鬼姫は今度こそのんびりしたい。

さちもん

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三章

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落ち込んでいたライルにとって久しぶりの学園の話題は休んでいる自分のことよりも1人の少女。正妃から叱責を受けた原因の呪いを克服した少女だった。
ユミリィはどうしてシャルロッテのことを気にするのかと尋ねてみた。あの可愛いらしく、聡明であると評判のよい少女のことを。
「君に掛けられた呪いを解く手がかりを彼女が持っているんじゃないかと思ったんだ。」
ライルの言葉にユミリィがハッとした。
言われて思い出す自身の呪いの存在。
ユミリィはライルの気遣いが嬉しくなった。

大穴から現れた邪竜の呪いを跳ね退けたと噂の令嬢。
「私の呪いを解くヒントに?」
うなずくライル。取り巻き達もユミリィの呪いが解けるのも遠くないはずだと盛り上がっていた。
正直、彼らもユミリィが呪われたままなのは精神的によろしくない。出来れば距離を置きたいが、公爵家の継承印を宿している限り、自身の将来のためにも去るわけにはいかなかった。
下手にユミリィに関わって自分が呪われてでもしたらと思っているのだが、王家からユミリィとライルの婚約が結ばれたと発表されたことで正式に公爵家を継ぐのは、やはりユミリィなのだと確信していた。

ある日の放課後、シャルロッテは生徒会室に呼び出された。
許可を得て扉から入ってきた彼女を見てライルは息を飲んだ。
噂では聞いていたし、遠目で確認もしていた。
第二王子の側近候補と噂されている令息と親しい令嬢。
ライルは準成人と聞いていたこともありまだ幼い少女だろうと思っていた。
しかし、小柄ながらも王族を前に凛と立ち、美しい紫の瞳を真っ直ぐ向けた令嬢がいた。
「お初にお目にかかります、ロイエンタール辺境子爵の娘シャルロッテ・ロイエンタールと申します、殿下。」
声すらもライルを魅了した。
「……殿下?」
副会長に声を掛けられ、我に返った。
「あぁ、失礼。ロイエンタール嬢には、聞きたいことがあってね、」
ソファを薦められる。
出された紅茶の香りは豊かで、シャルロッテの故郷で栽培されている茶葉だと分かった。
口角をゆっくり上げて満足そうな微笑みを浮かべるシャルロッテに見とれている生徒会の男子メンバー達。
14歳の準成人を迎えたばかりの少女に何をと思ったのだろう、女生徒の咳払いでライルは我に返った。
「君が呪いを解いた経緯を教えてもらいたいんだ。私の婚約者も呪いを受けているんだ、解呪の手がかりにならないかと思ってね。」
シャルロッテは眉尻を下げて言った。
「インフェ伯爵令嬢の呪いのことですね。」
辺境の地にも悪魔召喚や呪いのことは届いているらしい。
「……国の解呪師が解けない呪いであり、呪いをかけた悪魔も既に帰った後で、呪いの内容も不明とあれば、手立てはありませんよ。」
きっぱりと言う令嬢にライルを初めとした皆が目を見開く。年齢にそぐわぬ強くも冷たい言葉だった。
「王都から出なければよろしいのでしょう?でしたら、大人しく王都で過ごしていればよいのです。」
紅茶を一口飲む所作も洗練されていた。
これが14歳の少女なのかとライルも生徒会メンバーも息を飲んだ。
「しかし、ユミリィは将来公爵家を継ぐ者として、王都から出る必要もあるだろう?」
ライルの言葉にシャルロッテの動きが止まった。
音が出ないのが不思議な早さでカップがテーブルに置かれた。
「私の呪いは邪竜によるもので、邪竜は私の中で生きておりました。邪竜の目的は辺境及びこのラーネポリア王国の国民の命。大穴から出たにしては野心のある魔物でした。」
大穴から出てきた魔物はただ目の前にある物、人を壊すだけの意思しかないと言われていた。建国以来、野心を持っていたと言われるのはロイエンタール辺境伯領に現れたこの邪竜だけであると言われている。
「意志があったからこそやりやすかったともいえますが、家族は私を諦めなかった。故の偉業なのですよ、殿下。インフェ伯爵令嬢様の家族はどうなのでしょう?父親であるインフェ伯爵は、実家の公爵領で蟄居。母親である夫人は自身も呪われているというのに、そのことを忘れたかのようにあちこちで被害者ムーブを展開中とか、そのような方々の娘が果たして“愛”によって呪いを克服できるのでしょうか。」
辛辣な言葉であった。

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