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3.王妃の買収
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そうこうしているうちに、突然エリオットは王妃から呼び出しを受けた。
エリオットは「まさかお妾殿の件では」と身構えたが、同時に「お妾殿の口から以外に、俺がお妾殿に何か言われたなんて証拠ないしな」と自分を慰めようとした。
が。果たして、会ってみた王妃の態度は冷たいもので、エリオットはお妾殿の件と関連付けないわけにはいかなかった。
王妃はエリオットを探るような目で見た。
「あなた最近様子が変よねえ」
エリオットはドキッとしたが、できるだけ平静を装ってしらばっくれる。
「えっと、あの、何が変でしょうか?」
王妃の目が鋭くなった。
「国王陛下の周りをうろつきまわっているでしょう」
バレてるっ! エリオットは汗が噴き出るのを感じた。
「いや~ははは、何のことでしょうか、ねぇ」
しかし王妃はぴしゃりと言い返す。
「しらばっくれても無駄よ。あなたの行動を調べてもらいました。昨日は国王陛下の謁見の終わりを見計らって広間をうろついていたし、一昨日は朝の出仕の時間にわざわざ大廊下を張っていましたね。先週は国王陛下とランチをご一緒したそうじゃないの」
「うわっなんで私の行動をそんなに把握してるんです。ストーカーですか!?」
エリオットは思わずぞっとすると、王妃はニヤリと笑った。
「ええ、あなたのストーカーに頼みました。ウィンウィンってやつですわよ」
エリオットは思わず反応した。
「はあ!? なんですかウィンウィンって!? というか私のストーカー? それならぜひ正面から来るよう言ってください、美人で巨乳なら悪いようにはしません!」
「美人で巨乳なら誰でも? 変態ですかっ!」
「変態で何が悪いんですか、男は皆女が大好きですっ!」
「だってその女、ストーカーですよ!?」
「ええ~っ! あなたが私のストーカーを放っておいて、それを言うんですか!?」
エリオットは抗議の声をあげた。
王妃はむっとする。
「あなたの方が陛下のストーカーですっ。陛下のまわりを四六時中ウロウロして」
エリオットはそれを言われると途端に立場が弱くなる。
「あ、は、え、えっと。すみませんでした。え~っと、わ、私はただの腰巾着でして……。決して待ち伏せしているわけでは……」
語尾がもごもごする。
王妃はキッとエリオットを睨む。
「何を嗅ぎまわってるの」
「な、何も嗅ぎまわってません……」
「嘘おっしゃいっ! 嗅ぎまわってるでしょ!? 偽証罪で獄門死させますよっ」
「うわ、脅し! 態度の豹変が半端なさすぎます」
「それで!? 言うの言わないの!?」
王妃が片手を挙げ侍女に何か司法の紙を持ってこさせようとする仕草を見せたので、エリオットは「ひいっ」と小さく呻いた。王妃を阻止しようとエリオットは慌てて両手を上げる。
「あああ~待ってくださいっ! はい、私、国王陛下のまわりを全力で嗅ぎまわっておりますっ」
王妃は手を止めた。
「ほう、なんで? まさかリーガンから変な依頼でも受けてる?」
エリオットは嫌な汗が流れた。
「いや~ははは、まさかあ……」
「ほんとのこと言いなさいよ?」
王妃がまた侍女に目配せしようとする。
エリオットはビクッとなった。
「あああ~待ってくださいっ! はい、お妾殿に命令されたんです!」
王妃は鋭い目をエリオットに向ける。
「あの妾から泣きつかれたんでしょう」
「いいえ(泣きつかれたわけでは)」
エリオットは小さく首を振った。
しかし王妃は信じない。
「残念ですが国王陛下は妾には会わせません」
とぴしゃりと言った。
それにはエリオットも少し驚いて冷静になった。
「へ? あ、でもリーガン殿は公式の妾ってやつでは?」
「なんですか、その『公式の妾』ってやつは」
王妃が眉を顰める。
「あっ。そうですね、そういえば私もおんなじこと思いました」
王妃の目がキランと光った。
「いつ? もしやあの妾がそう主張した? 『公式の妾』だとか?」
「ええ、その通りで」
エリオットが肯定すると、王妃嫌そうな顔をした。
王妃が口ごもったのでエリオットは少し調子を取り戻した。
「それに先週話したときは国王陛下はお妾殿のことを一応気にしていらっしゃいましたよ。それがお会いにならないのだから何か仕掛けでもありそうですね?」
王妃はふんっと鼻を鳴らした。
「ええ。いい薬を手に入れたのでね」
エリオットは驚いた。
「薬ですか、そりゃすごいウルトラアイテムが出てきたもんですね」
王妃はそこまで話してすっかり開き直ったしまった。
「ええ。飲んだら目の前の女しか眼中になくなる薬」
エリオットはまたしても驚いた。
「なんて単純な! しかしまた、すんごく都合のいい薬を手に入れましたね」
王妃は肯いた。
「ええ。そろそろいい加減、跡継ぎ欲しいし。妾なんぞに行ってもらいたくないし。なーんて思ってたら、都合よく怪しげな真っ黒ローブを纏った男が売りに来て」
「うわー怪しい。なんか頭の中まで本物っぽい。よくそんな男から買う気になりましたね」
「そんないい方されたら私が恥ずかしくなるじゃないの! でもほら、人は見かけによらないかもしれないでしょ」
王妃は少し顔を赤くした。
「いや、見たまんまだったんですよね。まあ効いて何よりです」
エリオットは苦笑した。
「そ、そうよ、効いて何より。毎日晩餐時に薬混ぜ込んだ甲斐があったというものよ。毎晩妾のことなんかすっかりお忘れ」
王妃はなんだかやけくそになっている。
「謎が解けましたよ、王妃様。オッケーです。お妾殿にはその旨伝えときます。ちなみに薬は、料理? 飲み物? 何に入れるんですか?」
「むっちゃ詳しく聞くじゃないの。何を企んでいるの、エリオット」
「いや~お妾殿に女の子紹介してもらう約束してるんで」
エリオットは屈託なく答えた。
「買収されとる!」
エリオットは「ははは」と笑った。
「こっちも切実なんで」
王妃は呆れた。
「あの妾の味方を続ける気? 私は王妃よ。王妃を敵にしていいことないでしょ」
「分かりやすい脅迫きた~!」
王妃はニヤリと笑った。
「じゃあ、そのご令嬢への口利きやってあげるから私の味方になりなさい。王妃からの紹介ならそのご令嬢だってやすやす断れないでしょ?」
「うわっ! 買収の応酬! そして立場を最大限に利用するえげつなさ!」
王妃はエリオットの言葉にフフッと笑った。
「悪い話じゃないでしょうが」
エリオットは大きく頷いた。
「はいっ! 長い物には巻かれろというのが信条です!」
王妃も満足そうに頷いた。
「分かってくれて嬉しいわ。物わかりのいいのは大好き。出世も口を利いてあげるから安心して任せておきなさい」
「はい! アルテミア嬢への口利きはくれぐれもよろしくお願いします」
エリオットは抜かりなく念を押した。
エリオットは「まさかお妾殿の件では」と身構えたが、同時に「お妾殿の口から以外に、俺がお妾殿に何か言われたなんて証拠ないしな」と自分を慰めようとした。
が。果たして、会ってみた王妃の態度は冷たいもので、エリオットはお妾殿の件と関連付けないわけにはいかなかった。
王妃はエリオットを探るような目で見た。
「あなた最近様子が変よねえ」
エリオットはドキッとしたが、できるだけ平静を装ってしらばっくれる。
「えっと、あの、何が変でしょうか?」
王妃の目が鋭くなった。
「国王陛下の周りをうろつきまわっているでしょう」
バレてるっ! エリオットは汗が噴き出るのを感じた。
「いや~ははは、何のことでしょうか、ねぇ」
しかし王妃はぴしゃりと言い返す。
「しらばっくれても無駄よ。あなたの行動を調べてもらいました。昨日は国王陛下の謁見の終わりを見計らって広間をうろついていたし、一昨日は朝の出仕の時間にわざわざ大廊下を張っていましたね。先週は国王陛下とランチをご一緒したそうじゃないの」
「うわっなんで私の行動をそんなに把握してるんです。ストーカーですか!?」
エリオットは思わずぞっとすると、王妃はニヤリと笑った。
「ええ、あなたのストーカーに頼みました。ウィンウィンってやつですわよ」
エリオットは思わず反応した。
「はあ!? なんですかウィンウィンって!? というか私のストーカー? それならぜひ正面から来るよう言ってください、美人で巨乳なら悪いようにはしません!」
「美人で巨乳なら誰でも? 変態ですかっ!」
「変態で何が悪いんですか、男は皆女が大好きですっ!」
「だってその女、ストーカーですよ!?」
「ええ~っ! あなたが私のストーカーを放っておいて、それを言うんですか!?」
エリオットは抗議の声をあげた。
王妃はむっとする。
「あなたの方が陛下のストーカーですっ。陛下のまわりを四六時中ウロウロして」
エリオットはそれを言われると途端に立場が弱くなる。
「あ、は、え、えっと。すみませんでした。え~っと、わ、私はただの腰巾着でして……。決して待ち伏せしているわけでは……」
