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三章
シャルロッテ②
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「王都の学園に行きたいだって?!」
シャルロッテの願いに皆が反対した。せっかく生まれ変わったかのように健康になったのだ。家族はもっと娘、妹と過ごしたかった。
「王都にはキース兄様が居られますし、先週王都に戻っていったマデライン姉様も居られます。それに、」
ヒラヒラと数通の手紙を見せる。
「インフェルン公爵令嬢であるエレオノーラ様が心配でなりません。」
夢渡りでつながりを持ったエレオノーラという令嬢。
そのつながりがなければ、この令嬢を選ばなかったとシャルロッテの新しい魂は思う。
「エレオノーラ様が受けてきた屈辱、そして現状を知らしめる時が来たのです。」
シャルロッテの強い言葉に家族は、本当に元気になったのだなと、また泣き笑いの顔になった。
この態度からも分かるように、辺境一家は家族(領民)第一主義である。
「にしても、エレオノーラ様が受けてきた屈辱とはなんだ?」
握りこぶしを作って力強く言う娘に、父子爵が尋ねた。
随分前にインフェルン前公爵から、シャルロッテに依頼があった。
夢渡りという固有魔法を持っていたシャルロッテは、本来なら国が保護して、魔法の行使については国の許可が必要だった。
ただシャルロッテは子供であり、夢渡りの固有魔法が発現してまもなく邪竜の呪いが強くなり、固有魔法を押さえつけている状態で夢渡りの能力は使えないと判断され国の保護は受けられなかった。
呪いを恐れて王都の専用機関の専門家は辺境領に来ることもなあなあと躱して、国王の命令で漸く一人だけ派遣されたが、その時には呪いは完成されていた。
もし、あの時、国がいち早くシャルロッテを保護してくれていたら娘にかけられた呪いの発動は抑えられたのではないかと辺境一家は思っている。
そんな考えのある辺境伯は、シャルロッテの能力に藁にもすがる思いで手紙を送ってきた前公爵を無碍に出来なかった。
また、国で保護をしている夢渡りは誰もが高齢であり、魔法の行使は命を削る行為と見なされ安易な使用は禁止されており、シャルロッテしか頼れなかったのだとも理解できた。
インフェルン公爵領が大規模瘴気玉災害に見舞われた後、避難のため領地外に出た領民の中に倒れたり、酷い場合は息絶えたりする者が続出した。原因は領内外の魔素濃度の差にあった。差が生まれたのは、見えない壁のようなものが張り巡らされていたから。
救援のため訪れた王立騎士隊の隊長格であっても公爵領に入った数日は体が重く、魔術を使えないような状態になってしまう。元々領地内にいる者には逆の体調変化が起こっており、酷い場合には死者も出たため、公爵領の住人は実質、領内に閉じ込められたことになった。
そんな経緯もあり、後継であるエレオノーラの情報は後見人のガイナスの便りでしか知ることが出来ず、孫娘との連絡方法がなかった前公爵は藁をも掴む思いで依頼してきたのだった。
ちなみに公爵領にて必死に働いていたユミリィの兄ダグラスは元々魔力保有量が多く、魔力コントロールも巧みだったため、王都に向かう5日間、馬車の中で寝込むくらいで済んだ。また、領外からきたアルフォンスとグリゼルダは、そんな事情があることを2人の記憶から分かっていたが、上手いことごまかしている。
息子であるガイナスの動きを怪しんでいた前公爵は国王から渡された返信用の封筒にエレオノーラのことを相談した文を紛れ込ませた。王家の印の付いた封書ならガイナスであっても中を改めることは出来ないと考えたからだ。
公爵夫妻の一粒種であるエレオノーラのことを気にかけていた国王夫妻は前公爵と文書のやり取りを内密に開始。頼りになるはずの第三王子ライルは、噂に流されたかのように真実とは到底思えないエレオノーラ像を伝えてくる。そんなやり取りが続く中、シャルロッテの夢渡りならエレオノーラ本人と連絡がとれるとの考えに至った旨が辺境伯爵宛の手紙には書かれていた。
高位のインフェルン前公爵の願いとガイナスと第三王子からの報告を怪しんでいる王家も、シャルロッテにお願いをしてきた。
もちろん邪竜のことで子供のシャルロッテに余裕などないことは分かっているので、断ってもいいし、使うとしても力も安定していない子供であるシャルロッテの負担にならない程度の力の行使に限ってとの注釈付きだった。
よほどエレオノーラのことが心配なのだろうとは理解したが、ロイエンタール辺境一家も彼女自身も依頼は断るつもりだった。
しかし、邪竜が邪魔をした。
『面白そうだ。』
と。
シャルロッテの夢渡りの能力を邪竜の力で押し上げ、夢渡りの中でエレオノーラのことを知ることは出来たが、彼女が受けている災難を他者へ伝えることは邪竜に制限され伝えられなかった。
邪竜の気まぐれである。
『あれは、いずれ死ぬ子供だ。お前が伝えたところで何も出来ん。俺には見えるぞ!お前の力は夢を通り、ついには未来を見る力となるだろう!それで見たぞ!あの子供は死ぬ。国も滅ぶ!お前には何も出来ん!あぁ、愉快だ!』
ただでさえ邪竜の呪いを解くことに全集中すべきだったが、邪竜の気まぐれで夢渡りをすることになった。
このことはシャルロッテの気力を奪うきっかけにもなった。抵抗むなしく夢渡りの能力を使わされ、更に未来視を重視した邪竜に操られる未来に。
シャルロッテの願いに皆が反対した。せっかく生まれ変わったかのように健康になったのだ。家族はもっと娘、妹と過ごしたかった。
「王都にはキース兄様が居られますし、先週王都に戻っていったマデライン姉様も居られます。それに、」
ヒラヒラと数通の手紙を見せる。
「インフェルン公爵令嬢であるエレオノーラ様が心配でなりません。」
夢渡りでつながりを持ったエレオノーラという令嬢。
そのつながりがなければ、この令嬢を選ばなかったとシャルロッテの新しい魂は思う。
「エレオノーラ様が受けてきた屈辱、そして現状を知らしめる時が来たのです。」
シャルロッテの強い言葉に家族は、本当に元気になったのだなと、また泣き笑いの顔になった。
この態度からも分かるように、辺境一家は家族(領民)第一主義である。
「にしても、エレオノーラ様が受けてきた屈辱とはなんだ?」
握りこぶしを作って力強く言う娘に、父子爵が尋ねた。
随分前にインフェルン前公爵から、シャルロッテに依頼があった。
夢渡りという固有魔法を持っていたシャルロッテは、本来なら国が保護して、魔法の行使については国の許可が必要だった。
ただシャルロッテは子供であり、夢渡りの固有魔法が発現してまもなく邪竜の呪いが強くなり、固有魔法を押さえつけている状態で夢渡りの能力は使えないと判断され国の保護は受けられなかった。
呪いを恐れて王都の専用機関の専門家は辺境領に来ることもなあなあと躱して、国王の命令で漸く一人だけ派遣されたが、その時には呪いは完成されていた。
もし、あの時、国がいち早くシャルロッテを保護してくれていたら娘にかけられた呪いの発動は抑えられたのではないかと辺境一家は思っている。
そんな考えのある辺境伯は、シャルロッテの能力に藁にもすがる思いで手紙を送ってきた前公爵を無碍に出来なかった。
また、国で保護をしている夢渡りは誰もが高齢であり、魔法の行使は命を削る行為と見なされ安易な使用は禁止されており、シャルロッテしか頼れなかったのだとも理解できた。
インフェルン公爵領が大規模瘴気玉災害に見舞われた後、避難のため領地外に出た領民の中に倒れたり、酷い場合は息絶えたりする者が続出した。原因は領内外の魔素濃度の差にあった。差が生まれたのは、見えない壁のようなものが張り巡らされていたから。
救援のため訪れた王立騎士隊の隊長格であっても公爵領に入った数日は体が重く、魔術を使えないような状態になってしまう。元々領地内にいる者には逆の体調変化が起こっており、酷い場合には死者も出たため、公爵領の住人は実質、領内に閉じ込められたことになった。
そんな経緯もあり、後継であるエレオノーラの情報は後見人のガイナスの便りでしか知ることが出来ず、孫娘との連絡方法がなかった前公爵は藁をも掴む思いで依頼してきたのだった。
ちなみに公爵領にて必死に働いていたユミリィの兄ダグラスは元々魔力保有量が多く、魔力コントロールも巧みだったため、王都に向かう5日間、馬車の中で寝込むくらいで済んだ。また、領外からきたアルフォンスとグリゼルダは、そんな事情があることを2人の記憶から分かっていたが、上手いことごまかしている。
息子であるガイナスの動きを怪しんでいた前公爵は国王から渡された返信用の封筒にエレオノーラのことを相談した文を紛れ込ませた。王家の印の付いた封書ならガイナスであっても中を改めることは出来ないと考えたからだ。
公爵夫妻の一粒種であるエレオノーラのことを気にかけていた国王夫妻は前公爵と文書のやり取りを内密に開始。頼りになるはずの第三王子ライルは、噂に流されたかのように真実とは到底思えないエレオノーラ像を伝えてくる。そんなやり取りが続く中、シャルロッテの夢渡りならエレオノーラ本人と連絡がとれるとの考えに至った旨が辺境伯爵宛の手紙には書かれていた。
高位のインフェルン前公爵の願いとガイナスと第三王子からの報告を怪しんでいる王家も、シャルロッテにお願いをしてきた。
もちろん邪竜のことで子供のシャルロッテに余裕などないことは分かっているので、断ってもいいし、使うとしても力も安定していない子供であるシャルロッテの負担にならない程度の力の行使に限ってとの注釈付きだった。
よほどエレオノーラのことが心配なのだろうとは理解したが、ロイエンタール辺境一家も彼女自身も依頼は断るつもりだった。
しかし、邪竜が邪魔をした。
『面白そうだ。』
と。
シャルロッテの夢渡りの能力を邪竜の力で押し上げ、夢渡りの中でエレオノーラのことを知ることは出来たが、彼女が受けている災難を他者へ伝えることは邪竜に制限され伝えられなかった。
邪竜の気まぐれである。
『あれは、いずれ死ぬ子供だ。お前が伝えたところで何も出来ん。俺には見えるぞ!お前の力は夢を通り、ついには未来を見る力となるだろう!それで見たぞ!あの子供は死ぬ。国も滅ぶ!お前には何も出来ん!あぁ、愉快だ!』
ただでさえ邪竜の呪いを解くことに全集中すべきだったが、邪竜の気まぐれで夢渡りをすることになった。
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