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第2章 改心しない小悪女には予定以上の制裁がお似合い!
【6.修道院にて 後編】
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エミリーは手首を掴まれたのは想定外で「しまった」と思ったが、一呼吸おいて、わざとゆっくりと言った。
「あ、いえ、院長様。お尻を触っただなんて! ほら、この方のズボン、お尻らへんに穴が開いているでしょう? 恥ずかしいので隠して差し上げようかと思ったんです」
「手で?」
院長が不信感たっぷりの目で聞くので、エミリーは純粋そうに目をうるうるさせて言った。
「あんまり急だったので、他に思いつかなかったんです。とにかくなんとかしなきゃと……」
「院長様、この方、ズボンに穴など開いていませんけど!」
と、一人のお節介そうな太った修道女が甲高い声で言うので、エミリーはチッと聞こえないように舌打ちしたが、
「あら、あたしったら。ズボンの汚れを穴と勘違いしちゃったのね。ほんっとあたしったら早とちりのドジなんだから」
と、てへっと首を竦めて見せた。
院長はちらっと疑い深い目でエミリーを見てから、祭壇の向こうの神の凛々しい像を眺め、そして目を瞑った。
何か考えているようだった。
それからすぐに「ふーっ」とため息をついて、
「エミリー様。あなたの説明に淀みはありません。前回のときといい何か変だなと思わなくもありませんが、信じましょう。しかし、もうこれ以上祈りに来た方にむやみに触れるのはやめていただきたい。我々は修道女。男子禁制で活動をしているのですから」
と言った。
「はい、分かりました!」
エミリーはすぐさま返事した。そしてにっこりコーネルに微笑みかける。
「すみません、変なとこ触っちゃって」
「あ、いや……」
コーネルは変な顔をしながら、なんだか祈る気分を削がれたのかそのまま神殿から帰って行った。
院長が何かしらの判断を下したし、当事者のコーネルが帰ってしまったので、修道女たちはこれ以上騒ぐのもなんだか気が引けて、それぞれまた神殿内の雑務に戻っていく。
エミリーは咎められずに済んだと心の中でほくそ笑んだ。
もちろんこれでやめる気はない。
次はキスでもしてみよう。誰かいい男の人いないかしら?
エミリーはしばらく神殿に祈りに来る男性を静かに物色した。
そして一人の男に目を付けた。テッド・ブロック。
浅黒い肌が健康的で、目の大きな金髪の男。肉体労働でもしているのだろうか、筋肉モリモリだった。でも笑顔が可愛いの。
さて、彼にはどうやってキスしようか。
彼は仕事終わりの夕方にふらっと一人で立ち寄ることが多い。お祈りにもあまり時間をかけない。長椅子に腰かけることは少なくて、祭壇の前に跪くと祈りの言葉を短くぶつぶつ言って終わり。
どうやってキスするか、少し考えるわね。
エミリーは、心の中で「テッド・ブロックが来ないかな~」と首を長くして待っていた。
そして、ある日、ついにテッドが来た。また仕事終わりにふらっと立ち寄ったようだ。
エミリーは「よしっ」と気合を入れた。
今回も目標はキス! 手を重ねるとかお尻をつねるとかより難易度が高いのだ。
エミリーは横目でちらちらテッドの動きを観察しながら、こっそり自分も祭壇に近づいて行った。まるで祭壇の近くで雑用でもあるように振舞いながら。
そしてテッドが近づいてくるのを待った。
テッドは何の疑いもなくまっすぐに祭壇に近づくと、いつものようにさっと跪いた。
さあ、やるぞ!
エミリーはさーっとテッドに近づき、テッドの横に屈みこむとそーっとテッドの顔の下から入り込んだ。案の定、テッドは祈りのために目を閉じている!
