オメガバースの世界にトシマ区ごと異世界転生したけど、みんなオメガなのになかなかオメガバースしない話。

みゆきんぐぅ

文字の大きさ
33 / 56
本文

怪談話を聞かされるとは思わなかった。

この世界には番同士が身につけると、離れていても互いの座標をしることができる『ピアス』がある。
元々、テリトリーを荒らされることが嫌いなαの為に作られた魔法道具で、番ったΩを管理するためのものだ。
利用者の魔力を使えばピアスをかいし座標にテレパシーを送ることも出来る。

京が持っているものは少し特殊だ。
京は魔法を使うことができないため、ルボミールの組織を組み込み使うことで使用が出来る。
また、京達は番っていないからそういった意味でも仕様が違う。

京も少しながらもその恩恵を感じていた。
忙しいルボミールを頼りすぎるのは良くないことだが、ピアスを通して気配を感じることが出来るのは安心できたから。

しかし、それが出来なくなりルボミールは京以上に荒れた。
暴走し京の周りに居る人間をバースに関係なくオーラでねじ伏せた。

そんな風に荒れた為に、京はラージャで暮らすようになったのだが。

「・・・ごめん。・・・その、テレパシーが使えなかったのは・・・俺の所為だったみたいだ」

解析したのもそこから新たに指輪状にしたのも凄い。・・・だがこんな副作用があるとは思わなかった。
京にだけなにならさほど気にしないが、それでルボミールを不安にさせてしまったわけなのだから申し訳なく感じる。
ちなみに、京は抑制剤の影響なのか、それともこの世界のΩじゃないからなのからなのか、それほど不安には感じなかった。
詫びをする京にルボミールは首を振った。

「いや。そのお陰でキョウと暮らすようになった。結果はいい働きをしたようだ。・・・だが」
「あぁ、うん。つけない。この部屋には置いといて良いか?」

ルボミールの気持ちもわかるし、だがハカセの気持ちもわかった。
幼いころから自分を守ってくれたうちの一人であるハカセの気持ちを、捨てることは出来なかった。

「物事はトライ&エラーだ。・・・今回のことは改善して住民に持たせたい」

これは観光地化に向けて、考えていたことだった。
入ってくる人間にはGPSを付ける予定だが、住民を守る術が欲しかった。
すでに警備ロボを配置し始めているが、ハカセの作った指輪は丁度よかった。

「その為にもこの指輪を再解析して何がいけないか調べないといけない」
「そうだな。ただ、今は不在だから、スミオラ家に聞くのもいいだろう。彼等は魔法道具の知識が豊富だ」

確かにそれも言えている。
京がニコから渡されたタリスマンを所持している間は、リコは普通に話してくれるはずだ。


☆☆☆

次の日。
休みを開けて城に戻った2人。
寂しくはあるが今は気配だけでなく、テレパシーも使え正確な位置が分かるからなのか、ルボミールが嬉しそうにしつつ執務に向かうのを見送る。
京は与えられた隣室にいつもの様に籠ると、ニコにお願いをしてリコに城に来てもらっていた。
そしてっ問題の指輪を見てもらうが、彼は厳しい顔をしている。

「・・・。これは・・・本当に何も知らないΩが・・・、いや。何も知らない人間が作ったのですか」
「あぁ」

ハカセはここに来る前も、あっと驚くものを作っていた。
人を完全に把握出来たり、追尾に特定する技術は特にすごい。
京は説明を聞いてみたがどうしても理解が出来ず、その道の人間を部下としてつけているが、どんなに素晴らしい研究員をつけても語彙力が途端に壊滅し『すごい』『真似できない』と言う。

具体性がなく意味が分からないと思うのだが、彼等は本当にそう感じているようでそれ以上は応えてくれない。
もし、部下の手柄を奪うようなことがあれば、そうはならないだろう。
だから、京は防御壁の解析もこの指輪もハカセが作ったと信じて疑わなかった。

「これはどういう経緯で作られたかご存じですか」
「防御壁の解析から得た知識で作ったとは、・・・思っているが」

曖昧になるのは本人に明確な確認しておらず、状況的な判断によるものだからだ。

「妙なことを伺っても」
「?・・・構わない」
「失礼ながらニコからあなたがどういう人がらなのかは聞いています。
あなた方はとても情味のある方々で、集団行動をしながらも他Ω・・・自分達ラージャから来たΩを虐げることがないとも」
「そうか。・・・まぁすべての人間を把握できているわけじゃないから、信用しすぎないで欲しいんだが」
「そうですね。ですが、それはどの人類に当てはまること。
私が言いたいのは、あなた方の傾向の話。
・・・ところでですが、防御壁は術者が常駐しているわけではありません。
にも拘わらず、防御システムを発動できる理由をご存じですか」
「・・・、・・・波?・・・光??」
「・・・。どういうことでしょうか」

京はいたってまじめだった。
防御壁が何らかのエネルギーで動いているとは思っていたのだが、そこはハカセの管轄だと思い詳しくは聞いてなかったのだ。
改めて聞かれると分からないもので、今までの知識から波発電や光発電だと思ったのだが、魔法も同じようにそれでエネルギーになるとは限らないだろう。

「いや。今のは忘れてくれ。
すまない。俺は防御壁の解析が終わったとは聞いているが、エネルギーの源がなんなのか聞けていないんだ」

その様な間もなくハカセは研究のためにこの地を去ったからである。
まぁ聞いても例によって理解が出来ないとは思うが・・・。

「そうですか。ところで、このことは魔法研究施設にしらせても良いでしょうか」
「どういうことだ?」
「悪い意味ではありません。・・・なにも知識のなかった人間がこれを作れることは驚異であり、その知識はより深めていくべきだと思います」
「ハカセは・・・変態だからな」

嫌そうに言うとリコには伝わらなかったようで、苦笑した。

「いや。あいつには誉め言葉なんだ。・・・困ったところもあるが、着眼点やそれに勝る実績はとても助かっている。けど、理屈が通用しないから良くそういう風に言い表すんだ」
「なるほど。・・・確かにこの世界の研究馬鹿と変わらないところはあるかもしれませんね」
「研究馬鹿!・・・確かにそうだ。・・・で、あまり聞きたくはないんだが、このエネルギーの源、・・・魔力はなんで稼働しているんだ」

最悪、魔法防御壁の一部を採取くらいですんでほしいと思っていたのだが。

「魔力の高いαの細胞です」
「・・・、・・・、・・・、あいつはなんてことしてるんだ」

リコが誘導してくれている間に良くないものが当てられているんだろうなとは思っていた。

「大丈夫ですよ。人体細胞だと分からない状態です。
人の瞳や髪、骨などは良い素材なんですが、数百年前にとある魔力の高い民族が瞳目当てで狩られ、人権保護団体の訴えから人体細胞を採取することは禁止されています」
「全っ然安心できないが?」
「人体細胞を売る人間もいるのですよ。まぁ、自分の魔力を知らせるようなものなので、日々の生活費に困った人間がやる行為ですが」
「・・・他人の細胞を身に着けることをあまり、良いこととは感じていない」

例えそれで守られているとしてもだ。
だが、ふと思った。

「・・・人体細胞だと分からない状態ってどういうことだ」
「あまりお聞きにならない方が良いことかもしれません」
「今更遅い」
「そうですか。・・・であれば申し上げますが・・・。これは」

そう言ったところだった。
勢いよく扉を開けて入ってきた人物に驚いた。

「・・・如月?」

その後ろにはルボミールとダンもいる。
どういう状況なのか困惑する。


まさか、如月は知っていた・・・?


