10 / 21
第1章 浮気者の公爵令息に婚約破棄されましたが推しの王子を愛でるので問題ありません
【10.王妃の園遊会 後編】
しおりを挟む
数羽のスズメがチュンチュンと可愛らしい鳴き声を上げながら空から舞い降りてきた。
スズメはさすがにテーブルの上の物には手を付けなかったが、地面には遠慮なく降り、そこに落ちていたグミを興味半分につんつんと突いた。
いや~、その途端。
グミを食べたスズメが「ジュジュっ! ギャー!」とスズメとは思えない声で喚きだした。
聞きなれない鳥の声に、周囲の人々はぎょっとして振り返る。
地面のグミを食べたスズメは一匹ではなかったらしい。
「ジュ。ジュジュ」
「グェアー」
「ギュ、ギュン」
野太い変なでっかい声でスズメは鳴きまくっている。
本人たちはさえずっているつもりなのだろうか。何だかその表情は心なしか苦しそうだ。鳴くつもりはないのに、嘴が半開きで唸り声が出てくるらしい。
「えっと、ス、スズメ……?」
「毒でも食べたか?」
周りの人はドン引きしている。
「何この騒音」
人も集まって来る。
その光景を見たメルディアーナは大汗をかいていた。
何これ、私が食べてたら、私の声もこんなんになって、こんな風にひっきりなしに喋ることになってたわけ?
あの商人、私に何を売りつけたのよ~。
フリーダも気持ち悪そうにスズメを見ていた。
「ちょっと。あのドルチェ、あなたが持ってたものよね? 何でスズメがあんなことになってるのよ?」
「え? 何かしらね。ひと様の物を食べるんじゃありませんってことかしら」
「いや、そんなバカな。ってゆか、毒? あなたダナン様に毒を盛るつもりだったの?」
「んなわけないでしょ。毒じゃないわよ、ほら、スズメだってとっても元気そうじゃないの!」
「いや、苦しそうよ? 目ぇ剥いてるじゃないの」
「違うわよ、あれは絶好調って様子よ」
メルディアーナとフリーダがスズメを指差してあーでもないこーでもないと罵りあっていると、その騒ぎを聞きつけて、マーシェル王子がやってきた。
「あ、マーシェル王子!」
メルディアーナが目ざとく見つけて歓喜で顔を輝かせた。
しかしマーシェル王子の方はげっそりとした顔をしている。
「何の騒ぎだ……って、また、あなたですか……」
「ま、またって何ですか」
メルディアーナがぎくっとなる。
その声を聞くとマーシェル王子はどうにもあの塔の令嬢が思い出されて仕方がない。なんとなく心がかき乱される気がする。
しかし、この令嬢は乳母のコルウェル伯爵夫人の娘。あの塔の令嬢ではないはずで……。
マーシェル王子は雑念を振り払うように軽く頭を振ると、メルディアーナを揶揄うように言った。
「君はコルウェル伯爵夫人の娘だったね。今日はイモリじゃなくてスズメ……」
「イモリとかスズメとか言わないで……!」
メルディアーナが悲鳴を上げると、フリーダが、マーシェル王子が何となく他の令嬢よりメルディアーナに対して距離感が近い話しかけ方をしているのを敏感に察知して、何となく危険を感じ割って入った。
「マーシェル王子! この人とお話する価値はありませんわ! この人はただの疫病神です」
ダナンのことをマーシェル王子に訴えられたら困ると思ったのだろう。
マーシェル王子はフリーダの牽制牽制するような声に驚いたが、
「疫病神……確かに……」
と呟いたので、メルディアーナは、
「確かにって何!? 私はマーシェル王子にお会いしたいだけなのに!」
と嘆きの声を上げた。
「ほら、マーシェル王子もああやって仰ってるわよ、さっさと退出しなさいよ、メルディアーナ!」
とフリーダが断固たる口調で言ってのけると、マーシェル王子がハッとした顔で振り返った。
メルディアーナ?
メルディアーナと言ったか?
あの塔の入口では誰かが令嬢に向かって『メ……ア……』と呼んだ!
声も聞き覚えがあるものだと思ったのだ。ということは、この令嬢は……!
マーシェル王子は目を見開き、顔を引きつらせている。
その様子を見てメルディアーナもピンときた。
あ、フリーダが『メルディアーナ』と私の名前を言ったんだ。それでこの表情ということは……!
