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本文
みんなが納得する答えが欲しい。
様々な案を考えてもすべてうまくいく道が思付かない。
島ごと返すのに同じ分の犠牲を払うなら出来ない。
少人数であれば賢者達だけで送ることが出来るそうだが、モイスはそれを拒否した。
何よりもシリルは賢者達の力とは言ったが『魔力』とは言っていなかった。
どうしたらいいんだ・・・離れたくない・・・けど
モイスは島民を戻すのは京が戻るのが条件だという。
思考を巡らせていると、ルボミールがぎゅっと手を握ってくれた。
それに視線をあげると頼りがいのある瞳がこちらを見ていた。
「一人で考えるのが難しいなら知恵を合わせよう」
「・・・ルル」
「賢者シリル様。その還す際にはモイス殿の力は必要になるのでしょうか」
「えぇ・・・。彼は刻の魔術師とされて世界を渡る方法を確立したのも彼です」
「そうなのですか・・・」
「彼は刻を、私は治癒を、コンラッドは火を得意としています。そのため彼の協力は必須となっています」
「・・・前途多難だな」
京は小さくため息をつく。
「・・・。私からも説得しますが、・・・あの子は頑固なところがあるので・・・。
貴方にかつての恋人を重ねているのかもしれません。
・・・この世界の童話『青の涙』はご存じですか?」
「えぇ。聞きました。・・・自身の恋人がその時代の皇帝陛下の『運命の番』だったと」
「そうです。・・・あの日の朝、・・・2人はとても幸せそうに城へと向かいました。
結婚することを皇帝陛下に報告するのだと。・・・なのに2人とも帰ってこなかった」
そういうシリルの瞳は当時を思い出しているのか、愁いを帯びている。
そして悔しそうに歪まれた。
「当時の皇帝陛下はすでに妃も側室もおりました。
そこは良いのです。
・・・けれど挨拶に来たケーシーを囲い閉じ込め・・・そして番ってしまった」
「!」
「無理やり番にされ、目を覚ましたケーシーは当然憤慨したそうです。
家に帰してほしいと何度も懇願しましたが、陛下はそれを受け入れませんでした。
それどころか、ケーシーが拒否をすればするほど抱かれ、嫌なはずなのに最後には拒否しきれない自分を悔いていました。
従順にしている間には優しい陛下に、暗示をかけるように『「運命」なのだから仕方ないのだ』と囁かれ、ケーシーの心は麻痺をしていきます。
次第に『「運命」なのだからモイスのことも仕方ないのかもしれない』と、思うようになりました。
しかし、そんな風に出来たのも3日で終わりを告げました。
陛下の側室の1人がモイスに密告したのです。
私達はいなくなってからずっと探し続けていましたが、賢者と呼ばれていても今よりも少し魔力が強い程度で、いくら国内を探しても、私達が作った防御魔法道具の所為でケーシーを探しだすことが出来なかったのです。
・・・モイスも城から帰る途中で襲われたことや、どこの者か想定できない人物たちが、まさか皇帝陛下の差し金だとは気付かなかったようです。
その知らせを聞いたときも信じられませんでした。
少なくともモイスと私をただの商店の開発者から『賢者』と称し、崇めるような動きを国民にさせたのは皇帝陛下です。
そんな人物がモイスの結婚相手を監禁し番わせてしまうなんて思えなかった。
半信半疑でその場所に行くと、そこには半分心が壊れかけのケーシーがいました」
「・・・、」
「モイスの顔を見るなりケーシーは涙を流し震え、モイスに膝をつき何度も謝罪をしていました。
・・・その時に首筋にくっきりと残る痛々しい噛み跡は、絶対に逃がさない心境なのか酷い傷口でした」
『運命の番』のαから逃げようとすると、手が付けられなくなるのは京も良くわかっている。
そして、ケーシーの気持ちを考えると胸が痛かった。
「私は瞬時にケーシーを眠らせると、そこから撤退をしました。
怒り狂うかと思っていたモイスは戻っても落ち着いたままの様に見えていましたが、そのままケーシーと姿を消した」
「・・・」
「国からは何度もケーシーの返還を求める依頼がありました。
しかし私たちは青の国を守護していましたが、青の国から切り離された存在です。
そうしたのは皇帝陛下でもあり、無視を決め込みました。
ケーシーもモイスもいませんでしたけど、私も陛下のやり方に少々を憤りを感じておりましたので。
そして・・・しばらく後で、剣で刺してもしななそうだった皇帝陛下は衰弱し・・・お亡くなりました」
そう言ってシリルは目を伏せた。
「それを意味するのはケーシーの死です。
『運命』である彼等は繋がっています。片方が死ねばもう片方にも影響します」
「それから・・・モイスは眠りについたのですか?」
「いいえ。数百年はケーシーの遺言通りちゃんと賢者をしてましたよ。
赤の国のコンラッドが賢者としてならび、我らが三賢者と呼ばれるようになり・・・200年くらいはいたかと思います」
「なるほど。・・・それにしてもなぜケーシーとモイス殿は番わなかったのですか?
結婚してから番うなどそう言う決まりがあるのでしょうか」
京もそれは気になっていた。
αは独占が強いと聞く。
特に愛し合って番になったΩは大切に囲うと聞いていた。
2人が愛し合っているなら結婚を報告する前に番っていれば、モイスだってα特有の独占欲を示しケーシーを皇帝陛下の前に出すなんてことなかったかもしれないのに。
ルボミールの言葉にシリルは少し考えた後、言葉をつづけた。
「そんなルールはありません。
・・・彼等は結婚も出来て子供を授かることもできますが、番う事が出来ないのです」
「・・・?」
京にはその言葉の意味は分からなかったが、ルボミールには分かったのか息を飲んだのが聞こえた。
「同性なのです」
すぐに理解するのは難しかった。
困惑しながら一つずつ頭の中で整理する京。
ケーシーはΩなのだから・・・、え?
「っ・・・モイスは、・・・Ωなのですか・・・?」
この世界はΩを虐げている世界。
モイスは高い魔力を持っていて、それで・・・。
「そうです。そして私はβ」
「!!!」
「だから開発者として雇ってくれる店もつぶれ掛けのあの商店しかなかったのですよ」
そう言って笑みを浮かべるシリル。
「モイスとは別に意味で私もケーシーを愛していますから、βであることに不満は持っていませんけど」
三賢者のバースなんて気にもしなかった。
あえていうならずっとαだと思っていた。
優れた人間がαと言う定義がまたよくわからなくなる。
「まぁ・・・私の場合は両親に魔力を植え付けらたのが原因ですね」
『他人の魔力を奪って体に埋め込む』そう言ったのは確かモイスだった。
その時は倫理的にあまり宜しくないとは言っていたが、親が子に残したならそれはまた別の話だ。
「そういう技術があるというのをケーシーにはともかく、・・・モイスに知られたのは駄目でしたね」
「・・・、」
「はじめのころは無邪気に周りの動植物の魔力を植え付けるようになったのですけど、
・・・もともと高い魔力だったのにつぎ込むものだから、あんなに高い魔力になってしまって・・・。
そろそろやめなさいと言ってようやくやめたんです。困っちゃいますね。もう大人なんだからさじ加減を覚えてほしいものです」
ため息交じりで言うシリル。余程手を焼いているのだろう。
それからしばらく談笑をしたのち、目を覚まさないハカセをシリルにお願いすることにした。
そして使いの者が現れると三賢者の住む空間に帰っていった。
☆☆☆
アステリア帝国最後の夜晩。
その日は小規模ながらに夜会が開かれた。
そこで、ルボミールの婚約者と紹介され主要な貴族に挨拶をする。
小さなパーティと聞いていたのに、やたら人数が多い上に王太子であるルボミールに皆挨拶に来る。
京はルボミールの顔に泥を塗らないように、清楚に構えながら挨拶をする。
ラージャでこういうパーティーに出たことがないためよくわからないが、王太子の番だからなのかΩの自分にも話しかけてくれる。
にこやかにほほ笑んでいるだけでは難しかった。
とはいえ、京はこの国の言葉はまだ覚えきれていないから、その度ルボミールに尋ねているのだが、この国の人間はおしゃべり好きらしい。
ルボミール達の周りには常に誰かがいるような状態になり疲れ果てた頃、急に人がはける。
そんな気を使えるのかと驚いていたが、聞けばルボミールがやってくれたらしかった。
2人でバルコニーに下がり休んでいたのだが、ホールにルボミールによく似た男が華やかに話しているのが見えた。
城で待機を命じられていたルーカスもこのパーティに参加しており、同じように挨拶を回っている様だ。
あの横柄さは塵も微塵も感じない程『王子様』といった感じの人物で本当に驚いてしまう。
それをぼんやり見ていると声を掛けられる。
