『悪魔』と呼ばれる侯爵様に拾われたが、溺愛されすぎて戸惑っています。

亜綺羅もも

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「おい、リーン。早くしろ」
「……申し訳ございません」

 私、リーン・ルドウィックは、義兄であるア―ロイの命令で部屋の掃除をさせられていた。
 心を落ち着かせて、冷静に掃除をする。
 
「なあ、またちゃんとした扱いをしてほしいか?」
「…………」

 今私は、ア―ロイから侍女のような扱いを受けている。
 いえ、ア―ロイだけではない。
 ルドウィック家の者たち全員からそういう扱いを受けている。

 私ははこの家に養女としてやって来た。
 そして少し前までは普通に家族として扱ってもらっていたはずだ。

 だがとある事件から、私は彼らに侍女としてしか扱ってもらえなくなった。
 ア―ロイはニヤニヤ笑いながら、私に命令を下す。
 部屋の掃除を隅々までやらされ、そして廊下の掃除も命令される。
 それだけではない。
 彼が目に付く所、全ての掃除を押し付けれるのだ。

 毎回やらされる内容は違う。
 結局のところ、彼らの気分次第だ。

 普通に侍女として扱うのではなく、気分によって酷い内容になる時もあるし、何もやらなくてもいい時もある。
 そこがまた私の心に波を立たせる。
 だから私は心を落ち着かせ、冷静を装うのだ。
  
 苛立ったらきっと言いたいことを全て吐き出してしまう。
 この家を出されるわけにはいかないのだ。
 だって私は、外で生きていく術など持たないのだから。
 普通の女だ。
 何か特別な技術を持っているわけでもない。
 どこかに嫁ぐまでは、ここに置いておいてもわらないと……

「リーン。お前次第では、元の扱い……いや、それ以上の扱いをしてもいいんだぞ? どうだ?」
「……考えさせてください」

 私の言葉に、ア―ロイは喜びを感じたのだろう。 
 片頬を上げ、私の顔を見つめてくる。
 
 私は彼のそんな表情に吐き気を覚えていた。
 人の弱みに付け込んで、無理矢理にでも従わせようとするア―ロイ。
 そんな彼の思考回路にとことん嫌気が差す。

 気をよくしたア―ロイは、掃除の中断を申し出る。
 私は心の中でホッと安堵のため息を吐き、彼に頭を下げた。

「では、私はこれで」
「リーン。答えはいつ聞かせれくれるんだ?」
「……それは、まだなんとも……」

 ア―ロイはニコリと笑い、テーブルに置いていたワインをわざと床にこぼす。

「リーン。掃除を頼む」
「……かしこまりました」

 怒りが腹の中で暴れ出すが、私はそれを必死に抑え込む。
 大きく深呼吸し、雑巾で濡れた床を拭く。
 ア―ロイはそんな私の背中に足を乗せた。

「…………」

 ニヤつくア―ロイに腹を立てつつも、私は無言で拭き掃除をする。
 私は彼に逆らうことができない。
 この家にいる間は……
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