オメガバースの世界にトシマ区ごと異世界転生したけど、みんなオメガなのになかなかオメガバースしない話。

みゆきんぐぅ

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日本語が学びたい・・・?

ある昼下がり。
番のピアスが利用できるようになり、本当であればトシマ区に戻っても良かった。
ルボミールもそのつもりでいたのだが、なにかあったのか引き留められ結局京は城に残ったままだ。
京はタブレットをじっと見ながら捜索プランを考える。

「・・・」

ハカセのことは心配だ。
魔法図書館から姿を消したと聞いて、一瞬誘拐も考えた。
しかし、ダンの証言の件や、残された衣服や持ち物の中に翻訳機も含まれていたことを考えると拉致は可能性が低いと思われた。
わざわざ身ぐるみはがして連れ去る理由が思い当たらない。

ルボミールによるとダンはかなりの魔法技術者らしく、そんな人間がすぐ戻る状態でハカセの身ぐるみをはがしている時間があるとは思えなかったからだ。
そして、薄々気づいていたが、やはりハカセはこの国の言葉をとっくにマスターしているらしい。
何故そんなつまらない嘘をついたのかは全くわからないが、今は見つけ出す方が先だ。
本人の意思で抜け出したなら、それでもかまわない。
だが、本当に攫われたりなどしたら助け出さなければ。

のだが。

チラリと傍らの如月の気配を探る。
如月はあの時自分が離れたせいだと思い悩んでいる。
真面目な性質の彼はそもそもハカセの監視のために同行したのに、こんな結果になって自分が許せないようだ。
そんな如月にダンは気にかけているようだが、邪険に突き返しているのをみるとストレスが溜まっているのが見える。
如月はあのハカセにも普通に接し、常に丁寧な対応する人間だ。
先日、ノックもなしに部屋に入室してきたことを考えても余程疲れがでているのだろう。
ハカセも心配だが如月も心配だ。

「如月。明日から2日間休みにする」
「・・・。はい」
「勘違いしないで欲しいんだが、ハカセのことは関係ない。
単純にここに来て如月やニコに休みがなかったからだぞ」
「はい」
「如月が帰ってきたら、次はニコの番だ」
「僕も貰えるのですか・・・?」
「あぁ。もちろん。最近いけていなかったショーの方に顔をだしてもいいし、何をしてもいいぞ」
「僕勉強がしたいです」
「そうか。・・・必要なものがあったら何でも言ってくれ」
「はい!」

元気に返事をするニコに微笑みを浮かべつつ、如月を見る。
昔から黒子の様に気配を消しているが、今日は酷く落ち込んでいる様に見える。

そんな如月を慰めるためにスマフォにメッセージを送る。


☆☆☆




がやがやと賑わう店内は、今朝完全復活したという青の大魔法使いの話でもちきりだった。
なんでも、3賢者達は自分達の安否が分かるらしく、ここ最近になって青の大魔法使いの波動を感じていたが、ここに来て対面に来たそうなのだ。

「朝から城でも聞こえていたが、みんなその話題に持ちきりだな」
「もう数千年は生きている方らしいので、そうもなるんじゃないでしょうか」

そんなことを日本語で話すのは、京と如月だ。
ここはショーの劇場が近くにある『スカラパッチャ』という居酒屋。
安い料理とうまい酒を出してくれると評判なのだ。
京はこの世界にきて初めてこういう店に入ったが、とても気に入っている。
それでそうそうに店に来たのだが、つまみながら酒を楽しんでいると少し驚いたように声を掛けられる。

「今日はあの方は一緒じゃないのですか?」
「ルル?・・・あ。言ってない」
「宜しいのですか?」
「え?悪いことしてるわけじゃないし、ピアスのおかげで正確な位置もわかっているみたいだし良いんじゃないのかな」
「良くないですよ」

小さくため息をつく如月にきょとんとして京は見つめる。

「αは嫉妬深い。・・・怒らせたら面倒、・・・大変なことになりますよ」

嫌そうに言う如月に笑った。

「別に言い直さなくても。ハカセみたいに本人に言ったら困るけど。
それにしても具体的だな」
「・・・。一般常識です」
「そうなんだ?・・・あぁでもルルもヤキモチ焼きだな。
あっち日本に恋人がいないか聞かれた」
「今はまだその程度で済んでいるだけです」

