37 / 140
70日目
しおりを挟む
困った時のアケイルさん。
今日も今日とて、彼の研究室へ足を運んでいた。一応、今日は仕事でだけれど。
「錬金術師の称号を剥奪されたノーツには、ちゃんとした収入源がなかった。生家もそれほど裕福ではなかったし。おまけに両親や親族は、『縁は切った』なんて言っています。そうなると、研究資金がどこから出たのやら…って話なんです」
「占者の暗殺は、彼一人で企てたものではないのでしょう。スポンサーがいると考えられますね」
「ところが不思議なことに、他の首謀者をほとんど挙げたにも拘らず、その中にノーツの存在を知っている者がいないんです。もちろん、嘘の供述の可能性はありますけど、主上は多分、本当だろうと…」
「まだ捕まっていない者がいる、ということでしょう」
「うーん、そう言ってしまえば、そうなんですけど…」
「けど?」
「アケイルさんならどうします?錬金術師として、どうしてもお金が必要なのにそれを得る術がなかったら、やっぱり自分で造っちゃいます?」
これが訊きたかったのだ、結局は。餅は餅屋というからね。
数日前からノーツの行方を、もう一度金銭面から洗いにかかっているのだけれど、どうしても行き詰まる。
そこで私も考えた。錬金術師のことは、錬金術師に訊こうと。
「造りませんよ。城の錬金術師として、通貨を生成する側なんですから。勝手に造るには、リスクが高すぎます」
「え?生成する側?」
「ええ、そうです。財務官のきびしい管理の下、私たち塔の錬金術師が生成しているんですよ。生成物質比率は極秘ですし、他にも複製、還元防止に何十もの決まりが設けられています。まず、無理だと思いますよ」
なんと?錬金術師の正体は、歩く造幣局だったのか。
物質の構成を知り、追求するのが錬金術師の役目だなんて言っていたけれど、そんな具体的な仕事があったとは。
「お金が駄目なら、金は?ノーツはそれの生成で、称号を剥奪されていますが?」
錬金術と言えば読んで字のごとく、金を生み出す技術なわけだけれど、市場が混乱するから、どこでも禁止されると相場が決まっている。ノーツはやっちゃったけど。
「考えにくいですね。金の生成には、大量の式熱を消費しますから。式術研究において最も重要になるのは、星の雫の確保です。供給されない以上、非合法のものを買うしかないですが、金ではおそらく割に合わない」
「……では、それは私のように得たとか?」
「陽月下の回収前に吸収、ですか?でもそれは、反って目立つ行為なりますよ。陽月下はそんなに甘くありません。確実に見つかります。そういえば…その一件、どうなったんですか?」
「……実は、フルルクスさんが独自回収したことになってます」
そうなのだ。
アランサが私にくれた星の雫。貴重な資源。あの一件、フルルクス爺様におっ被せてしまったのだ。断っておくけど、それをやったのは主上であって、私ではない。適当に処理するなんて言っていたけど、本当に適当だった。いや、よくあの爺様が承知してくれたものだ。
「そうですか。フルルクスも貴女には甘いですね」
え?甘い?あの爺様が?あれで??
「はあ?どうですかね?……それはそうと、高額になって式熱消費が少ないものの生成って、なにかないんですか?」
「それに関するリストは、もう提出済みです」
「あれ?」
浅はかでした。
筆頭錬金術師樣は、ニッコリと。
「目の付け所は、悪くありませんよ。少し遅くはありますが」
……アケイルさんも、結構手厳しい。
今日も今日とて、彼の研究室へ足を運んでいた。一応、今日は仕事でだけれど。
「錬金術師の称号を剥奪されたノーツには、ちゃんとした収入源がなかった。生家もそれほど裕福ではなかったし。おまけに両親や親族は、『縁は切った』なんて言っています。そうなると、研究資金がどこから出たのやら…って話なんです」
「占者の暗殺は、彼一人で企てたものではないのでしょう。スポンサーがいると考えられますね」
「ところが不思議なことに、他の首謀者をほとんど挙げたにも拘らず、その中にノーツの存在を知っている者がいないんです。もちろん、嘘の供述の可能性はありますけど、主上は多分、本当だろうと…」
「まだ捕まっていない者がいる、ということでしょう」
「うーん、そう言ってしまえば、そうなんですけど…」
「けど?」
「アケイルさんならどうします?錬金術師として、どうしてもお金が必要なのにそれを得る術がなかったら、やっぱり自分で造っちゃいます?」
これが訊きたかったのだ、結局は。餅は餅屋というからね。
数日前からノーツの行方を、もう一度金銭面から洗いにかかっているのだけれど、どうしても行き詰まる。
そこで私も考えた。錬金術師のことは、錬金術師に訊こうと。
「造りませんよ。城の錬金術師として、通貨を生成する側なんですから。勝手に造るには、リスクが高すぎます」
「え?生成する側?」
「ええ、そうです。財務官のきびしい管理の下、私たち塔の錬金術師が生成しているんですよ。生成物質比率は極秘ですし、他にも複製、還元防止に何十もの決まりが設けられています。まず、無理だと思いますよ」
なんと?錬金術師の正体は、歩く造幣局だったのか。
物質の構成を知り、追求するのが錬金術師の役目だなんて言っていたけれど、そんな具体的な仕事があったとは。
「お金が駄目なら、金は?ノーツはそれの生成で、称号を剥奪されていますが?」
錬金術と言えば読んで字のごとく、金を生み出す技術なわけだけれど、市場が混乱するから、どこでも禁止されると相場が決まっている。ノーツはやっちゃったけど。
「考えにくいですね。金の生成には、大量の式熱を消費しますから。式術研究において最も重要になるのは、星の雫の確保です。供給されない以上、非合法のものを買うしかないですが、金ではおそらく割に合わない」
「……では、それは私のように得たとか?」
「陽月下の回収前に吸収、ですか?でもそれは、反って目立つ行為なりますよ。陽月下はそんなに甘くありません。確実に見つかります。そういえば…その一件、どうなったんですか?」
「……実は、フルルクスさんが独自回収したことになってます」
そうなのだ。
アランサが私にくれた星の雫。貴重な資源。あの一件、フルルクス爺様におっ被せてしまったのだ。断っておくけど、それをやったのは主上であって、私ではない。適当に処理するなんて言っていたけど、本当に適当だった。いや、よくあの爺様が承知してくれたものだ。
「そうですか。フルルクスも貴女には甘いですね」
え?甘い?あの爺様が?あれで??
「はあ?どうですかね?……それはそうと、高額になって式熱消費が少ないものの生成って、なにかないんですか?」
「それに関するリストは、もう提出済みです」
「あれ?」
浅はかでした。
筆頭錬金術師樣は、ニッコリと。
「目の付け所は、悪くありませんよ。少し遅くはありますが」
……アケイルさんも、結構手厳しい。
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる