婚約破棄され売れ残りなのに、粘着質次期宰相につかまりました。

みゆきんぐぅ

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執着旦那と愛の子作り&子育て編

安定した後の大変さよ。

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ここは王都にある、シャリオンの屋敷。
ガリウスがシャリオンに暮らしやすい環境と警備を重点的に強化した。
内装は豪華絢爛ではないが上質で落ち着きのある赴きのあるものに囲まれており、とても過ごしやすい。

そんな部屋でシャリオンは落ち込んでいた。
机の書類を前に、手を組み猛省をしているとそのように呆れたゾルが慰めてくれる。
彼は気を使ってくれているのか、あえて口調を崩し話しかけてくれた。

「安定した合図だ。そんなに落ち込むことないだろう」
「っ・・・、・・・、」

それはつまり、ゾルには何故シャリオンが落ち込んでいるか分かってしまっているということで、余計に羞恥を感じた。

「シャリオン。まさかとは思うが、子を成す方法は知っているが、その後は余り知らないのか?」
「・・・知っては、・・・いる」

核を使って子を成すためにかなりの羞恥を耐え学んだ際に一通り話は聞いた。
子を成すためにはどうしたらいいか、核をどうするのか、その後魔力を補給することも。
ただ、安定するまで時間がかかることや、安定後もこんなことになることは聞いていなかったように思う。

あの時は一杯一杯だったが、今思えば講師も可笑しかったような気がする。
『シャリオン様にはまだお早いでしょうか・・・』とか、仕切りに言いながら困惑をしていた。
講師にそんな風にさせてしまうくらい、シャリオンは緊張をしていたのだ。
シャリオンが抱かれる側の事しか教わっていないのもそれが要因である。

「安定するまでは魔力の補給が重要であるのは。でも安定した後こんなことになるなんて。
・・・ジャスミンが言ってたのってこういう事・・・?」

『寝室から出られないでしょう』と言っていたのは魔力枯渇による体調不良だと思っていたが、まさかこんなことになるとは思っていなかった。

「我慢はしない方が良いだろうな。
シャリオンの体の為もあるがあの男がやきもちを焼いて結果面倒になるぞ」
「でも、今朝だって」
「だからその気遣いが余計にあの男が心配する原因だ」
「で、でもね?」

シャリオンはそのを反省しているのだが、ゾルが間違いだと言いたいらしい。

「あの男はシャリオンが思っている以上にお前に執着している。
あの男があの地位になったのも、こんな状況になっているにもすべてお前の為で、シャリオンに好かれたいが為だ。
断言してもいい。
あの男が次期宰相なんて面倒臭いものを務めている、国への忠誠心からではない。
向いている職業ではあるようだから、レオン様に拾われた時点で宰相の道は出来たかもしれないが、
シャリオンの為じゃなければもっと適当にしている。
すべてはお前のために動いているのに、そのお前が仕事次期宰相を理由に我慢をしたらすぐさますべて棄てるぞ?」
「、・・・」
「俺はシャリオンが良ければいいが。
・・・だが、まぁあの男が宰相である方が何かと利便性はあるからな。
出来ればしてもらいたいところだが」

その利便性すらもシャリオンの為である。
シャリオンは小さくため息をついた。

「それに好いた伴侶に朝から迫られて嬉しくない男が居るなら見てみたいものだ」
「っ・・・だから露骨に言わないでってばっ!!」
「ならどういえば良いと言うんだ」
「っ・・・っ~・・・ゾルの意地悪っ
大体!ガリィッ・・・ウスの結界の中にいるのになんでわかるの!」
「俺はあの男の様にシャリオンのすべてを知るために透視やらなにやら習得はしない。
シャリオンの行動を見ていればまるわかりだ」
「っ・・・!」

えっつまり筒抜けってこと・・・!?

そう言い切られてしまい、シャリオンは言葉を発せなかった。
それは今朝の事だった。

☆☆☆

唐突に来る寒気にシャリオンは目を覚ました。
酷く寒くて切ない。
ぬくもりを求めるように手を動かせば、そこにはガリウスが居てホッとしたように無意識に腕を伸ばした。
そんなことをしてしまったのは寝ぼけていたのもあると思う。

暖かさに触れて満足したのはほんの一瞬だった。

すぐに満たされなくて、心音が早くなった。
魔力が枯渇しているとすぐに分かった。
しかし、・・・昨日もたくさんしたというのに、何故もう枯渇しているのか?
そう思うと、すやすやと寝ているガリウスを起こす気にはなれなかった。

