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少女漫画的な最終回
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家につくまでの足取りも浮いてるような感じだったし、暇さえあればラブホテルでのアレを反芻してしまう。
可愛い顔とか、声とか。初めて人のナカに入った時の、感覚とか……。
夜は檜垣くんとバカップルみたいなラインの応酬。この台詞恥ずかしすぎるだろ。我に返ったら絶対に死にたくなる。っていうようなのをいくつも送った。
途中で既読がつかなくなって、寝落ちかなと微笑ましく思いながら、ぼくも眠りについた。
そして次の日、檜垣くんは学校を休んだ。体調不良だ。心当たりなら山ほどある。
ラインのほうは大丈夫と返ってきて安心したけど、放課後はお見舞いに行くことにした。
今日は母親が出迎えてくれた。檜垣くんは母親似らしいと初めて知った。
息子さんを頂いてしまった後だけに、なんだか申し訳なくて視線が合わせられなかった……。そのせいで寝込んでるんだから尚更。
二階に上がって、ノックをする。思ったよりも元気そうな返事があった。
「お邪魔します」
檜垣くんの表情が、ぼくを見た途端にパアッと明るくなる。
昨日ずっと一緒にいたのに、まるで長いこと会ってなかったみたいに、心が満たされるのを感じる。
ベッドで寝ているんじゃなければ、きっと駆け寄って抱きしめていた。
……檜垣くんのほうは、両手を広げてハグ待機中だし。可愛いやつめ。
走りはしなかったけど、歩いてって抱きしめた。
「よかった、思ったよりも元気そうで」
「だから大丈夫だって言ったのに」
「君のそういう台詞は信用ならないからなあ」
ポンポンと背を叩いてあげると、頬を擦り寄せてきた。そんな仕草が可愛いし、体温が気持ちよくて離したくなくなりそう。
……でもちょっと、熱いかな。熱が出てるのかも。
「やっぱ、お腹壊した? その、中で……出したから」
「それは平気だったけど、筋肉痛が酷くて。朝起きたら歩けなくてまいった」
まさかの。まあ、確かにぼくも少し腰や腿が痛くはあった。
ぼくより凄い体勢を取らされていた檜垣くんなら、有り得ないことじゃない。否定してるけど、お腹もくだしてそう。
それにやっぱり、尻に突っ込むっていうのはいくら慣らしたとしてもキツそうだから……。
「檜垣くん熱も出てない? 身体熱いよ」
「す、少しだけ……。あの! 慣れたら平気だと思うから!」
もうしないとでも言い出すと思ったのか、必死にしがみついてくる檜垣くんに、思わず笑いそうになってしまった。
「あー……。うん。次は休みの前とかに、しよう」
「明後日か……」
「いやいや! そんな近い話じゃなくて!」
寝込んで学校を休んだくせに、何を言ってるんだか。
そりゃ、ぼくのほうは、できれば今だってしたいくらいだけど。
恋人がパジャマ姿でベッドへ寝てて、かつ、物欲しそーに見上げている据え膳状態。ムラッとくるのは仕方ない。檜垣くんが望んだとしてもそんな最低なことはしないけど。
「……でも、あんな気持ちいいの知ったらオレはそんな長いこと待てそうにないけど……。酒井は違う?」
そして本当に望んでくるのが檜垣くんだよ。我慢してるっていうのに。
「ぼくもだよ。でも、まあ、とりあえず身体が治ったら」
「もう治った。酒井の顔見たら治った」
あー……。可愛いな、クソ。
とりあえず風邪ではないんだし、キスなら問題ないかな?
「檜垣くん、ちょっとだけ口、あけて」
「ん……」
舌あっつい。とろとろしてて気持ちいい。
欲しがるみたいに、すっごく吸ってくる。誘われるまま、口内へ侵入した。
「ん、ん、ッ……」
鼻にかかるような声は、いつもの下手くそな裏声よりよっぽど高くて腰にくる。
たっぷりと舌を堪能してから、唇を離した。
「ぼくはちゃんと檜垣くんが好きだし、えっちなことだっていっぱいしたいと思ってるから安心して」
「ん……」
檜垣くんがのぼせたような顔で、こくりと頷いた。
キスで黙らせるなんて、現実でやることになるとは思わなかった……。や、キスはしたかったからしたんだけど。
でもこれはぼくも、そんなに長いこと我慢できそうにはないぞ。
「冬休みさ、バイトするから……来年、一緒に旅行しない?
今度はぼくが、お金出すから」
ラブホテル代は、頑なに受け取ってくれなかったし、これくらいはさせてほしい。
旅行ならヤるためだけって感じでもなく、いい雰囲気になれる。夜はもちろん致すけど。
「さすがにそれは。オレも半分出す。お年玉も貰えるし……」
「自分で稼いだお金で、ヒロインを連れていきたいんだって。ダメ?」
「……そういうことなら」
檜垣くんは、まだどこか不満そう。
そしてぼくを上目遣いに見ながら、もじもじとしている。
「その。もしかして、それまで……できないのかな」
「それはぼくもつらいから、まあチャンスがあれば……」
正直、ぼくはまったく上手くなかったと思う。なのにこんなに欲しがってくれるとか、檜垣くんは天使かな……?
次は絶対に、気持ちよくしてやりたい。いいトコ、擦ってあげたい……。本当に、今すぐにでもしたくて困る。
キスくらいは、人目をしのんでたくさんしよう。
「あ、そうだ。お見舞い、君の母親に渡してあるから」
「えっ。悪いな。何を持ってきてくれたんだ?」
「……は、花を……」
「花」
入院してるならともかく、男友達へのお見舞いとしてはちょっとアレかなーとは思ったんだけど。今日は母親が家にいるって聞いてたから、賄賂的な意味もあって。
「酒井が花を持ってきてくれるなんて意外だな」
前にお見舞いへ来た時は、実用的なものばかりだったからな。ぼくも食べられないモノを持ってくることになろうとは。
「あとで笑いながら見てやってよ」
「ああ。ありがとう」
とりあえずは嬉しそうにしてる。よかった。
まあ、檜垣くんはぼくがあげる物ならなんでも喜びそうなんだけど……。
もう一度キスをしようとしたところで、ノックの音が響いた。
「お茶を持ってきたのだけれど」
母親だ。抱きしめていた身体を慌てて離す。
へ、変なとこないよな。檜垣くんの顔が熱っぽい分には、風邪引いてるってことで問題ないよな?
「いいよ、入って」
檜垣くんも普通に返事をする。
心の準備が追いつかない。友人としての態度を取らねば……。
それからすぐ、部屋へお盆を持って入ってきた。
紅茶にクッキー……。やたら、高級そうなクッキーが乗っている。歓迎されていると見ていいんだろうか。
「こんにちはー。さっきはお花、ありがとうね」
「い、いえ」
なんか、視線が……。しげしげと眺められてる。値踏みされてる?
「母さん、そんなにジロジロ見たら失礼だよ」
「ごめんなさい。でも……。貴方、本当に耀くんのお友達?」
こ。れは、どういう。ぼくが挙動不審だったから? バレてる?
同級生のお見舞いに花は、やっぱりおかしかったのか。
嫌な汗がダラダラと背中をつたっていく。
実は恋人なんです、とぶっちゃけるには覚悟が足りてない。ずっと檜垣くんと一緒にいたいけど、そんな先の未来まで今のぼくに描くことはできないのだ。
「友達だよ、ちゃんと」
後ろから援護射撃が入って、ぼくは弾かれたように顔を上げた。
「い、一番の友達です」
今度はしっかりと目を見据える。母親は安心したように、ニコッと笑顔を作った。笑った顔も、よく似てる。
「そうなの、よかった! 何せこの子、今まで一度も友達を家に連れてきたことがなくって。末永く仲良くしてやってね」
あ……、そ、そういう、意味で。ただの世間話みたいな感じだったのか。先走らなくてよかった。
むしろ今、凄い間が開いてしまったのがかなり不自然だったと思うんだけど、そこは気にしない方向なのか……。
お母さんはお盆を勉強机に置き、めちゃくちゃ上機嫌で部屋から出ていった。
「は、ははっ……。酒井、動揺しすぎ」
「あれは仕方ないだろ! っていうか、檜垣くん、本当に友達いなかったんだ……」
「……まあ」
ぼくも高校に入ってからは友人を家に呼んだりしないけど、小、中の頃は誰かの家に集まってゲームするとか結構あった。
確かにそんな檜垣くんは想像できないんだけども。
「ぼく、友達というにはかなり挙動不審だったし、変に思われてないかな……」
「バレても、逆に喜ぶと思う」
「檜垣くんの家族って、みんなそういうの気にしないんだ?」
「……いや……。前に、オレが小さな頃、姉さんを好きだった話しただろ? あれ実は家族会議モノでさ……。しかもそれから、恋人を作らない……」
「それは確かに……不安になるか」
言い方は悪いけど、血の繋がってる姉よりはマシ、ということだろう。
歓迎されるっていうのは檜垣くんの憶測にすぎないから、実際どうかはわからないけど。でもこんなにモテるのに、恋人の一人も作らないんじゃあ、心配はしてるだろうな。
ぼくが初めての恋人って聞いた時は相当驚いたし、嬉しかった……。何度思い返してもいい響き。
「だから酒井さえよければ、いつか恋人として紹介したい」
「ならいっそ、今言っちゃえばよかったのに」
むしろ空気を読んだことに違和感を覚えた。だって檜垣くんなら、ぼくの気持ちに関わらず暴露しててもおかしくない。そういう事情があれば尚更だ。
「……その。と、友達ができたところも、見せたかった……」
なんだその可愛すぎる理由。ずっと友達であり、恋人でいよう。末永く。
遠い先のことはわからないけれど……君がいない未来も、思い描けない。
「まあ、秘密の恋も、いいかもね。友達から恋人になるのは、少女漫画の鉄板だし。今度ぼくの家にも遊びに来て」
「わかった。気合入れて、女装していく……!」
「それはいいから」
「酒井の彼女として認めてもらわないと」
「いや……檜垣くん?」
何故今の流れでそうなるのか。檜垣くんは相変わらず、わけがわからない。
こういうところも、面白いんだけどさ。
……家族が誰もいない日に誘おうと、心に決めた。
小さな頃から少女漫画のような恋がしたいと思っていた。
でも結局普通の恋愛をして、普通の結婚をするんだろうとも思っていた。
現実はどちらとも違っていたけれど、幸せには違いない。
「檜垣くん、好きだよ」
「……オレも」
大好きな相手と恋人になって、愛を囁いて抱きしめてキスをして。
それだけで充分、少女漫画、的な。
可愛い顔とか、声とか。初めて人のナカに入った時の、感覚とか……。
夜は檜垣くんとバカップルみたいなラインの応酬。この台詞恥ずかしすぎるだろ。我に返ったら絶対に死にたくなる。っていうようなのをいくつも送った。
途中で既読がつかなくなって、寝落ちかなと微笑ましく思いながら、ぼくも眠りについた。
そして次の日、檜垣くんは学校を休んだ。体調不良だ。心当たりなら山ほどある。
ラインのほうは大丈夫と返ってきて安心したけど、放課後はお見舞いに行くことにした。
今日は母親が出迎えてくれた。檜垣くんは母親似らしいと初めて知った。
息子さんを頂いてしまった後だけに、なんだか申し訳なくて視線が合わせられなかった……。そのせいで寝込んでるんだから尚更。
二階に上がって、ノックをする。思ったよりも元気そうな返事があった。
「お邪魔します」
檜垣くんの表情が、ぼくを見た途端にパアッと明るくなる。
昨日ずっと一緒にいたのに、まるで長いこと会ってなかったみたいに、心が満たされるのを感じる。
ベッドで寝ているんじゃなければ、きっと駆け寄って抱きしめていた。
……檜垣くんのほうは、両手を広げてハグ待機中だし。可愛いやつめ。
走りはしなかったけど、歩いてって抱きしめた。
「よかった、思ったよりも元気そうで」
「だから大丈夫だって言ったのに」
「君のそういう台詞は信用ならないからなあ」
ポンポンと背を叩いてあげると、頬を擦り寄せてきた。そんな仕草が可愛いし、体温が気持ちよくて離したくなくなりそう。
……でもちょっと、熱いかな。熱が出てるのかも。
「やっぱ、お腹壊した? その、中で……出したから」
「それは平気だったけど、筋肉痛が酷くて。朝起きたら歩けなくてまいった」
まさかの。まあ、確かにぼくも少し腰や腿が痛くはあった。
ぼくより凄い体勢を取らされていた檜垣くんなら、有り得ないことじゃない。否定してるけど、お腹もくだしてそう。
それにやっぱり、尻に突っ込むっていうのはいくら慣らしたとしてもキツそうだから……。
「檜垣くん熱も出てない? 身体熱いよ」
「す、少しだけ……。あの! 慣れたら平気だと思うから!」
もうしないとでも言い出すと思ったのか、必死にしがみついてくる檜垣くんに、思わず笑いそうになってしまった。
「あー……。うん。次は休みの前とかに、しよう」
「明後日か……」
「いやいや! そんな近い話じゃなくて!」
寝込んで学校を休んだくせに、何を言ってるんだか。
そりゃ、ぼくのほうは、できれば今だってしたいくらいだけど。
恋人がパジャマ姿でベッドへ寝てて、かつ、物欲しそーに見上げている据え膳状態。ムラッとくるのは仕方ない。檜垣くんが望んだとしてもそんな最低なことはしないけど。
「……でも、あんな気持ちいいの知ったらオレはそんな長いこと待てそうにないけど……。酒井は違う?」
そして本当に望んでくるのが檜垣くんだよ。我慢してるっていうのに。
「ぼくもだよ。でも、まあ、とりあえず身体が治ったら」
「もう治った。酒井の顔見たら治った」
あー……。可愛いな、クソ。
とりあえず風邪ではないんだし、キスなら問題ないかな?
「檜垣くん、ちょっとだけ口、あけて」
「ん……」
舌あっつい。とろとろしてて気持ちいい。
欲しがるみたいに、すっごく吸ってくる。誘われるまま、口内へ侵入した。
「ん、ん、ッ……」
鼻にかかるような声は、いつもの下手くそな裏声よりよっぽど高くて腰にくる。
たっぷりと舌を堪能してから、唇を離した。
「ぼくはちゃんと檜垣くんが好きだし、えっちなことだっていっぱいしたいと思ってるから安心して」
「ん……」
檜垣くんがのぼせたような顔で、こくりと頷いた。
キスで黙らせるなんて、現実でやることになるとは思わなかった……。や、キスはしたかったからしたんだけど。
でもこれはぼくも、そんなに長いこと我慢できそうにはないぞ。
「冬休みさ、バイトするから……来年、一緒に旅行しない?
今度はぼくが、お金出すから」
ラブホテル代は、頑なに受け取ってくれなかったし、これくらいはさせてほしい。
旅行ならヤるためだけって感じでもなく、いい雰囲気になれる。夜はもちろん致すけど。
「さすがにそれは。オレも半分出す。お年玉も貰えるし……」
「自分で稼いだお金で、ヒロインを連れていきたいんだって。ダメ?」
「……そういうことなら」
檜垣くんは、まだどこか不満そう。
そしてぼくを上目遣いに見ながら、もじもじとしている。
「その。もしかして、それまで……できないのかな」
「それはぼくもつらいから、まあチャンスがあれば……」
正直、ぼくはまったく上手くなかったと思う。なのにこんなに欲しがってくれるとか、檜垣くんは天使かな……?
次は絶対に、気持ちよくしてやりたい。いいトコ、擦ってあげたい……。本当に、今すぐにでもしたくて困る。
キスくらいは、人目をしのんでたくさんしよう。
「あ、そうだ。お見舞い、君の母親に渡してあるから」
「えっ。悪いな。何を持ってきてくれたんだ?」
「……は、花を……」
「花」
入院してるならともかく、男友達へのお見舞いとしてはちょっとアレかなーとは思ったんだけど。今日は母親が家にいるって聞いてたから、賄賂的な意味もあって。
「酒井が花を持ってきてくれるなんて意外だな」
前にお見舞いへ来た時は、実用的なものばかりだったからな。ぼくも食べられないモノを持ってくることになろうとは。
「あとで笑いながら見てやってよ」
「ああ。ありがとう」
とりあえずは嬉しそうにしてる。よかった。
まあ、檜垣くんはぼくがあげる物ならなんでも喜びそうなんだけど……。
もう一度キスをしようとしたところで、ノックの音が響いた。
「お茶を持ってきたのだけれど」
母親だ。抱きしめていた身体を慌てて離す。
へ、変なとこないよな。檜垣くんの顔が熱っぽい分には、風邪引いてるってことで問題ないよな?
「いいよ、入って」
檜垣くんも普通に返事をする。
心の準備が追いつかない。友人としての態度を取らねば……。
それからすぐ、部屋へお盆を持って入ってきた。
紅茶にクッキー……。やたら、高級そうなクッキーが乗っている。歓迎されていると見ていいんだろうか。
「こんにちはー。さっきはお花、ありがとうね」
「い、いえ」
なんか、視線が……。しげしげと眺められてる。値踏みされてる?
「母さん、そんなにジロジロ見たら失礼だよ」
「ごめんなさい。でも……。貴方、本当に耀くんのお友達?」
こ。れは、どういう。ぼくが挙動不審だったから? バレてる?
同級生のお見舞いに花は、やっぱりおかしかったのか。
嫌な汗がダラダラと背中をつたっていく。
実は恋人なんです、とぶっちゃけるには覚悟が足りてない。ずっと檜垣くんと一緒にいたいけど、そんな先の未来まで今のぼくに描くことはできないのだ。
「友達だよ、ちゃんと」
後ろから援護射撃が入って、ぼくは弾かれたように顔を上げた。
「い、一番の友達です」
今度はしっかりと目を見据える。母親は安心したように、ニコッと笑顔を作った。笑った顔も、よく似てる。
「そうなの、よかった! 何せこの子、今まで一度も友達を家に連れてきたことがなくって。末永く仲良くしてやってね」
あ……、そ、そういう、意味で。ただの世間話みたいな感じだったのか。先走らなくてよかった。
むしろ今、凄い間が開いてしまったのがかなり不自然だったと思うんだけど、そこは気にしない方向なのか……。
お母さんはお盆を勉強机に置き、めちゃくちゃ上機嫌で部屋から出ていった。
「は、ははっ……。酒井、動揺しすぎ」
「あれは仕方ないだろ! っていうか、檜垣くん、本当に友達いなかったんだ……」
「……まあ」
ぼくも高校に入ってからは友人を家に呼んだりしないけど、小、中の頃は誰かの家に集まってゲームするとか結構あった。
確かにそんな檜垣くんは想像できないんだけども。
「ぼく、友達というにはかなり挙動不審だったし、変に思われてないかな……」
「バレても、逆に喜ぶと思う」
「檜垣くんの家族って、みんなそういうの気にしないんだ?」
「……いや……。前に、オレが小さな頃、姉さんを好きだった話しただろ? あれ実は家族会議モノでさ……。しかもそれから、恋人を作らない……」
「それは確かに……不安になるか」
言い方は悪いけど、血の繋がってる姉よりはマシ、ということだろう。
歓迎されるっていうのは檜垣くんの憶測にすぎないから、実際どうかはわからないけど。でもこんなにモテるのに、恋人の一人も作らないんじゃあ、心配はしてるだろうな。
ぼくが初めての恋人って聞いた時は相当驚いたし、嬉しかった……。何度思い返してもいい響き。
「だから酒井さえよければ、いつか恋人として紹介したい」
「ならいっそ、今言っちゃえばよかったのに」
むしろ空気を読んだことに違和感を覚えた。だって檜垣くんなら、ぼくの気持ちに関わらず暴露しててもおかしくない。そういう事情があれば尚更だ。
「……その。と、友達ができたところも、見せたかった……」
なんだその可愛すぎる理由。ずっと友達であり、恋人でいよう。末永く。
遠い先のことはわからないけれど……君がいない未来も、思い描けない。
「まあ、秘密の恋も、いいかもね。友達から恋人になるのは、少女漫画の鉄板だし。今度ぼくの家にも遊びに来て」
「わかった。気合入れて、女装していく……!」
「それはいいから」
「酒井の彼女として認めてもらわないと」
「いや……檜垣くん?」
何故今の流れでそうなるのか。檜垣くんは相変わらず、わけがわからない。
こういうところも、面白いんだけどさ。
……家族が誰もいない日に誘おうと、心に決めた。
小さな頃から少女漫画のような恋がしたいと思っていた。
でも結局普通の恋愛をして、普通の結婚をするんだろうとも思っていた。
現実はどちらとも違っていたけれど、幸せには違いない。
「檜垣くん、好きだよ」
「……オレも」
大好きな相手と恋人になって、愛を囁いて抱きしめてキスをして。
それだけで充分、少女漫画、的な。
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