オメガバースの世界にトシマ区ごと異世界転生したけど、みんなオメガなのになかなかオメガバースしない話。

みゆきんぐぅ

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Artificial Magic

動きを止めると昨日のことを思い出してしまいそうで、仕事に打ち込む京。
その間もSPである如月たちは傍で控え、ニコは傍の机で最近出来るようになってきた書類をかたずける。

おかげで仕事に集中できていたのだが、ノックと共に扉が開けられ、はいってきたのはハカセだった。
朝から大変な興奮なようで、かなり近くにまで近寄ってくる。
昨晩の情事を悟られたくなくて離れて欲しいところなのだが、そんな京の反応にお構いなしだ。

「ケー様!ボク達魔法少女になれるよ!」
「は?」
「あ。ボクと契約して魔法少女になってよ!!」

何を言い出したのかと首を傾げる京。
今度は一体何なのだろうか。

「冗談だよ~。名前はね、AMね!」
「AM?・・・午前ではあるが」
「ちがよ~。人工魔法の話!」
「じんこうまほう?・・・人工魔法??」
「そう!『Artificial Magic』でAMだよ」

「俺達が魔法を使えるようになる何かを作ったと言うことか?」

他の人間だったら1から説明を求めるところだが、ハカセならあり得ることで、そう尋ねれば嬉しそうにした。

「そう♪」
「凄いじゃないか。・・・具体的に何ができるんだ?」
「防御だよ」
「へぇ。・・・つまり防壁の解読は終わったんだな」

ハカセには期待していた。
けどこんなにも早く解明するとは思わなかった。
心底驚きつつもそう尋ねると、自慢げに頷くハカセ。

「うん!」
「良くやった。ハカセ」
「えへへ~。これはケー様のやつ!」

指輪型のそれを差し出してきた。
取り敢えず右手の人差指につけるとハカセがブンブンと首を振った。

「そこじゃないよ!左手の薬指につけるの」
「指によって能力半減するのか?」
「そーだよ~」
「ハカセ」
「いーじゃん、左手の薬指でも~」
「ハカセはそんな限った場所で力を発揮するような不便なものは作らない」
「そー言われちゃうとこまるんだけど」

よりによって左手の薬指にどう言うつもりなのかは良くわからないが、自分より遥かに上なのにそんな事をするハカセに、小さくため息を吐くと右手の人差指に付けたまま書類に手を伸ばす。
そもそもなんで、つまらないそんな嘘をつくのか良く理解できなかった。
とはいえ、ハカセのことで理解できないことなどたくさんあるので、これもその一つだとあまり気にしない。
もしかして、左手の薬指につける意味を知らないとかあり得るかもしれない。

「ありがとう。付けさせてもらう」
「これで安心だね♪」
「まぁ俺は如月たちに守られているからそこまで心配はないと思うんだが」

右手の人差し指につけた指輪を眺める。
すると、いつの間にか横に近寄ってきたハカセが、隣に来るとこちらを見下ろしてきた。
そんな彼が机に手を置き、こちらを覗き込んでくる。
自然と近くになった距離に息を飲んだ。
みえる笑顔がいつもより抑えられていて、口元だけ笑っているような表情で、声が抑えられて耳元で囁かれる。

「Ωてね、順応力が高いこともあるだ。
だから、辛い環境でも生きられる特性があるんだ」

そんなに近づいて話さなければならないことなのだろうか。
だが幼いころから傍に居る年上のハカセに今更警戒するということはなかった。

「そうなのなか?」
「うん。耐えられないのは番の強制解除くらい」

それは何となくわかった。

「ケー様はΩはなんで作られたと思う??」

Ωは人為的に作られたものなのかと眉をひそめる。
でもだとしたらなぜ自分たちもΩなのか理由がわからないと、思ったらどうやら想定外にスピリチュアルな事だった。

「神様にだよ。男女があれば子孫は繁栄できる。
なのにα・β・Ωとなぜ作ったんだろうね」
「さぁ・・・俺にはわからないが。・・・しいていうなら試練を与えるため?」
「うわー・・・。ケー様はマゾっぽところあるよね」
「なら、ハカセはなんだって思うんだ」
「ボク?ボクはね。愛されるためだと思ってる。
これだけ嫌われ者のΩをつくるなんて、後は神様くらいに愛されるためにしかないでしょう?」
「まさか、神などと言うとは思わなかったな。・・・どうかしたのか?」

そう尋ねたがハカセの浮かべた笑みにヒヤリとする。

「神は人を愛すことなどない。
けど、他人類から憎まれるΩなら別。
Ωは人扱いすらされないんだから」
「ハカセ?」
「神のものを手を出すαはなんて愚かなんだろうね」
「随分偏った考え方だな・・・。
それ以前に人間扱いしてないのは、αとβだろう?
だけど、神なんて言葉、ハカセから出てきた事に驚きだけど。
・・・それ外で言ったら駄目だぞ?」

流石にハカセの言葉がこの世界のαに聞かれては駄目なのはわかる。
ふとハカセの視線が少しずれている事に気づく。

ピアス・・・?


