浮気者の公爵令息に婚約破棄されましたが推しの王子を愛でるので問題ありません――と思っていたら、推しの王子とまさかの両想いでした。やったぁ…!

幌あきら

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第1章 浮気者の公爵令息に婚約破棄されましたが推しの王子を愛でるので問題ありません

【10.王妃の園遊会 後編】

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 数羽のスズメがチュンチュンと可愛らしい鳴き声を上げながら空から舞い降りてきた。
 スズメはさすがにテーブルの上の物には手を付けなかったが、地面には遠慮なく降り、そこに落ちていたグミを興味半分につんつんとつついた。

 いや~、その途端。
 グミを食べたスズメが「ジュジュっ! ギャー!」とスズメとは思えない声でわめきだした。

 聞きなれない鳥の声に、周囲の人々はぎょっとして振り返る。

 地面のグミを食べたスズメは一匹ではなかったらしい。
「ジュ。ジュジュ」
「グェアー」
「ギュ、ギュン」

 野太い変なでっかい声でスズメは鳴きまくっている。
 本人たちはさえずっているつもりなのだろうか。何だかその表情は心なしか苦しそうだ。鳴くつもりはないのに、くちばしが半開きでうなり声が出てくるらしい。

「えっと、ス、スズメ……?」
「毒でも食べたか?」
 周りの人はドン引きしている。
「何この騒音」
 人も集まって来る。

 その光景を見たメルディアーナは大汗をかいていた。
 何これ、私が食べてたら、私の声もこんなんになって、こんな風にひっきりなしにしゃべることになってたわけ?
 あの商人、私に何を売りつけたのよ~。

 フリーダも気持ち悪そうにスズメを見ていた。
「ちょっと。あのドルチェ、あなたが持ってたものよね? 何でスズメがあんなことになってるのよ?」

「え? 何かしらね。ひと様の物を食べるんじゃありませんってことかしら」

「いや、そんなバカな。ってゆか、毒? あなたダナン様に毒を盛るつもりだったの?」

「んなわけないでしょ。毒じゃないわよ、ほら、スズメだってとっても元気そうじゃないの!」

「いや、苦しそうよ? 目ぇいてるじゃないの」

「違うわよ、あれは絶好調って様子よ」

 メルディアーナとフリーダがスズメを指差してあーでもないこーでもないとののしりあっていると、その騒ぎを聞きつけて、マーシェル王子がやってきた。

「あ、マーシェル王子!」
 メルディアーナが目ざとく見つけて歓喜で顔を輝かせた。

 しかしマーシェル王子の方はげっそりとした顔をしている。
「何の騒ぎだ……って、また、あなたですか……」

「ま、またって何ですか」
 メルディアーナがぎくっとなる。

 その声を聞くとマーシェル王子はどうにもあの塔の令嬢が思い出されて仕方がない。なんとなく心がかき乱される気がする。
 しかし、この令嬢は乳母のコルウェル伯爵夫人の娘。あの塔の令嬢ではないはずで……。

 マーシェル王子は雑念を振り払うように軽く頭を振ると、メルディアーナを揶揄からかうように言った。
「君はコルウェル伯爵夫人の娘だったね。今日はイモリじゃなくてスズメ……」

「イモリとかスズメとか言わないで……!」
 メルディアーナが悲鳴を上げると、フリーダが、マーシェル王子が何となく他の令嬢よりメルディアーナに対して距離感が近い話しかけ方をしているのを敏感に察知して、何となく危険を感じ割って入った。
「マーシェル王子! この人メルディアーナとお話する価値はありませんわ! この人はただの疫病神やくびょうがみです」
 ダナンのことをマーシェル王子に訴えられたら困ると思ったのだろう。

 マーシェル王子はフリーダの牽制けんせい牽制けんせいするような声に驚いたが、
「疫病神……確かに……」
つぶやいたので、メルディアーナは、
「確かにって何!? 私はマーシェル王子にお会いしたいだけなのに!」
なげきの声を上げた。

「ほら、マーシェル王子もああやっておっしゃってるわよ、さっさと退出しなさいよ、メルディアーナ!」
とフリーダが断固たる口調で言ってのけると、マーシェル王子がハッとした顔で振り返った。

 メルディアーナ?
 メルディアーナと言ったか?
 あの塔の入口では誰かが令嬢に向かって『メ……ア……』と呼んだ!
 声も聞き覚えがあるものだと思ったのだ。ということは、この令嬢は……!

 マーシェル王子は目を見開き、顔を引きつらせている。

 その様子を見てメルディアーナもピンときた。
 あ、フリーダが『メルディアーナ』と私の名前を言ったんだ。それでこの表情ということは……!

「あ、あの……!」
 メルディアーナは勇気を出してあのときのことを話して見ようかと思った。

 しかし、マーシェル王子は動揺している。
「メルディアーナといったね? まさか、私と塔で会っている?」

「は、はい!」
 メルディアーナが大きくうなずくと、マーシェル王子はよけいに戸惑とまどった顔をして、
「すまない、少し混乱している。席を外させてもらう……」
と少しおぼつかない足取りで立ち去ってしまった。

 ガーン。
 メルディアーナはマーシェル王子がどんな気持ちなのか推し量れず、ただ素っ気なく立ち去ってしまったことにショックを受けた。

 フリーダの方は、マーシェル王子が立ち去った以上、メルディアーナがマーシェル王子にダナンとの復縁をお願いしなくてすむと、分かりやすく顔に出して喜んでいる。

 そのとき、そこへギルバートが駆けてきた。
「大丈夫か、メルディアーナ。スズメの件でフリーダと喧嘩していると聞いたから……! って何、そんなにがっかりした様子で!」

 メルディアーナはどよんとした視線をギルバートに向けた。
「スズメは別に……」

 じゃあダナンの件で何かフリーダに言われたか!?
 確かにフリーダはなにやら勝ち誇った表情をしている!

 ギルバートはちらりとフリーダを見て言から、打ちひしがれているメルディアーナに目を落した。

 もうここんとこずっとメルディアーナはダナンのことで心を砕きすぎている。(※誤解です。)
 メルディアーナが気の毒だ。そんなに悪い子じゃないのにな……。

 そう思うとギルバートは小さくため息をついた。
 ここまで乗り掛かった舟だ。
 僕でよかったら、これからもメルディアーナを支えてやろう。幸い自分にも恋人などはいないわけだし。

 ギルバートはメルディアーナを慰めるようにそっと背をでてやった。
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