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戻せる方法が確立した。(一歩手前)
目の前の人物がこの世界で偉人とされていている者だと聞かされて、瞬時には信じられなかった。
例えば、『私はレオナルド・ダヴィンチです』なんて信じられるわけがない。
この世界の人間なら納得するのかもしれないが、『不老不死』はカルトな異世界からきた京には難しかった。
魔法を目の当たりにしていなかったら、信じるのは難しかった。
また、この世界の寿命が地球と変わらないことや、三賢者が民衆に姿を出さないことに宗教的なものを疑っていた。
彼等は現世界にある教会とは別の物であるが、京からみたら新興宗教だった。
あくまでも彼等を信じる者達は宗教じゃないとは言うが、派生の人物・・・いや主流なのだろうか。
彼等は三賢者を神の様にあがめているようだが・・・。
話しがそれてしまった。
信じられないとは思っていたが、まさか自分の前に来るとは思っていなかった。
一つはトシマ区はルボミールの計らいでどこにも所属していないΩと希望するベータの島だ。
そんな島の代表が、そんな偉人と会うと思わなかった。
しっかりと言えば、王太子のルボミールの伴侶として会う可能性はあるかもしれないと少しは考えたが、
こんな風に会うとは思わなかったのである。
「おっしゃる通り、私の伴侶はルボミールです」
「へぇ・・・。君は『バース』が無い世界からきたんだよね」
何故そんなことを知っているのか、驚いたようにモイスを見つめると、クスリとオッドアイがほほ笑んだ。
「皇帝に聞いたからね」
「そうでしたか・・・」
「まぁ覗こうと思えばいつでも覗けるけど。・・・そんなに怯えなくても大丈夫だよ?」
ふふふっと笑うモイス。
京が警戒したのが分かったらしい。
でも、どんな手段でかは分からないが、知られてしまうらしい。
過去が見えるのか、すべての会話が聞こえるのか、心を感じ取られてしまうのか分からないが。
「でも、異世界から来た男でも同性の男に言い寄られて気にならないものなんだ」
「そうですね。・・・最大限に欲を言えば彼が女性だったらと思う事はありますが」
「あはは!・・・やっぱり男は抱けない?」
どこに笑える内容があったのかわからないが、爆笑をするモイス。
「それもありますが・・・彼をどんなに小さく・・・例えば幼くしたとしても。
求められたら拒否が出来ないような気がします」
彼は『バース』とは別に、そもそも上に立つ者だ。
・・・京もそう言う立場だったはずなのだが、評価に『甘い』とされることもあることを考えると、上に立つには甘かったのだと思う。
むしろそれでも立たせたいなら、他に気付ける人間を充填してくれと思っていたくらいだ。
「『運命』というのは厄介だぇ」
その言葉の冷たさはまるで他人事・・・いや。それは違うとすぐに思い直した。
自分の恋人の事があるから余計にそう思うのかもしれない。
京がゴクリと息を飲んだ。
「あぁ、ごめん。ちょっと調整できなかった」
「・・・?」
「京がそう思うことは普通なんだよ。『運命』に捕らわれた人間にとっては。・・・ね?」
なんだか、棘が含まれた言葉に何も言い返せなかった。
京はルボミールを思う気持ちを『運命』がなくとも惹かれていると思っているが、実際は分からない。
むしろそれで悩んでいるのだから・・・。
それを思うとついモイスを見上げる視線は不快になってしまうが、モイスは楽し気に笑う。
「ねぇ元の世界に戻してあげようか」
「!」
そう言いうモイスにリコが言った言葉の主がモイスなのかと思った。
この男が・・・ニコ達に・・・呪いをかけた人物・・・なのか・・?
