28 / 46
蠱毒のテンシ
最後の情け
しおりを挟む
突然現れた光が消えたと思えば、リーベの姿までなくなった。訳のわからない状況に独はついて行けず、数秒間呆然とその場に佇む。止まっていた思考を再び動かしたのは、光とは真逆な色が降り注いだからだった。
「あ……? 羽?」
目の前に、ヒラリと艶のある黒い羽が落ちてきた。なんだと上を見上げようとした瞬間、視界が黒く染まる。それと同時、ギャアギャアと耳障りな鳴き声が聞こえ、鋭い痛みを感じた。
咄嗟に顔を庇いながらも、頭は冷静に正体を探った。それは鳴き声がずいぶんと聞き知ったものだったからだ。鋭い痛みがクチバシと爪であるのを理解したと共に、正体がカラスであると判断した。
「おやめ」
「!」
その声は、静かなのにカラスの鳴き声に邪魔されずに耳に通った。すると、振り払うよりも前に、カラスが声に従って離れていく。
飛んで行くカラスは、小学生くらいなら拐えそうな大きさだ。そんな力強い脚が止まり木に選んだ腕を見て、独は面倒くさそうに舌打ちをした。数羽のカラスに囲まれながら降り立ったのはリーラ。その後ろには、少し不安定に着地した紾の姿もある。
しかしリーベは常に彼女の隣に居る。だからいずれバレるとは思っていたが、予想よりずいぶんと早い。紾の存在から、昨晩のやりとりが伝わったからだと予想できた。
「ごきげんようドク君。リーベとの散歩は楽しかったかね」
「……本人、居ないみたいだけど?」
紾は左右を確認した目を、訝しそうにしかめて首を傾げる。リーラもそれは理解しているようだ。腕に居た大柄なカラスを筆頭に、数羽のカラスに探すよう、指示は既に出している。
「どこにやった?」
浮かべられている笑顔の裏には確実な敵意が滲んでいる。それが分かりながらも、独は挑戦的に笑って返した。
「さあな? 落ち着きのないガキだし、騒いでどっか行っちまった」
嘘はついていない。言い方を変えているだけで、騒がしかったのも知らないうちにどこかへ行ったのも事実だ。仄暗い光を見せるリーラの目が僅かに細くなる。しかしそれは、独の発言を疑っているものではなかった。
カラスに導かれる最中、ここに大きな光が放たれたのを見たのだ。降り立つ直前の独の表情も、驚愕からきていたものだと分かっている。彼は悪どい皮肉屋だが、演技が苦手な正直な人間だ。しかし念には念を置いた方がいい。
リーラは、眉間を寄せて疑わしそうにしている紾に囁く。
「彼はワタシが相手する。その間、リーベが居ないか一応確かめてくれ。頼めるかい?」
「殺すの?」
「いや、まだ用がある」
紾は小さく「ふぅん」と言いながら、独を一瞥する。一瞬向けられた視線の中には、彼に気付かれない程度の哀れみが含まれていた。これから地獄が待っているのを、紾は知っている。
だから忠告したのにと心の中で呟きながら、一羽のカラスと共に離脱した。
「どうする? やるか?」
「まあ、そう急かさないでくれたまえ。残念だが、キミと遊ぶのはワタシじゃない」
「は? じゃあ誰だよ」
リーラは手でカラスに指示を出す。彼女の横に来て器用に留まるカラスたちは、黒い塊のようだ。そんな塊の中に、リーラの腕が突っ込まれる。
「マスターだ」
引き抜かれた手の中に収まっているのは、巨大な赤黒い刃を持つ鎌。彼女の武器を初めて見た独は、ギョッと顔を引き攣らせた。そして大袈裟に、空っぽな両手を見せる。
「おい、俺は武器なんて持ってねえぞ。フェアじゃねえだろ」
「フェア?」
リーラはキョトンとすると、可笑しそうにカラカラと笑った。笑いどころではないと、独は僅かに顔を赤らめて睨む。
「いやぁ、悪い悪い。まさかキミがそんな言葉を知っているとは思わなくてね」
「はあ?」
「自分の戦い方すら知らない赤子を騙して攫う。そんな相手にフェアになろうとは思わんよ」
間違いなく正論だ。リーラは控えるカラスたちへ、片手をあげて指示を出す。彼らを残した目的は攻撃ではなく、独をマスターの元へ送る足になってもたうためだ。あの大きなカラスと違って身を守るような力がないから、できるだけ自分から離れさせたい。可愛い子供たちをこの手で傷付けたくはないのだ。
当然だが、そんな彼女の考えを知らない独は、カラスが背後から近くの電線や木へ離れたのをチャンスだと見た。バレないよう、後ろ手をでたらめに動かす。その瞬間、リーラの周囲を囲むように、地面に小さな穴が開いた。
「?」
その変化に、リーラは視線を下に移動させる。地面から出てきたのは、小指の爪程度の白いクモ。無数の黒い瞳と紫の目が合った瞬間、その体には似合わない太い糸を吐き出した。
糸はリーラの四方を囲み、体に絡みつく。粘りのあった糸は、空気に触れた途端にまるで鋼のように固く、重くなっていた。独が改良した毒虫の一種だ。
主人の手の動きに従うクモは、彼が拳を握ると、女性らしい柔らかな体を締め上げる。その強さのあまりか、鎌を握っていた手が圧力によって地面に転がった。それを見たリーラは、まるで他人事のように頷いた。
「凄いじゃないか、キミの毒虫」
「そうだろう? 俺の可愛いペットだ。そっちも紾かカラスに助けてもらうしかないんじゃねえのか?」
「いや、その必要はない」
ケロッとしている様子が、その言葉を意地には感じさせない。しかしあの糸は改良に改良を重ねた結果、たとえジェット機が引っ張っても、どれだけ腕のいい職人が研いだ刃でも切れない代物。
怪訝そうに見ていると、リーラはグッと腕を広げ、その場で足を蹴り上げる真似をした。糸はあっけなくブチブチと音を立てて、彼女の体を解放させる。
「は?」
まるで綿の糸かのように千切られ、独は魔の抜けた顔をする。リーラは少し汚れたドレスシャツをパンパンと叩き、地面に落ちた鎌を拾った。
「な?」
「いや……チートすぎんだろ」
「失礼だなぁ。体を丈夫にできるだけだよ」
「上限っつうもんがあるんだよ!」
「あっはは! キミ面白いね。……本当に帰ってくる気はないか?」
独はハッとして我にかえる。馴れ合っている場合ではない。時間をかければ、また相手のペースに乗せられる。早急に終わらせなければ。独は最後の問いには答える代わり、彼女の元へ駆け出した。あっという間に距離は縮み、独の体はリーラの胸元に飛び込む。その時、彼女は何かで体を押されたが分かった。遅れて鈍い痛みが走り、やがて激しい激痛は熱となる。
互いの体が離れ、リーラの豊満な胸の中央に残されていたのは、ナイフ。勢いに任された刃は、骨も砕いて深く突き刺さる。呼吸に合わせて、赤黒い血の滲みがじわじわと広がっていった。
「おやおや、武器は持ってないんじゃなかったのかね?」
「あんなん、ハッタリに決まってるだろ」
「そうか……よく分かったよ」
リーラの紫の瞳は、心から残念そうな色を浮かべる。深くため息をつくと、鎌を持つ手を大きく振った。
「あ?」
ボトッと、重たげな音が二つ、足元から聞こえた。何が落ちたのかと、独は音の方を見る。それは二本の腕。
肘から上しかないそれを見た彼の顔は、笑いを浮かべていたが徐々に強張り、やがて目を見開いた。
「お、俺の腕……っ?」
「イタズラする手には、ちょっとお仕置きが必要だからね」
「は? はっ? な」
「あぁほら、落ち着いて。深呼吸だ」
リーラはあやすように、独の頭をポンポンと撫でる。それでも、独は状況を整理できなかった。そもそも彼女は刺されたのだ。どうして一瞬も顔を歪ませず立っていられるのか。
「フム、ちょっとナイフが邪魔だね」
飛び出したナイフの持ち手が邪魔だ。リーラはそのまま、あっさり引き抜く。赤黒い傷跡は、まるで焼けるような音と煙を立て、逆再生するように塞がれていった。
独はその様子を、信じられないと言ったように唖然と見ていた。肘から垂れる血や、体に走る激痛など忘れて叫ぶ。
「な、なんで……なんで無事なんだっ? その刃は、強力な毒で作ったんだぞ?! 人間だけじゃない、悪魔にだって効く!」
「うん、ちょっとピリッとした。キミの技術は素晴らしい。メグル君の次に強い毒だ」
「どういう意味だよ! アンタは悪魔なんだろっ? 悪魔と、人間のハーフだって!」
「? ワタシはたしかにハーフだがね、人間とだなんて、一言も言った覚えはないが?」
呆然としていた独の顔が、サッと青ざめる。すると、突然視界がガクンと落ちた。まるで子供の背丈くらいの視線。何故かと思って見てみれば、今度は両足が切断されている。
独の体はそのままバランスを崩し、丸太のように転がった。赤、白、少し濁った黄色。自分の腕の断面図なんて、生きていて見る機会は滅多にない。
「ど、どうする気だ……っ?」
「さっきも言っただろう。マスターの所へ連れて行くと。その前に死なれたら面倒だから」
リーラはレッグポーチから紐を取り出し、両手足の簡単な止血を行った。そして最後に、細く捻った布を噛ませ、猿ぐつわをする。舌を噛まないよう、念には念を置いた。
独は荒い呼吸をしながら、リーラを睨む。その視線からは、仲間だったのだから慈悲をよこせと言っているのが伝わってくる。リーラはポーチから葉巻を取り出しながら、独の背中に腰を下ろした。
「もちろん、ワタシは仲間として迎えたよ? その手を最後まで取らなかったのは、キミじゃないか」
リーラは最後、戻ってくる気はないかと尋ねた。そこで降参でもしてくれたら、マスターに事情を話し、このまま仲間を継続するつもりだったのだ。
「残念だよ」
煙と共に呟かれた言葉は、まるで独り言のようだった。
「あ……? 羽?」
目の前に、ヒラリと艶のある黒い羽が落ちてきた。なんだと上を見上げようとした瞬間、視界が黒く染まる。それと同時、ギャアギャアと耳障りな鳴き声が聞こえ、鋭い痛みを感じた。
咄嗟に顔を庇いながらも、頭は冷静に正体を探った。それは鳴き声がずいぶんと聞き知ったものだったからだ。鋭い痛みがクチバシと爪であるのを理解したと共に、正体がカラスであると判断した。
「おやめ」
「!」
その声は、静かなのにカラスの鳴き声に邪魔されずに耳に通った。すると、振り払うよりも前に、カラスが声に従って離れていく。
飛んで行くカラスは、小学生くらいなら拐えそうな大きさだ。そんな力強い脚が止まり木に選んだ腕を見て、独は面倒くさそうに舌打ちをした。数羽のカラスに囲まれながら降り立ったのはリーラ。その後ろには、少し不安定に着地した紾の姿もある。
しかしリーベは常に彼女の隣に居る。だからいずれバレるとは思っていたが、予想よりずいぶんと早い。紾の存在から、昨晩のやりとりが伝わったからだと予想できた。
「ごきげんようドク君。リーベとの散歩は楽しかったかね」
「……本人、居ないみたいだけど?」
紾は左右を確認した目を、訝しそうにしかめて首を傾げる。リーラもそれは理解しているようだ。腕に居た大柄なカラスを筆頭に、数羽のカラスに探すよう、指示は既に出している。
「どこにやった?」
浮かべられている笑顔の裏には確実な敵意が滲んでいる。それが分かりながらも、独は挑戦的に笑って返した。
「さあな? 落ち着きのないガキだし、騒いでどっか行っちまった」
嘘はついていない。言い方を変えているだけで、騒がしかったのも知らないうちにどこかへ行ったのも事実だ。仄暗い光を見せるリーラの目が僅かに細くなる。しかしそれは、独の発言を疑っているものではなかった。
カラスに導かれる最中、ここに大きな光が放たれたのを見たのだ。降り立つ直前の独の表情も、驚愕からきていたものだと分かっている。彼は悪どい皮肉屋だが、演技が苦手な正直な人間だ。しかし念には念を置いた方がいい。
リーラは、眉間を寄せて疑わしそうにしている紾に囁く。
「彼はワタシが相手する。その間、リーベが居ないか一応確かめてくれ。頼めるかい?」
「殺すの?」
「いや、まだ用がある」
紾は小さく「ふぅん」と言いながら、独を一瞥する。一瞬向けられた視線の中には、彼に気付かれない程度の哀れみが含まれていた。これから地獄が待っているのを、紾は知っている。
だから忠告したのにと心の中で呟きながら、一羽のカラスと共に離脱した。
「どうする? やるか?」
「まあ、そう急かさないでくれたまえ。残念だが、キミと遊ぶのはワタシじゃない」
「は? じゃあ誰だよ」
リーラは手でカラスに指示を出す。彼女の横に来て器用に留まるカラスたちは、黒い塊のようだ。そんな塊の中に、リーラの腕が突っ込まれる。
「マスターだ」
引き抜かれた手の中に収まっているのは、巨大な赤黒い刃を持つ鎌。彼女の武器を初めて見た独は、ギョッと顔を引き攣らせた。そして大袈裟に、空っぽな両手を見せる。
「おい、俺は武器なんて持ってねえぞ。フェアじゃねえだろ」
「フェア?」
リーラはキョトンとすると、可笑しそうにカラカラと笑った。笑いどころではないと、独は僅かに顔を赤らめて睨む。
「いやぁ、悪い悪い。まさかキミがそんな言葉を知っているとは思わなくてね」
「はあ?」
「自分の戦い方すら知らない赤子を騙して攫う。そんな相手にフェアになろうとは思わんよ」
間違いなく正論だ。リーラは控えるカラスたちへ、片手をあげて指示を出す。彼らを残した目的は攻撃ではなく、独をマスターの元へ送る足になってもたうためだ。あの大きなカラスと違って身を守るような力がないから、できるだけ自分から離れさせたい。可愛い子供たちをこの手で傷付けたくはないのだ。
当然だが、そんな彼女の考えを知らない独は、カラスが背後から近くの電線や木へ離れたのをチャンスだと見た。バレないよう、後ろ手をでたらめに動かす。その瞬間、リーラの周囲を囲むように、地面に小さな穴が開いた。
「?」
その変化に、リーラは視線を下に移動させる。地面から出てきたのは、小指の爪程度の白いクモ。無数の黒い瞳と紫の目が合った瞬間、その体には似合わない太い糸を吐き出した。
糸はリーラの四方を囲み、体に絡みつく。粘りのあった糸は、空気に触れた途端にまるで鋼のように固く、重くなっていた。独が改良した毒虫の一種だ。
主人の手の動きに従うクモは、彼が拳を握ると、女性らしい柔らかな体を締め上げる。その強さのあまりか、鎌を握っていた手が圧力によって地面に転がった。それを見たリーラは、まるで他人事のように頷いた。
「凄いじゃないか、キミの毒虫」
「そうだろう? 俺の可愛いペットだ。そっちも紾かカラスに助けてもらうしかないんじゃねえのか?」
「いや、その必要はない」
ケロッとしている様子が、その言葉を意地には感じさせない。しかしあの糸は改良に改良を重ねた結果、たとえジェット機が引っ張っても、どれだけ腕のいい職人が研いだ刃でも切れない代物。
怪訝そうに見ていると、リーラはグッと腕を広げ、その場で足を蹴り上げる真似をした。糸はあっけなくブチブチと音を立てて、彼女の体を解放させる。
「は?」
まるで綿の糸かのように千切られ、独は魔の抜けた顔をする。リーラは少し汚れたドレスシャツをパンパンと叩き、地面に落ちた鎌を拾った。
「な?」
「いや……チートすぎんだろ」
「失礼だなぁ。体を丈夫にできるだけだよ」
「上限っつうもんがあるんだよ!」
「あっはは! キミ面白いね。……本当に帰ってくる気はないか?」
独はハッとして我にかえる。馴れ合っている場合ではない。時間をかければ、また相手のペースに乗せられる。早急に終わらせなければ。独は最後の問いには答える代わり、彼女の元へ駆け出した。あっという間に距離は縮み、独の体はリーラの胸元に飛び込む。その時、彼女は何かで体を押されたが分かった。遅れて鈍い痛みが走り、やがて激しい激痛は熱となる。
互いの体が離れ、リーラの豊満な胸の中央に残されていたのは、ナイフ。勢いに任された刃は、骨も砕いて深く突き刺さる。呼吸に合わせて、赤黒い血の滲みがじわじわと広がっていった。
「おやおや、武器は持ってないんじゃなかったのかね?」
「あんなん、ハッタリに決まってるだろ」
「そうか……よく分かったよ」
リーラの紫の瞳は、心から残念そうな色を浮かべる。深くため息をつくと、鎌を持つ手を大きく振った。
「あ?」
ボトッと、重たげな音が二つ、足元から聞こえた。何が落ちたのかと、独は音の方を見る。それは二本の腕。
肘から上しかないそれを見た彼の顔は、笑いを浮かべていたが徐々に強張り、やがて目を見開いた。
「お、俺の腕……っ?」
「イタズラする手には、ちょっとお仕置きが必要だからね」
「は? はっ? な」
「あぁほら、落ち着いて。深呼吸だ」
リーラはあやすように、独の頭をポンポンと撫でる。それでも、独は状況を整理できなかった。そもそも彼女は刺されたのだ。どうして一瞬も顔を歪ませず立っていられるのか。
「フム、ちょっとナイフが邪魔だね」
飛び出したナイフの持ち手が邪魔だ。リーラはそのまま、あっさり引き抜く。赤黒い傷跡は、まるで焼けるような音と煙を立て、逆再生するように塞がれていった。
独はその様子を、信じられないと言ったように唖然と見ていた。肘から垂れる血や、体に走る激痛など忘れて叫ぶ。
「な、なんで……なんで無事なんだっ? その刃は、強力な毒で作ったんだぞ?! 人間だけじゃない、悪魔にだって効く!」
「うん、ちょっとピリッとした。キミの技術は素晴らしい。メグル君の次に強い毒だ」
「どういう意味だよ! アンタは悪魔なんだろっ? 悪魔と、人間のハーフだって!」
「? ワタシはたしかにハーフだがね、人間とだなんて、一言も言った覚えはないが?」
呆然としていた独の顔が、サッと青ざめる。すると、突然視界がガクンと落ちた。まるで子供の背丈くらいの視線。何故かと思って見てみれば、今度は両足が切断されている。
独の体はそのままバランスを崩し、丸太のように転がった。赤、白、少し濁った黄色。自分の腕の断面図なんて、生きていて見る機会は滅多にない。
「ど、どうする気だ……っ?」
「さっきも言っただろう。マスターの所へ連れて行くと。その前に死なれたら面倒だから」
リーラはレッグポーチから紐を取り出し、両手足の簡単な止血を行った。そして最後に、細く捻った布を噛ませ、猿ぐつわをする。舌を噛まないよう、念には念を置いた。
独は荒い呼吸をしながら、リーラを睨む。その視線からは、仲間だったのだから慈悲をよこせと言っているのが伝わってくる。リーラはポーチから葉巻を取り出しながら、独の背中に腰を下ろした。
「もちろん、ワタシは仲間として迎えたよ? その手を最後まで取らなかったのは、キミじゃないか」
リーラは最後、戻ってくる気はないかと尋ねた。そこで降参でもしてくれたら、マスターに事情を話し、このまま仲間を継続するつもりだったのだ。
「残念だよ」
煙と共に呟かれた言葉は、まるで独り言のようだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
拾われ子のスイ
蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】
記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。
幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。
老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。
――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。
スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。
出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。
清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。
これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。
※週2回(木・日)更新。
※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。
※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載)
※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる