婚約破棄され売れ残りなのに、粘着質次期宰相につかまりました。

みゆきんぐぅ

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執着旦那と愛の子作り&子育て編

え・・・叱られたい人?(困惑)①

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朝。
ガリウスの腕に包まれて目覚めた。
小さく欠伸をしながら見上げれば、ガリウスはまだ夢の中のようだ。
何時だってガリウスの方が起きるのが早いのだが、余程疲れがたまっているのだろう。
シャリオンにブランケットを掛けるためなのか、出てしまった肩にブランケットをかけなおした。
その表情を見ながら自然と視線が下がっていった。

まだ自分の中にはいない存在に目を向ける。

ガリウスは騒いでるとと言っているが大丈夫だろうか。
それは、ガリウスもだし子達もだ。

そろりと手を伸ばしてガリウスの腹のあたりを撫でると、ガリウスがピクリと動いた。

「・・・ん・・・シャリオン・・・?・・・おはようございます」
「起こしてしまった・・・?まだ寝てて良いよ」
「っ・・・、・・・違いますよ。・・・急に子達が貴方の気配に喜んでるようです」

欠伸をし、まだ気だるげな様子にドキリとしつつも、すぐにいつものガリウスになって行く。

「昨日しばらくは私だと言ったのですがね」
「・・・それは難しいんじゃないのかな?」

言ったと言うのは腹の子に?
シャリオンの周りに小さい子供はいたことがないが、まだ話せなもしない子供たちにそんなこと分かるのだろうか。

「大丈夫ですよ。兄の子達もそうでしたが、何より貴方の血を引き継いだ子達ですので、聞き訳は良いです」

聞きようによっては親バカな発言だが、可笑しくて笑ってしまう。

「でもそれって、生まれて少しは立った話じゃ」
「3歳なんて、0歳が多少成長したくらいなのですから変わらないでしょう」

その言葉に苦笑した後におなかのあたりを撫でたままガリウスを見上げる。

「もう僕大丈夫だけど」
「いいえ。まだ駄目です」

そう言いながら瞼に口づけられた。
それは嬉しいのだが、・・・なんだかそれはレオンの過保護の様でじっとりとそちらを見るシャリオン。
しかし、そんな様子のシャリオンに気付いたガリウスは苦笑を浮かべて、脇の下に腕を入れられると抱き寄せられると、腹の上にシャリオンはのせられた。
例え上にのったとしても子には影響ないのだが、こんな事をされたのは初めてだ。

「うわっ・・・・ガリィ・・・?」

ガリウスの上で慌てるシャリオンに笑みを浮かべながら後頭部を撫でる。

「婚約の時には、私の方が適任だと言って下さったのはシャリオンだと思いますが。
・・・それとも私では不安ですか?」

これは嫉妬というよりシャリオンの事を思ってくれてるのだと思い、首を横に振った。

「世界で一番安心な場所だと思ってるよ。
そうじゃなくて、ガリウスは慣れてないだろうから大変ならと思っただけ」
「今日も休みです。なので私が見ます。
それに、・・・こんなことを言っておいてシャリオンには悪いのですが」
「ん?なに?」
「実は貴方に叱られたい人がたくさんいるのですよ」
「え?」

そう言いながら、ガリウスは苦笑を浮かべながらも怒りを感じた。
勿論はシャリオンに向けられたわけじゃないのは分かっていて、一体誰なのかと思いつつもシャリオンはむくりと起き上がった。

「良くわからないけど、それなら行きたいところがあるんだ」
「子のことで安心出来たらもう次の事ですか?」
「え?・・・あ、ごめん。ガリウスにも心配かけたと思うんだけど」
「大丈夫ですよ。私は一番に貴方に時間を頂けたので。
それに、叱られたい方々はおそらく貴方が気になっている事です」
「え??」

謝りたいというのならまだわかる。
何故叱られたいのか良く意味が分からなかった。

☆☆☆

それから二人は起きると着替えなどの準備をし朝食を取った。
食後にすっかりお気に入りになった庭園で休んでいると、執事がやってくる。

「・・・?」

ふと、いるはずの人間が居なくて、周りときょろきょろと探していると声を掛けられた。

「シャリオン様。ガリウス様。お客様がお見えになりました」
「わかった。サロンに向かうよ」

こんなに早くに来るとは思わなかった。
少々お驚きつつも、思い浮かべている人物たちであれば、それも仕方がないだろう。

と、そんなことを思って行ったのだが。

・・・
・・


入って早々に姿が見えたのはシャリオンの気になっていた人物達だ。
それが分かるガリウスは流石と思った時だった。
その2人、・・・ディディとジジはシャリオンの元に駆け寄ってくると、足元に片膝をつき頭を垂れた。

「!?」

思わず驚くとガリウスはそんな彼等に、ため息をつきつつシャリオンを支えてくれる。

「今は私に子がいるからと言ってシャリオンを驚かせないでください」

怒気を孕んだ声でガリウスが言うと、ディディは一瞬びくりと体を震わせたがすぐに視線をあげないままシャリオンに謝罪を述べる。

「っ・・・ハイシア様っこの度は申し訳ありませんっっ」
「ディディ殿・・・頭を・・・!?ジジッ怪我しているじゃないか!」

咄嗟のことで驚いていたのだが、よく見ればジジは包帯を巻き、首や頬・・・いたるところに治療の跡がみられる。
捕えられていた時は、薄暗く怪我の様子は見えなかったが、ここまで酷いとは思わなかった。
治療はどうしたのだと、困惑してガリウスに振り返ろうとしたのだが、すぐにジジの声が聞こえて来てそちらに視線が戻った。

「シャリオンッ・・・様!申し訳ありませんッッ」
「!・・・ジジ・・・ディディ殿も顔を上げて下さい」
「っ・・・しかし」
「シャリオンが上げて良いと言っているのですよ」
「ガリィ・・・」

視線で止めると、ガリウスは面白くなさそうに眉を顰めた後、彼等に視線を戻す。
それだけガリウスは怒っていると言う事だ。
そう考えるとあまり言えないのだが、彼等の所為ではない。
ジジとディディが立ちあがったのを見ると、ソファーへと案内をする。
シャリオン達も席に掛けると、執事を呼び治癒を行える魔術師を呼ぼうとしたのだが・・・。

「私は、大丈夫です。これは、私の弱さだから」
「んん??」
「・・・彼はそう言って治癒をずっと断ったのですよ」

ガリウスのその言葉に思わずディディを見たのだが・・・。

「ジジがそう言うなら私に止めるっことはありません。
それに・・・私もジジを守れなかった。
・・・この姿にしたのは私だ。それを胸に刻みます」

そう言うディディにジジが首を振った。

「違う!私が、ディディ様の足を引っ張ったから・・・!」

ジジはあの男の人質にされていたのだが、それ以上のことはあの時に聞ける余裕はなかった。
話しが見えてこなかったが、彼等が主犯ではないことは明らかであり、『気にしないで』と、言おうとしたのだが。

「シャリオンにはそれでは通じませんよ」
「っ・・・そうですね」

ガリウスに言われて、ハッとしたディディは息を飲んだ。
そして、もう一度シャリオンに視線を合わせると、ゆっくりと話してきた。
出来事を思い出してから辛そうに話し始めた。

「・・・あれは・・・アルアディア国での建国祭へ向かう3日前の出来事でした。
準備に奔走している間にサーベル国からの一隻の船が島の港に立ち寄り、すぐに去っていきました。
港の者によるとこの海域周辺で遭難事故にあった者らしく仲間を探していたため1人だけ入港を許可したと聞いています。
私も準備に走りまわっていたので・・・それほど気に留めてはいませんでした。
しかし、・・・その日の夜にジジが・・・行方がつかなくなりました」

ディディの声は詰まった後、辛そうにジジを見つめる。
聞いているこちらも、怒りで震えそうだった。
ジジからは聞いていないが、あの男が面白可笑しく言った言葉は許せるものじゃなかった。
すると、ガリウスがシャリオンの手にそっと手を添える。

「私は他の神官に準備を頼み、・・・彼を探しに行きましたが港にも街にも、神殿にもどこにも居ませんでした。
あの島には後あるのは鉱山のみ」

シディアリアに鉱山があるのは有名だ。
ただ、その鉱山で取れた鉱物は輸出出来るほどの採掘量はなく、自分の島で消費していると聞いている。

「鉱山とは・・・実は表向きなものです」
「!」
「あの鉱山の中は古代に滅びた国の城があります」

まさか、あの古城が鉱山の中にあるとは思わなかった。
そして、滅びた国があると言う事も。
今のシディアリアは国ではない。
しかし、そこに息づく彼等はその国の子孫という事ではないのだろうか。
気になりはするが、今はジジの話の方が気になる。

「その古城は封印され、立ち入りが出来ないようになっており、外から開けることは出来ません」

それは、ガリウス達があの扉を開けられない理由であった。

「しかし・・・つまりジジはそこに居たという事ではないのか」
「いいえ。入れないためなのか、その前に捕らえられておりました」
「・・・?」
「男はどこであの古城の存在を知ったのか、開けろと言ってきました。
封印されているため開けられないことは話したのですが・・・話が通じる相手ではありませんでした。
男は・・・ジジを盾に開けなければ殺すと脅してきました。
私はあの男を見抜けずこそ泥の類なのかと思い、捕縛の魔法を掛けようとしました。
我らは争いの魔法を使が、捕縛は別です。
・・・しかし、彼には効かず、それどころか逆鱗に触れてしまい、・・・ジジには隷属の魔法が掛けられました」
「っ」
「・・・それから、ジジに命じ自分の頸動脈にナイフを当てさせ、私に開けさせるように命じてきました」
「・・・!」
「私は・・・あの島の・・・シディアリアの司祭として、あの城の封印を解いてはいけない立場でありながら・・・、・・・私のパートナー・・・伴侶であるジジを見捨てることが出来ませんでした」

聞いているシャリオンには、ディディが間違ったことをしている様には思えなかった。
しかし、2人とも表情は厳しいままだ。
それはこれから起こることなのだろうか。

「ごめん、・・・なさい・・・」

ポロポロと涙を流し自分を責めるジジ。ディディはそれに首を静かに横に振った。

「あの城の入口を開けるには、・・・この魔法石が必要です」

そう言ってディディが机の上に置いたのは、シャリオンがシディアリアに転移する切っ掛けとなった、青く美しい魔法石だった。

「これは・・・転移石ではないのですか?」
「正確には違います。・・・私はこの魔法石を使い、扉を開けると男は何かを探すために来た様でした」
「探し物?」
「結果から言うとこの魔法石を求めてあの古城を開けさせたようでした」

確かにこの石は国を超え海を越えて転移することが出来る石だ。
あの男も欲しがるだろう。

「・・・危険な・・・争いが起きそうな石だ」

そう言うと、ディディは少し固まった後、コクリと頷いた。

「はい。・・・しかし、この石は誰しもが使えるわけではない。・・・少なくともあの瞬間ではシディアリアでも限られた人間にしか使えませんでした。
ただ魔力が高いだけでなく、魔法技術も要する。
つまり、あの男がこの石を欲したとしてもただの青く煌めく石に過ぎない。
私はその事実を告げ諦めさせジジの解放を訴えました。
しかし、・・・男は・・・恐ろしいことに・・・建国祭に参加する私に・・・貴方を攫い・・・狼を連れて来いと命じました」
「!」
「人を攫ってくるなんて、そんな非人道的なこと・・・出来ない。
それにハイシア様は私達の島でも名と力の大きさは届いていましたので、無理だと言ったのですが・・・男はハイシア様にお子がいることを理由に司祭として祝福する体裁で近づけと。
・・・その頃はお名前しか存じ上げませんでしたが、子がいる人間を攫って来いなどとどう聞いてもただ事ではありません。
子は等しく愛されている。
私達は絶対に争いには屈しない。その種にもならない。
そう・・・幼いことから教えられているのですが・・・っ
・・・男は私がいつまでも頷かないことに苛立ち、・・・ついに・・・ジジに手を上げたのです」
「・・・・っ・・・っ」

辛い思い出に、ジジの嗚咽が響いてくる。

「私達は・・・争いごとが不得意です。
特に暴力には・・・。
男が無表情で無遠慮に繰り出す暴力に、私は恐怖に動けなくなりました。
・・・幼い頃からの教えにも勝てなかった。
だから・・・私は貴方が悪徳貴族であることを願いながら、・・・あの男の要望に応じたのです」
「・・・ディディ殿」

シャリオンをまっすぐ見て、もう一度頭を下げた。

「この度はお子の大切な時期に申し訳ありませんでした。すべての責任は私にあります」
「っ・・・ディディ様!」
「どうか、私に罰を与えて下さい」
「私もっ・・・私があの人を港で助けなければっ」

そう言って、ジジがこちらに訴えてくる。
その日、ジジは港の近くにある商店に立ち寄っていた。
用事を終わらせ、戻る道中にジジは攫われたのだ。

『罰せ』とは彼等なりの道理なのかもしれないが、シャリオンは首を横に振った。

「そんなの要らないよ」
「っ」
「今の聞いて何故2人に責任を取ってもらうってなるのか、僕にはわからないよ。
これがアルアディアに損害があったならまだしも、僕個人にしかないでしょう」
「「!」」
「それに、むしろ君たちは被害者。
我が家を陥れようとした悪党に目を付けさせてしまった。
僕が貴方達に謝る方だ。
・・・この度は、ハイシア家が」

そうシャリオンが謝罪をしようとしたところだった。
ディディが立ちあがってそれを止める。

「っ違います!・・・今回はたまたまハイシア家だっただけだっ
あの城の情報やこの石が・・・あの男に知られているという事は、次がまたあると言う事です!!!」
「・・・、」
「ハイシア様も仰られたでしょう?『危険な石』だと」

そう必死にディディは訴えてくる。
謝罪は断固として受け取ってくれないらしい様子に、シャリオンはいぶかし気に眉を顰める。
受け取ってもらえないことに、と言うよりあまりにも頑な理由が気になってだ。

彼等はこのような形になってしまったが、幼い頃から争いごとをしてはならないと教え込まれている。
も植え付けられていて、だから今回それを破ってしまったこと、そして自分達が一番信仰している神の大切にしている『子』に危害を加えそうになった事実が許せないのだ。

しかし、シャリオンにも『彼等が悪い』という事が頷けなかった。
彼等が謝罪を受け取ってくれないように、シャリオンもまたディディ達の謝罪を受け入れたくない。
困ってしまったシャリオンは思わずガリウスを見たのだが、ここに来て初めてニコリと笑みを浮かべた。


「安心してください。彼等にはという形で、魔法設備を頂きましたから」

『流石ガリウス。すでに動いてくれていた』と思ったのだが、思ってもみない内容に、焦るシャリオン。

「・・・。いや。なんで、謝罪する方が魔法・・・設備?を受け取るの???」
「仕方ないでしょう?ディディ殿達も謝罪したい、ハイシア家・・・特に貴方は絶対にこの話を聞いた時に謝罪をしたいと言い出すと思いましたので」

そこまでわかってくれるのは嬉しいが、それとこれは別ではないか。
むしろ、こちらが謝罪を受け取っているようにしか聞こえない。

「駄目だよ。ガリウス。それはお返しして」

謝罪する方の立場なのに何故そんなものを受け取ったのか。
そう思ったのだが。

「駄目です!もう道具はハイシア領の方に送ってありますし、ハイシア家の魔術者には技術を教えております!」

そう言ったのはディディだ。
思ってもみないことに、ガリウスに振り返る。

「え、領?」
「はい。言ったでしょう?『』と」
「確かに・・・言ってたけど、何をしてもらったの・・・?」
「転移の魔法設備を作成する技術を授けてもらいました」
「・・・え?」
「ずっと欲しいと思っていたのですよ。王都からハイシア領は遠すぎるので」
「いや・・・そうじゃなくてね・・・?」
「転移の魔法石はその国の中でしか使えないという利用制限と、回数は使い切りと言う制御が掛かっています。
流石に他国への制限解除は争いになりますので、回数において制限を取ってもらいました」

