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執着旦那と愛の子作り&子育て編
心配するなって無理な話。
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式典は無事終わり広間には拍手が鳴り響く中、シャリオンは困惑していた。
視線は王族席から離せない。
体はプログラムされたかのように手を打っているが、それはほぼ無意識だった。
その思考を止めたのはガリウスだ。
シャリオンの腰に手を添えられハッとして上を見上げると、困った様にアメジストの瞳が揺れている。
いつの間にかあたりの拍手は消えていた。
「心配をかけないようにと思ったのですが、知らせないと変な方向に行ってしまいそうですね」
「・・・。教えてくれるの?」
「聞いてくれたならお応えするとお話したでしょう?」
そう言って頬を撫でてくるガリウス。
ガリウスは何かを知っているのは分かっても、言わなかったのは自分の為だ。
困惑したままシャリオンがガリウスを見つめていると、彼はつづけた。
「とりあえず、一旦下がりましょう」
その返答にコクリと頷く。
☆☆☆
シャリオンのために用意された小部屋に入る。
シャーリーはシャリオンの顔色に何かを察したのか、先に祭典の方に行っているとゾルを引き連れて向かうのを見届けた。
2人きりになるとなんと聞いて良いかわからなかった。
式典は何事もなく無事に終わった。
それ自体は安堵しているのだが、式典は・・・陛下のみの参加であった。
式典が始まる時間になっても王族席には、王太子であるルークやライガーは勿論、伴侶であるルーティが現れなかったのである。
王族が出席したり、全員通してのリハーサルはしてないが王族の席は説明されていたから、今そこにいないことは問題があると言う事。
そこから考えられるのは、ライガーかルークの2人に何かあったのではないか?ということだ。
「そんなに心配そうな顔をしないで下さい。・・・妬いてしまいます」
「っ・・・、・・・ごめん」
心配が募っていくところに、意地悪気な笑みを浮かべで言われて状態がそこまで緊急性がないことを知り少しホッとする。
もし最悪な状態であったら、ガリウスはこんなことは言わないだろう。
「それと、いい訳を一つさせていただいても宜しいでしょうか?」
「いい訳・・・?」
「えぇ」
「・・・なに?」
まさかここに来て何かあるのだろうかと息を飲む。
「貴方に言わなかったのは『聞かれなかったから』だけではなく、口止めをされていたからです」
「口止め・・・、ルーク?ライガー??」
口にしながら少しムッとしてしまう。
王族席に誰もいないなんて気づかないわけがないのに、何を言っているのだろうか。
そんなこと、シャリオン以外の貴族だって気づいていたはずだ。
「お2人にですよ。祭典の方にはいらっしゃる予定です。
陛下からの国民へのお言葉が終わりましたら、存分に尋ねるとよいですよ」
にっこりと微笑みを浮かべるガリウスは何を考えているかはわからなかったが、シャリオンはコクリと頷く。
普段から何かあるか?と事あるごとに聞いてくるというくせに、何故自分達は秘密にするのかと思いながらシャリオンは切り替えるように深呼吸をすると立ち上がる。
しかし、苦笑を浮かべているガリウスに首を傾げた。
「ガリウス?・・・!・・・どうしたの?」
名前を呼んだ途端、ぎゅっとシャリオンを抱きしめてくるガリウス。
首元にうずめている様子に、少し困惑する。
ルークとライガーに腹をたてた感情は消えて、様子の可笑しいガリウスに意識が向いた。
「・・・」
応えないガリウスは珍しくて、そっとその頭を撫でるとビクンと肩が揺れた。
きっと何かシャリオンの見えないところで頑張っていてくれたのだろう。
婚約した当時、シャリオンの軽率な行動の所為もあったのだが、ガリウスはライガーとの接触を酷く警戒していたが、結婚式前後から少し様子が変わった。
シャリオンの気持ちに疑いを持たなくなったから。と言うよりも、今の様子を見る限りシャリオンを思って譲歩してくれているのだろう。
おまけに、自ら話に出しシャリオンが話しやすいようにして。
「ありがとう。教えてくれて」
首を少し捻り、耳にチュっと口づける。
「・・・。そこではなく唇に欲しいのですが」
「うん。僕もガリウスの唇にしたいよ?」
暗に顔を上げてくれないと出来ないというと、あげられた頭に続いてみえた表情は、シャリオンが思っていたよりも余裕がなさそうで驚いてしまう。
