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第零章

影から覗く存在

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「手に取れたという事は僕はこの宵闇と宵月の封印を解く事ができたのか?」

そもそも夜闇の力とはなんだろうか。僕はそんな物知らない。

でもこの二本の太刀の封印を解けた僕には夜闇の力があるということか、、
記憶の中の男は妖刀と言っていた。
何か特別な力があるのだろうか?

先程まで凄まじい妖気を発していたこの二本の太刀は今はそれが嘘のように静まりなんの変哲もないただの二本の太刀にしか見えない。

そうやって宵闇と宵月を眺めていた時だった。洞窟の出口から大量の魔物が出てきた。

「なっ!」

「グアァァァァー」
「ゴアぁぁぁ」

多分僕がこの宵闇と宵月の封印を解いたことによってさっきまで漂っていた妖気が全て消えてしまった事が原因だろう。

この状態では脱出は困難だ。だけどどうにかして此処から抜け出さないといけない。

絶望的な状況に僕は息を呑む。その時だった。突然、宵闇と宵月が光だした。

「なんだ!」

僕は恐る恐る柄に触れる。するとさっき味わった様な激しい頭痛に襲われた。
先程の男の記憶がまた流れ込んでくる。

男の前には数多の魔物がいて、男は宵闇と宵月を鞘から抜いて抜刀状態で構えていた。宵闇の刀身は紫色、宵月の刀身は白銀に輝いている。

だが次の瞬間、男は宵闇と宵月を納刀してしまった。魔物はゆっくりながら確実に男に近づいている。そして男は宵月の柄を右手で掴み左手で鞘を持ちこう言った。

「照らせ宵月」

そう言いながら男は宵月をゆっくりと抜刀する。するとさっきまだ白銀だった刀身が青く光だした。

蒼月そうげつ

男が蒼月と言った次の瞬間蒼白く光り輝く一筋の斬撃が飛んだ。
斬撃は魔物たちをいとも容易く切り刻んで行った。

そして男の背後にはジャイアントが迫っていた。ジャイアントはその大きな拳を男に向けて振り放った。

「翳らせ宵闇」

しかし男めがけて放たれたその拳が男に触れることはなかった。その拳は先程まで紫色の刀身は漆黒に変わり宵闇の刀身に吸い込まれるようにして刃に触れて止まった。

「無月、」

そして男はジャイアントの腹部に《蒼月》を放つ。

そこからは一方的だった。男はどんどん魔物を蹴散らしている。

そこで記憶は途切れた、、

「もしかして僕にも出来るのか?」

確信は持てない、だがこの状況を抜け出すには2本の太刀の力を使うしかない。

僕は宵闇と宵月を左腰に差し宵月を鞘に納めそのまま構える。

極限まで集中し叫ぶ、

「照らせ宵月、蒼月そうげつ

鞘から抜刀し横薙ぎに刃を振るう。

すると、蒼白い斬撃が魔物目掛けて飛んでいった。

「なんて威力だ、、、」

あまりの威力に驚きを抑えられない。

今の一撃で多くの魔物を亡き者にした。

でもそんな事をしているうちにもどんどん魔物はやってくる。

有月を放とうとするも強烈な怠さを感じる。

もしかして連発はできないのか?

次に打てるまでしばらくかかりそうだ。
でもこのままではどんどん魔物たちに距離を詰められる。

「くっ」

ついに魔物たちには間合いに入られ先頭に立つオーガは今にもその巨大な大剣を振り下ろそうとする。

僕は宵闇をの柄を左手で掴み抜刀した。

そして僕は宵闇を見つめた。そして、

「翳らせ宵闇、」

そう言うと宵闇の紫色の刀身は漆黒に染まる。

「うっ、なんだこれ、、、」

刀身が見えなくなった瞬間、メッシュの意識は途絶えた。

そして目がだんだん漆黒に染まる。

メッシュがオーガの一撃を喰らおうとした瞬間メッシュの周りに風圧が発生しオーガ共々周りの魔物は吹き飛んてしまった。

そしてメッシュは発狂し、雄叫びを上げる。

その様子はとても正気とは思えない、完全に暴走してしまっていた。

そして魔物の群れの中へと飛び込む。

宵月から《蒼月》を方向構わず放ち魔物を蹴散らしていった。それは一方的な殺戮だった。

その様子は何処か悲しそうで顔には涙を流していた。
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透き通った凪の水面には美しく優しさの溢れる夜空が写っている。

その世界で一つの存在がいた。そいつは影に包まれよく姿は見えない。

「やはりまだこいつには無理だったか、、
宵闇と宵月を奇跡的に見つけたのは良かった。だが宵闇を使うにはまだ早い。こいつはまだ夜闇の力が覚醒しておらず、妖力も少ない状態の使用は不味い。我の力が覚醒するのはまだ先、だが今放置すれば正気に戻るのは難しいか、、、
今回に限り我が妖力を少し分け与えるとしよう。」

その存在から赤紫のモヤが水面に注ぎ込まれていく。

「後は、こいつ次第だな、、、、」

~~~~~~~~~~~~~~~~~

(メッシュ!メッシュ!お願い目を覚まして)

突然母さんの声が聞こえてこちらに手を伸ばす。

その手が触れようとした瞬間、僕は目を覚ます。

「今のは、、、夢?」

僕は起き上がるのと同時に顔に右手を当てる。

すると顔に当てた右手が冷たいものに触れた。

僕は泣いていた、そして周りを見た。

「え?」

そこには数多の魔物の亡骸が広がっていた。

あまりの惨さに吐き気を覚える。

「これを僕が、、、?」

宵闇を抜刀したあたりからの記憶が無い。

ふと左腰を見たそこには鞘に納められた宵闇と宵月があった。

宵月の《蒼月》を使った時は確かに少し疲労感を感じたがそれ以外は特に何もなかった。

そして僕はさっきの記憶を思い出す。

「妖刀、、、、」

妖刀とはなんだろうか?魔剣なら父さんのものを見た事があるけど、何が違うのだろうか。

僕は宵闇の柄に触れる、、、

「今の僕にはまだ使いこなせないってことか、」

すると空から眩しい光が差し込む。上を見ると崖から朝日がのぞいている。もう夜が更けたようだ。
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