エミリーはこれはチャンスとばかりにささっとキスをした。
テッドが違和感でパチっと目を開ける。すると自分の顔の真下に潜り込み、唇をくっつけている修道女がいるではないか。
「う、うわああああっ!」
テッドは驚いて大声を上げた。
「まあたエミリー様ですか! 今度という今度は許しません! 先日、祈りに来た男性には触らないと約束したばかりではありませんか!」
院長が鬼の形相で飛んできた。
「事故です!」
とエミリーは言い張った。
「どんな事故が起こったら唇がくっつくんでしょうか」
院長は腰に手を当てて呆れたように冷たく言い放った。
「あたしは、この祈りの男性がちゃんと祈っている間に目を閉じているのかどうか調べてたんですわ! 祈りの言葉は目を閉じてというのが経典に載っていますでしょう? この方はいつも時短で、ちゃんとしたお祈りを捧げないので、あたし、祈りが通じているのか心配してました! だから顔を覗き込んだんです。ちょっとたまたま足がふらついて間違って唇がくっついちゃいましたが、これはキスじゃないです!」
そうエミリーが言い訳をすると、院長はうんざりした顔になった。
「エミリー様。うちの神殿ですけどね、最近セクハラ神殿って噂が出始めてるんですよ。誰が言いだしたのか分かりません。こないだの男性方かもしれないし、もしかしたら修道女の誰かかもしれない。何やら怪しい女がエミリー様のセクハラの噂を調べて回っているとも聞いています。そんな中で祈りに来た男性の唇と修道女の唇がくっつく? そんな事態、厳格な神殿長が聞いたら見過ごしはしないでしょう」
「えっと、神殿長?」
エミリーはさすがにまずったなと思った。神殿長まで話が行ったら父スピンク男爵に話が伝わってしまう。そこまで事態が大きくなるとは……。
「もちろんあなたの言う通り事故かもしれません。しかし、事故だとしても、こういったことが何回も続けば処分しないわけにはまいりません。つまり、あなたをこの神殿に置いておくわけにはいきません。もちろん修道院にも。修道女には貞潔が求められていますからね。あなたは修行なさるおつもりがないと判断せざるを得ません」
院長は淡々と説明した。
「え、じゃあ……」
エミリーはごくりと息を呑んだ。
院長は大きく頷いた。
「あなたには出て行っていただきます!」
「ええ~~~~」
エミリーは抗議の声を上げたが、エミリーを擁護する者は誰一人としていなかった。
エミリーのセクハラ疑惑はこの周辺の地で瞬く間に広がった。多くの人がこの話題を口にし、何やら怪しい女がセクハラを受けた男性に何があったのか聞きこんでいる姿も見られた。
こうして、エミリーは修道院も追い出され、またしてもスピンク男爵家に戻ることになったのだった。
「あ、いえ、院長様。お尻を触っただなんて! ほら、この方のズボン、お尻らへんに穴が開いているでしょう? 恥ずかしいので隠して差し上げようかと思ったんです」
「手で?」
院長が不信感たっぷりの目で聞くので、エミリーは純粋そうに目をうるうるさせて言った。
「あんまり急だったので、他に思いつかなかったんです。とにかくなんとかしなきゃと……」
「院長様、この方、ズボンに穴など開いていませんけど!」
と、一人のお節介そうな太った修道女が甲高い声で言うので、エミリーはチッと聞こえないように舌打ちしたが、
「あら、あたしったら。ズボンの汚れを穴と勘違いしちゃったのね。ほんっとあたしったら早とちりのドジなんだから」
と、てへっと首を竦めて見せた。
院長はちらっと疑い深い目でエミリーを見てから、祭壇の向こうの神の凛々しい像を眺め、そして目を瞑った。
何か考えているようだった。
それからすぐに「ふーっ」とため息をついて、
「エミリー様。あなたの説明に淀みはありません。前回のときといい何か変だなと思わなくもありませんが、信じましょう。しかし、もうこれ以上祈りに来た方にむやみに触れるのはやめていただきたい。我々は修道女。男子禁制で活動をしているのですから」
と言った。
「はい、分かりました!」
エミリーはすぐさま返事した。そしてにっこりコーネルに微笑みかける。
「すみません、変なとこ触っちゃって」
「あ、いや……」
コーネルは変な顔をしながら、なんだか祈る気分を削がれたのかそのまま神殿から帰って行った。
院長が何かしらの判断を下したし、当事者のコーネルが帰ってしまったので、修道女たちはこれ以上騒ぐのもなんだか気が引けて、それぞれまた神殿内の雑務に戻っていく。
エミリーは咎められずに済んだと心の中でほくそ笑んだ。
もちろんこれでやめる気はない。
次はキスでもしてみよう。誰かいい男の人いないかしら?