「あ、あの……!」
メルディアーナは勇気を出してあのときのことを話して見ようかと思った。
しかし、マーシェル王子は動揺している。
「メルディアーナといったね? まさか、私と塔で会っている?」
「は、はい!」
メルディアーナが大きく頷くと、マーシェル王子はよけいに戸惑った顔をして、
「すまない、少し混乱している。席を外させてもらう……」
と少しおぼつかない足取りで立ち去ってしまった。
ガーン。
メルディアーナはマーシェル王子がどんな気持ちなのか推し量れず、ただ素っ気なく立ち去ってしまったことにショックを受けた。
フリーダの方は、マーシェル王子が立ち去った以上、メルディアーナがマーシェル王子にダナンとの復縁をお願いしなくてすむと、分かりやすく顔に出して喜んでいる。
そのとき、そこへギルバートが駆けてきた。
「大丈夫か、メルディアーナ。スズメの件でフリーダと喧嘩していると聞いたから……! って何、そんなにがっかりした様子で!」
メルディアーナはどよんとした視線をギルバートに向けた。
「スズメは別に……」
じゃあダナンの件で何かフリーダに言われたか!?
確かにフリーダはなにやら勝ち誇った表情をしている!
ギルバートはちらりとフリーダを見て言から、打ちひしがれているメルディアーナに目を落した。
もうここんとこずっとメルディアーナはダナンのことで心を砕きすぎている。(※誤解です。)
メルディアーナが気の毒だ。そんなに悪い子じゃないのにな……。
そう思うとギルバートは小さくため息をついた。
ここまで乗り掛かった舟だ。
僕でよかったら、これからもメルディアーナを支えてやろう。幸い自分にも恋人などはいないわけだし。
ギルバートはメルディアーナを慰めるようにそっと背を撫でてやった。
スズメはさすがにテーブルの上の物には手を付けなかったが、地面には遠慮なく降り、そこに落ちていたグミを興味半分につんつんと突いた。
いや~、その途端。
グミを食べたスズメが「ジュジュっ! ギャー!」とスズメとは思えない声で喚きだした。
聞きなれない鳥の声に、周囲の人々はぎょっとして振り返る。
地面のグミを食べたスズメは一匹ではなかったらしい。
「ジュ。ジュジュ」
「グェアー」
「ギュ、ギュン」
野太い変なでっかい声でスズメは鳴きまくっている。
本人たちはさえずっているつもりなのだろうか。何だかその表情は心なしか苦しそうだ。鳴くつもりはないのに、嘴が半開きで唸り声が出てくるらしい。
「えっと、ス、スズメ……?」
「毒でも食べたか?」
周りの人はドン引きしている。
「何この騒音」
人も集まって来る。
その光景を見たメルディアーナは大汗をかいていた。
何これ、私が食べてたら、私の声もこんなんになって、こんな風にひっきりなしに喋ることになってたわけ?
あの商人、私に何を売りつけたのよ~。
フリーダも気持ち悪そうにスズメを見ていた。
「ちょっと。あのドルチェ、あなたが持ってたものよね? 何でスズメがあんなことになってるのよ?」
「え? 何かしらね。ひと様の物を食べるんじゃありませんってことかしら」
「いや、そんなバカな。ってゆか、毒? あなたダナン様に毒を盛るつもりだったの?」
「んなわけないでしょ。毒じゃないわよ、ほら、スズメだってとっても元気そうじゃないの!」
「いや、苦しそうよ? 目ぇ剥いてるじゃないの」
「違うわよ、あれは絶好調って様子よ」
メルディアーナとフリーダがスズメを指差してあーでもないこーでもないと罵りあっていると、その騒ぎを聞きつけて、マーシェル王子がやってきた。
「あ、マーシェル王子!」
メルディアーナが目ざとく見つけて歓喜で顔を輝かせた。
しかしマーシェル王子の方はげっそりとした顔をしている。
「何の騒ぎだ……って、また、あなたですか……」
「ま、またって何ですか」
メルディアーナがぎくっとなる。
その声を聞くとマーシェル王子はどうにもあの塔の令嬢が思い出されて仕方がない。なんとなく心がかき乱される気がする。
しかし、この令嬢は乳母のコルウェル伯爵夫人の娘。あの塔の令嬢ではないはずで……。
マーシェル王子は雑念を振り払うように軽く頭を振ると、メルディアーナを揶揄うように言った。
「君はコルウェル伯爵夫人の娘だったね。今日はイモリじゃなくてスズメ……」
「イモリとかスズメとか言わないで……!」
メルディアーナが悲鳴を上げると、フリーダが、マーシェル王子が何となく他の令嬢よりメルディアーナに対して距離感が近い話しかけ方をしているのを敏感に察知して、何となく危険を感じ割って入った。
「マーシェル王子! この人とお話する価値はありませんわ! この人はただの疫病神です」
ダナンのことをマーシェル王子に訴えられたら困ると思ったのだろう。
マーシェル王子はフリーダの牽制牽制するような声に驚いたが、
「疫病神……確かに……」
と呟いたので、メルディアーナは、
「確かにって何!? 私はマーシェル王子にお会いしたいだけなのに!」
と嘆きの声を上げた。
「ほら、マーシェル王子もああやって仰ってるわよ、さっさと退出しなさいよ、メルディアーナ!」
とフリーダが断固たる口調で言ってのけると、マーシェル王子がハッとした顔で振り返った。
メルディアーナ?