「キョウ。・・・疲れたか?」
「ううん。まだ大丈夫だよ。・・・如月ほど体力はないけれど別に俺はもやしじゃないぞ?」
「そうだが・・・心配なんだ」
精神が不安定になってしまった時、京は倒れてしまったことがある。
ルボミールはそれがまだ記憶にあるのだろう。
京は苦笑を浮かべると『ありがとう』と答えた。
「なんでも俺に話してくれ」
「ルル・・・」
「今日、賢者シリルから話を聞いてよく思った。
・・・あの方はやり方をかなり間違えた。・・・だが、『運命』が本能的に手放せない気持ちもよくわかる」
「・・・、うん」
「俺はキョウを彼の様に病ませたくない。・・・だから一人でなんでも抱え込まないでほしい」
「っ・・・うん」
「・・・、・・・」
ルボミールは何かを口にしようとしたが、再び口を閉じてしまう。
その代わりに京を抱きしめる。
暫くそうした後に、安心させるように頭を撫でられた。
「キョウのしたいようにしていい。思うまま好きにしたらいいんだ」
言い聞かせるように優しく囁かれる。
残されたとしたら一番辛いのはルボミールだ。
そんな彼の優しさに愛しさを募らせながら、京は首を横に振った。
「みんなに、・・・いうよ。還れなくなったって」
「・・・。本当に・・・後悔しないか?この地でバースを受けたトシマクの人々は故郷で普通に暮らせるのだから」
お前はどうなるんだ・・・!
そんな言葉が口から出かけるが京は口を結んで、首を横に振った。
「・・・キョウらしくないな」
「いいんだ」
そういうとぎゅうっと抱きしめた。
そう言った後も心は揺れていた。
そんな京をお見通しなのかずっと撫でてくれるルボミール。
今日は心の中で島のみんなに謝り続けるのだった。
┬┬┬
最終回は28日の夜に決まりました。
体調不良ならないように頑張るぞー!
島ごと返すのに同じ分の犠牲を払うなら出来ない。
少人数であれば賢者達だけで送ることが出来るそうだが、モイスはそれを拒否した。
何よりもシリルは賢者達の力とは言ったが『魔力』とは言っていなかった。
どうしたらいいんだ・・・離れたくない・・・けど
モイスは島民を戻すのは京が戻るのが条件だという。
思考を巡らせていると、ルボミールがぎゅっと手を握ってくれた。
それに視線をあげると頼りがいのある瞳がこちらを見ていた。
「一人で考えるのが難しいなら知恵を合わせよう」
「・・・ルル」
「賢者シリル様。その還す際にはモイス殿の力は必要になるのでしょうか」
「えぇ・・・。彼は刻の魔術師とされて世界を渡る方法を確立したのも彼です」
「そうなのですか・・・」
「彼は刻を、私は治癒を、コンラッドは火を得意としています。そのため彼の協力は必須となっています」
「・・・前途多難だな」
京は小さくため息をつく。
「・・・。私からも説得しますが、・・・あの子は頑固なところがあるので・・・。
貴方にかつての恋人を重ねているのかもしれません。
・・・この世界の童話『青の涙』はご存じですか?」
「えぇ。聞きました。・・・自身の恋人がその時代の皇帝陛下の『運命の番』だったと」
「そうです。・・・あの日の朝、・・・2人はとても幸せそうに城へと向かいました。
結婚することを皇帝陛下に報告するのだと。・・・なのに2人とも帰ってこなかった」
そういうシリルの瞳は当時を思い出しているのか、愁いを帯びている。
そして悔しそうに歪まれた。
「当時の皇帝陛下はすでに妃も側室もおりました。
そこは良いのです。
・・・けれど挨拶に来たケーシーを囲い閉じ込め・・・そして番ってしまった」
「!」
「無理やり番にされ、目を覚ましたケーシーは当然憤慨したそうです。
家に帰してほしいと何度も懇願しましたが、陛下はそれを受け入れませんでした。
