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11.想いの告白
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元夫は部屋を出ていき、そのまま帰ったようだ。
ああ、帰ってくれたの、結局何をしに来たのかしらね、あの人。
私は宇宙人がいなくなってほっとした半面、急にスカイラー様と二人っきりになったので、気まずさを感じはじめた。
昔のこともあるし、自分はいろいろ人生失敗した感があるし、猫を引き取りに来るにしても元夫がついてくるというカオスっぷり。
えーっと、私もけっこうイタイ人なのよねえ。
そしてやっぱり、スカイラー様の方も、何を話していいのか躊躇っているような雰囲気があった。
しかし、やがて「あっ」と思い出したように私に近づき、抱いていたリリーをゆっくりと私の腕の中に移してくれた。
「リリーというんですね、この子。私は今回この子にあなたとの仲を取り持ってもらったような奇跡を感じたんですけど……」
私は一瞬『取り持って』という言葉にドキっとしかけたが、スカイラー様の『感じたんですけど……』という尻すぼみ感と逆接っぽい感じに、我に返った。
私はリリーの後頭部に自分の頬をこすり付けた。柔らかいふにゃふにゃの、そしてほんのり温かい感触。愛しい、私の小さなリリー。
私は落ち着きを取り戻したと思う。私は自嘲気味の笑顔を作った。
「リリーが戻って本当に良かったです。実は、リリーを保護してくださったというのがあなたで、正直どうしようかと思いましたのよ。でもねえ、まさか元夫がついてくるなんて、何も悩む必要はありませんでしたわ。本当迷惑な話でごめんなさいね」
するとスカイラー様が目を鋭くした。
「迷惑……本当にあの男の存在自体が迷惑そのものです。でもあの男はそのことに少しも自覚がないのだから、全く腹立たしいんですよ」
私は苦笑した。
「激しく同意!」
スカイラー様は私のその言葉に少しほっとした顔をした。
「じゃあ、マクギャリティ侯爵(※元夫)のことはなかったことにして少し話をさせてもらおうかな」
「話?」
私はぎくっとして少し身構えた。
しかしスカイラー様はゆるやかに微笑んだ。
「猫にかこつけて僕が話そうと思っているのはね、あなたと再会して嬉しいということなんだ。ディアンナ、僕はずっとあなたを忘れられなかった。あなたがマクギャリティ侯爵と結婚してしまったときは打ちひしがれたよ。しかも侯爵ときたらあなたを蔑ろにして堂々と浮気するもんだから。そんなにディアンナがいらないのなら僕にくれよと思っていた。浮気されていたあなたの気持ちを考えると胸が痛んで、どうにか救ってやれないものかと思っていた。だから、あの男が浮気相手と結婚すると言ってあなたと離婚した時はほっとしたし、もしかしたら自分にもチャンスが巡って来るんじゃないかと淡く期待した」
私はスカイラー様の告白に目を見張った。思いがけない言葉に全身が固まってしまった。
スカイラー様は続けた。
「あなたが離婚したと聞いて、すぐにあなたに連絡を取ろうかと思ったんだ。気晴らしにお茶でもどうですかとか、遠出してみませんか、とか。でも、あなたが実際どれくらい離婚に傷ついているか分からなくて。もし元夫を心の底から愛していてまだ立ち直れていなかったらとか、放っておいてほしいと願っているんじゃないか、とかね。僕はだいぶ弱気になっていました。直接あなたに聞いてしまうのが早いけど、やっぱりそんな直球に聞けるものでもない。じゃあと思ってあなたのことを人伝に聞きまわってみましたが、あなたはあまり外にも出ている様子はなく、お手上げでした。臆病な私はずっと二の足を踏んでいたわけです。でも今回こうして猫が迷い込んできてね、なんと首輪にはあなたの紋章! 神様のプレゼントかと思った。あなたに堂々と連絡できる口実!」
「……」
私はもう頭が真っ白で、口をパクパクさせるだけだった。
スカイラー様がそんな私に照れ臭そうにウインクした。
「離婚したんだから、マクギャリティ侯爵のことはもういいんじゃない? なかったことにしてさ、結婚前のあの関係の続きをもう一度始めてみませんか」
私は信じられなくて一歩後ずさりした。
「あの……本当に私でいいの? だって、私――」
スカイラー様が一歩前にずいっと踏み出す。
「あなたに落ち度があったとは思わない。全部マクギャリティ侯爵の方に問題があったと思う」
「えっと……」
私がまだ困惑していると、腕の中のリリーがタイミングよく「ニャーゴ」と鳴いた。
私はハッとしてリリーに目をやる。