語尾がもごもごする。
王妃はキッとエリオットを睨む。
「何を嗅ぎまわってるの」
「な、何も嗅ぎまわってません……」
「嘘おっしゃいっ! 嗅ぎまわってるでしょ!? 偽証罪で獄門死させますよっ」
「うわ、脅し! 態度の豹変が半端なさすぎます」
「それで!? 言うの言わないの!?」
王妃が片手を挙げ侍女に何か司法の紙を持ってこさせようとする仕草を見せたので、エリオットは「ひいっ」と小さく呻いた。王妃を阻止しようとエリオットは慌てて両手を上げる。
「あああ~待ってくださいっ! はい、私、国王陛下のまわりを全力で嗅ぎまわっておりますっ」
王妃は手を止めた。
「ほう、なんで? まさかリーガンから変な依頼でも受けてる?」
エリオットは嫌な汗が流れた。
「いや~ははは、まさかあ……」
「ほんとのこと言いなさいよ?」
王妃がまた侍女に目配せしようとする。
エリオットはビクッとなった。
「あああ~待ってくださいっ! はい、お妾殿に命令されたんです!」
王妃は鋭い目をエリオットに向ける。
「あの妾から泣きつかれたんでしょう」
「いいえ(泣きつかれたわけでは)」
エリオットは小さく首を振った。
しかし王妃は信じない。
「残念ですが国王陛下は妾には会わせません」
とぴしゃりと言った。
それにはエリオットも少し驚いて冷静になった。
「へ? あ、でもリーガン殿は公式の妾ってやつでは?」
「なんですか、その『公式の妾』ってやつは」
王妃が眉を顰める。
「あっ。そうですね、そういえば私もおんなじこと思いました」
王妃の目がキランと光った。
「いつ? もしやあの妾がそう主張した? 『公式の妾』だとか?」
「ええ、その通りで」
エリオットが肯定すると、王妃嫌そうな顔をした。
王妃が口ごもったのでエリオットは少し調子を取り戻した。
「それに先週話したときは国王陛下はお妾殿のことを一応気にしていらっしゃいましたよ。それがお会いにならないのだから何か仕掛けでもありそうですね?」
王妃はふんっと鼻を鳴らした。
「ええ。いい薬を手に入れたのでね」
エリオットは驚いた。
「薬ですか、そりゃすごいウルトラアイテムが出てきたもんですね」
王妃はそこまで話してすっかり開き直ったしまった。
「ええ。飲んだら目の前の女しか眼中になくなる薬」
エリオットはまたしても驚いた。
「なんて単純な! しかしまた、すんごく都合のいい薬を手に入れましたね」
王妃は肯いた。
「ええ。そろそろいい加減、跡継ぎ欲しいし。妾なんぞに行ってもらいたくないし。なーんて思ってたら、都合よく怪しげな真っ黒ローブを纏った男が売りに来て」
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「そんないい方されたら私が恥ずかしくなるじゃないの! でもほら、人は見かけによらないかもしれないでしょ」
王妃は少し顔を赤くした。
「いや、見たまんまだったんですよね。まあ効いて何よりです」
エリオットは苦笑した。
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王妃はなんだかやけくそになっている。
「謎が解けましたよ、王妃様。オッケーです。お妾殿にはその旨伝えときます。ちなみに薬は、料理? 飲み物? 何に入れるんですか?」
「むっちゃ詳しく聞くじゃないの。何を企んでいるの、エリオット」
「いや~お妾殿に女の子紹介してもらう約束してるんで」
エリオットは屈託なく答えた。
「買収されとる!」
エリオットは「ははは」と笑った。
「こっちも切実なんで」
王妃は呆れた。
「あの妾の味方を続ける気? 私は王妃よ。王妃を敵にしていいことないでしょ」
「分かりやすい脅迫きた~!」
王妃はニヤリと笑った。
「じゃあ、そのご令嬢への口利きやってあげるから私の味方になりなさい。王妃からの紹介ならそのご令嬢だってやすやす断れないでしょ?」
「うわっ! 買収の応酬! そして立場を最大限に利用するえげつなさ!」
王妃はエリオットの言葉にフフッと笑った。
「悪い話じゃないでしょうが」
エリオットは大きく頷いた。
「はいっ! 長い物には巻かれろというのが信条です!」
王妃も満足そうに頷いた。
「分かってくれて嬉しいわ。物わかりのいいのは大好き。出世も口を利いてあげるから安心して任せておきなさい」
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