そして、シャリオンの後頭部に手を添え2・3度唇を啄んだ後、貪るように吸い付かれた。
まるで呼吸を吸い取られるのではないかと言うくらい激しいキスに、シャリオンは甘受しその腕の中で小さく喘ぎ震えることしかできなかった。
伴侶から与えられる魔力に甘いしびれに酔い、ここがどこで今がどんな状況かも忘れてもっとと、せがむようにガリウスを見上げる。
「っ・・・がりぃ」
「、・・・すみません。・・・続きは帰ってからです」
「!・・・っ・・・うん」
そう言われて漸く今ここかどこか思い出し、頬が赤くなっていくのを感じた。
「シャリオン。落ち着いてください。
結界は張っておりますので、シャーリー様にもゾルにも気づかれていませんよ」
「っ」
祭典の会場はすぐ先だ。
国民が待っている広場に面した壁に、式典のときと同様に壁にはバルコニーがいくつも連なっている。
それは式典がある場所から、反対側がすぐそうなっている。
そこから顔を出すのだが、今いる場所から数十メートルしか離れていないのを思い出した。
いくら結界をしているからとは言え、すぐ人がいるところでするキスではなかった。
『落ち着かないと!』と、意識すればするほど中々熱が引かないのであった。
しばらくたち、ガリウスに『もう大丈夫です』と、言われてシャーリー達の元に向かったのだが、ゾルに顔を見られた瞬間、その視線はガリウスに移りジロリと睨んでいる。
「・・・。・・・他の人間からもっと近い距離でしたらどういうおつもりで?」
口にしている内容は相変わらず側近とは思えない言葉だが、比較的いつもより丁寧語だ。
「それこそ出しませんよ」
「・・・。シャリオン様。
男は狼と言う言葉をご存じかと思いますが、それは貴方の伴侶も含まれるということを忘れないで下さいね」
そうは言うが、シャリオンにはガリウスを拒むことなんてできないのだから、ガリウスをどうにかしてほしいと思うのだった。
☆☆☆
祭典の挨拶はほんの数分だ。
それが終わるとシャリオンはライガーとルークがいる上のフロアーへ行こうとしたのだが、ガリウスに止められ部屋へと連れて行かれた。
困惑しつつも待っているそこに現れたのはライガーだった。
海外に行っていたという彼と会うのは久しぶりだが、なんだか痩せて顔色が悪く見えた。
心配バロメータがみるみる間に振り切れそうになり、名前を呼ぼうとした。
「っラ」
「!シャリオンッおめでとう!」
しかし、シャリオンの顔を見るなりパァっと輝くような笑みを浮かべてこちらに駆けだそうとしたのを、ルークが首根っこを掴んで引き留める。
グっと喉が閉まり苦しそうにするライガーに心配してしまう。
ルークの方が背が高いのだから、そんなことをしたら簡単にしまってしまうではないか。
だが、ルークの方は特に気にしてないようで、動きを止めたライガーにパッと手を離す。
「こら。そんな風にしたら駄目でしょう~」
「あ。・・・あぁそうだな。怖い伴侶の前じゃ要らぬ嫌疑をかけられる」
「それ、私の前で言いますか?」
「何もないから言っているんだ」
「あからさますぎて逆に疑わしくなることもあります」
そう言うと、ライガーもルークも呆れたようにガリウスのことを見ている。
2人はシャリオン達が掛けていたソファーセットの前に座った。
いつぞやの面子になるが、その頃とは全然空気が違う。
最近そう思うことはあるのだが、今日は一段とそんな感じがする。
なんだか、3人の空気が柔らかくなった気がして首をかしげるシャリオン。
「?」
「それより、シャリオン。ルークから聞いたよ。あとガリウスからも」
「え?」
「子供授かったんだろう?」
そういうライガーは本当に嬉しそうで、数秒前にあった怒りはもう沸いてはくれそうになくて、小さく苦笑を浮かべた。
「もう。・・・ライガーは」
明らかに今の状態を見るとライガーの方が辛そうなのに、シャリオンが授かったことを自分の事の様に喜んでいる。
「そうなんだ。もう少しで一ヵ月たつからそろそろ安定すると思うんだけどね」
「そうか・・・。きっと2人に似た可愛い子になるだろう」
「えー?俺はガリウスの見た目で中身がシャリオンだと良いなって思うけど」
「そうですか?見た目も性格もシャリオンの様になってもらいたいですね」
「そしたら、シャリオンやシャーリー様の様になるだけだよ?」
そういうルークにガリウスはハッとしたように視線をあげる。
「それは困りますね」
「そうだよ~?」
「リ・・・シャリオンに似たら体力と体術を付けた方が良いな」
「そうですね。シャリオンには筋肉は合わないと思うのですが・・・致し方ありません」
なんて、3人が気の早いことを言っていて苦笑を浮かべる。
というか、ガリウスのそれは本気でそう言っているのだろうか。
「シャリオンは?どんな子が良いの~?」
「僕?そんなの、どんな子でも愛おしいと思うよ」
そういうと、シャリオンはガリウスに抱き寄せられた。
「ガリウスー?俺達いるの忘れないでねぇ~?」
「ルーク。止めるだけ無駄だ。それにシャリオンも慣れさせないとこの後辛いのだから放っておけ」
「良いこと言ってくれますね、ライガー様。
ルーク様もいい加減子供の様に冷やかすのはおやめください。
それに、今は安定期前なのですから良いでしょう?」
「!」
これまでライガーのこともルークのことも『殿下』や『王太子殿下』と言っていたのに、そんな風に言うガリウスに驚いて見上げるとクスリと笑みを浮かべた。
「貴方の幼馴染で親友の彼等は、私とも友となって下さったのです」
「え」
「大丈夫。シャリオンの立ち位置は取りませんよ」
なんて冗談気に言われたので、ふるふると首を振った。
「そんなこと・・・そうじゃなくて」
「ガリウスはそういうの崩しそうにないもんね」
「うん」
「まぁ私も崩すつもりはなかったのですがね。・・・どこかのライガーという殿下が拗らせているので」
「ぐっ・・・ガリウス。・・・なんで君はそうやって棘を投げつけてくるんだ」
「失礼しました。・・・それで聞いてください。シャリオン。
そんな私に『友なら「殿下」ではなく名前で呼んでほしい』とか言い出すんですよ。
子爵の出の私にですよ?
おまけにそれを見ていたルーク様は止めて下さるかと思いきや、『ずるい』とか言い出す始末ですよ」
ニッコリと浮かべる笑みはどこか怒りを含んでいた。
きっと何度かそういう攻防があったのだろう。
それで譲歩して『様』呼びなようだ。
シャリオンはくすりと笑った。
「それは無理だよ。
特にライガーはね。こう呼びたいって思ったら、諦めないから。
そのうち、ガリウスも愛称を付けられるんじゃない?」
「要りません」
「愛称・・・そうか」
「・・・。ライガー様。どこに王族の皆さまを愛称やお名前で呼ぶ貴族が、子爵がいるというのです」
「でも今はガリウスは公爵の伴侶で宰相じゃないか」
「次期です。それに私はシャリオンの伴侶であって、公爵ではありません」
「まぁまぁ。父上とレオン殿達だって名前で呼び合ってるんだし良いじゃない。ねぇ?兄上」
「そうだ。あまり細かいことやあれこれ画策しているとハゲるぞ?」
仲が良くなったからなのか、いきいきとしているライガーがそんなことを言うと、ピキリとガリウスから音がしたような気がした。
「それよりもお二方はシャリオンに言うことがあるのでは?特にライガー様」
ガリウスがじろりと視線を向ければ、ライガーはハッとしてシャリオンを見てきた。
「今回、私があれこれ考えなくてはいけない理由。・・・貴方に言えない理由を作ったのはライガー様ですよ」
「ちょっ・・・言うなと言ったのに!」
「私はシャリオンが一番なので。お忘れですか?」
「「っ・・・」」
「貴方達の言い分に一理あるかと、私も乗ったのもいけなかったですが、式典に貴方が居なければシャリオンが気にするのは当然です」
「・・・、なにか、あった・・・?」
「それは・・・」
「シャリオン。気にしなくて大丈夫だ。ガリウスが大げさに言っているだけだ」
言いよどむルークだったが、ライガーは首を振って否定をする。
だが、それは隠し事をされているのが分かる。
もやついた気持ちがふわふわと沸いてくる。
シャリオンは言葉を飲んで『わかった』と、言おうと思った。
けど。ふと、ライガーの不安に気づいていながら踏み込めなかった自分を思い出した。
「・・・、」
「だから、シャリオンは」
それに続く言葉は簡単に想像が出来る。
シャリオンはキッとライガーを睨む。
「そんなの嬉しくない」
「・・・シャリオン・・・?」
「ライの嘘なんてわかりやすいんだよ」
そういうとライガーは苦笑を浮かべた。
「大方、僕が子を授かったのを聞いて気を使ってくれたんだろうけど。
そんなの後で知った方が辛いんだから」
「だが」
「言ったでしょう?シャリオンは絶対に怒ると。・・・こうして不安にさせてどうしてくれるんです?」
「っ・・・わ、分かった。リオ・・・あ、いやシャリオンにガリウスも・・・隠してて悪かった」
