オメガバースの世界にトシマ区ごと異世界転生したけど、みんなオメガなのになかなかオメガバースしない話。

みゆきんぐぅ

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『運命』を補助輪扱いする妹。

隣の部屋に執務に向かうルボミールを見送ると、京がオンラインになった瞬間に妹に話しかけられる。
おそらくずっと待機してたのだろうと予測は出来た。
ラージャに来てから特に話をしてなかったことを思いだす。
元気?から始まり最近の事など聞かれ、たわいもない話をする。
しかし、『運命の番』に話題が触れると途端に不機嫌になる。

『は?なんて??』
「だから・・・、『運命』が、はずせないかと思って、」
『馬鹿じゃないの?』
「酷い言いようだな」

間髪なく罵倒され、苦笑を浮かべる。

『なんでそんなに変なことに無駄な時間を費やしているの。
それもハカセつかってまでして』
「女の人だったらルルみたいな男とと、って言われても疑問もなく嬉しいんだろうけど」
『この世界は男女だけじゃなくオメガバースなんだしここに来る前とは違って偏見は少ないって』
「・・・。でも、」
『「運命の番」を舐めているんじゃないの?』
「そんなことはない」
『はずせるなら『運命』なんて言わないでしょう』
「この世界の人間は出来なかったかもしれないけど、」
『抑制剤がうまくいってるからって、そう思うのは違うんじゃないの』
「・・・」
『そもそも、きょーちゃんは嫌なの?』
「嫌じゃないよ」
『なら何が問題なの』

不機嫌を隠しもせずに京を問い詰める雅。
こんなこと言うつもりはなかった。
優柔不断に自分の思考がぐらついているのも嫌だったからだ。
自分の額に手を当てて顔を遮る。

『きょーちゃん・・・?』
「・・・その『運命』が突然なくなるかもしれないだろう。
ここに来たのだって偶然だ。その『運命』がなくなることがあるかもしれない」
『・・・、』

京はこの世界に居ることがイレギュラーであり、その普通じゃないΩの自分の『運命』でなくなるかもしれないという恐怖を告げた。
この世界に来たことに第三者が絡んでいるかもしれないことは言えなかった。
京の話をちゃんと聞いていた雅はすべてを聞き終わると小さくため息をついた。

『なんだそんなこと』
「そんなことって・・・俺にとってはそうじゃない」
『ごめんなさい。悪く聞こえたなら謝るわ。
ただ、簡単な解決方法があるのに気づいてないから驚いたの』
「え・・・」
『そんなの京ちゃんの魅力で王子をおとしちゃえばいいのよ』
「・・・」
『あ。馬鹿にしてる?けどこれが一番だと思うけど。
むしろ今は「運命」は自転車の補助輪くらいに思ってればいいのよ』
「・・・補助輪」
『そうよ。「運命」が何かアクシデントでなくなったとしてしまったとしても、きょーちゃんの魅力で惚れさせておけば問題ないわ』
「みーは・・・相変わらず無茶なこと言うなぁ・・・。
この世界は確かにバースがあってΩの男でも男と子を成すことは出来るけど、結婚したりするのは数が少ない。
・・・それでわかるだろう?」
『解けても結婚したいって?やだ、きょーちゃん、ちゃんと好きなのね』
「・・・そういう事じゃなくてだな」
『じゃぁ嫌いなの?』
「・・・。そのことから離れて。
・・・そもそもルルの元婚約者は女性だ」
『あら。王太子なんて政治的理由でそうなった可能性だってあるじゃない。
もしかしたら、王子は男の人の方が好きかもしれないじゃない!』