シャリオンが聞いているのは性能の話ではないのだが。
今度はディディの方に視線を向けると、彼は苦笑を浮かべている。

「これしきお安いです。
・・・と、言いたいところなのですが、実際制限を外す方法を導いてくれたのはハイシア家の方です」

その回答も若干違うのだが、もっと不思議なことを言われた。

「え・・・?」
「あの方はこの石も難なく使いこなせ、中の文字は読めなくとも仕組みには見当がついたようで。
使用魔力を最大限に下げさせ、かなりの大人数を移動可能とさせましたから。
・・・流石に、この石をお渡しすることは出来ませんし、その移動可能人数を上げたのもあれっきりの一回だけにしてもらいましたが」

シャリオンが助け出された時に、たくさん見知った顔・・・というか、声が聞こえたのは幻聴ではなく確かにあの場所にいたらしい。

それを考えても、そんな石危険すぎる。
だが、ディディもジジも、・・・そしてガリウスも。
その移転の魔法技術を貰うことになんとも思っていないようで、ついにシャリオンは苦笑した。

「これじゃ僕が謝罪したことにならないと思うのだけど」
「シャリオン・・・様。・・・えっと、そう!伴侶様とお子様と幸せになって下さい!
私達はそれが一番の望みですっ」

シャリオンの困った声色に、ジジが慌ててそんなことを言った。

「様は要らないって言ったでしょう?・・・もう。・・・でも、本当に良いのかな?」
「大丈夫。ディディ様がそう言ったなら、転移の事も平気。ですよね?」
「えぇ。さっきも言いましたが、この国内でという制限は外せませんが・・・それ以外であればこの国で好きに使ってください」

本当に良いのだろうか?と、思いつつも正直なところ、ハイシア領と王都が結ばれるのはとても嬉しい。
そうすれば、ガリウスと離れ離れにならなくて済むのだから。

・・・
・・


それから、彼等は仕切りに何度も謝りながらも、宿泊施設に戻っていった。
子をシャリオンにうつすのはとりあえず明日となり、また来てくれるらしい。

ひと段落ついたシャリオンはソファーに沈んでいると、ガリウスが手をつないできた。

「お気に召しませんでしたか?」
「転移の装置が出来るのは嬉しいよ?・・・けど、ジジだって辛い思い沢山したんだ。
・・・見たでしょう?あの傷」
「・・・えぇ」
「それに、・・・傷・・・だけじゃないんだ。ジジは・・・あの男に」
「・・・、」
「ねぇ。ガリウス。あの男はちゃんと捕えられたんだよね?」
「えぇ。裁きはサーベル国の法律で行われますが、彼はもう二度と陽の光を浴びることは無いでしょう」
「・・・っ・・・それなら、いい」

ジジが逆恨みされなければいい。
ガリウスの言葉にひやりと冷たさを感じながらも、自分を言い聞かせるようにうなづくと、ガリウスはそっと肩を抱き寄せた。

「すみません。・・・少々言葉を選び間違えたようです」
「そんなこと。・・・大丈夫。
彼はシディアリアの人間に暴力を振った。僕にだって。だから当然の事・・・なんだから」
「無理しないでください。・・・貴方も本来争いごとは好きではないでしょう?」
「・・・。・・・うん。・・・、・・・ガリウス」
「はい?」
「・・・それでも、僕に話を聞ける場をつくってくれて、ありがとね」

そう言うと、ガリウスは驚いた後に苦笑を浮かべた。
今日の話の場は、ガリウスがやろうと思えばなくせたはずだ。
そして、自分がまだ子を見ると言った理由もわかった気がした。
核は安定したがシャリオンの中に戻されたら、情緒が少々不安定になるのは分かっていることだし、何よりも魔力を欲してしまう。
そうなっては話も聞けなくなってしまうからだ。

「いいえ。・・・今日はまだ叱られたい人が来ますから。
・・・でも、疲れたら教えて下さいね?」

そう言ってガリウスはほほ笑むのだった。

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