鬼姫は今度こそのんびりしたい。

さちもん

文字の大きさ
20 / 36
二章

閑話(眷属点呼回)

しおりを挟む
「ところで、眷属達の安否は何となく全員分かるのだけど、点呼してもよいかしら?」
ある日の午後、エレオノーラ様が仰った。
私と妻のアウローラは屋敷内外で眷属達に念話を送り召集することにした。
一段高くなった上座に座る姫様の前に座り頭を垂れる眷属達。
声をかけると、皆が頭を上げた。
「前鬼ベルナルド御前に。」
まずは私から。
「後鬼アウローラ、御前に。」
前世でも妻であった彼女が続く。
「茨木チェチーリナ御前に!」
元気よく笑顔での挨拶。
「ははは橋姫べべベアトリーチェ、おお御前に……。」
おどおどしているのはいつものことだなと安心した。
「千方サヴェリオ御前に。」
こちらも若干挙動不審だが身綺麗になっていてよかった。
「羅刹!ラファエロ!御前に!」
脳筋メンバーの一人だ。誰かの導きが必要な者の一人。
「霊姫アルベルティーナ御前に。」
今後の生活に彼女と
「夜叉ルクレツァ御前に。」
彼女の術は欠かせない。
微笑む姫様に次々と名乗る眷属達。
ふと扉の向こうからよく知る気配とノック。
「紅葉グリゼルダもおりますわ。」
公爵家の領地に出向いているはずの彼女が勢いよく扉を開いて入ってきた。ということは、
「もちろん、私、八瀬アルフォンスも御前に。アルベルティーナほどではありませんが身代わりを置いてきましたのでご心配なく。」
抜目ない奴である。ふと後方に空間の歪み。
異空の穴から現れたのは大柄の男と子供、そして、華奢な体の女。女の姿からこの世界でいうところのエルフか。
「阿久良!参上!」
大柄の男が方手を上げて大声を出す。
姫様が驚いているだろうが!
「いてっ!」
その頭を殴る子供とエルフ。
直ぐ様男を跪かせた。
「御無礼を。箍丸ヴァレリオ、御前に。これは阿久良ことクラウディオと申します。」
頭を下げる子供と押さえつけられている大男。
「は、………般若ヴィオレッタ……です。御前に。」
華奢な娘が筋骨粒々だった般若?!
皆がざわめく。本人もかなり照れている。

「いないのは、旦那様と酒天と阿蘇姫と宿儺……、温羅、清姫、鬼髪かしら?」
姫の声に震える手をあげる者がいた。
「ベアトリーチェ、どうした?」
「あああ阿蘇姫は、この世界での素材採取に夢中になっていると思います。」
皆が毒のスペシャリスト阿蘇姫を思い浮かべた。
「けれど、姫様の召集にそのような理由での遅刻は許されなくてよ。」
妻の言葉に呼応するように異空の穴から飛び込んできた一人の娘。
「姫様!ごめんなさい!遅れました!」
勢いよく頭を下げた娘の後頭部に牙のあるオオサンショウウオのような魔物が噛みついていた。
流血もしているが……。
「阿蘇?大丈夫なのか?頭になんか付いてるよ。」
チェチーリナが呆れた口調で言う。
「えっ?あぁ、大丈夫。今、こいつの毒を解析中なだけだから。もう終わる。」
毒のある魔物だったのか。阿蘇姫は毒、つまり薬に対する探求心が強い、強いというか毒を愛している鬼だ。
常に未知の毒を追い求めている。
新たな世界は彼女にとって輝いて見えているだろうが。
「毒の解析が終わったら直ちに身なりを整え、再度御前にいらっしゃい。姫様は臭いのと汚いのを好みません。」
妻の言葉にハッとなって慌てて部屋を出ていく阿蘇姫。
「あら、阿蘇の名前を聞きそびれたわ。」
おっとり口にした姫の言葉。

