19 / 39
拗ねルル
しおりを挟む
僕はよれた部屋着を脱いで、新しめの半袖シャツに手を通し、薄手のズボンに着替えた。
そんなにおめかしする必要はないよね。近所のスーパーだし。ルルをあまり待たせるのも悪いし。……近所のスーパーだし……。
「し、支度、お、終わったよ」
「あの……。足が震えてます」
僕は。この前ルルにそそのかされて外へ出るまでは、ほぼずっと引きこもってたんだ。そう簡単に怖くなくなるわけじゃない。小学校は日常と切り離されていたから逆にあまり怖くなかったけど……。普通ならばスーパーは日常の主たるもの。実は今までで一番ブルっている。それを奮い立たせているのはルルへの愛に他ならない。
この恐怖に打ち勝ってみせる! ルルとのラブラブデートのために!
「だ、大丈夫。でも、おまじないしてほしいな」
「おまじない?」
「さっきみたいに、ちゅってして」
「それで外が怖くなくなるのですか?」
そんなわけはない。ご褒美の前払いみたいな感じ。本当におまじない程度だ。
「うん、なくなる」
言葉に出せば自分にも暗示がかかるような気がして、はっきりとそう言い切った。
今日は、大丈夫。変なもやもやももう襲ってこない。ルルが隣にいれば怖いものなんてない。
「では、失礼します」
唇に。頬に。額に。ルルはふわりと口付けた。そして子供にでもやるように、ぽんぽんと頭を軽くたたいてくれた。
「なんか本当に……平気な気がしてきた」
「そうですか。良かったです」
「ルルの魔法?」
「おまじないではなかったのですか?」
嘘みたいに落ち着いてる。こんなこと初めてだ。
といっても、それこそ魔法みたいに怖さがなくなったわけじゃない。緊張がとれただけ。
「行こうか」
「はい」
玄関をくぐれば雲ひとつない青空。
空気もなんだかキレイな気がする。隣を見ればそれ以上に綺麗なルルの横顔。
手を繋ぎたい気持ちはあるけど、中学生のカップルじゃあるまいし、さすがに恥ずかしすぎるか……。男二人だしな。
「大丈夫そうですか?」
「ル、ルルと出会ってから、こうして外へ出るの機械も増え、たしね。だ、だいぶ、慣れたよ」
どもってしまってキまらない。かっこつけたいのに。
「あ。ご主人様。スーパーならこちらの道ですよ」
「え? 確かこっちのほうに……」
寂れたスーパーが……。あったはずなんだけど、跡形もない。アパートになってる。そうか。つぶれたのか。
10年だもんな。もうこの町は、僕が知っていた町とは違うんだ。
僕も若者からおっさんに入ってしまったし、小学校すらまともに行ってなかったから……僕の顔を知る人は、誰一人いないのかもしれない。そう思ったら、少しだけ気が楽になった。
「新しくできたスーパーなのかな。綺麗?」
「できてから5年は経っているそうですよ」
「そ、そう……」
時の流れって早いよね。
方向転換してしばらく歩くと、通行人Aが現れた。主婦っぽい。戦闘力は低めだ。
……何事もなく通りすぎていった。
「ご主人様、汗が……」
「あー……。ルルの手、ひんやりして気持ちいい」
ルルは指先で汗を軽く拭ってから、きちんとハンカチで拭いてくれた。何かを染み込ませてあるのか、布もひんやり。
「あの、黒い変なもやもやみたいなのじゃなかった」
「ご主人様がそれほど外を……人を恐れなくなった証拠です」
「襲ってこなかったし」
「あれは本当に想定外の出来事でした」
本当かどうかはわかんないけど、僕が強く望んだことはたいてい叶うって言ってたっけ。望むでも願うでもないけど、恐怖という強い想いだったのは確かだ。それなら周りの人間が襲ってきたのも頷ける。
「あっ、そういえばさ、さっき聞きそびれたんだけど」
「はい、なんでしょう」
「僕の身の上話、したじゃない? あれのどのあたりにルルは出てくるの?」
「は……」
ルルは言葉につまってから、下を向いた。
「出てきませんよ……?」
多分ルルの中には僕に言えないたくさんの嘘みたいなものがあって、返事を考えていなかった質問をされると対処できなくなる。
嘘が苦手なのは本当ぽいけど、元がポーカーフェイスだからあらかじめ答えを考えてあることに関してはなんとかなってるんじゃないだろうか。
僕は悪魔の世界のことなんて何も知らないから、嘘をつかれたところでそれが本当かどうかわかんないしね。
何言われても、あー、そうなんだ。って思うだけだ。
「本当に?」
「ほ、本」
ごっ、という音がしてルルが電柱に当たった。電柱に激突する悪魔って。
「だ、大丈夫?」
「……なんともありません」
さすが悪魔というべきか、痛くはなさそうだ。
案外ドジっ子なのかな。可愛い。
しかし、この反応はどう見るべきか。やっぱり僕が忘れてるだけ?
それに……前にも、こういうことがあったような気がする。歩いてたら、ルルが何かにぶつかって……。
記憶喪失のセオリーだと、大体こういうことを考えた時に頭が痛くなったり。
頭……別に痛くないな。むしろルルがぶつけたとこが心配。
「本当に痛くない?」
ちょっと役得かもなんて思いながら、額を撫でようとした手を押し留められた。下心が見抜かれたのかと一瞬ひやりとしたけど、そういうわけでもないらしい。
ルルはとても真剣な顔をしていた。
「ご主人様には、喚ばれた日に初めてお会いしました。嘘はありません」
もしかしてこの質問って、ルルにとっては深いところにある感じなのか。
別に会ったことあって僕がそれを忘れてるならそれで終わりだと思うんだけど、そう深刻にされると逆に凄く気になってしまうじゃないか。
適当言っておけばいいのに……。不器用な奴。
「でも、僕に喚ばれたから出てきたんでしょ? 僕のことを知ってたからじゃないの」
「それは……否定はしません」
「一方的に僕を知っていたってこと?」
「はい」
「まさか僕に一目惚れして」
「違います」
即答つらい。
「あのさ、ルル。そこでウンとか言っておけば話を誤魔化せる上に僕は幸せな気分になれると思うんだけど、そうしないの?」
「口先だけなら言えますが、他人にそういう感情を抱いたことがありませんので、すぐボロが出るかと思います」
「へ、へえー……そうなんだ」
つまりルルに恋人はいないし、いたことないってことだよな? 身体もまっさらだったみたいだし……。
僕を好きじゃないのは、それは残念だけど、これは、なんというか……ある意味。ときめく。
僕が色んなことの、初めての相手になれるかもしれないってことだろ? さすがに前向きすぎだとは思うけど、そんな話を聞かされたらどうしたって夢見てしまう。
あ。で、でも待てよ?
「悪魔って、恋人とかそういう概念がなかったり?」
「いいえ。人間と同じで個体によりはしますが……」
「じゃあ、人間と恋に落ちる悪魔もいる?」
「おります」
「そっかー!」
よし。頑張ろ。
どうしてだか理由はわかんないけど、ルルは僕のことを好きではいてくれてるみたいだし。
嫌われていないなら、恋愛感情抱いてくれる可能性もなくはないと思うんだ。毎日いっぱい好きって言ってキスをして笑顔を見せていれば、ほだされてくれるかもしんないし。
「ご主人様。私は今、貴方を幸せにする言葉が吐けなかったと思うのですが……。何故、嬉しそうなのですか?」
「え? うーん。多分、ルルには言ってもわかんないかなあ」
「そうですか」
「そうです」
君が意味を理解する日がくるのなら、その相手が僕だったらいいな。いや、そうさせてみせる。
「…………」
ルルが黙ってしまった。
いつもと同じ表情だけど、なんか……。
「あの。ごめん。もしかして、拗ねてる?」
「拗ねてません」
「僕が言ってもわかんないって言っ」
「拗ねてません」
拗ねてるじゃん。クソ可愛い。
別に意地悪で言ったわけじゃなかったんだけど、好感度を上げるなら説明してあげるべきなのかな。
でもこれを説明するのはかなり恥ずかしいぞ……。
「あの。僕はルルが好きなんだけど。ルルに恋人や好きな人が今までいなかったなら、僕が初めての相手になれる可能性があるでしょ。だから嬉しいの。わかる?」
「……わかりません」
「ほ、ほらあ。だからわかんないって言ったじゃん」
「でも、あの。教えてくださって……ありがとうございます」
あ。ちょっと嬉しそう。恥ずかしいけど、言って良かった。
はー。ほんと可愛いなあ。なんだろう、この感じ。何も知らない無垢なルルに、あれやこれやを教える……。見た目はともかく、ロリコンショタコンのツボに通ずるものがある。
こう……僕の手で咲かせていく的な? 童貞が何言ってんだって笑われそうだけど。
「スーパーが見えてきましたよ」
「え、どこ?」
「そこです」
ルルが指差す方を見る。僕も見ていた方角なのに。
「でかっ!」
中々発見できなかった理由はすぐにわかった。
スーパーは建物内にあるらしく、一見してそうだとわからなかったからだ。
「駅前ならまだしも、町中にこんな階層建てのモールっぽいスーパーができてるなんて」
「衣料品や雑貨など、すべて揃って便利です。ご主人様の好きなゲームも売っていますよ」
「え。ちょっと覗いていきたいな……」
引きこもってからの購入はすべて通販だったから、ゲームのパッケージがずらりと並ぶゲーム屋さんはかなり久しぶりだ。
「では先に行かれますか? 荷物は少ないほうが見やすいでしょう」
「う、うん」
いつの間にか、人もパラパラと周りを歩いている。一人目が通りすぎる時はあんなに緊張したのに、ルルと話していたせいか背景に溶け込んでたみたい。
通りすぎていく人がたくさんいるのが、当たり前の世界。
いや、本当に当たり前のことなんだけど、引きこもり歴が長い僕にとっては結構驚くべきことだった。
こんなにたくさんの人が、それぞれ別の目的を持って歩いている。不思議。どこから来てどこへ行くんだろう。
そんなことを考えながら、巨大スーパーへと足を踏み入れた。
そんなにおめかしする必要はないよね。近所のスーパーだし。ルルをあまり待たせるのも悪いし。……近所のスーパーだし……。
「し、支度、お、終わったよ」
「あの……。足が震えてます」
僕は。この前ルルにそそのかされて外へ出るまでは、ほぼずっと引きこもってたんだ。そう簡単に怖くなくなるわけじゃない。小学校は日常と切り離されていたから逆にあまり怖くなかったけど……。普通ならばスーパーは日常の主たるもの。実は今までで一番ブルっている。それを奮い立たせているのはルルへの愛に他ならない。
この恐怖に打ち勝ってみせる! ルルとのラブラブデートのために!
「だ、大丈夫。でも、おまじないしてほしいな」
「おまじない?」
「さっきみたいに、ちゅってして」
「それで外が怖くなくなるのですか?」
そんなわけはない。ご褒美の前払いみたいな感じ。本当におまじない程度だ。
「うん、なくなる」
言葉に出せば自分にも暗示がかかるような気がして、はっきりとそう言い切った。
今日は、大丈夫。変なもやもやももう襲ってこない。ルルが隣にいれば怖いものなんてない。
「では、失礼します」
唇に。頬に。額に。ルルはふわりと口付けた。そして子供にでもやるように、ぽんぽんと頭を軽くたたいてくれた。
「なんか本当に……平気な気がしてきた」
「そうですか。良かったです」
「ルルの魔法?」
「おまじないではなかったのですか?」
嘘みたいに落ち着いてる。こんなこと初めてだ。
といっても、それこそ魔法みたいに怖さがなくなったわけじゃない。緊張がとれただけ。
「行こうか」
「はい」
玄関をくぐれば雲ひとつない青空。
空気もなんだかキレイな気がする。隣を見ればそれ以上に綺麗なルルの横顔。
手を繋ぎたい気持ちはあるけど、中学生のカップルじゃあるまいし、さすがに恥ずかしすぎるか……。男二人だしな。
「大丈夫そうですか?」
「ル、ルルと出会ってから、こうして外へ出るの機械も増え、たしね。だ、だいぶ、慣れたよ」
どもってしまってキまらない。かっこつけたいのに。
「あ。ご主人様。スーパーならこちらの道ですよ」
「え? 確かこっちのほうに……」
寂れたスーパーが……。あったはずなんだけど、跡形もない。アパートになってる。そうか。つぶれたのか。
10年だもんな。もうこの町は、僕が知っていた町とは違うんだ。
僕も若者からおっさんに入ってしまったし、小学校すらまともに行ってなかったから……僕の顔を知る人は、誰一人いないのかもしれない。そう思ったら、少しだけ気が楽になった。
「新しくできたスーパーなのかな。綺麗?」
「できてから5年は経っているそうですよ」
「そ、そう……」
時の流れって早いよね。
方向転換してしばらく歩くと、通行人Aが現れた。主婦っぽい。戦闘力は低めだ。
……何事もなく通りすぎていった。
「ご主人様、汗が……」
「あー……。ルルの手、ひんやりして気持ちいい」
ルルは指先で汗を軽く拭ってから、きちんとハンカチで拭いてくれた。何かを染み込ませてあるのか、布もひんやり。
「あの、黒い変なもやもやみたいなのじゃなかった」
「ご主人様がそれほど外を……人を恐れなくなった証拠です」
「襲ってこなかったし」
「あれは本当に想定外の出来事でした」
本当かどうかはわかんないけど、僕が強く望んだことはたいてい叶うって言ってたっけ。望むでも願うでもないけど、恐怖という強い想いだったのは確かだ。それなら周りの人間が襲ってきたのも頷ける。
「あっ、そういえばさ、さっき聞きそびれたんだけど」
「はい、なんでしょう」
「僕の身の上話、したじゃない? あれのどのあたりにルルは出てくるの?」
「は……」
ルルは言葉につまってから、下を向いた。
「出てきませんよ……?」
多分ルルの中には僕に言えないたくさんの嘘みたいなものがあって、返事を考えていなかった質問をされると対処できなくなる。
嘘が苦手なのは本当ぽいけど、元がポーカーフェイスだからあらかじめ答えを考えてあることに関してはなんとかなってるんじゃないだろうか。
僕は悪魔の世界のことなんて何も知らないから、嘘をつかれたところでそれが本当かどうかわかんないしね。
何言われても、あー、そうなんだ。って思うだけだ。
「本当に?」
「ほ、本」
ごっ、という音がしてルルが電柱に当たった。電柱に激突する悪魔って。
「だ、大丈夫?」
「……なんともありません」
さすが悪魔というべきか、痛くはなさそうだ。
案外ドジっ子なのかな。可愛い。
しかし、この反応はどう見るべきか。やっぱり僕が忘れてるだけ?
それに……前にも、こういうことがあったような気がする。歩いてたら、ルルが何かにぶつかって……。
記憶喪失のセオリーだと、大体こういうことを考えた時に頭が痛くなったり。
頭……別に痛くないな。むしろルルがぶつけたとこが心配。
「本当に痛くない?」
ちょっと役得かもなんて思いながら、額を撫でようとした手を押し留められた。下心が見抜かれたのかと一瞬ひやりとしたけど、そういうわけでもないらしい。
ルルはとても真剣な顔をしていた。
「ご主人様には、喚ばれた日に初めてお会いしました。嘘はありません」
もしかしてこの質問って、ルルにとっては深いところにある感じなのか。
別に会ったことあって僕がそれを忘れてるならそれで終わりだと思うんだけど、そう深刻にされると逆に凄く気になってしまうじゃないか。
適当言っておけばいいのに……。不器用な奴。
「でも、僕に喚ばれたから出てきたんでしょ? 僕のことを知ってたからじゃないの」
「それは……否定はしません」
「一方的に僕を知っていたってこと?」
「はい」
「まさか僕に一目惚れして」
「違います」
即答つらい。
「あのさ、ルル。そこでウンとか言っておけば話を誤魔化せる上に僕は幸せな気分になれると思うんだけど、そうしないの?」
「口先だけなら言えますが、他人にそういう感情を抱いたことがありませんので、すぐボロが出るかと思います」
「へ、へえー……そうなんだ」
つまりルルに恋人はいないし、いたことないってことだよな? 身体もまっさらだったみたいだし……。
僕を好きじゃないのは、それは残念だけど、これは、なんというか……ある意味。ときめく。
僕が色んなことの、初めての相手になれるかもしれないってことだろ? さすがに前向きすぎだとは思うけど、そんな話を聞かされたらどうしたって夢見てしまう。
あ。で、でも待てよ?
「悪魔って、恋人とかそういう概念がなかったり?」
「いいえ。人間と同じで個体によりはしますが……」
「じゃあ、人間と恋に落ちる悪魔もいる?」
「おります」
「そっかー!」
よし。頑張ろ。
どうしてだか理由はわかんないけど、ルルは僕のことを好きではいてくれてるみたいだし。
嫌われていないなら、恋愛感情抱いてくれる可能性もなくはないと思うんだ。毎日いっぱい好きって言ってキスをして笑顔を見せていれば、ほだされてくれるかもしんないし。
「ご主人様。私は今、貴方を幸せにする言葉が吐けなかったと思うのですが……。何故、嬉しそうなのですか?」
「え? うーん。多分、ルルには言ってもわかんないかなあ」
「そうですか」
「そうです」
君が意味を理解する日がくるのなら、その相手が僕だったらいいな。いや、そうさせてみせる。
「…………」
ルルが黙ってしまった。
いつもと同じ表情だけど、なんか……。
「あの。ごめん。もしかして、拗ねてる?」
「拗ねてません」
「僕が言ってもわかんないって言っ」
「拗ねてません」
拗ねてるじゃん。クソ可愛い。
別に意地悪で言ったわけじゃなかったんだけど、好感度を上げるなら説明してあげるべきなのかな。
でもこれを説明するのはかなり恥ずかしいぞ……。
「あの。僕はルルが好きなんだけど。ルルに恋人や好きな人が今までいなかったなら、僕が初めての相手になれる可能性があるでしょ。だから嬉しいの。わかる?」
「……わかりません」
「ほ、ほらあ。だからわかんないって言ったじゃん」
「でも、あの。教えてくださって……ありがとうございます」
あ。ちょっと嬉しそう。恥ずかしいけど、言って良かった。
はー。ほんと可愛いなあ。なんだろう、この感じ。何も知らない無垢なルルに、あれやこれやを教える……。見た目はともかく、ロリコンショタコンのツボに通ずるものがある。
こう……僕の手で咲かせていく的な? 童貞が何言ってんだって笑われそうだけど。
「スーパーが見えてきましたよ」
「え、どこ?」
「そこです」
ルルが指差す方を見る。僕も見ていた方角なのに。
「でかっ!」
中々発見できなかった理由はすぐにわかった。
スーパーは建物内にあるらしく、一見してそうだとわからなかったからだ。
「駅前ならまだしも、町中にこんな階層建てのモールっぽいスーパーができてるなんて」
「衣料品や雑貨など、すべて揃って便利です。ご主人様の好きなゲームも売っていますよ」
「え。ちょっと覗いていきたいな……」
引きこもってからの購入はすべて通販だったから、ゲームのパッケージがずらりと並ぶゲーム屋さんはかなり久しぶりだ。
「では先に行かれますか? 荷物は少ないほうが見やすいでしょう」
「う、うん」
いつの間にか、人もパラパラと周りを歩いている。一人目が通りすぎる時はあんなに緊張したのに、ルルと話していたせいか背景に溶け込んでたみたい。
通りすぎていく人がたくさんいるのが、当たり前の世界。
いや、本当に当たり前のことなんだけど、引きこもり歴が長い僕にとっては結構驚くべきことだった。
こんなにたくさんの人が、それぞれ別の目的を持って歩いている。不思議。どこから来てどこへ行くんだろう。
そんなことを考えながら、巨大スーパーへと足を踏み入れた。
0
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!
中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。
無表情・無駄のない所作・隙のない資料――
完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。
けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。
イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。
毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、
凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。
「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」
戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。
けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、
どこか“計算”を感じ始めていて……?
狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ
業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!
専属【ガイド】になりませんか?!〜異世界で溺愛されました
sora
BL
会社員の佐久間 秋都(さくま あきと)は、気がつくと異世界憑依転生していた。名前はアルフィ。その世界には【エスパー】という能力を持った者たちが魔物と戦い、世界を守っていた。エスパーを癒し助けるのが【ガイド】。アルフィにもガイド能力が…!?
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!
姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王
ミクリ21
BL
姫が拐われた!
……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。
しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。
誰が拐われたのかを調べる皆。
一方魔王は?
「姫じゃなくて勇者なんだが」
「え?」
姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる