オメガバースの世界にトシマ区ごと異世界転生したけど、みんなオメガなのになかなかオメガバースしない話。

みゆきんぐぅ

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俺の所為だった。

ルボミールは本当に忙しかったようで、その2日間は部屋に帰ってくるのも遅かったが、しっかりと3日後には返してくれた。
そして共にこの島へやってくると、ルボミールには京の隣に常に立っている。
それは今回の目的である、島民への説明にも立ち合っている。

島民に帰れる道が実質なくなったことを伝えていた。
その為この地に根を張り生きていくことを提案しているところだった。

「東雲は嘘をついている!!!」

そんな男の声が区立公園に響きわたる。
見に来た聴衆も同時配信を見ていたコメントもざわつき出す。

「京様が嘘をつくわけがないだろー!」
「東雲さんは島の代表として異世界に来て色々働きかけてるのに、なにいってんだ」

そんな風に野次を返し始めていたが、男は負けじと言い返す。

「そんなのアイツの虚言かも知れないじゃないか!
なんで簡単に信じるんだ!
本当に駄目かわからないじゃないかッ」

「この島の誰よりも外に出て調べてきてくれてるのに」
「俺、こないだショーの店舗で働くためにラージャに言ったけど、施設付近以外はやっぱりΩにあたりが強かったよ。そんな状態でただの俺達が色々調べんのなんて無理だと思う」
「魔法なんてある世界で攻めこまれないのも、王太子の番でそう言う風に働きかけてくれてるからアタシ達は生きていられてるんだってわからないの?」
「お前の方こそ虚言癖なんじゃねぇの?」

そんな風に隣の人間に言われてカッとなった男が肩を掴むのが見え、周り配置されていたSPが暴動の気配にその男を取り押さえつけた。

「まて」

SPは京の言葉に従うと男を開放した。
それでも如月はいつ襲われても動けるように、京の前に立ち警戒をしている。
京が男に視線を合わせると息を飲んだ。

「京様。話を聞くために一旦中止しましょう」
「いや。・・・このままでいい。
そういう疑問が上がったなら皆も聞きたいだろう。
隠すことはないのだから」

こんな状態で引き、後日情報を公開したとしても疑心は晴れない。
ならば、ここで何を疑っている方が良いと考えたのだ。

「私がどんなことを偽ったのか、是非聞きたい」

聴衆の中に歩んで行くと男は驚き一瞬ひるみ、視線を逸らした。
予め言っておくと京は別に圧力を与えてもいないし、睨んだりもしていない。

「?・・・どうした?・・・ゆっくりでいい」

そういうと、男はやはり緊張していたのか気分を落ち着け話し始めた。

「っ・・・俺だって・・・アンタを、・・・信じたかった」
「・・・、」
「動物みたいに発情して、男でも良いからシたくなるような、・・・こんないかれたこんな世界で、
休む暇もなく色々動いてるのは知ってるっ
けどっ・・・俺は聞いたんだ!
この世界のお偉いさんにっ
島ごと還る方法があるって!!」
「・・・」
「っ・・・なんで黙るんだよっ」
「・・・それは」
「・・・やっぱり・・・あるのかよ」

男は呟きながら次第に怒りに染まり、京の胸倉をつかもうとしてきたが、寸前のところで如月がそれを止める。
周りのざわめきが大きくなる。
京は目を伏せると一つ呼吸を置いた。