「はぁ・・・そのようなところ気にしてくださるよりも、シャリオンにストレスを与えないようにしてください。
貴方がたの愛称呼びは今に始まったことではありません。
社交の場に出ている貴族は皆知っています。
毎回そうやって言い直すくらいなら、もう良いですから」
「っ・・・いいのか?」
そう言って目を輝かせるライガー。
素直すぎるそれにシャリオンは苦笑した。
これにあくまで他意はないのだ。
それがガリウスもわかっているのだろう、小さくため息をつきながらコクリと頷く。
随分と失礼な態度をしているが、ライガーもルークも嬉しそうなのが、なんだか可笑しくなってしまう。
「なんか、僕が知らない間に随分仲良くなったみたいだ」
「おや。嫉妬してくださるのですか?」
「っ・・・ばか」
シャリオンのそんなつぶやきに嬉しそうにするガリウスをキッと睨むとクスクスと笑った。
「残念です。・・・えぇ。親しくなったからライガー様のお願いも聞いて差し上げたのです」
なんて、随分上からの発言をしながらがライガーを見る。
どうやら、このままごまかそうとしていたらしい男は乾いた笑みを浮かべた。
「んー・・・。
まぁガリウスが言って良いと判断したなら良いか」
「そうだよ。ガリウスがフォローしてくれるよ~」
ケラケラと無責任にもルークがそう言うとライガーはため息をついた。
「はぁ・・・。リオ。
その、リオを仲間外れにとかそういう事ではないんだ」
「うん。・・・どうしたの?」
「とある内密な調査があったんだが、・・・その最中に少々負傷してしまって」
「ふ、・・・怪我してるの!?」
「あぁ。・・・それで戻ってきたのが今朝だったんだ」
「今朝!」
確かに数日前にガリウスに聞いた時、ライガーは戻ってくる最中だと聞いていた。
時間がかかっているとは思っていたが、結構ひっ迫していたようだ。
それは怪我のこともあるのだろうか。
そんな心配をしているとルークが意地悪気に顔をゆがめながら、まるでシャリオンに言いつけるように話し始めた。
「それでねぇ?聞いてよ、シャリオン!
兄上、真っ青なくせして式典出るとか言い出してさ!
なんでか聞いたら『他の貴族に王族を邪推な目で見させるわけにはいかない』とか言い出すから、もう俺あったまきちゃって。
だったら俺も出ないって言ったら父上も父様もそれでいいって言ってくれから出ないことにしたの」
こんな顔色の悪いライガーを出すわけにいかないのは分かる。
しかし、王族全員が出ないのも勘繰られないだろうか。
「・・・。それはそれでおかしな目でみられないか?」
「だよね!でも、出るっていうから」
そういってジト目でライガーをみるルーク。
それに助け舟を出したのはガリウスだった。
「ですが、ファングス家の一件から約一年たった今、確かにライガー様だけあそこにいらっしゃらなければ王族に何か思うものはいたでしょう。
ライガー様だけ不在よりはマシだったかと思います」
何がとはガリウスは言わなかったが、ライガーの産みの親である『王妃』も気づけば居なくなっており、ファングス家の兼ね合いもありライガーを処したと思われてしまっただろう。
「なので、ライガー様の仰ることは理解できます。・・・が、シャリオンに対する件は過ちだと思います」
「・・・、・・・だったらそう言った時に言ってくれないか」
「本当だよ。何も言わなかったじゃん」
ライガーとルークから非難の声が上がると、ガリウスはシレッとこたえた。
「相談していただけなかったでしょう??」
「・・・あ」
「?」
シャリオンは何を言っているか意味が良くわからなかったが、ライガーにはよくわかったらしく、『やってしまった!』と言うような表情を浮かべた。
「えーと。それで・・・怪我は大丈夫なの?」
「うん。治療魔法もしてもらったし」
治療魔法は失った血までは戻らない。
顔色が悪いのはそう言う理由なのだろう。
だが、ライガーがそう言うのをじっと見た後、小さくため息をついた。
「わかった。信じるよ。・・・ガリウス、・・・よろしくね?」
「えぇ。ライガー様には人に相談するという練習をまだしていただかないとなので、それまでは目を光らせてますよ」
「そう。ガリウスがそう言ってくれるなら安心だよ」
「今回は貴方に叱ってもらおうと思ったんですよ。
シャリオンに言われたなら聞く気にもなるでしょう?」
「・・・、」
「兄上、信用されてない~!けど、仕方ないね~」
「お前は俺の傷に塩を塗りたいのか?」
「「塩を塗ってその秘密主義が治るならいくらでも塗(るけど~?)(りますが?)」」
