さようなら。悪いのは浮気をしたあなたですから

亜綺羅もも

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 ユージンは落ち着かない気持ちのまま、他の貴族との会食に出かけていた。
 アリエスのことが気になって仕方がない。

 一体何故彼女は昨日帰ってしまったのだろうか。
 俺に会いに来てくれた……のだろう。
 だというのに、彼女は顔を見せることなく帰ってしまった。
 
「…………」

 もしかして……女と愛し合ってるところを見られてしまったのか?
 そうだとすれば、彼女が黙って帰ってしまったことに合点がいく。
 何故そのようなタイミングでアリエスは来てしまったのだ!

 隠し事がバレるのは大概そういう物だ。
 たった一度のことだとしても、何故かバレてしまう。
 だがユージンに関しては常習犯。
 門番はユージンがコッソリ女と会っていることなど知りもしなかった。
 ユージンには妹がおり、昨日現れた女は妹の友人だと思っていたのだ。
 だからアリエスが現れたことにも動じず、素直に門をくぐらせてしまった。

 今すぐにでも確かめたいユージンは、ソワソワしながら会食をする。
 そんな彼に、一人の女性が声をかけた。

「ユージン様。お久しぶりでございます」
「ああ……久しぶりだな。少し見ないうちに、ずいぶん綺麗になったな」

 子供の頃から知っている女の子が、美女となっていることにユージンは笑みをこぼす。
 そしてこの美女も、その毒牙にかけようとしていた。

 アリエスのことを心配しているが、欲望がそれを上回る。
 ニヤリと心の中で笑いながら、女性殺しのとびっきりの笑みを彼女に向けていた。
 当然のようにときめく女。
 ユージンの罠にかかったようだ。
 それを瞬時に把握したユージンは、彼女の耳元で囁く。

「今度二人きりで会おう」
「はい……」

 嬉しそうにはにかむ女性。
 ユージンはそんな彼女の手を密かに握る。

 会食も終わり、急いで屋敷へと戻るユージン。
 帰宅した時はすでに夕方となっていたが、門番はまだいた。
 ユージンは馬車を飛び降り、彼に近づく。

「おい、昨日アリエスはどのようにして俺の部屋に向かったのだ?」
「はぁ……ユージン様を驚かせたいということでしたので、庭の方から部屋に向かいましたけど……」
「なっ……」

 庭から俺の部屋に来て……俺たちの姿を見たということか。
 これは完全に勘違い・・・されているぞ。

 ユージンはアリエスのもとへと行くことを決める。

 アリエス……君は勘違いしている。
 俺が愛しているのは君なんだ。
 昨日の女はそんなんじゃない!

 自分が犯した罪のことを棚上げし、アリエスに真の愛を伝えにいこうと考えていたユージン。
 もうすでに破滅の扉は開いているとは知らずに。
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