泣けなかった

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泣けなかった3

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高校3年生。それまでの私は部活動におわれる日々でそれ以外、夢中になることはなかった。
進路相談。私は迷っていた。県内の専門学校に行くか県外の大学に行くか。私は県外に行きたい思いがあったが両親には県内にいて欲しいと言われていたからだ。それに今まで続けてきた剣道をやめるのかも選択肢につけ加わってきた。そんなあるとき
「お前にあった大学があったぞ」
担任の赤木先生にそういわれて見せられたのが県外の4年生大学のパンフレットだった。そこには私が取りたい資格もとれて剣道部があった。ただ、ここから約600km車で片道8時間もするところだった。
赤木先生に言われたことをそのまま両親に伝えた。
「剣道部もあるし、資格もちゃんととれていい大学だよ」
もちろん両親は反対。しかし私はその大学に行きたいと強く思い始めた。家からでたいという思いを実現できるのと、将来やりたいことをできるのではないかと思ったからだ。そんな思いを感じ取ったのかある日父が
「好きにしろ」
半分呆れた感じであったがそう言って県外に進学することを許してくれた。
そして受験。難なく受かり、残りの高校生活を謳歌させた。今まで部活三昧だった放課後が華のように輝いた。制服でプリクラ、公園でおしゃべり会、いっぱいのお菓子を持ち寄ってお菓子パーティ。友達といる時間はかけがえのないキラキラとした思い出となった。
毎日遊びまくっていたあるとき、インスタグラムを開くとおすすめに"賢斗"というアカウントを見つけた。アイコンをみて一瞬で誰だが特定できた。そう、中学のときに片想いしていた西野賢斗だった。少し迷ったがフォローすることにした。そうするとフォローリクエストがきた。冷静さを保ちボタンをタップ。そして私はDMで話しかけることにした。
「久しぶり~」
内心ドキドキしながらラフな感じで送ってみた。そうすると意外にも返事は早かった。
「久しぶり!!」
顔が緩む。嬉しかった。好きという感情はなかったが話したいという思いはあったからであった。そして会話が積み重なってゆく。元気にしているのか、高校生活はどうだったのか、3年間お互いがどう過ごしていたかを共有したのだった。西野が通う高校は男子がほとんどで共学だったのに男子校みたいだったらしい。その情報に何故かほっとした。女絡みがもともと少ない西野だったが、高校で出会いが...なんて考えていた自分がいたからだった。この時点で私はまた西野を好きになり始めていたのだろう。
そして会話は過去を振り返るものになった。中学のときの思い出、中学のときの友達の今の話。ピコンピコンとメッセージが行き交う。そしてまたピコンとメッセージが浮かぶ。
「お前、昔もそんなこと言ってたよな」
そのひと言が送られてきた瞬間、妙に嬉しかった。西野の記憶に私がいた。覚えていてくれた。そう思えたからだった。中学を卒業してから1度も会ってない西野にまた惹かれていった。今はどんな姿をしているのか想像できないにも関わらず、好きという感情が膨れ上がるのだった。空白の3年間は私にとってはなんの障害にもならなかった。
次は未来の話をした。
西野は高校を卒業した後には県内の会社に就職するのだそう。しかし私は県外に進学。それも片道8時間もかかる場所に。後悔はしたくない。その一心で会う約束を持ちかけた。返事は"いいよ"の3文字だけ。それだけかよとつっこみたかったがそんなもんなのかと落ち着かない心臓を宥める。
当日、駅に行くと急に電話が鳴った。
「今駅にいるよ、黒の車」
そう、西野は車の免許を持っていたのだった。通話したまま駅の駐車場をキョロキョロ見渡す。
「あーそこの小さい車、黒のやつ」
黒の車を発見。中から西野がこっちに手を振っていた。思った以上に変わってない姿を見て安心した私がいたのだった。車に近づき私はどこに乗ればいいか迷っていた。というのも同級生の車に乗るのは初めてだしましてや好きな人ときたら混乱しかなかった。その姿をみて西野が助手席を指さし
「こっち」
と言った。これでときめかない女の子はいるのだろうか。キュンとしながら助手席側へ回った。行先は映画館。しかし観る映画はもちろんアニメのやつ。恋愛映画が同じ時間に上映されていたがそんなのは選択肢に入らなかった。上映後には感想を言い合った。相変わらず話す内容にオタク要素が全開に含まれている。私は何故かそれが居心地よかった。そしてそのまま帰ることになった。特に行くような場所もなかったからだった。私はここで告白するべきなのか、西野のことを思い出の一部としてそのまま好きという感情もしまっておくのかに悩まされた。そして駅に着いてしまった。"好き"の2文字より先に"今日はありがとう、じゃあね"が口からでた。そしてシートベルトを外し車の外へ。手を振りハンドルをきって道路に出ていく西野を見送った。
そして西野は社会人に。私は大学生になったのであった。
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