「っく」
厳しいガリウスとルークの言葉に、シャリオンは可笑しくなって笑うのだった。
視線は王族席から離せない。
体はプログラムされたかのように手を打っているが、それはほぼ無意識だった。
その思考を止めたのはガリウスだ。
シャリオンの腰に手を添えられハッとして上を見上げると、困った様にアメジストの瞳が揺れている。
いつの間にかあたりの拍手は消えていた。
「心配をかけないようにと思ったのですが、知らせないと変な方向に行ってしまいそうですね」
「・・・。教えてくれるの?」
「聞いてくれたならお応えするとお話したでしょう?」
そう言って頬を撫でてくるガリウス。
ガリウスは何かを知っているのは分かっても、言わなかったのは自分の為だ。
困惑したままシャリオンがガリウスを見つめていると、彼はつづけた。
「とりあえず、一旦下がりましょう」
その返答にコクリと頷く。
☆☆☆
シャリオンのために用意された小部屋に入る。
シャーリーはシャリオンの顔色に何かを察したのか、先に祭典の方に行っているとゾルを引き連れて向かうのを見届けた。
2人きりになるとなんと聞いて良いかわからなかった。
式典は何事もなく無事に終わった。
それ自体は安堵しているのだが、式典は・・・陛下のみの参加であった。
式典が始まる時間になっても王族席には、王太子であるルークやライガーは勿論、伴侶であるルーティが現れなかったのである。
王族が出席したり、全員通してのリハーサルはしてないが王族の席は説明されていたから、今そこにいないことは問題があると言う事。
そこから考えられるのは、ライガーかルークの2人に何かあったのではないか?ということだ。
「そんなに心配そうな顔をしないで下さい。・・・妬いてしまいます」
「っ・・・、・・・ごめん」
心配が募っていくところに、意地悪気な笑みを浮かべで言われて状態がそこまで緊急性がないことを知り少しホッとする。
もし最悪な状態であったら、ガリウスはこんなことは言わないだろう。
「それと、いい訳を一つさせていただいても宜しいでしょうか?」
「いい訳・・・?」
「えぇ」
「・・・なに?」
まさかここに来て何かあるのだろうかと息を飲む。
「貴方に言わなかったのは『聞かれなかったから』だけではなく、口止めをされていたからです」
「口止め・・・、ルーク?ライガー??」
口にしながら少しムッとしてしまう。
王族席に誰もいないなんて気づかないわけがないのに、何を言っているのだろうか。
そんなこと、シャリオン以外の貴族だって気づいていたはずだ。
「お2人にですよ。祭典の方にはいらっしゃる予定です。
陛下からの国民へのお言葉が終わりましたら、存分に尋ねるとよいですよ」
にっこりと微笑みを浮かべるガリウスは何を考えているかはわからなかったが、シャリオンはコクリと頷く。
普段から何かあるか?と事あるごとに聞いてくるというくせに、何故自分達は秘密にするのかと思いながらシャリオンは切り替えるように深呼吸をすると立ち上がる。
しかし、苦笑を浮かべているガリウスに首を傾げた。
「ガリウス?・・・!・・・どうしたの?」
名前を呼んだ途端、ぎゅっとシャリオンを抱きしめてくるガリウス。
首元にうずめている様子に、少し困惑する。
ルークとライガーに腹をたてた感情は消えて、様子の可笑しいガリウスに意識が向いた。
「・・・」
応えないガリウスは珍しくて、そっとその頭を撫でるとビクンと肩が揺れた。
きっと何かシャリオンの見えないところで頑張っていてくれたのだろう。
婚約した当時、シャリオンの軽率な行動の所為もあったのだが、ガリウスはライガーとの接触を酷く警戒していたが、結婚式前後から少し様子が変わった。
シャリオンの気持ちに疑いを持たなくなったから。と言うよりも、今の様子を見る限りシャリオンを思って譲歩してくれているのだろう。
おまけに、自ら話に出しシャリオンが話しやすいようにして。
「ありがとう。教えてくれて」
首を少し捻り、耳にチュっと口づける。
「・・・。そこではなく唇に欲しいのですが」
「うん。僕もガリウスの唇にしたいよ?」
暗に顔を上げてくれないと出来ないというと、あげられた頭に続いてみえた表情は、シャリオンが思っていたよりも余裕がなさそうで驚いてしまう。
そして、シャリオンの後頭部に手を添え2・3度唇を啄んだ後、貪るように吸い付かれた。
まるで呼吸を吸い取られるのではないかと言うくらい激しいキスに、シャリオンは甘受しその腕の中で小さく喘ぎ震えることしかできなかった。