呪いのすべては分からない。
だが血の宿命と言うのは気になる。
それ以前に、京が動いてどうにかなるのなら、あのタトゥを外してやりたいものだ。
美しいその双眸がニンマリと弧を描く。
「貴方は・・・・、なんでも・・・できるのですか?」
「できるよ。トシマ区ごと戻してあげるよ」
「本当ですか?・・・対価は何に・・・」
鑑定施設やショーの売り上げはある。
しかし、この地で働くと決めてくれた人のことを考えると配分は考えなければならない。
それで賄えるのか、そしてそれがいくら残るのかが心配だった。
残りたい者が居たならば、それを守るために資金を残しておかなければならなかったからだ。
しかし、モイスはその言葉に首を振った。
「いいよ。別に。ボクもそっちの世界に行こうと思うし」
「こちらの?・・・しかし、こちらの世界には魔法がありません。
そして、こちらの世界にも差別はあって・・・その、言いにくいことですが、モイス様の容姿は」
「『様』は止めてって!」
「!」
そういうと、顎を掴まれた。
美しくはあるが相手は男である。
途端に嫌悪が走るが、それに京は安心してしまった。
ルボミールに欲情してしまった時から、自分が何もなくとも欲情するような好きものなのではないかと思ってしまっていたからである。
勿論、絶対に感じないというのはないのかもしれないが、すべての男に感じないと分かったのは嬉しい。
掴まれた指から逃げるように顎を逸らし外し、謝罪を述べる。
「すまない」
「次『様』って言ったらキスするからね」
「・・・。・・。・・・。わかった。もう普通に話す。それで不敬罪に当たっても知るか」
そう突き放すとモイスはケラケラと笑った。
「あはは!ボクが良いって言っているのに、そうなるわけないでしょう?」
京はまだ実感できていないが、モイスにはそれを覆せるだけの力も権力もある。
だが、それを訂正するのは賢明ではないし、相手が言葉に誠意を持ってくれることを期待した。
「じゃぁ。話を戻すけど、俺達の世界は国によって考え方が結構違う。
俺の国では表面上では差別行為や武力行使は禁止している」
「まぁどこも同じようなものだよね?
この国だって表面上ではΩに体罰を行うことは禁止だ。
・・・けど、王家ほど明確に系譜を造っているところにΩのいない家系は不自然じゃない?」
「・・・、・・・」
その言葉に何も言えなかった。
「・・・でも、それは俺達の世界にもある闇だ。貴方の見た目は俺達の世界ではあり得ない容姿なんだ」
全人類平等はあってほしい。
けど、・・・財閥御曹司である京には曲解しているところがあると思う。
誰かが犠牲になっていることは分かるからだ。
「・・・そんな風に考えてるとは思ってなかったなぁ。
・・・やっぱりお人良しだね」
「どうも」
褒め言葉ではないことは分かるがそれだけ答えた。
「ストレートに言うとモイスの姿は人が反射的に思う区別対象だと思ってしまうのだけど、それは耐えられる?」
まず彼は銀髪だが、アルビノの分類に分けられるだろう。
その上で目の色がオッドアイなのは不思議に思われる。
日本では・・・難しいだろう・・・。
・・・それともコスプレだと思ってくれるだろうか?
日本では差別は禁止されてはいるが、外国人に対してさけてしまう所が少なからずある。
打ち解けるにはそれなりに時間がかかるのだ。
それこそ、軽い冗談が言えるくらい日本語を覚えなければ難しいだろう。
「あぁ。大丈夫。その時は器を用意するから」
「器?」
「うん。だから気にしなくていいよ」
そんなことが出来ることに驚愕したが、神と称される彼等なら、自分達と同じ体を作ることが出来るということなのだろうか。
PCの機種変更をするような気軽さで出来るように言うモイスを驚いて見上げるとクスリと笑みを浮かべた。
「それが事実ならお願いしたい」
そういうと、モイスはにっこりと笑みを浮かべる。
「だけど、・・・いや」
連れ戻してもらえるなら我がままを言える立場ではないのだろうか。
思い悩む京に、モイスはいぶかし気にこちらを見てくる。
「?・・・3回のチャンスと2週間の時間が欲しい」
「?5000人くらい一回で済むけど」
その人数に多さを1人で動かせることよりも、情報に驚いた。