それどころか、ケーシーが拒否をすればするほど抱かれ、嫌なはずなのに最後には拒否しきれない自分を悔いていました。
従順にしている間には優しい陛下に、暗示をかけるように『「運命」なのだから仕方ないのだ』と囁かれ、ケーシーの心は麻痺をしていきます。
次第に『「運命」なのだからモイスのことも仕方ないのかもしれない』と、思うようになりました。
しかし、そんな風に出来たのも3日で終わりを告げました。
陛下の側室の1人がモイスに密告したのです。
私達はいなくなってからずっと探し続けていましたが、賢者と呼ばれていても今よりも少し魔力が強い程度で、いくら国内を探しても、私達が作った防御魔法道具の所為でケーシーを探しだすことが出来なかったのです。
・・・モイスも城から帰る途中で襲われたことや、どこの者か想定できない人物たちが、まさか皇帝陛下の差し金だとは気付かなかったようです。
その知らせを聞いたときも信じられませんでした。
少なくともモイスと私をただの商店の開発者から『賢者』と称し、崇めるような動きを国民にさせたのは皇帝陛下です。
そんな人物がモイスの結婚相手を監禁し番わせてしまうなんて思えなかった。
半信半疑でその場所に行くと、そこには半分心が壊れかけのケーシーがいました」
「・・・、」
「モイスの顔を見るなりケーシーは涙を流し震え、モイスに膝をつき何度も謝罪をしていました。
・・・その時に首筋にくっきりと残る痛々しい噛み跡は、絶対に逃がさない心境なのか酷い傷口でした」
『運命の番』のαから逃げようとすると、手が付けられなくなるのは京も良くわかっている。
そして、ケーシーの気持ちを考えると胸が痛かった。
「私は瞬時にケーシーを眠らせると、そこから撤退をしました。
怒り狂うかと思っていたモイスは戻っても落ち着いたままの様に見えていましたが、そのままケーシーと姿を消した」
「・・・」
「国からは何度もケーシーの返還を求める依頼がありました。
しかし私たちは青の国を守護していましたが、青の国から切り離された存在です。
そうしたのは皇帝陛下でもあり、無視を決め込みました。
ケーシーもモイスもいませんでしたけど、私も陛下のやり方に少々を憤りを感じておりましたので。
そして・・・しばらく後で、剣で刺してもしななそうだった皇帝陛下は衰弱し・・・お亡くなりました」
そう言ってシリルは目を伏せた。
「それを意味するのはケーシーの死です。
『運命』である彼等は繋がっています。片方が死ねばもう片方にも影響します」
「それから・・・モイスは眠りについたのですか?」
「いいえ。数百年はケーシーの遺言通りちゃんと賢者をしてましたよ。
赤の国のコンラッドが賢者としてならび、我らが三賢者と呼ばれるようになり・・・200年くらいはいたかと思います」
「なるほど。・・・それにしてもなぜケーシーとモイス殿は番わなかったのですか?
結婚してから番うなどそう言う決まりがあるのでしょうか」
京もそれは気になっていた。
αは独占が強いと聞く。
特に愛し合って番になったΩは大切に囲うと聞いていた。
2人が愛し合っているなら結婚を報告する前に番っていれば、モイスだってα特有の独占欲を示しケーシーを皇帝陛下の前に出すなんてことなかったかもしれないのに。
ルボミールの言葉にシリルは少し考えた後、言葉をつづけた。
「そんなルールはありません。
・・・彼等は結婚も出来て子供を授かることもできますが、番う事が出来ないのです」
「・・・?」
京にはその言葉の意味は分からなかったが、ルボミールには分かったのか息を飲んだのが聞こえた。
「同性なのです」
すぐに理解するのは難しかった。
困惑しながら一つずつ頭の中で整理する京。
ケーシーはΩなのだから・・・、え?