思い出してクスクスと笑っていると如月は説得力が有るような声で言ってくる。
一般的にとは言うがなんだかまるで実体験に聞こえてきた。
如月は京よりも体格は良いが、この世界では華奢だ。
ルボミールはもちろん、ダンでよりも小さい。

「??・・・もしかして、モーションをかけられているのか」
「・・・。そんなことは」

如月は一気に酒を煽った。
動揺が一切隠せていない気がする。

「・・・あの人がどうとか関係ないです。あの人はΩである私を馬鹿にしているだけだ」
「そんなことする人城の中にいるか??リコは呪いの所為でああなったけど・・・。
二人きりだと馬鹿にしてきたる差別的なことをいうのか?」
「その様なことはないです。・・・ハカセの言ったことも一度で理解できているし聡明な方だとは思います」

思い悩んでいたのはハカセの事だけではなかったようだ。
というか、ほとんどその相手のことで悩んでいたらしく、ちょっとホッとした。
あの事は如月の所為ではない。好奇心旺盛なハカセが面白いものをちらつかされて行った行動なんじゃないかと思っている。
つい先日まで如月はハカセとダンの3人で旅に出ていた。
そのメンツから考えると相手はダンのようだ。

「ここはバースがあるからな。・・・暴力振ってくるとかじゃないならそれもいいんじゃないか」
「私の恋愛対象はバースじゃなくて性別です!男性に押し倒されるなんて・・・っ」
「それを俺にいっちゃう??」

どうやら如月はお酒に弱いらしい。
以前ショーのメンバーで飲んだ時は警護のために呑んでいなかったから、気づかなかった。
故郷では一緒に呑む立場ではなかったから、ここに来て知ったことだ。

「っ・・・すみません」
「まぁ。俺には補助輪があるからそこまで嫌悪感はないけど」
「補助輪?」

思い出してクスクスと笑うと、如月は首を傾げた。

「そう。俺がね『運命』を怖がってたらさ、雅が『運命』を補助輪代わりにルルに惚れさせろって」
「・・・っ」
「な~。笑っちゃうだろ??」
「っ・・・っ・・・み、やび様は、相変わらずっ」

声上げて笑わない如月が誠意一杯こらえている。
それにホッとしつつ京は酒に口を付けた。
普段飲む酒よりも安く、度数も高い気がする。
これは悪酔いしそうだと思いつつも、口当たりの良いそれはついつい酒が進む。

「ルルを補助輪なんて言うのあいつくらいしかいないよ」
「そうですね。・・・でも『運命』だったらここまで悩まなかったんでしょうか」
「どうだろう。俺は結局ルルが居るから想像でしかないし、もともとそれが嫌だから何とも言えないけど」
「・・・すみません」
「いや。そもそも如月はダンが嫌いなの?」
「・・・。そういうわけではありません。・・・ただ、女性扱いされているようで納得いかない気がするんです」
「あ。それは分かるかも」
「京様も感じられますか・・・?」
「これはルルにだけじゃないんだけどな」
「私はあの男だけですが・・・」

この地に来て男にちやほやされるようになった気がする。
ヘテロで男に好かれるのは気がないうちは苦痛かもしれないが、色んなαに好かれることを考えると羨ましいきもする。
ルボミールからの好意は嬉しく感じるが、そのほかの好意は嫌悪を感じる。

「差別的なことは言われてないんだな?」
「はい。そのようなことは一切ありません。
・・・逆に、ハカセやこの地に居るΩ達から聞くα像が良く分からなくなりますが、・・・でも彼等も嘘はついていないと思います」

施設に来ていたαはまさに聞いていた通り、こちらを完全に見下していたのを思い出す。
京は王太子の運命の番でそんな者に虐げることがきるのは、リコのような呪いを施された者だけだ。
そんな京の近くにいる如月にも無体に働くわけがない。

「そうだな・・・。」
「相手などいくらでもいるはずで、わざわざ私じゃなくてもいいです」
「もし嫌悪が無いなら前向きに検討してもいいんじゃないか。如月とダンは歳が近いのだし」
「・・・私名前だしましたか」
「いや、今更でだろう?」

京とルボミールは10歳としが離れているが、如月達は3歳差だ。
そういうと、如月は黙りこんでしまった。
アストリア帝国に行ったときに一体何があったのだろうか。

「如月の心次第だ。・・・俺が言いたかったのはΩだから受け入れろってことじゃない。ただもし嫌じゃないのならって話だ」
「・・・一番嫌なのは、嫌に思っていない自分です」
「・・・如月」
「ハカセが姿を消す前に言われたんです」
「何をだ・・・?」
「『染まった』と」
「またあいつは・・・気にするな如月」
「・・・やはり、『ここ』にということなのでしょうか」

如月によるとダンと話していると唐突に言われたそうだ。

「なぜかしらないが、ハカセはαを毛嫌いしている」
「・・・あれはいったい何なのでしょうか」
「なにかあったのかもしれないけど。・・・それは本人に聞いてみないとだな。
・・・だがまぁそれ以前に、俺が反対したからやめるような相手ならやめた方が良い」

そういう視線は不安げで苦笑した。

「先ほどはすすめておいて矛盾しているが、如月達は還れるかもしれないんだ。
反対されて止められるなら手を出さない方が良いだろうし、逆に手を出したことで深く付き合うようになったら、如月が辛いだけだ」
「・・・、」

京は如月の為と思いつつそう言ったが、如月達とも離れるということになることに改めて気づく。
ルボミールから離れるのは今は考えられないが、日本に居たころからいるのが当たり前だった如月もいなくなるのも寂しく思う。だが、自分のわがままで引き留められない。

「ダンとのことは良く考えて。・・・もしあまりにもしつこいなら、トシマ区で管理や下の者の教育に行くか、俺からルル経由でやめさせるようにいえるぞ?」
「・・・。大丈夫です・・・。あの男のことは自分で何とかします」
「そうか?・・・まぁ俺よりも経験も豊富なのだから言うまでもないと思うが」
「経験なんて。・・・そんなことよりも寂しいことは言わないでください・・・」
「ん・・・?」
「坊ちゃんが小学生のころから一緒なのですよ」

『坊ちゃん』呼びが出てくるとは思わなかった。
その頃はまだSPという立場ではなかったが、京と雅の面倒見係として如月は一緒だった。
自身の親よりもいろんなことを話した。
兄だったり父の様だったりしてくれた人物だ。
酒の勢いで感情が出てきやすいのか寂しそうな顔をする。


「・・・。如月、ずるいよ。そこでそんな顔は。何時もみたいにしてくれないと」
「嫌です」
「・・・如月」
「坊ちゃんが一緒じゃないなら還りません」
「如月・・・」
「約束してください。勝手にどこかに行かないでください」

そう言いながらこちらをじっと見てくる。

「でも」
「でもじゃありません」
「だけど、」
「京様」
「っ・・・俺は別に犠牲の為というわけじゃなくて、自分がルルの傍に居たいからのこるんだ。
それに、如月を付き合わせるわけには」
「私は貴方をお守りすることが生きがいなのです。
それなのに・・・戻って何をすればよいのですか・・・!」
「・・・き、・・・如月、落ち着いて」
「っ・・・約束してください」
「如月・・・」
「必ず言ってください。どんなことでも仰ってください。
私はいついかなる時も京様の味方なのですから」

声を詰まらせる如月の肩を撫でる。
酔っ払ってしまって感情がむき出しになっている。
けど、不思議とそれは嫌に思わなかった。

「わかった。ちゃんと如月に相談する」

そういうとふわりと微笑んだ。
SP中には見せない、・・・というか久しぶりにみたそれに京にも笑顔が移る。

「京様は何かと自分の中にため込むところがあるので心配です」
「そんなことないとは思うけど・・・」
「それはご自身で思っているだけです」
「わかったよ。・・・今日はありがとう。もう、遅いし・・・帰ろう?」

一時間は飲んだだろうか。
如月を見れば頬を赤くなっている。気の所為ならいいのだが、周りのざわめきもちょっとおかしい気もする。
『Ω』がどうのと言っているのだが、店員がそういう客を窘めている。
視線があうと申し訳なさそうにしている。
この辺りは京の起こした鑑定施設や劇場のおかげでΩに・・・というか京達には差別的な態度はしない。
店員に軽く会釈をする。
外を歩くのは危険なような気もしてきた。
いや、その前に常識的に普通なのかもわからない。

