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第零章

生還そして再会

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「うっ、ここは、、どこだ?」

目覚めた僕は辺りを見渡す。そこは森の中ではなく自宅の自室のベッドの上だった。

何故僕は自室にいるのか思考を巡らせる。

だが思い出すことはできなかった。

すると僕の部屋のドアがガチャリと開く。

「おおメッシュ、目が覚めたか」

中に入ってきたのは父さんだった。

父さんは部屋に入ってくるなり僕に何故自室で眠っていたのかを説明してきた。

どうやら父さんは僕が魔境森林に入っている時王都へと出かけていたようで、帰って僕の様子を見ようと千里眼を使ったら僕が"深淵の洞窟"と父さんが呼んでいるところで倒れて意識がなかったらしい。

「帰ってくればお前が、あの深淵の洞窟で意識を失っていたから流石に肝が冷えたわ」

「心配かけたね父さん」

「あそこは奇妙なモヤが漂っており生物を近寄らせず、入ると永遠に同じ所をぐるぐる回ることになる奇妙な洞窟でな流石に放って置けずお前を迎えに行ったわけだ」

「そうだったんだ、、」

今回父さんにはとても大きな心配をかけてしまった。これからは父さんをなるべく心配させないようにしよう。

「そして奇妙な事にお前を迎えに行った時深淵の洞窟からモヤが消えていてお前が倒れていた場所には広い空間が広がっていてな、お前は数多の魔物の死骸のなかで倒れていた。そしてお前の手には太刀という珍しい武器が握られていた。ついでに持ち帰ったがその時はお前の身体を優先すべく後回しにしていた。聞くがメッシュそれは一体なんだ、それからは異様だが不思議と悪意は感じなかった」

父さんはベッドの横を指差しながらそう言った。

そして僕はその方向に目を向ける。

そこには宵闇と宵月が立てかけられていた。

そして僕は考える。

宵闇と宵月の事を父さんにありのまま伝えるかどうか。

でも父さんほど信頼できる人はいないと思い僕は意を決めて父さんに森林であった事を話した。

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僕が話したあと父さんは少し考え込むように俯いてしまった。

そして話すことがまとまったのかこちらを向いて父さんは話し始めた。

「なるほどそんなことが、スキルにも目覚めたのか、、、、まあスキルは鑑定をかけるまでは具体的にどのようなものかは分からん。今はそんなことよりメッシュ、その二本の太刀は妖刀と言ったな?」

「うん、そうだよ」

僕の返事を聞いた父さんは何か歴史的な事を話し始めた。

「メッシュ、そもそも太刀という武器は刀剣の一種でなこの刀剣という武器はもう作られていないのだ」

「えっ、どういう事?」

父さんが言ったことに僕は少し驚いてしまった。そして父さんは話を続ける。

「もう今ではこの刀剣を作れる職人がいないのだ。だから刀剣はこの世にある分しか存在しない極めて稀少な武器なのだ。その上妖刀となるとさらに稀で今やこの武器の存在を知るもの自体も少ない」

そしてそれを聞いた僕は自分が太刀という武器を知っていたことに疑問を持つ。

まだ父さんの話は続く。

「妖刀は刀剣を作れる職人でも限られた職人しか作ることができなかったもはや伝説の武器、そして妖刀は魔剣のように特殊な能力を持っている」

父さんが話し終えて部屋には少し沈黙が訪れた。

「お前の話を聞く限りこの二本の妖刀は非常に強力な能力を持っているようだ意思を持った武器など魔剣でも珍しいからな。それにしても宵闇を使った時から記憶がないとはその妖刀は能力は強力だが代償が大きいのかもしれんな。夢の中で出てきた宵月は他に何も言わなかったのか」

そして僕は宵闇のことで思い出す。

さっき目を覚ます前見ていた夢の中で最後に宵月が口にした言葉を

「そういえば宵月が最後に僕なら弟を任せられると言っていたような気がする」

「何?その話が本当ならこの妖刀たちは姉弟なのかもしれんな。それにしても弟を任せられるか、何か事情があるのかもしれんな、また宵月がお前に話をしにきた時にでも聞くしかないな」

こればっかりは今の僕ではどうすることもできないな。

それにしても、ようやく自分が生還したのだと実感が湧いてきた。僕は胸を撫で下ろす。

「ふむ、今日はもうゆっくりしているといい。いろんなことがあって疲れただろう。しかし明日からはまた修行だぞ早くその妖刀もスキルも使いこなさなくてはならんしな」

「うぅっ」

生還に喜んでいた気分が一気にどん底に落ちる様に感じた。

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あの魔境森林での出来事からさらに5年が経過した。

15歳になった僕は今母さんの墓の前にいた。

「もう10年も経ったのか、母さん随分長く待たせたねごめん」

10年の修行で僕は自分の能力をある程度制御できるようになったため母さんのもとに帰ってきていた。

「これから僕は学校に行くんだ。また次に会うのはしばらく先になるけど僕を見守っていてね母さん。じゃあもう行くね」

僕は母さんを背に明日へとあゆみはじめた。
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