっちを見る。
「高井さん、帰る支度終わったらちょっと来てよ」
橋下さんだった。




俺はロッカー室から荷物を取って一階に降りた。
ベンチに青柳さん、三条さん、栖本さんがいた。
「悠二お疲れ様」
三条さんが笑顔で言う。
「あの、橋下さんは?」
「え?さっき出て行ったよ」
「そうですか。お疲れ様でした」
俺はすぐにスタジオを出た。
駐車場を見渡すとスタジオの玄関がある左の角に橋下さんは立っていた。俺を待っていた橋下さんはそのまま裏手へ歩いて行き、俺は黙ってついて行った。

「今日は、突っかかって悪かったと思ってる」
橋下さんは意外にも謝って来た。
だがただ謝りたいわけじゃないのは伝わって来ている。
「でも、分かって欲しいんだ。俺、ここまで来るのにすげえ努力したんだ。俺、天才だって言われてるけど、それだけじゃこの世界に居られない。分かる?すごい奴なんていっぱい居るんだ。でも生き残る奴は少ないんだよ。タイミングだって必要なんだ!すげー狭い道なんだよ…」
橋下さんは本音をぶつけて来る。
その目を見て、俺は頷いた。
「俺がこの世界に入った理由は青柳さんみたいになりたかったからだ。あの人に憧れて必死になって。なのに高井さんは急に出てきて、平然と青柳さんの横に居て、それが俺にとっては凄く羨ましい事なんだって高井さんは全然分かってもいないし!礼儀も知らないし!」
感情的になってくる橋下さん。
「朝のこと以外にも俺がもし高井さんみたいに勝手したら絶対仕事なんてなくなるのに!みんな甘いし!主人公役なのにゲスト気取りで!ものすごく腹が立ったんだ!!」
俺はまた頷く。
「お膳立てして貰ってるのに不満そうで!…ムカついたんだ…だから…」
橋下さんが勢いをなくして、俺は頭を下げた。
「すみませんでした」
「そうじゃなくて!」
「…俺分かってるから。本当に分かってる、あんたが言いたいこと」
「なんでだよ」
「津崎。あれが出てきて俺、あんたが何で俺に噛み付いて来たのか分かったんだ」
「津崎…?」
「俺みたいな部外者が居場所奪ってくのが気に入らないんだろ?」
「部外者って…」
「でも今だけだから。これが終われば俺はあんたの邪魔にもならない。そもそも実力だって雲泥の差なのに。声優にもなるつもりないし」
「…ならない、のか?」
「それでも俺、やれるだけはする。あんたらプロがしないような事してでも、作品が悪くなるような事はもうしない」
「なんだよそれ!声優になるつもりもないのかよ!だったら何の為にみんな!マジでただの邪魔者じゃないか!俺ばっか苛ついて…!」
「うるせえ。俺だって、あんたが邪魔だよ」
俺もつい、本音を言ってしまった。
「え?」
「俺に出来ないことを当たり前のようにやってのけるあんたが心底鬱陶しい」
また怒らせるかと思ったが、橋下さんは怒るというより驚いていた。
「そんな脇役なんて、死ぬほど邪魔だろうが」
俺は目を見開いて黙ってしまった橋下さんを見て、もう互いに大して言う事もないだろうと思い置いて帰った。