そうすると、リリーは「いい加減にしろよ」とうんざりしてそうな目で私を見上げ、思惑ありそうにスカイラー様の方に首を傾けたのだ。
ああ、帰ってくれたの、結局何をしに来たのかしらね、あの人。
私は宇宙人がいなくなってほっとした半面、急にスカイラー様と二人っきりになったので、気まずさを感じはじめた。
昔のこともあるし、自分はいろいろ人生失敗した感があるし、猫を引き取りに来るにしても元夫がついてくるというカオスっぷり。
えーっと、私もけっこうイタイ人なのよねえ。
そしてやっぱり、スカイラー様の方も、何を話していいのか躊躇っているような雰囲気があった。
しかし、やがて「あっ」と思い出したように私に近づき、抱いていたリリーをゆっくりと私の腕の中に移してくれた。
「リリーというんですね、この子。私は今回この子にあなたとの仲を取り持ってもらったような奇跡を感じたんですけど……」
私は一瞬『取り持って』という言葉にドキっとしかけたが、スカイラー様の『感じたんですけど……』という尻すぼみ感と逆接っぽい感じに、我に返った。
私はリリーの後頭部に自分の頬をこすり付けた。柔らかいふにゃふにゃの、そしてほんのり温かい感触。愛しい、私の小さなリリー。
私は落ち着きを取り戻したと思う。私は自嘲気味の笑顔を作った。
「リリーが戻って本当に良かったです。実は、リリーを保護してくださったというのがあなたで、正直どうしようかと思いましたのよ。でもねえ、まさか元夫がついてくるなんて、何も悩む必要はありませんでしたわ。本当迷惑な話でごめんなさいね」
するとスカイラー様が目を鋭くした。
「迷惑……本当にあの男の存在自体が迷惑そのものです。でもあの男はそのことに少しも自覚がないのだから、全く腹立たしいんですよ」
私は苦笑した。
「激しく同意!」
スカイラー様は私のその言葉に少しほっとした顔をした。
「じゃあ、マクギャリティ侯爵(※元夫)のことはなかったことにして少し話をさせてもらおうかな」
「話?」
私はぎくっとして少し身構えた。
しかしスカイラー様はゆるやかに微笑んだ。
「猫にかこつけて僕が話そうと思っているのはね、あなたと再会して嬉しいということなんだ。ディアンナ、僕はずっとあなたを忘れられなかった。あなたがマクギャリティ侯爵と結婚してしまったときは打ちひしがれたよ。しかも侯爵ときたらあなたを蔑ろにして堂々と浮気するもんだから。そんなにディアンナがいらないのなら僕にくれよと思っていた。浮気されていたあなたの気持ちを考えると胸が痛んで、どうにか救ってやれないものかと思っていた。だから、あの男が浮気相手と結婚すると言ってあなたと離婚した時はほっとしたし、もしかしたら自分にもチャンスが巡って来るんじゃないかと淡く期待した」
私はスカイラー様の告白に目を見張った。思いがけない言葉に全身が固まってしまった。
スカイラー様は続けた。
「あなたが離婚したと聞いて、すぐにあなたに連絡を取ろうかと思ったんだ。気晴らしにお茶でもどうですかとか、遠出してみませんか、とか。でも、あなたが実際どれくらい離婚に傷ついているか分からなくて。もし元夫を心の底から愛していてまだ立ち直れていなかったらとか、放っておいてほしいと願っているんじゃないか、とかね。僕はだいぶ弱気になっていました。直接あなたに聞いてしまうのが早いけど、やっぱりそんな直球に聞けるものでもない。じゃあと思ってあなたのことを人伝に聞きまわってみましたが、あなたはあまり外にも出ている様子はなく、お手上げでした。臆病な私はずっと二の足を踏んでいたわけです。でも今回こうして猫が迷い込んできてね、なんと首輪にはあなたの紋章! 神様のプレゼントかと思った。あなたに堂々と連絡できる口実!」
「……」
私はもう頭が真っ白で、口をパクパクさせるだけだった。
スカイラー様がそんな私に照れ臭そうにウインクした。
「離婚したんだから、マクギャリティ侯爵のことはもういいんじゃない? なかったことにしてさ、結婚前のあの関係の続きをもう一度始めてみませんか」
私は信じられなくて一歩後ずさりした。
「あの……本当に私でいいの? だって、私――」
スカイラー様が一歩前にずいっと踏み出す。
「あなたに落ち度があったとは思わない。全部マクギャリティ侯爵の方に問題があったと思う」
「えっと……」
私がまだ困惑していると、腕の中のリリーがタイミングよく「ニャーゴ」と鳴いた。
私はハッとしてリリーに目をやる。
そうすると、リリーは「いい加減にしろよ」とうんざりしてそうな目で私を見上げ、思惑ありそうにスカイラー様の方に首を傾けたのだ。
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