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12.猫の企み
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「えっ」
私は驚いた。何なの、この仕草。何か言いたいことでもあるような。
でも、猫だし……。
するとリリーがもう一度「ニャーゴ」と鳴いた。何かを促すような、さっきより短くて大きな声だった。
「何のおしゃべりかな」
スカイラー様は特別違和感を感じている様子もなく、無邪気そうに目を細めて笑っている。
でも私はスカイラー様よりもう少し本気でリリーが『おしゃべり』していると感じていたので、じっとリリーを見つめた。何か言おうとしてるの?
するとリリーはぷいっと顔を背けた。
「もう、なんなのよ、猫って本当にきまぐれね」
私がそう言って呆れたとき、スカイラー様が言った。
「猫も後押ししてくれてるんじゃないか。あ、僕がそう望んでるんだけど」
私はドキッとして、そして照れ隠しのようにもう一度リリーの方を覗き込み、
「そうなの?」
と聞いた。
リリーはなんと、もう一度タイミングよく「ニャーゴ」と鳴いた!
スカイラー様は笑った。
「ほら。『その通り』だってさ」
何、何よ、このやりとり? いろいろと都合が良すぎるでしょ!
しかし私は急にほっとした気持ちになった。
リリーったら……。
私はリリーの後頭部をじっと見つめる。
スカイラー様もあなたのことは半分冗談で言っているんだろうけど、もう私もリリーのせいにして、この流れに乗っかるわよ?
私は顔が火照っているのに今頃気付きながら、
「リリーには感謝しなくちゃいけないわ。あなたが今までのこと全部を受け入れてくれると言うのなら、私には断る理由がないもの……」
と控えめに言った。
スカイラー様の顔がぱっと明るくなった。
「よかった! 僕も猫に感謝だな。そうだ、きっと僕の邸に迷い込んだのだって、この猫の企みに違にないよ。最初っから僕らの仲を取り持ってくれる気だったんだ!」
私はまたまた冗談を……と思いながらも、つられて笑った。
それから、ハッとした。
企み――。
……もしかして?
私は急に不気味なものを感じた。あれもこれも、裏で糸が引かれているような――。
「スカイラー様、企みって言いました? ――昨晩はこの子ったら元夫の浮気相手のところにいましたのよ」
「えっ、それはどういう……」
スカイラー様は怪訝そうな顔をした。
私はマリネットさんの事故の話をした。そして、
「事故は事故ですわ。でもリリーのせいと言えばリリーのせいなんです」
と付け加えた。
スカイラー様はマリネットさんの事故の話に驚いていた。
「そんな事があったなんてね! でも、まさか、この猫がそんなことを狙ってやったとは思えないけれど」
「ええ。でも結果的に浮気相手は事故に遭い、そして今日私はあなたに会えたのですわ。そして今も、リリーがタイミングよく鳴いて……」
私は奇妙な偶然が重なっていることを気味悪く思った。
「もしかして、本当に何か企んでる?」
私はリリーの顔を指でつまんでこっちを向かせ目を覗き込んだ。
リリーは顔にかけられた指が鬱陶しくて、口を開けて鋭い歯を見せつけ目を細めて身を捩った。
「もうこんなときは普通の猫のフリ? それとも本当にただの猫?」
私はリリーの猫っぽい仕草に思わず笑ってしまって、そっとリリーの額を撫でる。
その様子を見ていたスカイラー様だったが、ふと思いついたように口を開いた。
「ところでこの猫が次に誰かをターゲットにすることはありえるかな?」
私ははっとした。
「ターゲットというと」
「この猫がマリネット嬢のところへ行ったのがわざとなんだとしたら、例えば君の元夫の他の浮気相手とかにもさ、何かしないかと思って」
「他の浮気相手と言うと、アンナリース嬢……」
「いや、名前まで言わなくていいよ、ディアンナ。不愉快だろうから。あんなにマクギャリティ侯爵が堂々と浮気してちゃ皆も知っていることだしね」
私は不名誉な話に首を竦めた。
それから私は真面目な顔をして、スカイラー様を見た。
「企みだなんて、冗談ですわ。本当のところはそんなことはないと思うのよ。リリーはただの猫だし。今回のことはいろいろ偶然が重なっただけで」
スカイラー様も肯いた。
「そりゃそうだと思うんだけどね」
そして私たち二人は黙ってしまった。何だか変な空気が流れて、それから私たちは顔を見合わせた。
「リリーを外に出さない方がいいかもしれないわ」
「そうだね、ちょっと気を付けた方がいいかもね。まあ猫相手に何を考えすぎてるんだと思うけどね」
私は驚いた。何なの、この仕草。何か言いたいことでもあるような。
でも、猫だし……。
するとリリーがもう一度「ニャーゴ」と鳴いた。何かを促すような、さっきより短くて大きな声だった。
「何のおしゃべりかな」
スカイラー様は特別違和感を感じている様子もなく、無邪気そうに目を細めて笑っている。
でも私はスカイラー様よりもう少し本気でリリーが『おしゃべり』していると感じていたので、じっとリリーを見つめた。何か言おうとしてるの?