京は耳元のピアスに集中すると、ルボミールに呼び掛けた。

『・・・ルル』
『やっと連絡してきたか』
『?』

そういうテレパシーの応答は早かったが、その声はどこか不機嫌そうだ。

『場所わかっているんでしょう?』
『あぁ』
『部屋から出ても止めなかったじゃないか』
『そういう問題じゃない』

ならどういう問題なのだろうか。
隣の部屋に居てほしいと言っていたのはピアスの機能が使えずに不安になるからであって、今はどこにいるのかもわかるものと思っていたが。

『仕事中だったから声かけずらかったんだ』
『キョウからの呼びかけならいつでも大丈夫だ』

言わないで出ただけで拗ねさせてしまうとは思わなかった。
京は苦笑を浮かべながら簡単に今の状況を説明した。

『ありがとう。・・・今度からはちゃんと声をかけるよ』
『あぁ』
『それでなんだけど、今外で飲酒した帰りなんだけど・・・常識的にΩはお酒飲んで歩くの良くなかったりする?いつもは警備が居るから気にしてないんだけど、2人とも飲んじゃったんだ』
『何人でも良くないな』
『そうなんだ・・・』
『・・・。そこにキサラギはいるのか?』
『うん。如月とだよ』
『わかった。迎えに行くから店から出るな』
『うん』

ルボミールに迎えに来てもらえることになったことを伝えると、如月はコクリと頷いた。
本当に酔っ払っているようで危うさまで感じてしまう。

「もう少しで迎えが来るから」
「・・・はい。代金は」
「ここは前払い制だったでしょう?」
「そうでした・・・」
「今度飲むときは部屋で飲もうね」
「えぇ」

ふわふわしている如月を見つつそういうと嬉しそうにほほ笑むものだから、京もそれを見上げながら嬉しそうにさせた。
しかし、その表情が回りの客を落ち着かなくさせているとは、2人は気づいていなかった。
少し静かになったなと思っているところだった。
1人の男がフラフラとこちらに寄ってくると、断りもなしに空いた席に座った。
その途端、寄っている如月の気配が鋭くなる。

「立ち去れ」

どすの利いた声を出す如月に流石だと思いつつ、一気に手を出すんじゃないかと冷や冷やとする。
ジロリと如月は男を睨むが、男はお構いなしでニヤニヤと笑っている。
それは煽っているようなもので不味いなと思う。

「なんだよ。Ω2人でなにいちゃついてんだぁ?相手が居なさ過ぎてついにΩ同士でやろうってか。
そんなに欲求不満なら俺の自慢の息子を貸してやろうか」
「?」
「貴様っ」
「・・・自慢の息子なら人に貸してないで大切に育てたらどうだ」
「きょ、・・・京様。そう言う意味では」
「・・・?・・・意味が分からないが」

迎えが来るからあっちに行ってくれと言おうとしたときだった。
京と如月の周りにパキパキと音を立て、みるみる間に二人を覆い囲んだ。
それはガラスの様なのに、触ろうとしても触れられない。

「ん?・・・なんか急に静かになった」
「・・・。・・・あの男も来たのか」
「あの男?」

如月が店の出入り口の方に視線をむけ、京もそちらを見ると扉が開かれる。
そこにはルボミールとダンが立っていた。

「これは魔法か。・・・如月はこれが何か知っているのか?」
「はい。・・・これはあの男が掛けたもので、結界です。
この中に居る間は外の音は遮断され、中の音も外に漏れません」
「へぇ。便利」

そういうと、如月の頬がさらに赤くなった。

「・・・大丈夫か?」

心配になって如月の頬に手を伸ばした瞬間だった。
京の体はグンッと引っ張られ、いつの間にか傍に来ていたルボミールの腕の中にいた。

「ルル。ありがとう。・・・それ、変装?」

髪の色がこの国でよく見る茶髪にブラウンの瞳になっていてまじまじと見つめる。
いつものガーネットではないのは寂しい気がするが、好奇心でまじまじと見つめる。

「すごいな。元からその色だったみたい。・・・でもいつもの色の方がいいな」
「・・・そうか?」
「駄目ですよ。キョウ様。彼はいつもの姿では来れないんです」
「それはそうか。あはは。ごめん。ルルもダンも」