伴侶から与えられる魔力に甘いしびれに酔い、ここがどこで今がどんな状況かも忘れてもっとと、せがむようにガリウスを見上げる。
「っ・・・がりぃ」
「、・・・すみません。・・・続きは帰ってからです」
「!・・・っ・・・うん」
そう言われて漸く今ここかどこか思い出し、頬が赤くなっていくのを感じた。
「シャリオン。落ち着いてください。
結界は張っておりますので、シャーリー様にもゾルにも気づかれていませんよ」
「っ」
祭典の会場はすぐ先だ。
国民が待っている広場に面した壁に、式典のときと同様に壁にはバルコニーがいくつも連なっている。
それは式典がある場所から、反対側がすぐそうなっている。
そこから顔を出すのだが、今いる場所から数十メートルしか離れていないのを思い出した。
いくら結界をしているからとは言え、すぐ人がいるところでするキスではなかった。
『落ち着かないと!』と、意識すればするほど中々熱が引かないのであった。
しばらくたち、ガリウスに『もう大丈夫です』と、言われてシャーリー達の元に向かったのだが、ゾルに顔を見られた瞬間、その視線はガリウスに移りジロリと睨んでいる。
「・・・。・・・他の人間からもっと近い距離でしたらどういうおつもりで?」
口にしている内容は相変わらず側近とは思えない言葉だが、比較的いつもより丁寧語だ。
「それこそ出しませんよ」
「・・・。シャリオン様。
男は狼と言う言葉をご存じかと思いますが、それは貴方の伴侶も含まれるということを忘れないで下さいね」
そうは言うが、シャリオンにはガリウスを拒むことなんてできないのだから、ガリウスをどうにかしてほしいと思うのだった。
☆☆☆
祭典の挨拶はほんの数分だ。
それが終わるとシャリオンはライガーとルークがいる上のフロアーへ行こうとしたのだが、ガリウスに止められ部屋へと連れて行かれた。
困惑しつつも待っているそこに現れたのはライガーだった。
海外に行っていたという彼と会うのは久しぶりだが、なんだか痩せて顔色が悪く見えた。
心配バロメータがみるみる間に振り切れそうになり、名前を呼ぼうとした。
「っラ」
「!シャリオンッおめでとう!」
しかし、シャリオンの顔を見るなりパァっと輝くような笑みを浮かべてこちらに駆けだそうとしたのを、ルークが首根っこを掴んで引き留める。
グっと喉が閉まり苦しそうにするライガーに心配してしまう。
ルークの方が背が高いのだから、そんなことをしたら簡単にしまってしまうではないか。
だが、ルークの方は特に気にしてないようで、動きを止めたライガーにパッと手を離す。
「こら。そんな風にしたら駄目でしょう~」
「あ。・・・あぁそうだな。怖い伴侶の前じゃ要らぬ嫌疑をかけられる」
「それ、私の前で言いますか?」
「何もないから言っているんだ」
「あからさますぎて逆に疑わしくなることもあります」
そう言うと、ライガーもルークも呆れたようにガリウスのことを見ている。
2人はシャリオン達が掛けていたソファーセットの前に座った。
いつぞやの面子になるが、その頃とは全然空気が違う。
最近そう思うことはあるのだが、今日は一段とそんな感じがする。
なんだか、3人の空気が柔らかくなった気がして首をかしげるシャリオン。
「?」
「それより、シャリオン。ルークから聞いたよ。あとガリウスからも」
「え?」
「子供授かったんだろう?」
そういうライガーは本当に嬉しそうで、数秒前にあった怒りはもう沸いてはくれそうになくて、小さく苦笑を浮かべた。
「もう。・・・ライガーは」
明らかに今の状態を見るとライガーの方が辛そうなのに、シャリオンが授かったことを自分の事の様に喜んでいる。
「そうなんだ。もう少しで一ヵ月たつからそろそろ安定すると思うんだけどね」
「そうか・・・。きっと2人に似た可愛い子になるだろう」
「えー?俺はガリウスの見た目で中身がシャリオンだと良いなって思うけど」
「そうですか?見た目も性格もシャリオンの様になってもらいたいですね」
「そしたら、シャリオンやシャーリー様の様になるだけだよ?」
そういうルークにガリウスはハッとしたように視線をあげる。
「それは困りますね」
「そうだよ~?」
「リ・・・シャリオンに似たら体力と体術を付けた方が良いな」
「そうですね。シャリオンには筋肉は合わないと思うのですが・・・致し方ありません」
なんて、3人が気の早いことを言っていて苦笑を浮かべる。
というか、ガリウスのそれは本気でそう言っているのだろうか。