驚くほどの短時間で身なりを整えてきた阿蘇姫は自身をフィオレンティーナと述べた。
「旦那様の行方が心配でございます。」
「そうね、でも……旦那様は必ず私の元へ来てくださるわ。酒天と温羅は何処かで魔物と戦ってそうね。鬼髪はちょっと心配だわ……泣いてないかしら。」
くすりと笑う姫様。
あの、脳筋共めっ、姫様に余計なご心配をお掛けするとは!後でしめなくては。
確かに鬼髪は心配だと皆が頷く。
「宿儺は……何か心配してないのよね。」
あやつは、要領が良いからな。飄々として掴み所がないが、まぁ、捨て置いてもよいだろう。
「清姫のことも心配しないでね、彼女には、ちょっとばかし動いて貰っているの。」
姫様の命を直接受けるなど羨ましい!皆の心がざわめいた。現在のヤツの姿は知らぬがドヤ顔をしていることだろう。
「まだちゃんと揃ってないけれど、皆が無事、受肉できたこと、エレオノーラは嬉しく思います。これからもよろしくお願いするわね!」
まだ少女と言って良いエレオノーラの体に合わせたのか姫様の笑顔は心から美しく可愛らしいものだった。


2025/11/02/08加筆訂正 名前だけですが、仲間が増えました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜

伽羅
ファンタジー
 事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。  しかも王子だって!?  けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。  助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。  以前、投稿していた作品を加筆修正しています。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

聖女として召喚された女子高生、イケメン王子に散々利用されて捨てられる。傷心の彼女を拾ってくれたのは心優しい木こりでした・完結

まほりろ
恋愛
 聖女として召喚された女子高生は、王子との結婚を餌に修行と瘴気の浄化作業に青春の全てを捧げる。  だが瘴気の浄化作業が終わると王子は彼女をあっさりと捨て、若い女に乗 り換えた。 「この世界じゃ十九歳を過ぎて独り身の女は行き遅れなんだよ!」  聖女は「青春返せーー!」と叫ぶがあとの祭り……。  そんな彼女を哀れんだ神が彼女を元の世界に戻したのだが……。 「神様登場遅すぎ! 余計なことしないでよ!」 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※他サイトにも投稿しています。 ※カクヨム版やpixiv版とは多少ラストが違います。 ※小説家になろう版にラスト部分を加筆した物です。 ※二章に王子と自称神様へのざまぁがあります。 ※二章はアルファポリス先行投稿です! ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※小説家になろうにて、2022/12/14、異世界転生/転移・恋愛・日間ランキング2位まで上がりました! ありがとうございます! ※感想で続編を望む声を頂いたので、続編の投稿を始めました!2022/12/17 ※アルファポリス、12/15総合98位、12/15恋愛65位、12/13女性向けホット36位まで上がりました。ありがとうございました。

【完結】前提が間違っています

蛇姫
恋愛
【転生悪役令嬢】は乙女ゲームをしたことがなかった 【転生ヒロイン】は乙女ゲームと同じ世界だと思っていた 【転生辺境伯爵令嬢】は乙女ゲームを熟知していた 彼女たちそれぞれの視点で紡ぐ物語 ※不定期更新です。長編になりそうな予感しかしないので念の為に変更いたしました。【完結】と明記されない限り気が付けば増えています。尚、話の内容が気に入らないと何度でも書き直す悪癖がございます。 ご注意ください 読んでくださって誠に有難うございます。

転生メイドは貞操の危機!

早桃 氷魚(さもも ひお)
恋愛
クララは乙女ゲームの世界に転生した、モブのメイド。 最推しキャラの公爵令息、ロルフのメイドとして、不幸フラグを折りながら、天使のように愛らしい推しを守ってきた。 ロルフはクララに懐き、魔法学園に入学するときも、離ればなれになるのを嫌がるほど。 「帰ってきたら、ずっと一緒だからね?」 ロルフとそう約束してから三年後。 魔法学園を卒業したロルフが、ついに屋敷へ戻ってきた! だが、クララの前に現れたのは、 かつての天使ではなく、超イケメンの男だった! 「クララ、愛している」 え!? あの天使はどこへ行ったの!? そして推し!! いま何て言った!? 混乱するクララを、ロルフはベッドに押し倒してきて……!? ----- Kindle配信のTL小説 『転生メイドは推しを甘やかしまくった結果、貞操の危機です!』 こちらは番外編です! 本編よりずっと前の、推しがまだ天使だった頃のお話です。 本編を知らなくても読めます。

あなたが決めたことよ

アーエル
恋愛
その日は私の誕生日パーティーの三日前のことでした。 前触れもなく「婚約の話は無かったことにしよう」と言われたのです。 ‪✰他社でも公開

処理中です...