そう言ってダンの方を見れば、まるで逃げないように腕を掴まれている如月。
振り払おうとしているがびくともしていないようだった。
これが本来のαなのだろう。
SP達が何とかやっていけているのは相手の隙をつき関節をきめているからであって、1対1は勝てないと聞いている。
如月は柔道で黒帯を所持するほどで体格もいい。
殆ど負け知らずだったと聞いたが、ダンには力では勝てないらしい。
みるみる間に顔が歪んでいくのが分かるが、ダンは力を抜く気が無いようだ。

ここで離してやれというのは、どちらに対しても逆効果だ。

「ルル。如月は明日から休みなんだ。・・・悪いけどトシマ区に一旦送ってくれないか」
「・・・。わかった」


そう言ってじっとダンを見ると眉を顰めた。

「今日は2人とも来てくれてありがとう。次はちゃんとトシマ区の自分達の部屋で飲むよ」

2人にお礼を言ったが微妙な表情をする。
まぁその理由は分かっているのだが。
彼等にとっては普通なのかもしれないが、如月が嫌がっているのに強く抑える様は何となくムカついたからである。


☆☆☆



真夜中。
明日から休みの如月はトシマ区へ送ると、京は城へと戻ってきた。
部屋に戻ると、なんだかいつもと違う匂いに気が付く。
それはαの香りも含まれているのだが、京は気づかない。ルボミールはそれで不機嫌でもあった。
楽しい空間ではあったが、たばこだけでなく周りの匂いが体についている気がして、早く落としたくてお礼もそこそこに風呂に入りたいと申し出ると、ルボミールはそれを止めることもなく浴室に行かせてくれた。

数分後、お風呂から出てさっぱりすると、カウチに腰かけていたルボミールの元に向かう。
その前にあるラグに腰かけるが、ルボミールは無言なままだ。
タブレットをペタペタとタップし、緊急のやり取りが無いか確認しつつ呼び掛けた。

「ルル?」
「なんだ」
「なぜ機嫌が悪いのかな?」
「・・・なぜだと思う?」

質問を質問で返されてしまった。
だがそういう時は大抵京に何か不満がある時だ。

「わかってたらルルが嫌がるってわかっているのにするわけないだろう」

そういって見上げると悪気はなかったと理解してくれたのか苦笑を浮かべた後、脇に手を差し込まれたと思ったらルボミールの上に乗せられた。
それはまるで犬猫でも持ち上げるように軽々と持ち上げられた。

「さっきの、出かける前に言わなかったことではないんでしょ?」
「あぁ」
「それじゃぁお手上げだよ。普通のΩに分かることは分からないよ?
俺に分かるのはルルがご機嫌斜めだってことだけだ」

開き直りでもあるのだが、実際そうだ。
手を伸ばしキュッと鼻を摘まむと顔を逸らし手が外れたと思うと、パクリとその指がくわえられてしまった。
如月までとは言わないにしても、京も酔っ払っていたのである。

「!」

れろりと舐められぞわぞわと背筋が震える。
逃げようと腕を引こうとするがその腕は抑えられ、・・・いやらしくなめられる。
そんなつもりはなかったのに体は次第に熱くなっていった。

「っ・・・ルル、・・・そういえば、そろそろ薬が」

だから、離して欲しいと訴えるが、それに驚いたのはルボミールだ。

「・・・飲んでいかなかったのか」
「これ、風邪薬だから、アルコールと摂取しては駄目なんだ」
「は・・・?・・・まて、今までショーの者たちと飲みに行ったと言っていたが・・・」
「その時はアルコール少なめにして、薬飲んでた」
「・・・、・・・」
「風邪薬はアルコールと飲むと幻覚が見えてしまうから禁止されているんだ」
「・・・。・・・。・・・だとしたら、何故俺の時は飲んでたんだ」