◆ 青柳 晃介

司が窓を開けた。
丁度高井が帰ってしまい、橋下も帰ろうと歩き出した頃だ。
「大声出しちゃってたね橋下君。珍しいんじゃないか?」
若手の口喧嘩は、俺達にまでもろに聞こえてしまっていた。
橋下の居場所を尋ねてきた高井の様子が気になって、何となく全員が辺りの物音に注意を払っていたのもあるが。
「普段からそのキャラでいろよ。ニャンニャン媚びてるより断然マシだぜ?」
栖本は無関心を装っていながら、しっかりと口を出している。
「俺、決めました。晴臣であいつに思いっきりプレッシャーかけてやりますから」
俺の位置からだと窓枠の中に丁度首から上だけが見える橋下。
「晴臣?津崎じゃねえのか?」
栖本が口元のマスクを摘みながら後ろを振り返って橋下に言う。
「分かってないっすね。晴臣が綾斗の敵でしょ。ね、青柳さん」
橋下は俺に満面の笑みを見せる。
「それじゃ俺、今夜ラジオあるのでお先に失礼しまーす!お疲れ様でした!」
大そう機嫌を損ねたものと思っていたのだが、その逆のようだ。
「あれ?なんかイキイキしてないか?」
司が窓から身を乗り出してまで橋下の姿を追っている。
「あいつまた仕事増えそうだな」
俺はやれやれとコーヒーの空き缶を捨てる。
「ホント可愛い後輩、橋下って」
栖本は苦笑いで額を掻いた。
すると、
「僕も、橋下君だけは敵にしたくないなー」
二岡が笑いながら階段から下りてきた。
どうやら二岡も丁度俺達の真上で橋下と高井のやり取りを聞いていたようだ。
「大西さんも楽しそうに聞いてたよ。じゃあ僕も、お先に帰るよ。お疲れ様でした」
それぞれが二岡を見送って、顔を見合わせるとため息を吐く。
「じゃあ俺も帰るか。てか朝9時とかキツイんだけど」
栖本がティッシュペーパーで灰皿の周りの汚れを拭ってから、水の溜まった中身を取り出して給湯室へ向かう。
この仕事では朝は10時からが基本だ。この度はそれよりも早いという異例さ。
「まあね。でもそれはあの人も同じだ。自分がちゃんと来てるんだから俺達も文句言い難いよ」
司は大西さんの事を言っている。
「俺より朝苦手だろ、監督」
栖本は笑いながら給湯室に入って行った。
「なんでもアリにOKしちゃったしな」
司は苦笑い。
それから暫くして、スマホに入れたスケジュールを見ていた俺の横に司が座る。
「晃介、まだ時間ある?」
「なんだ?」
適当に司の顔を見た俺だったが、思ったよりも神妙な面持ちでこっちを見ている様子に手を止めた。
「あ?」
「ちょっと、コレ聞いてみて」
司はバッグからタブレットを出してくると手早く操作している。
「YUJIが過去に参加した声劇の音声を聞いて欲しいんだ。mimikoneってサービスの彼のページにアクセスしてるんだけど。ちょっと驚いてさ。いくつかあるから」
「俺が?」
タブレットを受け取って画面を見る。
「はい、イヤホン」
「何ナニ?面白そうな事してるな。俺も混ぜて」
栖本も洗った灰皿を床に置いて俺の後ろから覗き込み、俺が渡したイヤホンを片方の耳にねじ込んだ。
「まずはこれ」
司はタップして一つの音声を流した。
朗読らしく、淡々といつもの高井の声で読み進める。そして登場人物が出てきた。
登場人物はとりあえず三人だった。
団子屋の客の年配の男、その連れの若い男、そして団子屋の女。
ただ聞いただけだと声劇のようだ。
だが、
「これ、三人ともYUJIらしいんだ」
「…は?」
栖本が低く零して、より耳の奥にイヤホンを詰める。俺も同じく。
確かに高井は俺と大西さんとの初対面で、少女と老婆以外は出せると言っていた。
(そうは言っても、これは女の声だ)
司はそこから画面下のバーを指で動かして音声を後半まで一気に進めた。
するとまた別の登場人物がいる。
「これも全部一人だ」
忍の男。口に怪我でもあるかのように聞き取り難い話し方をする。
「これが…?本当にあいつなのか?」
俺は信じ難いが、何となく嘘ではない気がしていた。
「…天才ねぇ。確かにまあ、そうなのかね。…認めたくないけどさ」
栖本も何やら不審そうに言いながらも、違うとは言わない。
「ま、ネットだし何か仕掛けがあってもおかしくはないけど…」
司は俺からタブレットを取って、また操作する。
「そっか。名前だけYUJIで、顔出ししない時は実は毎回友達と入れ替わってるとか?」
栖本は一旦俺にイヤホンを返して灰皿を元に戻す。
「いや、間違いなくあいつだ。クセも声色も全く違ってるが…俺にはわかる。高井のものだ」
「今のでもそう言い切る?」
栖本の顔に俺もまだ正直確信は持てない。だが台詞の合間に小さな点のように高井の匂いがある気がする。
「まあね。信じ難いけど。逆にこれが仮に本当に友達と入れ替わってるんだとしたら、平気でこの仕事受けた事も、今までの高井の態度も。うん、先ず人間性を疑うな、俺は。まだあいつを信用してもいないけど」
栖本はマスクを外しながら言う。つまり本当だろう、という事だ。
「でも、何でこれが出来ない?」
俺が引っかかるのはそこだ。
「んーん…だよな」
司もとんとんとんと自分の頬を指で叩く。
「これが出来れば、とんでもないことなのに。何故だ?」
俺は司が用意した別の朗読を聴くが、やはり高井が一人で出しているのならば「天才」と言えるものだ。
(ここまでクセを変えられて、それを瞬時に入れ替えられるなら、もう天才云々の域じゃないが…)
声だけならまだ分かる、多数の声色を使い分ける者もいる。だがクセというものはそう簡単に演じて隠せるものじゃない。
「これが出来れば青柳さんに怒られなくて済むのにねぇ」
栖本は軽口を言って笑う。
「…俺そんなに言ったか?」
「え?」
「晃介自覚ないの?」
「俺は間違ってないだろ?」
「だからこそ辛辣なんじゃん?」
司がヤダヤダと首を振る。
(本来なら出来るのにここで出来ない理由。それは一体なんだ?)