するとリリーはぷいっと顔を背けた。
「もう、なんなのよ、猫って本当にきまぐれね」
私がそう言って呆れたとき、スカイラー様が言った。
「猫も後押ししてくれてるんじゃないか。あ、僕がそう望んでるんだけど」
私はドキッとして、そして照れ隠しのようにもう一度リリーの方を覗き込み、
「そうなの?」
と聞いた。
リリーはなんと、もう一度タイミングよく「ニャーゴ」と鳴いた!
スカイラー様は笑った。
「ほら。『その通り』だってさ」
何、何よ、このやりとり? いろいろと都合が良すぎるでしょ!
しかし私は急にほっとした気持ちになった。
リリーったら……。
私はリリーの後頭部をじっと見つめる。
スカイラー様もあなたのことは半分冗談で言っているんだろうけど、もう私もリリーのせいにして、この流れに乗っかるわよ?
私は顔が火照っているのに今頃気付きながら、
「リリーには感謝しなくちゃいけないわ。あなたが今までのこと全部を受け入れてくれると言うのなら、私には断る理由がないもの……」
と控えめに言った。
スカイラー様の顔がぱっと明るくなった。
「よかった! 僕も猫に感謝だな。そうだ、きっと僕の邸に迷い込んだのだって、この猫の企みに違にないよ。最初っから僕らの仲を取り持ってくれる気だったんだ!」
私はまたまた冗談を……と思いながらも、つられて笑った。
それから、ハッとした。
企み――。
……もしかして?
私は急に不気味なものを感じた。あれもこれも、裏で糸が引かれているような――。
「スカイラー様、企みって言いました? ――昨晩はこの子ったら元夫の浮気相手のところにいましたのよ」
「えっ、それはどういう……」
スカイラー様は怪訝そうな顔をした。
私はマリネットさんの事故の話をした。そして、
「事故は事故ですわ。でもリリーのせいと言えばリリーのせいなんです」
と付け加えた。
スカイラー様はマリネットさんの事故の話に驚いていた。
「そんな事があったなんてね! でも、まさか、この猫がそんなことを狙ってやったとは思えないけれど」
「ええ。でも結果的に浮気相手は事故に遭い、そして今日私はあなたに会えたのですわ。そして今も、リリーがタイミングよく鳴いて……」
私は奇妙な偶然が重なっていることを気味悪く思った。
「もしかして、本当に何か企んでる?」
私はリリーの顔を指でつまんでこっちを向かせ目を覗き込んだ。
リリーは顔にかけられた指が鬱陶しくて、口を開けて鋭い歯を見せつけ目を細めて身を捩った。
「もうこんなときは普通の猫のフリ? それとも本当にただの猫?」
私はリリーの猫っぽい仕草に思わず笑ってしまって、そっとリリーの額を撫でる。
その様子を見ていたスカイラー様だったが、ふと思いついたように口を開いた。
「ところでこの猫が次に誰かをターゲットにすることはありえるかな?」
私ははっとした。
「ターゲットというと」
「この猫がマリネット嬢のところへ行ったのがわざとなんだとしたら、例えば君の元夫の他の浮気相手とかにもさ、何かしないかと思って」
「他の浮気相手と言うと、アンナリース嬢……」
「いや、名前まで言わなくていいよ、ディアンナ。不愉快だろうから。あんなにマクギャリティ侯爵が堂々と浮気してちゃ皆も知っていることだしね」
私は不名誉な話に首を竦めた。
それから私は真面目な顔をして、スカイラー様を見た。
「企みだなんて、冗談ですわ。本当のところはそんなことはないと思うのよ。リリーはただの猫だし。今回のことはいろいろ偶然が重なっただけで」
スカイラー様も肯いた。
「そりゃそうだと思うんだけどね」
そして私たち二人は黙ってしまった。何だか変な空気が流れて、それから私たちは顔を見合わせた。
「リリーを外に出さない方がいいかもしれないわ」
「そうだね、ちょっと気を付けた方がいいかもね。まあ猫相手に何を考えすぎてるんだと思うけどね」
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