ルボミールはそこまでの情報をアステリア帝国に流していたのだろうか。
京としては明確な数値を言った記憶はないがうっかり言っていしまっていたのだろう。
あの島の全体を知られることはまずいと思っていたが、皆が還られるならそれで問題がない。
しかし、京が言った言葉にモイスは不服そうに眉を顰めた。
「なぜ?」
「やはり・・・3回は厳しいですか」
1回も3回も変わらないなんて傲慢すぎただろうか。
ネゴに失敗したなぁと思いつつもモイスを見るが、京の言葉に微妙そうにする。
「回数は問題じゃないけど」
「!・・・お願いします」
そう言いつつもあまり信じてはいない。
実際のところは10人無事に帰れれるところを見たい。
だがふと気づいた。
「その3回と言うのは戻ってこれる事が前提なのですが・・・。
こちらに戻ってくることは出来るのでしょうか」
「は?」
「行く先が本当に我らの地か確かめたいのです」
この男が1回目も2回目、3回目も同じようにしてくれるとは限らない。
けれど、一度も試さずに島民を戻すのは難しかった。
「正常に戻ることができた上で、一つも漏れずに情報を全島民に公開し彼等の声を聞きたい」
そういうと、モイスは眉を顰めた。
勿論これは最善な希望であり、NGと言われのは想定している。
どれを削られるかと考える。
「俺はあの国の代表ではあるが、納めているわけではない。
基盤を造ってはいて統率者の代理なことをしているが、・・・実際のところそうじゃない。
ありがたくも民意の結果で、代表を務めているだけ。
もし誰かが立候補しやりたいというなら、俺はすぐに交代する。
・・。そういう島なんだ、トシマ区は」
「ふーん?」
モイスはその言葉にあまり興味はなさそうだった。
京が3回と言うならそれでいいとまで言ってくれる。
「っ・・・信じてないように、・・・いや。信じられないんだ。ちゃんと大丈夫ななのか確認したい」
そう言ってまっすぐ見上げると、しばらく視線が絡んだ後、ため息をついた 。
「そーいう事ね。いーよ?ボクに任せてよ。安全に戻してあげるから」
ルボミールにしても、モイスにしても一体何なのだろうか。
なぜこんなにこちらの願いを聞いてくれるのか、怖く感じてしまう。
今となってはまだルボミールは分かるが、三賢者であるモイスがなぜこんなに計らってくれるのかは分からない。
それを問いただしたくはあったが、モイスは何かを思案している様子で話しかけられるようではなかった。
・・・
・・
・
これからのことを考えているうちに、瓦礫が揺れだした。
「・・・ル、・・・ル?」
確信はない。
直感的にそう思うとその壁から目を離せない。
確かめていないのに安堵を感じる自分は駄目だと思いつつ、2人きりのうちにあと一つだけ聞いておきたい。
京はその壁から視線を離すと、モイスを見つめる。
「この土地で回復が得意な人間はいないか?」
「どういうこと??・・・あー・・・さっきカプセルの後ろで倒れていた男の事?」
「そうだ。ここで患った病気を地球上に連れて行き治るのか分からないだろう?」
それが2週間の間で完治するかわからないが、直せるものか聞きたい。
「残念ながら直せるかわからないよ」
「・・・そうか」
そう落胆しているのと同時に、パチンと心のに静電気がはしる。
声の方へ視線を向けると、瓦礫が左右にパラパラと動き始めた。
京はその動きに思わず駆け寄る。
ピアスの気配は感じられないけれど、きっとそうだと思ったのだ。
「っ・・・」
そう思ったら無意味かもしれないのに手を伸ばし、石をどけ始めた。
ぱらぱらと崩れるがそれを恐怖に感じるよりも本能的に近寄りたかった。
「・・・京」
モイスが哀れむ様にそう呼ぶのも気にせずにがむしゃらに瓦礫をどかす。
そうしていると、自分に薄い膜が張られ一瞬体が浮いた。
「ぇっ・・・ゃっ」
見えない力に恐怖を感じたが、不意に瓦礫がふわりと動くと左右に別れ、
すべてなくなるとそこに現れたのはルボミールだった。
「キョウ!」
『キョウ!』
全身で自分を呼ぶ声が京に届く。
たった数分だ。30分もなかったと思う。
けれど、気丈に振舞っていた分、包まれた腕に安心を感じてしまい、その胸に顔をおしつけた。