『待ってって言ってるのに』
睨んできた高井を思い出す。
出来るはずなのに出来ず、動揺していたのかもしれない。

「あのさ、これ、調べついでにYUJIのお友達辺りも色々渡り歩いて聞きまくってたんだけど。この子。ネット上で炎上って言うのか?YUJIと揉めたみたいでね、ディスるっていうの?ちょこっと変な発言してるんだよ」
「炎上?くだらない」
俺はまた渡されるタブレットを一度押し返すも、それ以上の力でまた押し返された。
「いいからいいから」
「あ、ちょっと!俺も片方!」


配信者と呼ばれる者の名前はTAKA。
司は何度も聴いたのかまたバーを移動させて聴かせたい部分を流した。

『あはは!ケンカっていうか。この前のアレだろ?超人気の「ふつくしい」お人形Y様とのだろ?今更どうでもいいけど!!』
今どきの若者の言葉使いだが、聴き取りやすい撥音と声はこのサービスで活動している証なのかもしれない。
俺は先程の高井の音源を聴いて、このmimikoneという配信サービスに対する「お遊び」や「趣味」という考えを大きく正していた。高井並みの連中が揃っているのならば、なかなかのものだ。
『あれってさ、やっぱりヤラセなの?』
『え?』
『Y氏が天才様ってやつ』
その質問を受けたTAKAという男は明らかにテンションが下がった。
『…いや、それはない。一緒に同じ空間で収録したこともあるし、それは俺は言い切るけど。本当に本当なんだけど。なんていうか…』
この配信者はYUJIの人気に嫉妬しながらも、天才である秘密を知っているのにも関わらず隠してやっているように思える。
『言っちまおうぜTAKA。嘘なんだろ?』
『絶対嘘じゃない。俺はいつも聴いてたんだ。だから俺、アイツと組んでたんだからよ…。てかてか、もうどうでもいいしY様なんか。どうぞ頑張って有名になって下さいって感じ?あ、ヌード写真集出したら俺も買いますので。精々進む方向を誤らないで下さいね』
『お前キモ!!ウケる!』
『元気でなYUJI!!さよなら!!』
『あ!お前…』
『あ!!言っちゃった…!!』
『バカだろ!!まーたYUJIのリスナーにボコられるぞ!ははははは!!ヤバいヤバい!!』
熱烈なファンの暴徒化は、割と知らなくはない俺達。この男の焦りっぷりもまあまあ頷ける。
そして血が上ったのかまた口調が乱暴になった。
『あーもう!勘弁してくれよ!!天涯孤独のクセにリスナーの数だけはゲロ吐くくらいいるからなアイツ!クッソみたいな信者共、ホントにやめてほしい!!』

(天涯孤独?)