「っ・・・モイスは、・・・Ωなのですか・・・?」
この世界はΩを虐げている世界。
モイスは高い魔力を持っていて、それで・・・。
「そうです。そして私はβ」
「!!!」
「だから開発者として雇ってくれる店もつぶれ掛けのあの商店しかなかったのですよ」
そう言って笑みを浮かべるシリル。
「モイスとは別に意味で私もケーシーを愛していますから、βであることに不満は持っていませんけど」
三賢者のバースなんて気にもしなかった。
あえていうならずっとαだと思っていた。
優れた人間がαと言う定義がまたよくわからなくなる。
「まぁ・・・私の場合は両親に魔力を植え付けらたのが原因ですね」
『他人の魔力を奪って体に埋め込む』そう言ったのは確かモイスだった。
その時は倫理的にあまり宜しくないとは言っていたが、親が子に残したならそれはまた別の話だ。
「そういう技術があるというのをケーシーにはともかく、・・・モイスに知られたのは駄目でしたね」
「・・・、」
「はじめのころは無邪気に周りの動植物の魔力を植え付けるようになったのですけど、
・・・もともと高い魔力だったのにつぎ込むものだから、あんなに高い魔力になってしまって・・・。
そろそろやめなさいと言ってようやくやめたんです。困っちゃいますね。もう大人なんだからさじ加減を覚えてほしいものです」
ため息交じりで言うシリル。余程手を焼いているのだろう。
それからしばらく談笑をしたのち、目を覚まさないハカセをシリルにお願いすることにした。
そして使いの者が現れると三賢者の住む空間に帰っていった。
☆☆☆
アステリア帝国最後の夜晩。
その日は小規模ながらに夜会が開かれた。
そこで、ルボミールの婚約者と紹介され主要な貴族に挨拶をする。
小さなパーティと聞いていたのに、やたら人数が多い上に王太子であるルボミールに皆挨拶に来る。
京はルボミールの顔に泥を塗らないように、清楚に構えながら挨拶をする。
ラージャでこういうパーティーに出たことがないためよくわからないが、王太子の番だからなのかΩの自分にも話しかけてくれる。
にこやかにほほ笑んでいるだけでは難しかった。
とはいえ、京はこの国の言葉はまだ覚えきれていないから、その度ルボミールに尋ねているのだが、この国の人間はおしゃべり好きらしい。
ルボミール達の周りには常に誰かがいるような状態になり疲れ果てた頃、急に人がはける。
そんな気を使えるのかと驚いていたが、聞けばルボミールがやってくれたらしかった。
2人でバルコニーに下がり休んでいたのだが、ホールにルボミールによく似た男が華やかに話しているのが見えた。
城で待機を命じられていたルーカスもこのパーティに参加しており、同じように挨拶を回っている様だ。
あの横柄さは塵も微塵も感じない程『王子様』といった感じの人物で本当に驚いてしまう。
それをぼんやり見ていると声を掛けられる。
「キョウ。・・・疲れたか?」
「ううん。まだ大丈夫だよ。・・・如月ほど体力はないけれど別に俺はもやしじゃないぞ?」
「そうだが・・・心配なんだ」
精神が不安定になってしまった時、京は倒れてしまったことがある。
ルボミールはそれがまだ記憶にあるのだろう。
京は苦笑を浮かべると『ありがとう』と答えた。
「なんでも俺に話してくれ」
「ルル・・・」
「今日、賢者シリルから話を聞いてよく思った。
・・・あの方はやり方をかなり間違えた。・・・だが、『運命』が本能的に手放せない気持ちもよくわかる」
「・・・、うん」
「俺はキョウを彼の様に病ませたくない。・・・だから一人でなんでも抱え込まないでほしい」
「っ・・・うん」
「・・・、・・・」
ルボミールは何かを口にしようとしたが、再び口を閉じてしまう。
その代わりに京を抱きしめる。
暫くそうした後に、安心させるように頭を撫でられた。
「キョウのしたいようにしていい。思うまま好きにしたらいいんだ」
言い聞かせるように優しく囁かれる。
残されたとしたら一番辛いのはルボミールだ。
そんな彼の優しさに愛しさを募らせながら、京は首を横に振った。
「みんなに、・・・いうよ。還れなくなったって」
「・・・。本当に・・・後悔しないか?この地でバースを受けたトシマクの人々は故郷で普通に暮らせるのだから」
お前はどうなるんだ・・・!
そんな言葉が口から出かけるが京は口を結んで、首を横に振った。
「・・・キョウらしくないな」
「いいんだ」
そういうとぎゅうっと抱きしめた。
そう言った後も心は揺れていた。
そんな京をお見通しなのかずっと撫でてくれるルボミール。
今日は心の中で島のみんなに謝り続けるのだった。
┬┬┬
最終回は28日の夜に決まりました。
体調不良ならないように頑張るぞー!
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