エミリーはしばらく神殿に祈りに来る男性を静かに物色した。
そして一人の男に目を付けた。テッド・ブロック。
浅黒い肌が健康的で、目の大きな金髪の男。肉体労働でもしているのだろうか、筋肉モリモリだった。でも笑顔が可愛いの。
さて、彼にはどうやってキスしようか。
彼は仕事終わりの夕方にふらっと一人で立ち寄ることが多い。お祈りにもあまり時間をかけない。長椅子に腰かけることは少なくて、祭壇の前に跪くと祈りの言葉を短くぶつぶつ言って終わり。
どうやってキスするか、少し考えるわね。
エミリーは、心の中で「テッド・ブロックが来ないかな~」と首を長くして待っていた。
そして、ある日、ついにテッドが来た。また仕事終わりにふらっと立ち寄ったようだ。
エミリーは「よしっ」と気合を入れた。
今回も目標はキス! 手を重ねるとかお尻をつねるとかより難易度が高いのだ。
エミリーは横目でちらちらテッドの動きを観察しながら、こっそり自分も祭壇に近づいて行った。まるで祭壇の近くで雑用でもあるように振舞いながら。
そしてテッドが近づいてくるのを待った。
テッドは何の疑いもなくまっすぐに祭壇に近づくと、いつものようにさっと跪いた。
さあ、やるぞ!
エミリーはさーっとテッドに近づき、テッドの横に屈みこむとそーっとテッドの顔の下から入り込んだ。案の定、テッドは祈りのために目を閉じている!
エミリーはこれはチャンスとばかりにささっとキスをした。
テッドが違和感でパチっと目を開ける。すると自分の顔の真下に潜り込み、唇をくっつけている修道女がいるではないか。
「う、うわああああっ!」
テッドは驚いて大声を上げた。
「まあたエミリー様ですか! 今度という今度は許しません! 先日、祈りに来た男性には触らないと約束したばかりではありませんか!」
院長が鬼の形相で飛んできた。
「事故です!」
とエミリーは言い張った。
「どんな事故が起こったら唇がくっつくんでしょうか」
院長は腰に手を当てて呆れたように冷たく言い放った。
「あたしは、この祈りの男性がちゃんと祈っている間に目を閉じているのかどうか調べてたんですわ! 祈りの言葉は目を閉じてというのが経典に載っていますでしょう? この方はいつも時短で、ちゃんとしたお祈りを捧げないので、あたし、祈りが通じているのか心配してました! だから顔を覗き込んだんです。ちょっとたまたま足がふらついて間違って唇がくっついちゃいましたが、これはキスじゃないです!」
そうエミリーが言い訳をすると、院長はうんざりした顔になった。
「エミリー様。うちの神殿ですけどね、最近セクハラ神殿って噂が出始めてるんですよ。誰が言いだしたのか分かりません。こないだの男性方かもしれないし、もしかしたら修道女の誰かかもしれない。何やら怪しい女がエミリー様のセクハラの噂を調べて回っているとも聞いています。そんな中で祈りに来た男性の唇と修道女の唇がくっつく? そんな事態、厳格な神殿長が聞いたら見過ごしはしないでしょう」
「えっと、神殿長?」
エミリーはさすがにまずったなと思った。神殿長まで話が行ったら父スピンク男爵に話が伝わってしまう。そこまで事態が大きくなるとは……。
「もちろんあなたの言う通り事故かもしれません。しかし、事故だとしても、こういったことが何回も続けば処分しないわけにはまいりません。つまり、あなたをこの神殿に置いておくわけにはいきません。もちろん修道院にも。修道女には貞潔が求められていますからね。あなたは修行なさるおつもりがないと判断せざるを得ません」
院長は淡々と説明した。
「え、じゃあ……」
エミリーはごくりと息を呑んだ。
院長は大きく頷いた。
「あなたには出て行っていただきます!」
「ええ~~~~」
エミリーは抗議の声を上げたが、エミリーを擁護する者は誰一人としていなかった。
エミリーのセクハラ疑惑はこの周辺の地で瞬く間に広がった。多くの人がこの話題を口にし、何やら怪しい女がセクハラを受けた男性に何があったのか聞きこんでいる姿も見られた。
こうして、エミリーは修道院も追い出され、またしてもスピンク男爵家に戻ることになったのだった。
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