「っ」

我慢しなければと、せめて触れるだけで我慢しようとピタリと体をくっつける。
だが、ガリウスが意図的に魔力を流してくれる時とは違い、思うように魔力が流れてこない。

枯渇しているという状況はシャリオンの情緒を不安定にさせる。
なにが悲しいのか分からないが、切なくて耐えきれなくなったシャリオンはガリウスに口づけた。
柔らかくキスを繰り返し、舌を割り込ませちゅうっと吸う。

・・・っ・・・ごめん、がりぃ

寝込みを襲っているのは間違いなくて、欲求と罪悪感が織り交ざる。
肌で触れるよりも断然キスの方が魔力を得られる。
しかし、性交がより魔力を得られることを知っている体は、そのことが浮かぶともう駄目だった。

どんなに自問自答しても「でも、欲しい」とか「だって」とかそんな思考に流れてしまう。

そして数分そんなことを繰り返していると、ふわりと抱き寄せられた。

「シャリオン・・・どうしたんです?」

眠気を含みしゃがれた色っぽい声で名前を呼びつつ、こちらを覗き込んできた。

「っ・・・がりぃ・・・助けて」
「・・・、」
「っ・・・したい」

そう言うと驚いたようにガリウスは目を見開いた。


それからは言わずもがなである。
朝だというのに、ガリウスはシャリオンが望むままに満たすまで願いをかなえてくれた。


☆☆☆


朝の出来事を何度思い出しても反省しかない。
百歩譲って子を核に授かった最中だったからだとしても、朝に起こしてセックスをせがむなんて。
おまけに満たされた後、シャリオンは気絶する様に寝入ってしまい、ガリウスを見送ることさえできなかった。

・・・おなか一杯になって寝る子供か・・・僕は・・・

「こんなのが産まれるまで続くのか・・・」
「そういう考えは良くないぞ」

ゾルの言いたいことが分かる。
思わずシャリオンは自分の腹を撫でる。

「純粋に早く会いたいのもある。・・・けど、ガリウスに迷惑は」
「それが迷惑じゃないと言っている。むしろ迷惑だと思っていることが迷惑だと感じているんじゃないか?」
「けどさぁ・・・朝からって、節操がないというか」
「ならば聞くが、あの男は迷惑そうにしていたか?」
「それは・・・」
「むしろお前に触れて貰えて喜んでいると思うが」

確かにそんなことを言っていたのは覚えている。

「お前が寝ている間にあの男も言っていたが、漸くシャリオンの体に安定したんだ。
今度はその子が無事に生まれて来れるようにたくさん魔力を送ってやれ。
魔力補充もタリスマンなんかじゃなく、せっかくお前達は繋いでいるのだからもっと頻繁に呼ぶことだ。
それに対応するためにもこの距離に屋敷も置いたんだしな」
「・・・うん」
「もう落ち着いたな?」

その口調はいい加減元に戻れと言いたいらしい。
シャリオンはコクリと頷くと、背筋を伸ばした。

「あの男から安心させるために教えてやれと言われたことだが、例の男はライガー殿下が教えることになった」
「え?」
「それと、俺達のうち一人がつくことになった」
「え??」

関わりが無くなることは嬉しいが、まさかライガーが講師になるとは思わなかった。
王族であるライガーなら彼が言う『箔』とやらが付くだろうし断ることは無いだろう。

しかし、ライガーの体調が気になる。傷はふさがったが、流した血は戻せない。
下手したらシャリオンより体調が悪いのではないだろうか。

こちらハイシア家が用意した人間を断るのだから、どうしようもないだろう。
だから正式に王家にサーベル国の英雄に講師を付ける件を辞退した。
理由を説明したところ、大公ライガーの逆鱗にふれたようで。
だったら自分がマナーを付ける方向に話がまとまった」

そもそもが突然シャリオンを指名してくるのがおかしな話なのだ。
一方で彼と話した様子で、貴族の生まれではないことは分かる。だから仕方がないとも思うのだが。
だが、何故ゾルが付くのだろうか。
それが顔に現れていたらしい。

「あの男が俺達を見分けたのも気になる」

確かにそれは気になる。

「なるほど。それで・・・問題の彼は不満はないの?」
「シャリオンではないことに不満はあるようだ。
だが大公に不満があるわけがない。
・・・あの男がどういう理由でシャリオンを指定し、『箔』とやらを気にしている理由も調べてこよう」
「あんまり無理はしないようにね」
「出来ないことはしない」
とは言わないんだから」
「こちらのことは任せて置け。シャリオンにはシャリオンのすべきことがあるだろう?」

そう言いながらゾルは笑うのを見ながら心配していると話を逸らすように時計を見だす。

「それよりもシャリオン。そろそろ時間じゃないか。
試しに呼んでみたらいい」
「っ~・・・」


随分と簡単に言ってくれると恨みがましく思っていたが・・・。
結局朝の様にガリウスに甘えることになるシャリオンなのだった。
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