「シャリオンは?どんな子が良いの~?」
「僕?そんなの、どんな子でも愛おしいと思うよ」
そういうと、シャリオンはガリウスに抱き寄せられた。
「ガリウスー?俺達いるの忘れないでねぇ~?」
「ルーク。止めるだけ無駄だ。それにシャリオンも慣れさせないとこの後辛いのだから放っておけ」
「良いこと言ってくれますね、ライガー様。
ルーク様もいい加減子供の様に冷やかすのはおやめください。
それに、今は安定期前なのですから良いでしょう?」
「!」
これまでライガーのこともルークのことも『殿下』や『王太子殿下』と言っていたのに、そんな風に言うガリウスに驚いて見上げるとクスリと笑みを浮かべた。
「貴方の幼馴染で親友の彼等は、私とも友となって下さったのです」
「え」
「大丈夫。シャリオンの立ち位置は取りませんよ」
なんて冗談気に言われたので、ふるふると首を振った。
「そんなこと・・・そうじゃなくて」
「ガリウスはそういうの崩しそうにないもんね」
「うん」
「まぁ私も崩すつもりはなかったのですがね。・・・どこかのライガーという殿下が拗らせているので」
「ぐっ・・・ガリウス。・・・なんで君はそうやって棘を投げつけてくるんだ」
「失礼しました。・・・それで聞いてください。シャリオン。
そんな私に『友なら「殿下」ではなく名前で呼んでほしい』とか言い出すんですよ。
子爵の出の私にですよ?
おまけにそれを見ていたルーク様は止めて下さるかと思いきや、『ずるい』とか言い出す始末ですよ」
ニッコリと浮かべる笑みはどこか怒りを含んでいた。
きっと何度かそういう攻防があったのだろう。
それで譲歩して『様』呼びなようだ。
シャリオンはくすりと笑った。
「それは無理だよ。
特にライガーはね。こう呼びたいって思ったら、諦めないから。
そのうち、ガリウスも愛称を付けられるんじゃない?」
「要りません」
「愛称・・・そうか」
「・・・。ライガー様。どこに王族の皆さまを愛称やお名前で呼ぶ貴族が、子爵がいるというのです」
「でも今はガリウスは公爵の伴侶で宰相じゃないか」
「次期です。それに私はシャリオンの伴侶であって、公爵ではありません」
「まぁまぁ。父上とレオン殿達だって名前で呼び合ってるんだし良いじゃない。ねぇ?兄上」
「そうだ。あまり細かいことやあれこれ画策しているとハゲるぞ?」
仲が良くなったからなのか、いきいきとしているライガーがそんなことを言うと、ピキリとガリウスから音がしたような気がした。
「それよりもお二方はシャリオンに言うことがあるのでは?特にライガー様」
ガリウスがじろりと視線を向ければ、ライガーはハッとしてシャリオンを見てきた。
「今回、私があれこれ考えなくてはいけない理由。・・・貴方に言えない理由を作ったのはライガー様ですよ」
「ちょっ・・・言うなと言ったのに!」
「私はシャリオンが一番なので。お忘れですか?」
「「っ・・・」」
「貴方達の言い分に一理あるかと、私も乗ったのもいけなかったですが、式典に貴方が居なければシャリオンが気にするのは当然です」
「・・・、なにか、あった・・・?」
「それは・・・」
「シャリオン。気にしなくて大丈夫だ。ガリウスが大げさに言っているだけだ」
言いよどむルークだったが、ライガーは首を振って否定をする。
だが、それは隠し事をされているのが分かる。
もやついた気持ちがふわふわと沸いてくる。
シャリオンは言葉を飲んで『わかった』と、言おうと思った。
けど。ふと、ライガーの不安に気づいていながら踏み込めなかった自分を思い出した。
「・・・、」
「だから、シャリオンは」
それに続く言葉は簡単に想像が出来る。
シャリオンはキッとライガーを睨む。
「そんなの嬉しくない」
「・・・シャリオン・・・?」
「ライの嘘なんてわかりやすいんだよ」
そういうとライガーは苦笑を浮かべた。
「大方、僕が子を授かったのを聞いて気を使ってくれたんだろうけど。
そんなの後で知った方が辛いんだから」
「だが」
「言ったでしょう?シャリオンは絶対に怒ると。・・・こうして不安にさせてどうしてくれるんです?」
「っ・・・わ、分かった。リオ・・・あ、いやシャリオンにガリウスも・・・隠してて悪かった」
「はぁ・・・そのようなところ気にしてくださるよりも、シャリオンにストレスを与えないようにしてください。
貴方がたの愛称呼びは今に始まったことではありません。
社交の場に出ている貴族は皆知っています。
毎回そうやって言い直すくらいなら、もう良いですから」