見えない力に引き寄せられる力を感じたことはあったが、離されることもあるのだと改めて知ったからである。
「・・・ルル・・・っ」
「キョウッ」
子供並みに細い京の体を抱きしめながら安堵を感じるルボミールに、感極まるものがある。
この安心が『運命』によるものならそれも良いと、ふと・・・初めて思った。
今までは『そうでなくなったらなら怖い』と思っていたのだが、今は『運命』であることに喜びを感じた。
「ルル・・・」
名前を呼ぶと少しだけ顔を離し覗き込んできてくれた。
京はそれに体を伸ばし、額に口づける。
「迎えに来てくれてありがとう。・・・来てくれるって思ってた」
そういうと、ルボミールの顔がフっとほほ笑んだ。
熱い口づけを受け止めながら、体が熱くなるのを感じていた。
例えば、『私はレオナルド・ダヴィンチです』なんて信じられるわけがない。
この世界の人間なら納得するのかもしれないが、『不老不死』はカルトな異世界からきた京には難しかった。
魔法を目の当たりにしていなかったら、信じるのは難しかった。
また、この世界の寿命が地球と変わらないことや、三賢者が民衆に姿を出さないことに宗教的なものを疑っていた。
彼等は現世界にある教会とは別の物であるが、京からみたら新興宗教だった。
あくまでも彼等を信じる者達は宗教じゃないとは言うが、派生の人物・・・いや主流なのだろうか。
彼等は三賢者を神の様にあがめているようだが・・・。
話しがそれてしまった。
信じられないとは思っていたが、まさか自分の前に来るとは思っていなかった。
一つはトシマ区はルボミールの計らいでどこにも所属していないΩと希望するベータの島だ。
そんな島の代表が、そんな偉人と会うと思わなかった。
しっかりと言えば、王太子のルボミールの伴侶として会う可能性はあるかもしれないと少しは考えたが、
こんな風に会うとは思わなかったのである。
「おっしゃる通り、私の伴侶はルボミールです」
「へぇ・・・。君は『バース』が無い世界からきたんだよね」
何故そんなことを知っているのか、驚いたようにモイスを見つめると、クスリとオッドアイがほほ笑んだ。
「皇帝に聞いたからね」
「そうでしたか・・・」
「まぁ覗こうと思えばいつでも覗けるけど。・・・そんなに怯えなくても大丈夫だよ?」
ふふふっと笑うモイス。
京が警戒したのが分かったらしい。
でも、どんな手段でかは分からないが、知られてしまうらしい。
過去が見えるのか、すべての会話が聞こえるのか、心を感じ取られてしまうのか分からないが。
「でも、異世界から来た男でも同性の男に言い寄られて気にならないものなんだ」
「そうですね。・・・最大限に欲を言えば彼が女性だったらと思う事はありますが」
「あはは!・・・やっぱり男は抱けない?」
どこに笑える内容があったのかわからないが、爆笑をするモイス。
「それもありますが・・・彼をどんなに小さく・・・例えば幼くしたとしても。
求められたら拒否が出来ないような気がします」
彼は『バース』とは別に、そもそも上に立つ者だ。
・・・京もそう言う立場だったはずなのだが、評価に『甘い』とされることもあることを考えると、上に立つには甘かったのだと思う。
むしろそれでも立たせたいなら、他に気付ける人間を充填してくれと思っていたくらいだ。
「『運命』というのは厄介だぇ」
その言葉の冷たさはまるで他人事・・・いや。それは違うとすぐに思い直した。
自分の恋人の事があるから余計にそう思うのかもしれない。
京がゴクリと息を飲んだ。
「あぁ、ごめん。ちょっと調整できなかった」
「・・・?」
「京がそう思うことは普通なんだよ。『運命』に捕らわれた人間にとっては。・・・ね?」
なんだか、棘が含まれた言葉に何も言い返せなかった。
京はルボミールを思う気持ちを『運命』がなくとも惹かれていると思っているが、実際は分からない。
むしろそれで悩んでいるのだから・・・。
それを思うとついモイスを見上げる視線は不快になってしまうが、モイスは楽し気に笑う。
「ねぇ元の世界に戻してあげようか」
「!」
そう言いうモイスにリコが言った言葉の主がモイスなのかと思った。
この男が・・・ニコ達に・・・呪いをかけた人物・・・なのか・・?
