婚約破棄され売れ残りなのに、粘着質次期宰相につかまりました。

みゆきんぐぅ

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執着旦那と愛の子作り&子育て編

【別視点:ライガー】ライガー『暗躍開始!』の巻。

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【別視点:ライガー】

アルアディア城。
城にある王の執務室に、ルークとライガーが呼ばれた。
部屋に入るとそこには父であるブルーノと宰相のレオンに、その義理息子となったガリウスが揃っていた。

その表情からなんだか嫌な予感がしたが、レオンから『アボッド』が姿を消したという報告に、厳しい表情をする。

「・・・『死んだ』と言うわけではないのか」

そうであってほしい。
しかし、ライガーの質問に凍てつくほどの冷たさでレオンが答える。



最愛の息子であるシャリオンを危険な目に合わせた挙句、自身は悪くないと訴え続けた男をレオンは許しはしない。
あのファングスの死刑執行も立ちあい、命が絶たれるのを自らの手で確認したくらいだ。
アボッドを逃がしたということは今腸煮えくりかえるほど怒りに満ちているのだろう。

「裏で手を引いている可能性のある貴族はいないの?」

あの男は満足に歩くことも出来ない状態で、ルークの疑問はもっともだ。
むしろ、約一年もよく生き伸びたものだ。

「ゼロではない。だが、・・・領地はすでにハドリーの物になり一族は貴族名を返還された家の男を助けるとは思いにくい」
「それはつまり、アボッドに余程弱みを握られた人間と言う事になりますが、以上の問題を抱えたものが居ると言う事になります。・・・約この一年、侯爵は親しかった貴族へ接触を試みてますが、いずれも門前払いをされています。
その先にはすでに、尋問と誓約書で確認済みで、いずれも逃がしたという証言は取れませんでした」
「全貴族に行いたい所だけど、実際無理だしな」

ルークの言う事はもっともだ。
全貴族に尋問を取るのはさして難しいことではないが、尋問理由がアボッドの人身売買の売人捜査ということがあるからとしたら、ならば何故野放しにしたのかということになる。
また、被害者にシャリオンがいることもあり、その捜査指示者の中にレオンがいるのは職権乱用を疑われる。
被害者は多数いたが、損害賠償を支払われた家はハイシア家のみだ。
いくら王家がそう仕向け、シャリオンもまたそれを受け取らなかったとしても、おかしな見方をする者は出てくるだろう。今はそのようなつまらないことで足止めはされたくない。

「あと数か月大人しくしていたらというのに。・・・悪魔に愛されているのかもしれませんね」

と、笑顔で言うガリウス。
アボッドを追跡させてはいたが、このまま一生生かしておくつもりはなかった。
これ以上情報は無いと判断できれば殺すつもりでいたのだ。
その目途は一年。
つまりあと少しで、生かされていたアボッドはだった。
それが伸びてしまったわけだ。
ガリウスの言葉は非道なことの様にも聞こえるが、それがシャリオンを攫わせるきっかけを作った男だと思うと、ライガーもなんとも思わない。

「逃げられた理由には一つだけ思い当たることがあります」
「「!」」
「・・・どういうことだ」

ブルーノの低い声にガリウスは先を急ぐことはせず、先にレオンの方に視線を合わせ許可を得た。

「ウルフ家の追手を払えるのは、同じ穴の狢ということになります」

その言葉に皆が一斉に息を飲む。
ウルフ家はゾルもそうだが、皆が主人であるハイシア家に傍からみても敬畏や敬愛を感じる。
その中に、犯人がいるというのだろうか。
だが、ウルフ家はいずれも手練ればかりで、むしろその彼等自身でなければ追手を振り払えないように思えた。

「・・・ウルフに裏切りものが居ると」

しかし、その言葉をガリウスは否定する。

「逆ですね。むしろウルフ家は裏切った側です」
「回りくどい。さっさと申せ」
「今説明している最中だ。口を挟むな」

ガリウスの言葉に苛立ったブルーノはレオンに一瞥される。
そんな態度がとれるのはこの国では彼しかいないわけだが、たじろぐブルーノにライガー達は苦笑する。
レオンはシャリオンのことでガリウスを叱るところを最近見かけるが、それ以外のことではガリウスが一番信用している側近なのだかた当然である。