そういうと不機嫌そうに京を見てくる。
京とルボミールは運命の番だ。
初めて会った時、急激な発情に襲われたがそれを抑制剤で無理やり抑えたために、3か月に1回来る発情期が不安定で薬の効果が進まった状態でルボミールに合ってしまうと発情するという状況になってしまっているのだ。

「そんなの・・・あんなの、ルルに見せられない」

初めて発情期が来たとき、いくら扱いて逝っても止まらなかった。
逝きすぎてこすりすぎて熱を持ったそこは次第に痛みを持ち出すし、血が出るんじゃないかと思った。
けど、逝きたくて自身をこすりながらも、意味もわからずぬるつく尻穴を弄ると気持ちよくて、入れるのは怖いがそこを何度もこすりながら逝った。

素面になってもアレは酷かったと思うのだ。

「・・・本当に、キョウは・・・わかっていない。
キョウ。お前は外で酒を飲むのは禁止だ」
「・・・うん」
「今のような可愛い顔を晒していたんだぞ。あの酒場で」
「!・・・そ、そんなことは」

口腔を愛撫された顔なんていかがわしすぎる。
言いすぎだとルボミールを睨む。

「目元を赤く染めて、瞳を濡らしたその姿はこの世界では襲ってくださいと言っているんだ」
「っ・・・俺、そんなにいやらしい・・・?」
「あぁ」

真顔でそう言われるとショックが絶えない。
そんな酷い顔で飲んでいるとは思わなかった。
如月も同郷だから気づいていなかったのだろう。

「もしかして、如月も・・・?」
「だからアレがあんなに激怒していたんだ」
「・・・。やっぱり、ダンは」
「気に入っているようだ」
「それならあんな態度駄目だよ~。
余計に如月の反感買っちゃう・・・なんて、余計なお世話なんだろうからいわないけど。
でもあまりにも過ぎるなら、俺トシマ区に引っ込むからね」
「・・・なに?」
「如月は雅同様家族同然なんだ。親よりも親に近い。
その如月をαだからって気持ちを蔑ろにするような真似をするのを見過ごせない。
・・・けど、これはダンには言っては駄目なことで、最終手段だというのは分かる」
「・・・、」
「ダンに俺達がどういうのが嫌そうなのか教えてあげてほしいな。
ルルはそういうの旨かったし、力で抑えようとかしない」

ルボミールの場合は『運命』で惹かれたので、何が何でも嫌われたくないからの行動だ。
ダンは惹かれている事実にまだ困惑も含まれていて、だから強硬的な態度が出てしまう。
それを教えてやるのは簡単だが、京の言う通り指摘して素直に聞けることではないだろう。

「善処はするが・・・聞くか聞かないかはあいつ次第だ」
「そうだよね・・・。人の恋路に口出しはしないけど無理やりとか本当に駄目だから」
「わかった。そういうアドバイスはしておこう」
「ありがとう!・・・ルル」
「それとなんだが」
「ん?」
「ご褒美をもらえないか」
「え?・・・あ、うん」

そう頷きつつ京は今度は何だろうか考えていた。
前回は京の名前を呼びたがっていたが、今度こそいよいよわからない。
だが前回はまだ理解できるものだった。
してもらったことに対しての対価が軽すぎるとは思ったが。

「キョウ達の国の言葉を教えてもらえないか?」
「え?」
「タブレット・・・だったか?あれで見せてもらったが、不思議な形ですごく興味がわいたんだ。
トシマクは今後観光地化するにあたってラージャの言葉を取り込んで言ってくれているが、やはりメインなところは残しておいた方が良いだろう」

確かにそれはあるかもしれないと思っていて、看板などは残すつもりでは居る。
だが、ルルの言うように彼等も読みたいと思ってくれるかもしれない。

「わかった。今度は俺が先生だな」
「あぁ」

京が応諾すると、ルボミールは嬉しそうにほほ笑む。
そんなに自分のことを知りたいと思ってくれるなんて、嬉しく思う京だった。

┬┬┬
「しおり」「おきにいり」ありがとうございます!
めっちゃんこうれしいです(^^

昨日予約が失敗(先日付すぎて)してました。。。
ので、今日は昨日と今日分です。
そして、、ストックが切れてしまいました。
猛烈に書いておりますが、明日の仕事の速度によりお休みするかも・・・
感想 2

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