呪いのすべては分からない。
だが血の宿命と言うのは気になる。
それ以前に、京が動いてどうにかなるのなら、あのタトゥを外してやりたいものだ。
美しいその双眸がニンマリと弧を描く。
「貴方は・・・・、なんでも・・・できるのですか?」
「できるよ。トシマ区ごと戻してあげるよ」
「本当ですか?・・・対価は何に・・・」
鑑定施設やショーの売り上げはある。
しかし、この地で働くと決めてくれた人のことを考えると配分は考えなければならない。
それで賄えるのか、そしてそれがいくら残るのかが心配だった。
残りたい者が居たならば、それを守るために資金を残しておかなければならなかったからだ。
しかし、モイスはその言葉に首を振った。
「いいよ。別に。ボクもそっちの世界に行こうと思うし」
「こちらの?・・・しかし、こちらの世界には魔法がありません。
そして、こちらの世界にも差別はあって・・・その、言いにくいことですが、モイス様の容姿は」
「『様』は止めてって!」
「!」
そういうと、顎を掴まれた。
美しくはあるが相手は男である。
途端に嫌悪が走るが、それに京は安心してしまった。
ルボミールに欲情してしまった時から、自分が何もなくとも欲情するような好きものなのではないかと思ってしまっていたからである。
勿論、絶対に感じないというのはないのかもしれないが、すべての男に感じないと分かったのは嬉しい。
掴まれた指から逃げるように顎を逸らし外し、謝罪を述べる。
「すまない」
「次『様』って言ったらキスするからね」
「・・・。・・。・・・。わかった。もう普通に話す。それで不敬罪に当たっても知るか」
そう突き放すとモイスはケラケラと笑った。
「あはは!ボクが良いって言っているのに、そうなるわけないでしょう?」
京はまだ実感できていないが、モイスにはそれを覆せるだけの力も権力もある。
だが、それを訂正するのは賢明ではないし、相手が言葉に誠意を持ってくれることを期待した。
「じゃぁ。話を戻すけど、俺達の世界は国によって考え方が結構違う。
俺の国では表面上では差別行為や武力行使は禁止している」
「まぁどこも同じようなものだよね?
この国だって表面上ではΩに体罰を行うことは禁止だ。
・・・けど、王家ほど明確に系譜を造っているところにΩのいない家系は不自然じゃない?」
「・・・、・・・」
その言葉に何も言えなかった。
「・・・でも、それは俺達の世界にもある闇だ。貴方の見た目は俺達の世界ではあり得ない容姿なんだ」
全人類平等はあってほしい。
けど、・・・財閥御曹司である京には曲解しているところがあると思う。
誰かが犠牲になっていることは分かるからだ。
「・・・そんな風に考えてるとは思ってなかったなぁ。
・・・やっぱりお人良しだね」
「どうも」
褒め言葉ではないことは分かるがそれだけ答えた。
「ストレートに言うとモイスの姿は人が反射的に思う区別対象だと思ってしまうのだけど、それは耐えられる?」
まず彼は銀髪だが、アルビノの分類に分けられるだろう。
その上で目の色がオッドアイなのは不思議に思われる。
日本では・・・難しいだろう・・・。
・・・それともコスプレだと思ってくれるだろうか?
日本では差別は禁止されてはいるが、外国人に対してさけてしまう所が少なからずある。
打ち解けるにはそれなりに時間がかかるのだ。
それこそ、軽い冗談が言えるくらい日本語を覚えなければ難しいだろう。
「あぁ。大丈夫。その時は器を用意するから」
「器?」
「うん。だから気にしなくていいよ」
そんなことが出来ることに驚愕したが、神と称される彼等なら、自分達と同じ体を作ることが出来るということなのだろうか。
PCの機種変更をするような気軽さで出来るように言うモイスを驚いて見上げるとクスリと笑みを浮かべた。
「それが事実ならお願いしたい」
そういうと、モイスはにっこりと笑みを浮かべる。
「だけど、・・・いや」
連れ戻してもらえるなら我がままを言える立場ではないのだろうか。
思い悩む京に、モイスはいぶかし気にこちらを見てくる。
「?・・・3回のチャンスと2週間の時間が欲しい」
「?5000人くらい一回で済むけど」
その人数に多さを1人で動かせることよりも、情報に驚いた。
ルボミールはそこまでの情報をアステリア帝国に流していたのだろうか。
京としては明確な数値を言った記憶はないがうっかり言っていしまっていたのだろう。
あの島の全体を知られることはまずいと思っていたが、皆が還られるならそれで問題がない。
しかし、京が言った言葉にモイスは不服そうに眉を顰めた。
「なぜ?」
「やはり・・・3回は厳しいですか」
1回も3回も変わらないなんて傲慢すぎただろうか。
ネゴに失敗したなぁと思いつつもモイスを見るが、京の言葉に微妙そうにする。
「回数は問題じゃないけど」
「!・・・お願いします」