語尾がやたら嬉しそうなのは察してほしい。
半眼で雅を見れば悪いとは思ってくれたのか咳ばらいをしてごまかす雅。

『無理やり番っちゃえば?』

今は家のしがらみがなくなったとは言え東雲家の子女だというのに、なんてことを言うのだろうか。

「恐ろしいことを言うな。・・・興味をなくして強制解除されたならどうする」
『きょーちゃんの言い分も考えれば、それもそうね』

運命の番ではなくなるなんてないと思うけど。と、クスクスと笑う妹。
妹は腐女子だからあったら困るのだろう。

『でもやることは、はっきりしたわね!』
「え・・・?」
『こうなったら準備しないと。きょーちゃんはデートならどこに行きたい?』
「は?・・・また、ろくでもないことを考えてないか?」
『失礼ね!素敵なことを考えているだけよ♪』
「・・・」
『信じてないわね?・・・でも思うんだけど、やっぱり親しくなりたいならもっと積極的に相手に接しないと。
仕事以外で話したりはしていないの?』
「一応夜に話をしたりはしているが、・・・でも確かに2人の時間はそれくらいかもしれないな」

補助輪扱いには笑ってしまったが、確かに妹の言うとおりかもしれない。
自分に甘い今なら、ルボミールは応えてくれるだろうか。

『王子にはそうね・・・。観光地化の件で視察をしてもらいたいとでも言ったらいいと思うわ』
「あー・・・うん。それなら時間を取れるかもしれないな」


デート・・・。・・・俺したことないんだけど・・・。


怖気つきそうな気分ではあったが、何も動かないわけにはいかない。
やたら雅が乗り気になっているので、それを抑えると自分でやると言った。
しかし、恋愛初心者が同じく恋愛初心者であるが素人恋愛達人(男同士限定)と自称する妹に、勝てずに『ここだけは押さえて!』と、言われた内容を準備した。


☆☆☆


その日の夜。
仕事が終わり2人でルボミールの部屋に帰ってきていた。
晩酌最中だったがどこか考え事をしているようなルボミール。
ここ最近、・・・スミオラ家のリコから話を聞いてからずっとこんな調子である。

「ルル」
「ん・・・?どうした」

それでも京に向ける視線は優しくてホッとする。
そこで、ダンがいない今、どれくらい忙しいのか聞いてみた。
妹と話しているときは『これしかない』と思っていたのだが、現時点でルボミールを忙しくさせている自分が、こんな事を誘うなんて自分の余裕のなさに苦笑する。
しかし、ルボミールは質問の意図を聞いてくれた。

「えっと。・・・2人で出かけたいなって思って」
「あぁいいぞ」
「即答?」

余りにも早い切替しだ。
王太子は自分だけの都合で動くの限度があるのではないだろうか。

「いわゆる、『デート』というのをしたいんだけど、・・・駄目かな?」
「・・・、」
「・・・完全にプライベートが難しいなら、視察と言う形ならどうかな」

そう言いながら恥ずかしくなってくる。
見上げたルボミールは固まっている。

「ぁ・・・この世界、・・・というか貴族はデートなんてしない、か?」
「いや、しよう」

心なしか嬉しそうに見えて京にもうつる。

「・・・。『運命』が怖いって言ってたけど、俺ルルに好かれるようなことしてないなって思って」
「そんなことはない。キョウ自身異世界に来ているというのに、皆を率いる心の強さは素晴らしいと思っている」
「それは・・・その頃は余り周りが見えていなかったし」
「島であれば外の世界が見えないのは必然だ。・・・そうだな。何時しようか。明日か?」
「あ、明日?俺の方はいつでも大丈夫だけど、明日だとルルの方が調整つかないでしょう」
「大丈夫だ」
「嬉しいけど、・・・駄目だよ。ルル。
仕事はちゃんとしないと。
明日ちゃんと他の側近の人とも調整してから教えてくれないか?」
「・・・。あぁ。俺のことを考えてくれてありがとう」

そういうと、京の頬を撫でるルボミール。
その嬉しそうな表情は、久しぶりに見たような気がする。
なんだかそれだけで嬉しくなってしまう。

「楽しみだな」
「あぁ」

どんなことをしようか。
きっと2人なら何をしても楽しいと思うのだが。
心が弾むのを止められなかった。



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