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使命?駒?殲滅??
「それは…ちょっと無理ではないかと。私はただの小市民ですし。殲滅とかそんな物騒なこと、性格的にできないと思います」
「いちいち口答えする人間ね」
「でも、本当のことですから」
自分が何者なのかはまったく記憶にないけれど、自信を持ってそれは言えた。とにかく元の行列に戻して欲しい。他をあたってください。
「……いいわ」
白い美人は私の言葉に暫く考え込み、そう答えた。
「あ、分かってくれましたか。それでは元の列にーー」
「お前はなにもしなくていい。お前の周りにいる者が、お前の代わりにすべてをこなしてくれる、そんな能力をお前には授けるから」
「は?」
「それなら、なにも問題はないでしょ?お前がどれだけ無能だろうと関係ない。お前はふんぞり返って、周りの者に命令すればいいだけ」
「は?ちょっと待って。それは多分、一番駄目なヤツーー」
「私の駒として!しっかり敵を、ギッタギタの八つ裂きの血だるまにして、滅ぼしてしまうのよ!」
「いや、なに言ってんの!?」
「行け!」
「ちよっとーっ!?」
そこで私の反論は途切れた。何故なら、突然足元に黒い穴がぽっかり開いて、一気に落下し始めたから。
うわーっ!バカヤローッ!人の話を聞けー!
落ちる。落ちる。落ちる。ひたすら真っ暗闇を落ちていた。どーこーまーでー落ちるのー!?
「ホント。気の毒だね、人の子」
耳元で声がした。驚いて横を向くと、先程の黒い男がすぐ隣で一緒に落下している。…いや、私に合わせて飛んでいる、という方が正しい表現か。
「そう思うなら、なんとかしてくださいっ」
「いやあ、相手の手を差し戻すのはルール違反だからねえ。そこは諦めて」
にこにこと楽しげな様子に腹が立つ。この黒い男は見る限り、ずっと目を細めて笑ってる。…ただ単に、糸目なだけか?
黒い男がスッと笑みを消した。あ、やっぱり糸目。だけどーー金色の双眸は確認できた。背筋がゾクリとする。
「…貴方も神ですか?」
「もちろん」
再び男が笑みを浮かべる。今、無言で圧をかけましたよね?心を読まれてる?糸目呼ばわりが気に入らなかった?糸目を糸目と言ってなにが悪い?
「人の子、なかなか肝が据わってるね。神相手に、まったく物怖じしていない」
黒い男が笑みを深める。…なんだろう嫌な予感。
「もう死んでますから。なにを恐れることが?」
「でも、じきに生き返るよ。彼女の駒として。そこで、ものは相談なんだけどーー」
「お断りします」
「そんなことを言っていいのかな?彼女が君に授けた力、かなりヤバいよ?」
「ゔ…」
「人を駄目にする能力だ。自分も他人も、皆、み~んな」
満面の笑みをこちらに向け、不吉なことを言う黒い男。白い美人もかなりアレだが、こちらもいい勝負だ。
「相談に乗ったら、なんとかしてもらえるのですか?」
「そうだねえ。彼女とは真逆の力を授けてあげるよ。それで相殺は無理でも、カバーすることはできるんじゃないかな?」
「……相談の内容は?」
「簡単さ。今、僕のターンなんだ。僕の駒になってよ」
「は?でも、私はあの白い神様の駒ではーー」
「駒の兼用は違反ではない。ルールの穴とも言えるね」
…よく分からないが、神のゲームにもあれこれルールがあるらしい。この黒い神はそんなルールの隅を、愉しくつつくのがお好みのようだ。人はそれを陰険と呼ぶ。
「…気に入ったよ人の子。ホント、いい神経してるね」
はっ、やっぱり心を読まれてた。
「まあ、いまさら繕っても無駄、か」
「…そうだね。で、引き受けてくれるの?」
開き直ると、呆れた顔をされてしまった。私も大概のようだ。さっきからずっと落下し続けているというのに、それが気にならなくなってるあたりからしても。
「白い神様からは黒い駒の殲滅を。黒い神様、貴方はなにを私に望むのですか?」
「彼女の言った使命をまっとうする気は?」
「ないです。まったく」
「そうだと思ったよ。それが僕の望むところさ。しいて言うなら、白い駒と黒い駒の共存を」
「共存…」
平和的で良い響きだけれど、ハードルは高そうだ。
「焦る必要はないよ、人の子。ここでは時の流れがまるで違う。彼女の次の一手は、軽く百年超えた先になる」
「そんな先!?」
「そ。だからのんびり行けばいい。引き受けてくれるね?」
「はあ」
気の抜けた返事をしてしまった。もっと厄介なことを言ってくると思っただけに。
「あ、そうそう。僕が授ける力だけど、かなりサービスしておくね。彼女はすることが極端だから。それに対抗しないといけないわけだし」
「え?あ、ありがとうございます?」
「まあ、頑張んなよ。力に飲まれるのも、また一興だよね~」
「はあっ!?」
それは、それは、嬉しそうに笑う黒い男に、罵倒を浴びせてやろとしたけれどーー
突然、落下速度が上がって舌を噛んだ。
「あ痛っーーくないってーー」
「バイバイ」
黒い男が手を振っている。どんどん遠ざかってゆく。
「うわー、バカヤローッ」
その叫びを最後に、私の意識は途絶えた。
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「それは…ちょっと無理ではないかと。私はただの小市民ですし。殲滅とかそんな物騒なこと、性格的にできないと思います」
「いちいち口答えする人間ね」
「でも、本当のことですから」
自分が何者なのかはまったく記憶にないけれど、自信を持ってそれは言えた。とにかく元の行列に戻して欲しい。他をあたってください。
「……いいわ」
白い美人は私の言葉に暫く考え込み、そう答えた。
「あ、分かってくれましたか。それでは元の列にーー」
「お前はなにもしなくていい。お前の周りにいる者が、お前の代わりにすべてをこなしてくれる、そんな能力をお前には授けるから」
「は?」
「それなら、なにも問題はないでしょ?お前がどれだけ無能だろうと関係ない。お前はふんぞり返って、周りの者に命令すればいいだけ」
「は?ちょっと待って。それは多分、一番駄目なヤツーー」
「私の駒として!しっかり敵を、ギッタギタの八つ裂きの血だるまにして、滅ぼしてしまうのよ!」
「いや、なに言ってんの!?」
「行け!」
「ちよっとーっ!?」
そこで私の反論は途切れた。何故なら、突然足元に黒い穴がぽっかり開いて、一気に落下し始めたから。
うわーっ!バカヤローッ!人の話を聞けー!
落ちる。落ちる。落ちる。ひたすら真っ暗闇を落ちていた。どーこーまーでー落ちるのー!?
「ホント。気の毒だね、人の子」
耳元で声がした。驚いて横を向くと、先程の黒い男がすぐ隣で一緒に落下している。…いや、私に合わせて飛んでいる、という方が正しい表現か。
「そう思うなら、なんとかしてくださいっ」
「いやあ、相手の手を差し戻すのはルール違反だからねえ。そこは諦めて」
にこにこと楽しげな様子に腹が立つ。この黒い男は見る限り、ずっと目を細めて笑ってる。…ただ単に、糸目なだけか?
黒い男がスッと笑みを消した。あ、やっぱり糸目。だけどーー金色の双眸は確認できた。背筋がゾクリとする。
「…貴方も神ですか?」
「もちろん」
再び男が笑みを浮かべる。今、無言で圧をかけましたよね?心を読まれてる?糸目呼ばわりが気に入らなかった?糸目を糸目と言ってなにが悪い?
「人の子、なかなか肝が据わってるね。神相手に、まったく物怖じしていない」
黒い男が笑みを深める。…なんだろう嫌な予感。
「もう死んでますから。なにを恐れることが?」
「でも、じきに生き返るよ。彼女の駒として。そこで、ものは相談なんだけどーー」
「お断りします」
「そんなことを言っていいのかな?彼女が君に授けた力、かなりヤバいよ?」
「ゔ…」
「人を駄目にする能力だ。自分も他人も、皆、み~んな」
満面の笑みをこちらに向け、不吉なことを言う黒い男。白い美人もかなりアレだが、こちらもいい勝負だ。
「相談に乗ったら、なんとかしてもらえるのですか?」
「そうだねえ。彼女とは真逆の力を授けてあげるよ。それで相殺は無理でも、カバーすることはできるんじゃないかな?」
「……相談の内容は?」
「簡単さ。今、僕のターンなんだ。僕の駒になってよ」
「は?でも、私はあの白い神様の駒ではーー」
「駒の兼用は違反ではない。ルールの穴とも言えるね」
…よく分からないが、神のゲームにもあれこれルールがあるらしい。この黒い神はそんなルールの隅を、愉しくつつくのがお好みのようだ。人はそれを陰険と呼ぶ。
「…気に入ったよ人の子。ホント、いい神経してるね」
はっ、やっぱり心を読まれてた。
「まあ、いまさら繕っても無駄、か」
「…そうだね。で、引き受けてくれるの?」
開き直ると、呆れた顔をされてしまった。私も大概のようだ。さっきからずっと落下し続けているというのに、それが気にならなくなってるあたりからしても。
「白い神様からは黒い駒の殲滅を。黒い神様、貴方はなにを私に望むのですか?」
「彼女の言った使命をまっとうする気は?」
「ないです。まったく」
「そうだと思ったよ。それが僕の望むところさ。しいて言うなら、白い駒と黒い駒の共存を」
「共存…」
平和的で良い響きだけれど、ハードルは高そうだ。
「焦る必要はないよ、人の子。ここでは時の流れがまるで違う。彼女の次の一手は、軽く百年超えた先になる」
「そんな先!?」
「そ。だからのんびり行けばいい。引き受けてくれるね?」
「はあ」
気の抜けた返事をしてしまった。もっと厄介なことを言ってくると思っただけに。
「あ、そうそう。僕が授ける力だけど、かなりサービスしておくね。彼女はすることが極端だから。それに対抗しないといけないわけだし」
「え?あ、ありがとうございます?」
「まあ、頑張んなよ。力に飲まれるのも、また一興だよね~」
「はあっ!?」
それは、それは、嬉しそうに笑う黒い男に、罵倒を浴びせてやろとしたけれどーー
突然、落下速度が上がって舌を噛んだ。
「あ痛っーーくないってーー」
「バイバイ」
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その叫びを最後に、私の意識は途絶えた。
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