そう言いつつもあまり信じてはいない。
実際のところは10人無事に帰れれるところを見たい。
だがふと気づいた。
「その3回と言うのは戻ってこれる事が前提なのですが・・・。
こちらに戻ってくることは出来るのでしょうか」
「は?」
「行く先が本当に我らの地か確かめたいのです」
この男が1回目も2回目、3回目も同じようにしてくれるとは限らない。
けれど、一度も試さずに島民を戻すのは難しかった。
「正常に戻ることができた上で、一つも漏れずに情報を全島民に公開し彼等の声を聞きたい」
そういうと、モイスは眉を顰めた。
勿論これは最善な希望であり、NGと言われのは想定している。
どれを削られるかと考える。
「俺はあの国の代表ではあるが、納めているわけではない。
基盤を造ってはいて統率者の代理なことをしているが、・・・実際のところそうじゃない。
ありがたくも民意の結果で、代表を務めているだけ。
もし誰かが立候補しやりたいというなら、俺はすぐに交代する。
・・。そういう島なんだ、トシマ区は」
「ふーん?」
モイスはその言葉にあまり興味はなさそうだった。
京が3回と言うならそれでいいとまで言ってくれる。
「っ・・・信じてないように、・・・いや。信じられないんだ。ちゃんと大丈夫ななのか確認したい」
そう言ってまっすぐ見上げると、しばらく視線が絡んだ後、ため息をついた 。
「そーいう事ね。いーよ?ボクに任せてよ。安全に戻してあげるから」
ルボミールにしても、モイスにしても一体何なのだろうか。
なぜこんなにこちらの願いを聞いてくれるのか、怖く感じてしまう。
今となってはまだルボミールは分かるが、三賢者であるモイスがなぜこんなに計らってくれるのかは分からない。
それを問いただしたくはあったが、モイスは何かを思案している様子で話しかけられるようではなかった。
・・・
・・
・
これからのことを考えているうちに、瓦礫が揺れだした。
「・・・ル、・・・ル?」
確信はない。
直感的にそう思うとその壁から目を離せない。
確かめていないのに安堵を感じる自分は駄目だと思いつつ、2人きりのうちにあと一つだけ聞いておきたい。
京はその壁から視線を離すと、モイスを見つめる。
「この土地で回復が得意な人間はいないか?」
「どういうこと??・・・あー・・・さっきカプセルの後ろで倒れていた男の事?」
「そうだ。ここで患った病気を地球上に連れて行き治るのか分からないだろう?」
それが2週間の間で完治するかわからないが、直せるものか聞きたい。
「残念ながら直せるかわからないよ」
「・・・そうか」
そう落胆しているのと同時に、パチンと心のに静電気がはしる。
声の方へ視線を向けると、瓦礫が左右にパラパラと動き始めた。
京はその動きに思わず駆け寄る。
ピアスの気配は感じられないけれど、きっとそうだと思ったのだ。
「っ・・・」
そう思ったら無意味かもしれないのに手を伸ばし、石をどけ始めた。
ぱらぱらと崩れるがそれを恐怖に感じるよりも本能的に近寄りたかった。
「・・・京」
モイスが哀れむ様にそう呼ぶのも気にせずにがむしゃらに瓦礫をどかす。
そうしていると、自分に薄い膜が張られ一瞬体が浮いた。
「ぇっ・・・ゃっ」
見えない力に恐怖を感じたが、不意に瓦礫がふわりと動くと左右に別れ、
すべてなくなるとそこに現れたのはルボミールだった。
「キョウ!」
『キョウ!』
全身で自分を呼ぶ声が京に届く。
たった数分だ。30分もなかったと思う。
けれど、気丈に振舞っていた分、包まれた腕に安心を感じてしまい、その胸に顔をおしつけた。
見えない力に引き寄せられる力を感じたことはあったが、離されることもあるのだと改めて知ったからである。
「・・・ルル・・・っ」
「キョウッ」
子供並みに細い京の体を抱きしめながら安堵を感じるルボミールに、感極まるものがある。
この安心が『運命』によるものならそれも良いと、ふと・・・初めて思った。
今までは『そうでなくなったらなら怖い』と思っていたのだが、今は『運命』であることに喜びを感じた。
「ルル・・・」
名前を呼ぶと少しだけ顔を離し覗き込んできてくれた。
京はそれに体を伸ばし、額に口づける。
「迎えに来てくれてありがとう。・・・来てくれるって思ってた」
そういうと、ルボミールの顔がフっとほほ笑んだ。
熱い口づけを受け止めながら、体が熱くなるのを感じていた。
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本当の花嫁じゃないとばれたら大変!
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだんキリアンに惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>