「私には・・・選べなかった」
「は?・・・違うだろっ・・・アンタはその男を選んだんだ!!」

そう言いながら男はルボミールを指さしたが、そのまま震え固まった。
ルボミールが睨んでいるのかもしれない。

「結果的にはそうなる」
「っ」
「けれど、・・・聞いてほしい」
「全部いい訳じゃないか!」
「そうだ。いい訳を聞いてほしい」

隠すことなくいう京に男は口を閉じた。

「私が調べてわかったものはまずは御伽噺のような話だった。
異世界人は『ルミールの谷』というところで
『月が3つ揃う時、落ち人異世界人がその渓谷に立ちルミールの鏡に姿を映したとき元の世界に戻れる』
そういう言い伝えがあるそうだ」
「・・・本当なのか・・・?」
「さぁ、わからない。だれもそれを証明してくれるものが居ないからな」
「・・・!」
「戻れているかもしれないし、戻れないかもしれない。
俺達の元の世界ではそんな話をしたらすぐに精神を疑われる事象だからか、そんな話を聞いたことがない。
・・・それでも。
俺一人だったらたぶんその道を使ってみたと思う。
・・・だが、この島の全員というと、・・・そんな無責任なこと出来なかった」
「っ」
「そして、2つ目は・・・、貴方の言う通単語ルビ単語ルビり島ごと還るというもの。
それがにあった」
「!!!」

これ以上ないくらいの睨視がこちらを貫いてくる。
周りからの視線も疑心が含まれるように感じた。

「貴方はその情報を聞いたときに、すべてを聞いただろうか」
「え?」
「・・・この世界の魔法は・・すべて対価を支払っている。
つまり、俺達が島ごと戻るには同じ分の対価を支払う必要がある」
「っ・・・」
「この島一つを還すには賢者1人で返すのは到底無理だ。
勿論3人そろっても。つまり残りの対価は」

そこまで言うと、男は何を示すのか分かったらしく膝から崩れ落ちる。

「・・・だが、帰りたいなら100人くらいなら還ることは出来ると、・・・この世界の賢者様には言われている」

ラージャから飛ぶことが出来るルボミールのことを考えてもどれだけの魔力が必要なのだろうか。
三賢者の魔力が高いのか、それともがあるのではないか。
なんにせよ、帰るには誰か犠牲になるかもしれない。
それは後味は悪いし、何よりもそんなことをさせたくはない。

「帰ることによって、誰かを犠牲にさせるとういう罪の意識を、俺の判断で押し付けたくなかったんだ」
「っ」
「偽善だと分かっている。
・・・きっと日本に還ったら1年も経ったら忘れるかもしれない。
けどここに住まう」
「っ・・・もう、・・・いい」

辛そうに言う男に京は胸が痛い。

「・・・俺は、帰れる人と帰れない人を選別するのも難しかった。
だから、・・・具体的な対価は」
「もう良いって言ってるだろ!!!」
「だが」
「誰かの犠牲の上で生きていけるほど俺は強くないっ・・・悪かった。おかしなことを」
「・・・いいんだ」

京は男の視線に合わせるようにしゃがみこむと、男が泣きそうになっているのが見えて、肩だけ叩くと立ち上がる。
見たらいけないと思ったのだ。

周りのざわめきも先ほども納得したように聞こえてきた。
ホッとしたのもつかの間だった。


「でも、君達をこの地に呼んだのは、そこのラージャの王子だよ?」


民衆の視線が突如現れたモイスと、ルボミールを交互に見た。
京はコンラッドの言っていたことがこれなのだと察知しつつも、言った話は事実なのかとルボミールに振り返るが、彼は眉を顰めていた。

「おかしな因縁をつけるのは止めてただこうか。
「君が『様』?あはは!
・・・まぁそんなことはどうでもいいか・・・」

本当に可笑しそうに笑っていたのに、ピタリと止めるとニィっとルボミールを見た。
悪意すら感じるその視線に違和感を感じた。

「君。谷一つ瓦礫に・・・いや、・・・完全に消し去ったよね。水脈すらもすべて薙ぎ払うように」
「・・・、・・・」

何故そんなことをしたのか分からない。
その言葉にルボミールはモイスから視線を逸らすと、感情が読めない顔で京を見ていた。

「隣あった世界は別のもので、けして交わることはない。
けど、その壁は強力な力を与えることで簡単に破られるんだよ」
「・・・、しかし」
「別世界の時空がこの世界の進みと同じわけがないだろう」
「!」
「『ルミールの谷』を破壊したことで京をトシマ区ごとこの世界に呼んだ」

そんな言葉が広場に響いた。
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