「っ・・・いいのか?」
そう言って目を輝かせるライガー。
素直すぎるそれにシャリオンは苦笑した。
これにあくまで他意はないのだ。
それがガリウスもわかっているのだろう、小さくため息をつきながらコクリと頷く。
随分と失礼な態度をしているが、ライガーもルークも嬉しそうなのが、なんだか可笑しくなってしまう。
「なんか、僕が知らない間に随分仲良くなったみたいだ」
「おや。嫉妬してくださるのですか?」
「っ・・・ばか」
シャリオンのそんなつぶやきに嬉しそうにするガリウスをキッと睨むとクスクスと笑った。
「残念です。・・・えぇ。親しくなったからライガー様のお願いも聞いて差し上げたのです」
なんて、随分上からの発言をしながらがライガーを見る。
どうやら、このままごまかそうとしていたらしい男は乾いた笑みを浮かべた。
「んー・・・。
まぁガリウスが言って良いと判断したなら良いか」
「そうだよ。ガリウスがフォローしてくれるよ~」
ケラケラと無責任にもルークがそう言うとライガーはため息をついた。
「はぁ・・・。リオ。
その、リオを仲間外れにとかそういう事ではないんだ」
「うん。・・・どうしたの?」
「とある内密な調査があったんだが、・・・その最中に少々負傷してしまって」
「ふ、・・・怪我してるの!?」
「あぁ。・・・それで戻ってきたのが今朝だったんだ」
「今朝!」
確かに数日前にガリウスに聞いた時、ライガーは戻ってくる最中だと聞いていた。
時間がかかっているとは思っていたが、結構ひっ迫していたようだ。
それは怪我のこともあるのだろうか。
そんな心配をしているとルークが意地悪気に顔をゆがめながら、まるでシャリオンに言いつけるように話し始めた。
「それでねぇ?聞いてよ、シャリオン!
兄上、真っ青なくせして式典出るとか言い出してさ!
なんでか聞いたら『他の貴族に王族を邪推な目で見させるわけにはいかない』とか言い出すから、もう俺あったまきちゃって。
だったら俺も出ないって言ったら父上も父様もそれでいいって言ってくれから出ないことにしたの」
こんな顔色の悪いライガーを出すわけにいかないのは分かる。
しかし、王族全員が出ないのも勘繰られないだろうか。
「・・・。それはそれでおかしな目でみられないか?」
「だよね!でも、出るっていうから」
そういってジト目でライガーをみるルーク。
それに助け舟を出したのはガリウスだった。
「ですが、ファングス家の一件から約一年たった今、確かにライガー様だけあそこにいらっしゃらなければ王族に何か思うものはいたでしょう。
ライガー様だけ不在よりはマシだったかと思います」
何がとはガリウスは言わなかったが、ライガーの産みの親である『王妃』も気づけば居なくなっており、ファングス家の兼ね合いもありライガーを処したと思われてしまっただろう。
「なので、ライガー様の仰ることは理解できます。・・・が、シャリオンに対する件は過ちだと思います」
「・・・、・・・だったらそう言った時に言ってくれないか」
「本当だよ。何も言わなかったじゃん」
ライガーとルークから非難の声が上がると、ガリウスはシレッとこたえた。
「相談していただけなかったでしょう??」
「・・・あ」
「?」
シャリオンは何を言っているか意味が良くわからなかったが、ライガーにはよくわかったらしく、『やってしまった!』と言うような表情を浮かべた。
「えーと。それで・・・怪我は大丈夫なの?」
「うん。治療魔法もしてもらったし」
治療魔法は失った血までは戻らない。
顔色が悪いのはそう言う理由なのだろう。
だが、ライガーがそう言うのをじっと見た後、小さくため息をついた。
「わかった。信じるよ。・・・ガリウス、・・・よろしくね?」
「えぇ。ライガー様には人に相談するという練習をまだしていただかないとなので、それまでは目を光らせてますよ」
「そう。ガリウスがそう言ってくれるなら安心だよ」
「今回は貴方に叱ってもらおうと思ったんですよ。
シャリオンに言われたなら聞く気にもなるでしょう?」
「・・・、」
「兄上、信用されてない~!けど、仕方ないね~」
「お前は俺の傷に塩を塗りたいのか?」
「「塩を塗ってその秘密主義が治るならいくらでも塗(るけど~?)(りますが?)」」
「っく」
厳しいガリウスとルークの言葉に、シャリオンは可笑しくなって笑うのだった。
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