俺は司の視線を受けるが、とりあえず続きを聞いた。

『俺は一回正式にYUJI本人に謝ってんだぜ!?無関係なクズ共だけがいつまでも根に持ってるだけだからマジで!!』
『ああ、TAKA。ちょっ。ヤバいって…落ちついて!えっと!Y氏はもうお前の事なんか何とも思ってねーし。なー!みんな!?はいはい、このネタはここまで!!コイツとY氏のケンカもそれ自体がネタでしたー!なんつって!』
『ふざけんなよ!ネタでこんなボロボロになるもんか!あーまたかこれ、はは!もうツラすぎ!!』
『ハイランカーと揉めたらループだってことだな!!あははは!』
無理やり笑いに変えて再炎上を食い止めようとするかのように話の内容はガラリと変わった。

「いや、でもネットだしさ。なんかキャラクター設定みたいなの作ってんじゃないの?美しい孤独の青年、的な?女って好きそうだもんな」
栖本がイヤホンを返してきた。
「俺も最初そう思ったんだが、ここ、見て晃介」
「あ?コメントか?」
リスナーからのコメント欄を見る。

●YUJIのこといつまでも忘れられないんだなオマエ。かわいそ。
●やっぱりYUJIの身の上の噂ってホントなんだ?

(噂って事は、本人が言ったわけじゃないのか…)

●未練たらたら。ウザい。
●愛が深かったんだと今回は笑って受けとめるねw
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●TAKAもカッコええで!がんばれ!
●YUJIのキレかた好きやわこわい
●YUJIの相棒できるのはTAKAだけ
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●YUJIに会ったことある俺がいうとTAKAがこうなるのは仕方がないYUJIはハンパないTAKAはたぶん悪くない
●ロシアのハーフだと思ってたww
●TAKAもうYUJIネタやめよツライ
●YUJIのオカン美人やろなw
●そういえばハイランカーでYUJIだけ誕生日非公開だよねほかにも謎多い
●実家近所って書いた人BAN対象にならないの?大丈夫?

コメントはまだまだ続く。
「うわー。ネットって本当に面倒だな…よくこんな事してるよ高井も。匿名だからって言いたい放題だしよ」
栖本は疲れたように笑ってベンチに座る。まあ確かに酷いものも多々ある。
「このニート三山って書かれてるのがNACの社長だそうだよ。ネットじゃ相当有名らしい。この音源は三カ月前のもの」
「で、司。これがどうした?同情しろってか?仕事出来ない理由にどう関係がある?」
俺はコメントを遡りながら言うが、
「あ、まあそうなんだけど…」
司はまだ気になるのかタブレットを俺から奪ってタップしている。
「なんでそこまで肩入れする?他人が口を挟むことじゃないぞ?」
「ちょっと気になっただけだ。悠二すごくムキになってるし…」
俺も司が言わんとすることが分からなくもないが。
「確かに。今日だってキスもしたことないのかって言われて、じゃあしてきます。だもんな。一体どこまで体験してきたんだかね」
栖本は帰るのかまたマスクを付ける。
「…あ?」
「キスマークあるよな?あの時から。このへんに」
栖本は自分の頸をひょいと指して飲み物の紙カップをゴミ箱に捨てる。
「晃介気づかなかった?みんな休憩中に色々言ってたんだけど。だって…相手って男なんだよな?出て行くとき言ってたし」
「いやいや!俺は知らん!そこまではノータッチでお願いします」
司に言われた栖本は、全力で顔の前で手を振る。
「はあ…いくら素人でも。仕事抜け出した先でセックスか?あり得ないだろう。お前らも気にし過ぎだ」
「だからムキになってるなって…」
「分かった。どうであれ、何してようが休憩時間さえ守れば問題ない」
「あ!ちょっと晃介」
「俺には関係ない。根掘り葉掘りしても性格的に喜ばないだろう高井は」
「まーね、本人が仲良くしてくれる空気でもないし意味もないか。あそーだ晃介、今夜メシ行かないか?」
「ああ、そうだな」
「哲平は?」
「悪い。帰らないと」
「ふふん、パパだもんな」
「一応な。あ、そうだ、青柳さん」
玄関のドアに手を掛けて、栖本は目だけで俺を見た。
「ん?」
「やるのかやらないのか自分で決めろって、高井に言ってたけど」
「あ?ああ」
「ちゃんと戻って来たよな、高井」
「そうだな」
「ああっと…ま、じゃ、お疲れ様でした」
栖本は手を上げて帰って行った。
「お疲れ様」
重いガラスドアが閉じて、俺と司は顔を見合わせる。
「なんだ?あれは」
俺はつい笑ってしまった。
「続ける気はあるみたいだから怒ってやるなってことじゃないか?哲平らしくないな、あはは!」
「バカ言え」

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