「わかってるよ。
ボクはケー様にしか興味ないもん。
使って話してるしね」
「それならいいが」
「ケー様にも使ってもらいたいくらいだよ」

ハカセに使わせているのは、使う言葉に問題があるからだ。
なのだが、実は今日も相手を不快にさせるようなことを言っていたりしていたのだろうか。

「失礼な事を言ってるか?」
「そう言う事じゃなくて。Ωの特性をさっき言ったでしょう?
・・・ケー様。あのαにいいようにされてるから心配」

本当に忌々しそうにいうハカセ。

「・・・ルルのことか?」
「それ以外になにがいるの?それに愛称で呼んでるし、王太子に失礼なんじゃないの??」
「本人が良いと言ってるからであって」
「その首筋の跡も?」

じっと見てくる笑みは相変わらず冷たくて京はため息をつく。
確かに昨日キスマークを付けられたわけだが。

「何を怒ってるんだ」
「ケー様が警戒心がないから。
αは敵だよ?わからないわけじゃないでしょう?」
「ハカセ・・・」
「強制的に番を解除されたΩなんかのために、ケー様泣いてたんでしょう?そんなことする奴らなんだよ?αは」
「そう言う事をする奴がいるかもしれないけど。
・・・これからは良くなっていくから」
「なんで?王太子の番いになるからとか言わないよね」
「Ωの人権を明確にする事になったんだ」
「まさか、それを信じるの?」

今日のハカセはやたら突っかかってくる。
首を傾げてそちらをみる。

「どうした?本当に。疲れてるのか?」
「休み無く働いてるケー様より休んでるよ」

ジットリとこちらを見てくるハカセ。
だがこの反応は、酔っ払いが酔ってない!と言うようなそんなようなものだろう。
防壁の解析も終わったなら一旦休ませてやるかと思いつつ、ハカセの体を押し返し離す。
そしてしっかりとそちらを見る。

「さっきの質問だけど。・・・俺は信じるよ」
「・・・」
「劇的に変わることは無理だ。
でも少しずつ変えなきゃ変わらないだろう?そんなのは長く生きてきたハカセのが良く知ってる筈だ」
「でも変わらないものだってあるよ。人間は何千年経っても争いをやめない。
そんなのはセオリーでしょ?」
「だからって変えられるかもしれないのに、動かないわけにはいかない」
「それで他のΩが危険に晒されても?」
「・・・そうさせないように動くつもりだ」
「結局、ケー様は目の前にいる者だけ助けられればいいの?
「・・・、」
「王太子が中心となって法令となったとしても、今度は影でする物が増えるだけだ」
「・・・」
「Ωにはねランクがあって、最上級のΩは最上級のαを産みやすい。だからαを産み落とすために孕ますために飼われることがある」
「!」
「王太子はαで、ケー様と番いたいためになんでもするよ。でも強制しないのはΩの心が壊れるからだ。
なら、Ωに好きになってもらうのが1番。
あいつらは打算的行動ができる人間だよ」
「ッ・・・!」
「騙されないで。あいつらは今までだって何度も助けを求めたΩの声を聞かなかったよ。あの王太子だって」
「ハカセ!!!」

キっと睨みつけるとようやくハカセは止まる。
しかし、その瞳は怒りをためている。

「・・・。今日はもう帰って休め」
「っ・・・ケー様!」
「確かにハカセの言うようにそういう一面があるのかもしれない。
俺がするのは小を捨てて大に就く行為なのかもしれない。
・・・けど、目の前で助けを求める手を払うなんて出来ない」
「っ・・・ボクは赤の他人よりケー様が心配だよ。αに気を許して絶対に傷つくのが目に見えてる」
「・・・ハカセ」
「・・・ボクは運命の番を壊す方法を見つけるから」
「!」
「それでもあの男がΩのケー様を選ぶか見ものだね」
「・・・」

そう捨て台詞を吐きながらハカセは部屋を出て行った。
思わずため息を吐くと、ニコがお茶を淹れてくれた。

「大丈夫ですか?」

その耳には翻訳機がつけられていて、先ほどの会話が分かってしまったらしい。

「うん。大丈夫だよ」
「京様。・・・さっきのことはどうかお忘れください」

そう言ったのは如月だ。
如月とハカセは歳が近いからフォロするのかと思われたのだが・・・。

「京様に甘えているだけなのです。そしてルボミール王太子殿下に嫉妬しているだけなのですよ」
「ハカセが?」

そう聞いてもにわかに信じがたい。
ハカセは何にも興味を持たないような人物だったからだ。

「アレが興味があるのは本人も言っている通り、貴方にだけなんです」
「・・・」
「その貴方に他の男の気配を感じるのが嫌だったのでしょう」

見えるところにキスマークを付けさせてしまったのは良くなかったかもしれない。

「それにしても、ハカセ様はすごいですね。人工魔法を作られるのはこの世界でも数少ないんですよ」
「人工魔法自体はあるのか・・・?」
「そうですね。各所にあるような魔法道具などはそうですし・・・キョウ様がつけている番のピアスもそうですし、防御壁もそうだと思います」
「そうなのか」
「はい。番のピアスとは常に自分の気配を感じるものです。・・・京様のは市販のものとは違うようですが」
「・・・番いの。確かに、感じる気が・・・あれ?」

そういうとピアスに触れる。
今まで感じていたはずの気配をそういえば感じない。

「・・・?」

良くわからないが、今日の夜にでも聞いてみようと思ったのだが。

・・・、思いもしないことにそれから数時間後に、島にルボミールが現れた。

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