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第零章

宵闇と宵月

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「うぅ、ここは一体?」

目を覚ました僕は頭を抱えながら、あたりを見渡した。

「ここは、、洞窟?」

僕は、洞窟の入り口で倒れていた。

どうやらオークと戦って疲労が限界に達した僕は無意識のうちにこの洞窟まで来ていたようだ。

「ん?」

僕は洞窟の外を見た。すると洞窟の入り口の周りには数多の魔物がいた。

「うおぉっ」

あまりの多さに驚いてしまった。

洞窟の周りには種別問わず入り口を囲むようにして魔物が僕を睨んでいる。

「何故こっちに攻めてこない?」

普通なら倒れて意識を失っていた僕は魔物からすれば格好の獲物だ。

だが何故かこっちに攻めてくるような気配はない。

僕は目を閉じてみた。

この能力はいろんな物を感じる事ができるからもしかしたらその原因がわかるかもしれない。

「これは一体なんなんだ!」

目を閉じた瞬間に青紫と黄色の混じったモヤが見えた。

どうやらこのモヤが魔物たちを近づけんとする要因だろう。

僕はそのモヤが何処から出ているのか辿ってみた。

「このモヤは、洞窟の奥から出ているのか?」

どうやらこのモヤは洞窟の奥から出ているようだった。

「なんだこの凄まじい膨大なプレッシャーは!」

オークでさえここまで大きなプレッシャーは感じなかった。

洞窟の奥が見えないくらいだ。

この得体の知れない妖気だが何故か僕は嫌な感じがしない。

正直言って魔物たちと戦う力はない。

要するに、今この洞窟から出ることはできない。

「洞窟の奥に進むしか道はない、か」

僕は立ち上がり洞窟の奥へと歩を進めた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

もう歩いてからどれだけの時間が経っただろうか?

体感ではもう半日くらい歩き続けているような気がする。

「いったいこのモヤは何処まで続いているんだ」

暗い洞窟の中のため普通ならもう感覚が麻痺してしまっていてもおかしくはない。

能力のおかげで僕はこの暗い洞窟の中を歩けているし、妖気だって追えている。

だが、今のところ全く辿りつける気配がない。

でもそろそろ体力的な限界が近い。

早く辿りつかないと意味もなくここで力尽きてしまう。

「くそっ」

絶望しかけたその時だった。

「ん?」

この暗い洞窟の中で先に光の筋が見えた。
その先には洞窟の出口があり、その光の先に妖気も続いている。

僕はその光目指して一直線に走った。

走り抜けたその先は崖に囲まれた広い空間が広がっていて、そこには芝生が生え空には星がたくさん瞬く夜空が広がっており月が優しい光を放っていた。

「綺麗だ」

今まで見たことのないとてつもなく美しい夜空に見惚れて無意識に綺麗と言ってしまった。

しばらく夜空にみほれた後この広い空間の中心にある物に気づいた。

「あれは一体なんだろう」

どうやらあれからモヤが漏れ出ているようだ。

僕はそれに近づいて行った。

するとそこには二本の剣が鞘に収められたまま地面に突き刺さっていた。

それは変わった形状をしていた。僕は今までこんな形状の武器は見た事がない。

まあその事は置いておいて僕は気づくとその武器に手を出していた。

そして触れた瞬間さっきまで漂っていたモヤが全てこの2本の武器に集束し、僕に流れ込んできた。

「くっ」

流れ込んできたモヤがあまりにも膨大で全身がビリビリと軋む。

しばらくするとモヤの流れは止まった。

「治まったかな?」

治まったかなと思い安堵した瞬間、突然頭に激痛が走った。

「うぅぅぅっ」

キーンと頭が今にも割れそうな痛みを感じる。

そして、同時に頭の中に何か流れ込んでくる。

「これは、、誰かの、記憶?」

僕ではない知らない人の記憶が僕の頭の中に流れ込んでくる。

「僕は、次に現れる僕の後輩に託してみようと思う。」

この人は一体誰なんだろう。全く知らない人がこの場所にさっきの剣を二本地面に突き刺した。

「僕は、果たす事ができなかった。次に現れるのは僕がいなくなってからどれくらい後になるかわからない、けど僕の次に現れる君なら果たす事ができるかも知れない。僕はここに妖刀、宵闇と宵月を封印する。夜闇の力を持つ君が触れるだけで封印を解けるようにしておいた。この二本の太刀はきっと君を助けてくれるだろう。君ならきっと、、、まぞ、
と、、げ、、か、、、、と、、、とって、、、、、、打ち、、、し、、えい、、ゆ、、うな、、な、、、れ、、だろ、、う」

ここでこの人の記憶は途絶えてしまった。

「はぁはぁ」

頭の痛みが少しずつ引いていく。

僕は呼吸を整えながら男が太刀と呼んでいた左手に握っている二本の太刀に目を向ける。

「宵闇と宵月か、、」

漆黒の鞘に宵闇、白色の鞘に宵月は納められており宵闇は柄が漆黒に染まっており丸い鍔は青紫で染まっている。

そして宵月は柄が白色で鍔は丸く形状をしており琥珀色に染まっていた。

記憶の中の人は最後なんと言おうとしていたのかよくわからない。

僕はこの人の果たせなかった事とは一体なんなのか、、でも今それを知る事はできない。

僕は今僕にできる事を精一杯やるだけだ。
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