2人は仲が悪いと言う事は無い。
ただ、良くもない。
それは、ハカセに協調性が無いことや、他人に興味を示さないためだ。
しかし、それよりもここに居ることが可笑しいことに、漸く思い至った。

「申し訳ございません・・・っ」
「おかえり、如月。丁度良かった。ハカセに聞きたいことがあるんだけど、あいつはどこに?
・・・まさか研究施設が良いとかいいだしたか?」
「それの方が良かったかもしれません」

そう答えたのはダンだ。
意味が分からずに首をかしげる。

「・・・ハカセが・・・消えました」
「え」

如月に悦明を求めるように視線を向けるが、沈痛な面持ちでこちらを見てきている。
続いてダンを見れば小さくため息をついた。

「魔法研究所に隣接している魔法中央図書館で資料を調べている間に姿を消したんです」
「魔法中央図書館・・・」
「あの中は迷宮の様になっているので、ずっと勝手に離れるなと言っていたのですが、最初頃はしたがっていたのですが。・・・今思えばあれは撒くための行動だったと思いますね」
「・・・」

如月がその言葉に反応しないと言う事は、如月もそう思っているのだろう。
聞けば最初はおとなしく本を読んでいたらしい。
本を読むのも脅威の速さで二人は驚きつつも、実際に読み頭に入れ込んでいることを知りハカセの願いをかなえるべく、欲しがる本を探しに行っていたそうだ。
それは次第に巻数が増えていき、ダン1人では持ちきれなくなったため、如月も同行したそうなのだが戻った先にハカセの姿が無くなっていたそうだ。

「・・・、撒いた、・・・なら良いんだけどな」

良くはない。だがそれならまだ敵意が無いと分かるからだ。
しかし、攫われたとなると話は別だ。身の安全がそこから割合が大きく下がる。
京はタブレットのアプリを起動する。

「GPSを起動しよう」
「・・・もう探索済みです」

そう言った如月の手にはハカセが来ていた服と、GPSが搭載されたスマートフォンがあった。


感想 2

あなたにおすすめの小説

ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!

由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった。しかしハルの血が特殊だと知ったダンピールはハルを連れ帰って? いっそ美味しい『血』(治癒)と『体液』(バフ)と『癒し』を与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

黒とオメガの騎士の子育て〜この子確かに俺とお前にそっくりだけど、産んだ覚えないんですけど!?〜

せるせ
BL
王都の騎士団に所属するオメガのセルジュは、ある日なぜか北の若き辺境伯クロードの城で目が覚めた。 しかも隣で泣いているのは、クロードと同じ目を持つ自分にそっくりな赤ん坊で……? 「お前が産んだ、俺の子供だ」 いや、そんなこと言われても、産んだ記憶もあんなことやこんなことをした記憶も無いんですけど!? クロードとは元々険悪な仲だったはずなのに、一体どうしてこんなことに? 一途な黒髪アルファの年下辺境伯×金髪オメガの年上騎士 ※一応オメガバース設定をお借りしています

人気俳優と恋に落ちたら

山吹レイ
BL
 男性アイドルグループ『ムーンシュガー』のメンバーである冬木行理(ふゆき あんり)は、夜のクラブで人気俳優の柏原為純(かしわばら ためずみ)と出会う。  そこで為純からキスをされ、写真を撮られてしまった。  翌日、写真はネットニュースに取り上げられ、為純もなぜか交際を認める発言をしたことから、二人は付き合うふりをすることになり……。  完結しました。  ※誤字脱字の加筆修正が入る場合があります。

大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)

子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ 喰われるなんて聞いてないんだが(?) 俺はただ、 いちご狩りに誘われただけだが。 なのに── 誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に なぜか俺が捕まって食われる展開に? ちょっと待てい。 意味がわからないんだが! いちご狩りから始まる ケンカップルいちゃらぶBL ※大人描写のある話はタイトルに『※』あり

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

【完結】逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。抱かれたら身代わりがばれてしまうので初夜は断固拒否します!

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
隣国の国王キリアン(アルファ)に嫁がされたオメガの王子リュカ。 しかし実は、結婚から逃げ出した双子の弟セラの身代わりなのです… 本当の花嫁じゃないとばれたら大変! だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだんキリアンに惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>