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「…………」
私は言葉を失い、フラフラと後ずさる。
お腹の中に大きな石を落とされて気分。
身体全体が重くなり、血の気が失せる。
何故あのようなことを……何故女性と抱き合っているの?
私は混乱したまま、ユージン様の背中を見つめ続ける。
こちらに気づいてほしいとも思うし、気づいてほしくないとも思う。
ユージン様のお部屋の窓から向こう側が、違う世界のように感じられる。
こんな近くにいるのに、こんなに遠い。
愛おしそうに女性を抱くユージン様の顔。
ユージン様を見ながら、私の中で彼への感情が崩れ落ちていく。
別に周囲が見えなくなるほど恋しかったわけでもない。
これからそういう想いを一緒に育てていくはずだった。
だけどその一番土台となる『信頼』を今この瞬間に失った。
彼と結婚することはない。
彼を想うことはもうない。
彼との未来はもうない。
私は踵を返し、大きな庭を引き返していく。
少しだけ涙が浮かぶ。
だって裏切られたのだから。
まだ本物の想いはなかったけれど、真剣だったのだもの。
悲しくて当然。
私は並みだが収まるまでその場で蹲った。
悲しい。
悲しいけど、怒りも込み上げてくる。
何故私という婚約者がいながら、別の女性と。
怒りが腹の中で暴れ出すと、今度は絶望感が私に迫る。
あの家を出ることはできない……?
あの方と結婚しなければ、私はまた両親から虐げられる?
「…………」
突然の不安に、息が詰まる。
呼吸が浅くなり、苦しくなってきた。
涙が止まらなくなり、私はその場から動けなる。
何故……何故……。
何故彼は私を裏切ったのか。
そればかりが頭の中をグルグル駆けまわる。
悲しくて悔しくて不安で……
もう動きたくない。
もう生きていたくない。
でもここを離れなければいけない。
こんなことになるなら、今日ここに来なければよかった。
私は涙を拭き、おぼつかない足取りで歩き出す。
帰ろう。
そして家で泣こう。
どれだけ泣いたとしても現実は変わらないけれど。
だけどきっとそうすれば少しぐらいはスッキリするはずだから。
色んな感情が渦を巻き、グチャグチャになっていた。
だけどそれでもこの場を離れることを理解している体が勝手に歩いてくれている。
そんな感じであった。
頭はボーッとしている。
屋敷を出る時、門番の方と挨拶をしたと思う。
でも何を言ったのか覚えていない。
屋敷を離れ、また涙が溢れ、私はその場で膝をつく。
私は不幸で……不幸者だ。
不幸で幸福なんてそんなことなかったのだ。
私はただただ不幸なだけなのだ。
私は言葉を失い、フラフラと後ずさる。
お腹の中に大きな石を落とされて気分。
身体全体が重くなり、血の気が失せる。
何故あのようなことを……何故女性と抱き合っているの?
私は混乱したまま、ユージン様の背中を見つめ続ける。
こちらに気づいてほしいとも思うし、気づいてほしくないとも思う。
ユージン様のお部屋の窓から向こう側が、違う世界のように感じられる。
こんな近くにいるのに、こんなに遠い。
愛おしそうに女性を抱くユージン様の顔。
ユージン様を見ながら、私の中で彼への感情が崩れ落ちていく。
別に周囲が見えなくなるほど恋しかったわけでもない。
これからそういう想いを一緒に育てていくはずだった。
だけどその一番土台となる『信頼』を今この瞬間に失った。
彼と結婚することはない。
彼を想うことはもうない。
彼との未来はもうない。
私は踵を返し、大きな庭を引き返していく。
少しだけ涙が浮かぶ。
だって裏切られたのだから。
まだ本物の想いはなかったけれど、真剣だったのだもの。
悲しくて当然。
私は並みだが収まるまでその場で蹲った。
悲しい。
悲しいけど、怒りも込み上げてくる。
何故私という婚約者がいながら、別の女性と。
怒りが腹の中で暴れ出すと、今度は絶望感が私に迫る。
あの家を出ることはできない……?
あの方と結婚しなければ、私はまた両親から虐げられる?
「…………」
突然の不安に、息が詰まる。
呼吸が浅くなり、苦しくなってきた。
涙が止まらなくなり、私はその場から動けなる。
何故……何故……。
何故彼は私を裏切ったのか。
そればかりが頭の中をグルグル駆けまわる。
悲しくて悔しくて不安で……
もう動きたくない。
もう生きていたくない。
でもここを離れなければいけない。
こんなことになるなら、今日ここに来なければよかった。
私は涙を拭き、おぼつかない足取りで歩き出す。
帰ろう。
そして家で泣こう。
どれだけ泣いたとしても現実は変わらないけれど。
だけどきっとそうすれば少しぐらいはスッキリするはずだから。
色んな感情が渦を巻き、グチャグチャになっていた。
だけどそれでもこの場を離れることを理解している体が勝手に歩いてくれている。
そんな感じであった。
頭はボーッとしている。
屋敷を出る時、門番の方と挨拶をしたと思う。
でも何を言ったのか覚えていない。
屋敷を離れ、また涙が溢れ、私はその場で膝をつく。
私は不幸で……不幸者だ。
不幸で幸福なんてそんなことなかったのだ。
私はただただ不幸なだけなのだ。
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