オメガバースの世界にトシマ区ごと異世界転生したけど、みんなオメガなのになかなかオメガバースしない話。

みゆきんぐぅ

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つまり全裸で歩いたということなのだろうか・・・。

ファルジ大陸にきてアストリア帝国へきて3日目。
目覚めた時に隣にルボミールの姿が無くて、城に帰ってしまったのかと思うと急に不安になる。

「・・・、」

これは薬が切れているからなのだが、今回ただ離れただけではなく、アストリア帝国の姫と結婚を勧められた後だからだ。
ルボミールには問題はすべて解決したとは言われたが、今いない何かあったのかもしれない。
そう思うと、薬に手を伸ばしたその手が途中で止まる。

ヒートを起こして引き留めれば?

ルボミールはテレポートが出来るため、呼び出したらそれで少しは足止めが出来る。
そんな考えが一瞬でも考えた自分に絶句した。

いくら精神が不安定だからといって、馬鹿げた考えに嫌気がさす。
体を起こし当たりを見回してもやはりいなくて、ベッドの上にそのまましゃがみこむ。

・・・なんなんだ。このマイナス思考は・・・

鬱々とした感情に飲まれそうになる。
薬を飲まなければと思ったのだが、体が動かなくて焦燥感だけが募っていく。
そんな時に扉が開く音と共に少し焦った声で名前を呼ばれる。

「キョウ」
「・・・ルル・・・いたのか」

そちらを振り向いても表情が少し固くて不安になっていると、ベッドまであっという間に近寄り、京の体を強く抱きしめた。

「おはよう。キョウ。・・・怖い夢でも見たのか?」

どうやら、昨日の京のように不安がわかるらしい。
まぁわからなくてもベッドの上で固まっていたら心配はするかと、苦笑を浮かべる。
その広い胸板に顔を埋めると、ルボミールの香りに包まれてあっという間に不安がなくなった。

「・・・『運命』は不便だけど便利だ」

そう言うとルボミールが笑った。
気分が上昇したのが分かったのだろう。
体を離され、見上げると綺麗なガーネットが柔らかく微笑む。

「・・・戻ったのかと思ったんだ・・・。城に」
「問題は片付けた。それに黙っていなくなるわけないだろう?」
「・・・うん」

力なく頷く京の頭を撫でていた手を止めると顎をすくい、ちゅっと口づける。
そして再び抱き寄せた。
京の気分が落ち着くまでそうしてくれた。
そしてしばらくたつと視線をあげる。

「もう大丈夫だ。ありがとう。ルル」
「俺はずっとこのままくっついていても良いが」
「そんなこと」

クスクスと笑って言ったがルボミールは意外にも本気だったらしい。

「『運命』なのだから膝の上にのせていたとしても問題ない。文句だって言わせない」
「・・・それは俺が恥ずかしいからやめてくれ」

成人を超えたいい年した男が膝の上にずっといるなんて。
この世界の番ったΩならあり得ることなのだろうか。

「それと、京には不愉快な思いをさせて悪かった」
「?・・・なんのことだ?」
「ダンに聞いたが、ルーカスのことだ」
「・・・あぁ。・・・そのことか。ルルの所為じゃないだろう?」

ルーカスがつれて来させたのは、外交になれさせたかったからだそうなのだが、だったら夜会にも連れてって欲しかった。

「しかし、同行させたのは俺だからな。
だが、もう京におかしな態度はとらせないようにさせる。
今日は罰としてラージャの代表として城でアステリア帝国の貴族の相手をさせている」
「気を使ってくれてありがとう。ルル」

京としても相手に悪気が無いとしても、ルーカスの何気ないαの部分が気になってしまっていたからありがたい。

「いや。・・・今はハカセのことを探すのことを考えたいだろうに」
「ハカセな。・・・あいつは・・・本当にどこに行ったんだか」

小さくため息をつくと、あの飄々とした男を思い浮かべた。

☆☆☆

階層が深くなっていくうちに、不安が募っていく。
なんにでも興味を持ち解明し造り出してしまうハカセに、今回もまた何か興味を引いたのだと思っていた。
今までも興味を示すとラボやどこかに行ってしまうことが多々あったからだ。

でも、流石に最深部につくころには、そんな不安で埋め尽くされる。
始めから捜査員を増やせばよかったなどと後悔しても遅い。
最後に別れた時のことを思いだす。

「ん・・・?・・・あれ?」

大事なことを見落としていた気がする。
ずっといなくなったという図書館ばかりを探していたが、元々行っていたのは『中央魔法研究技術館』で、途中で調べものがあるからと『魔法図書館』に向かっていたのだ。

「いや、・・・でも」

じっとしていろと言われたのに1人で戻るだろうか。
『異世界でそんな危険なこと』、『そんなわけない』と、思うはずなのにハカセの日頃の行動を思い出してその可能性も消せないと思ってしまった。

「どうかしたのか?」

心配げに訪ねてくるルボミールに微妙そうな表情を浮かべる。
そして、ここまで一緒に来てくれたみんなを見る。

「・・・『中央魔法研究技術館』に戻ったんじゃないかと思って」

そう言って司書の方を見ると思い出したようにうなずいた。

「一般のお客様は通常知られていないのですが、研究所とつながってます」
「・・・それだ」 

ダンは冷静に分析をしていたがハッとした。

「どこにあるんです」
「今向かっている先、最深部になります。・・・ですが、何故その方はご存じなのでしょうか」
「それはこちらが聞きたいですね」

そういう答えるダンの声色は不機嫌そうである。

「・・・すまない」
「見つけた際には首輪をつけていただきたいですね。・・・キョウ様でなくとも他の誰かでも構いませんが」
「・・・京様以外に聞きませんよ。あの男は」

旅に同行した如月とダンの反応を見ると申し訳ないと思う反面、やはり如月を行かせて良かったと思う京だった。

それから、みんなで深層部の部屋に向かったのだが、また予期しないことが起きる。
そこには、外套を着てフードをかぶった人影があり、皆がハカセなのかと思った。

「ハカセか・・・?」
「・・・ラージャの言葉とは珍しい」

そう言って振り返った男はフードをとって、京にも分かるラージャの言葉を操った。
青みの掛かった白銀の髪を腰まではやし、その目はサファイアとオニキスの瞳を持つ男だった。

「こんな最深部に人が来るのも珍しいけどね。それでなにかな」
「っ・・・いえ、人違いの様、です?」

最後が疑問形になったのはルボミールに止められたからだ。
しかし、ルボミールの方は男を見据えこちらを見ない。

「人違いか。それならいいけど。この先は鍵のかかった書庫に禁書ばかりだよ」
「そうか。では失礼する」

そういうとルボミールは今日の腕を引っ張り、この部屋の入口の方に戻ろうとする。

「・・・。上から行こう」
「っ・・・でも途中の通路にいるかもしれないから」

足を止めてルボミールを見るとピクリと眉を動かした。

「ルル・・・」

そう言うと、ルボミールは一度だけその男を一瞥する。
しかし、そんな様子のルボミールにその男はフッと鼻で笑った。


「ずいぶん器の小さい男の様だ」
「・・・」
「番が・・・ん?君たちは番ではないのか?」
「・・・。そうですが、何か問題ありますか・・・?」

ルボミールの苛立ちに口を出せる雰囲気ではなかったが黙っているわけにはいかない。
京がそういうと男は笑った。

「いいや。でもなおさらその男に口出しする権利などないだろう?」
「番の件は」
「いい。行くぞキョウ。かまうな」
「待って。ルボミール。・・・・彼には待ってもらってるんです。俺のために」
「ふーん?・・・君のためにねぇ?・・・だったらさっきのお願いも聞いてあげても良いんじゃない?」

そういうと謎の男はちらりとルボミールに視線を向けた。

「それとも、そんなにボクが気になるのかな?」

ふふっと笑う男にルボミールは眉を顰めたが、今度はこちらを見てくると肩に手を回して抱き寄せてきた。

「!」
「離れるな」
「・・・う、・・・うん」

人前でそんな風にされるのは照れくさくて言葉を詰まらせる。
だが、この先に行けるようで安心する。
謎の男は気になるが、ひとまず先を急いだ。


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