「ウルフ家はこの国の人間ではないことは容姿、主に目の色で気づかれているかと思いますが、あの家は元々サーベル国で没落した貴族です。そうだな、ゾル」
「はい」

ガリウスの呼びかけにどこからともなく現れたゾルに皆が驚き息を飲んだ。
いつもそばに控えているとは知っているが、こんな風に現れるのは慣れない。

「っ・・・ウルフ家がサベール国の貴族」
です。
私達の曾祖父のより以前に便宜上そう名乗っていただけで、由緒正しく領地を持ち領民を想う貴族と言うわけではないいです」
「便宜上?・・・騎士か何かだったという事か」
「騎士・・・。そうですね。戦うことをさしたら騎士階級とさほど変わらない。
ただ私達は一世代というわけではなく、延々と家業受け継いでいたようですが」

曾祖父の時代と言うと、ゾル達は話でしか聞いていないということになる。
だから推定の話なのだ。

彼等騎士を光としてあらわすなら、ウルフ家の祖先は闇で現わせます。
・・・貴族社会の闇を請け負う者。家業は暗殺」
「「・・・!」」
「そしてウルフ家はそんな家業の分家であり、本家は別にあります」

どういった経緯かわからないが、つまりウルフ家はその本家を裏切りこの地へ来たのだと分かる。

「本家の家名はコンドルハゲタカ家」
「コンドルか・・・」

本来のコンドルは死肉を餌とする。
人を殺すことで生きていく意味を込めているのだろうか。
『暗殺一家』と聞いた後では余り気持ちが良いものではない。
とはいえ、それを使うのは貴族だが。

「その調査、俺に任せてもらえないか」
「ライガー」
「父上。本当にそのコンドル家なのであれば国外に出られる前に手を打ちたいところです」
「・・・」
「ですが、ウルフ家の追手を払えるなら、最悪を想定しなければならない。
逃げ道など一つもやる気はありません」
「どうするつもりだ」
「とりあえず、俺はあちらの方々を迎えに上がろうと思います」

その言葉にブルーノは良い顔をしなかった。
だが、ライガーは続ける。

「あちらの国とて、国外追放となった男が自国に入ることは良しとしないでしょう」

復讐に駆られたアボッドがおかしな気を起こす前に、必ず捕える。
アルアディアと同じ大陸にある、隣国「カルガリア」に追放されたはずのアボッド。
それを逃がせるだけの力を持った者を野放しには出来ない。
海の向こうの隣国「サーベル国」に逃げられてはそれも難しくなってしまう。
むしろアボッドよりも、その人間を早くあぶりだしたかった。

「殿下」

ガリウスがこちらを見てくるが、その続く言葉を遮る。

「ガリウスは今回ついてこなくていい」
「・・・」

もしもがないとも限らない。
そんな所に、友になった彼を・・・そして、シャリオンの大切な人を連れて行くわけには絶対に行かない。
ましてや、相手はウルフ家と同等かそれ以上の可能性があるならなおさらだ。

「本当に大丈夫ですか?」
「あはは。信用ないな。確かに以前同行してもらった時は大いに助けてもらったが。
けど、今回は大丈夫だ」

そう言えばガリウスはこちらをじっと見てきたが、ライガーの後ろ側を見る。
それはブルーノを見たのだろう。
どんなに反対されてもライガーは行くつもりだ。
振り返り父であるブルーノを見る。

「アルアディアの代表としてなすべきことをしてきます」
「・・・。・・・、しかし」
「手を打っておかなければ、先方にも良い印象を与えません。
事態が悪い方向に初動が動いたとしても、王族である俺が行くことに意味があります」

そう、言うとブルーノは言葉を飲んだが、少し考えたが言葉をつづけた。

「必ず帰ってくるのだ」
「はい。勿論です」

許可を得たライガーはガリウスを見ると、眉間に皺は寄ったままだ。
しかし、王であるブルーノが許可したのだ。

「・・・。ゾル」
「わかりました」
「それとも連れて行くように」

その言葉にゾルは眉を顰めたが小さくため息をついた。
どうやら、ガリウスが癖のあるが頼りになる男を付けてくれたらしいことは分かった。


┬┬┬
アボッドが国外追放になったのは、同じ大陸にある「カルガリア」と、「アルアディア」の間にある無の土地です。
ルークに難題振られてライガーが交渉しに行った土地。
「サーベル」はルーク・ライガー・ガリウスが招待されて行った、海の向こうの国です。
説明が分かりにくくすみません。。。

そして、まったやってしまいました。。
プロットファイルの公開・・・・それも今回は内容載っていて。。。
教えて下さって本当にありがとうございます!(TAT)

そして、読ませてしまい申し訳ありません。。
プロットファイルは別の場所で管理する様に変えました。。
一体いつ公開してしまったのか、どれだけの人に見せてしまったのか・・・。

そんなわけで、今回はそのプロット・・・ていうか、メモにも乗せていたライガーの暗躍の話です(TT

今日は短めですみません。。
休みに入ったらばりばり書きます!
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