メルディアーナと言ったか?
あの塔の入口では誰かが令嬢に向かって『メ……ア……』と呼んだ!
声も聞き覚えがあるものだと思ったのだ。ということは、この令嬢は……!
マーシェル王子は目を見開き、顔を引きつらせている。
その様子を見てメルディアーナもピンときた。
あ、フリーダが『メルディアーナ』と私の名前を言ったんだ。それでこの表情ということは……!
「あ、あの……!」
メルディアーナは勇気を出してあのときのことを話して見ようかと思った。
しかし、マーシェル王子は動揺している。
「メルディアーナといったね? まさか、私と塔で会っている?」
「は、はい!」
メルディアーナが大きく頷くと、マーシェル王子はよけいに戸惑った顔をして、
「すまない、少し混乱している。席を外させてもらう……」
と少しおぼつかない足取りで立ち去ってしまった。
ガーン。
メルディアーナはマーシェル王子がどんな気持ちなのか推し量れず、ただ素っ気なく立ち去ってしまったことにショックを受けた。
フリーダの方は、マーシェル王子が立ち去った以上、メルディアーナがマーシェル王子にダナンとの復縁をお願いしなくてすむと、分かりやすく顔に出して喜んでいる。
そのとき、そこへギルバートが駆けてきた。
「大丈夫か、メルディアーナ。スズメの件でフリーダと喧嘩していると聞いたから……! って何、そんなにがっかりした様子で!」
メルディアーナはどよんとした視線をギルバートに向けた。
「スズメは別に……」
じゃあダナンの件で何かフリーダに言われたか!?
確かにフリーダはなにやら勝ち誇った表情をしている!
ギルバートはちらりとフリーダを見て言から、打ちひしがれているメルディアーナに目を落した。
もうここんとこずっとメルディアーナはダナンのことで心を砕きすぎている。(※誤解です。)
メルディアーナが気の毒だ。そんなに悪い子じゃないのにな……。
そう思うとギルバートは小さくため息をついた。
ここまで乗り掛かった舟だ。
僕でよかったら、これからもメルディアーナを支えてやろう。幸い自分にも恋人などはいないわけだし。
ギルバートはメルディアーナを慰めるようにそっと背を撫でてやった。
19
あなたにおすすめの小説
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。
かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。
謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇!
※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
婚約を奪った義妹は王太子妃になりましたが、王子が廃嫡され“廃嫡王子の妻”になりました
鷹 綾
恋愛
「お姉様には、こちらの方がお似合いですわ」
そう言って私の婚約者を奪ったのは、可憐で愛らしい義妹でした。
王子に見初められ、王太子妃となり、誰もが彼女の勝利を疑わなかった――あの日までは。
私は“代わり”の婚約者を押し付けられ、笑いものにされ、社交界の端に追いやられました。
けれど、選ばれなかったことは、終わりではありませんでした。
華やかな王宮。
厳しい王妃許育。
揺らぐ王家の威信。
そして――王子の重大な過ち。
王太子の座は失われ、運命は静かに反転していく。
離縁を望んでも叶わない義妹。
肩書きを失ってなお歩き直す王子。
そして、奪われたはずの私が最後に選び取った人生。
ざまあは、怒鳴り声ではなく、選択の積み重ねで訪れる。
婚約を奪われた姉が、静かに価値を積み上げていく王宮逆転劇。
婚約破棄すると言われたので、これ幸いとダッシュで逃げました。殿下、すみませんが追いかけてこないでください。
桜乃
恋愛
ハイネシック王国王太子、セルビオ・エドイン・ハイネシックが舞踏会で高らかに言い放つ。
「ミュリア・メリッジ、お前とは婚約を破棄する!」
「はい、喜んで!」
……えっ? 喜んじゃうの?
※約8000文字程度の短編です。6/17に完結いたします。
※1ページの文字数は少な目です。
☆番外編「出会って10秒でひっぱたかれた王太子のお話」
セルビオとミュリアの出会いの物語。
※10/1から連載し、10/7に完結します。
※1日おきの更新です。
※1ページの文字数は少な目です。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年12月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる