ヒロイン系彼氏

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エンディング

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 檜垣くんのお姉さん……華さんが少女漫画を描いていることは、うちの姉には内緒にしてほしいと言われていた。もしかするとぼくが知ってしまったことも、イレギュラーな事態だったのかもしれない。
 口止め料に、完成した漫画を見せてもらえる約束をしていて、今日ようやくその知らせがきた。

 檜垣くんとしては、ぼくと華さんが親しくしているのは複雑なものがあるらしく、会話に出すと大体微妙な顔をする。
 昔好きだった人と現在の恋人だからまあ仕方ないだろう。
 ぼくも嫉妬はするけど、すでにひとつ屋根の下で暮らしている二人だ。キリがないので無心になることにしている。

 で。華さんから預かった原稿を、檜垣くんの部屋で見せてもらっていたんだけど……。

「これ、少女漫画じゃない……」
「えっ? 女の子がたくさん出てくるのに?」

 むしろ女の子しかいないというか。
 女の子がたくさん出ててキラキラした絵柄なら、あまり漫画を読まない檜垣くんには、みんなそう見えるんだろう。

 華さんの描いた漫画は、いわゆる百合モノだった。
 しかもヒロインがうちの姉ちゃんに似ている……これは確かに、見せられない。内緒にしてほしいと言うはずだ。
 華さんに似た子もいたけどモブだったから、特に投影している感じはない。檜垣くんの女装姿に似ている子もいる。身近な人をモデルにしたほうが描きやすいとか、そういう理由かもしれない。

「これは女の子同士の恋愛を描いてる」
「それは少女漫画とは言わないのか? 少女が主人公なのに」
「うーん……。違うんだよ、ジャンルとして。ガールズラブともいうかな」
「そうか。奥が深いんだな」

 たとえばぼくたちみたいな二人が主人公なら、ボーイズラブっていうんだよと教えようかと思ったけど、やめておいた。

「檜垣くんはあまり漫画読まないもんなあ」
「最近は読む。酒井の好きなものは、オレも知っておきたいし、オススメがあれば貸してほしい」
「絶対にヤダ」
「なんで……」

 貸したら絶対に同じシチュエーションを作ろうとしてくるからだろ!
 この前何で見たのか、新しく買った自転車のチェーンを帰り道でわざと切り、ぼくが直せなくて君も直せなくて結局引きずって帰ったのは記憶に新しい。
 そもそもそのパターンは恋愛になるキッカケとして使われることが多くて、すでに恋人である状態でやられても。
 ……まあ、思い出にはなるけど。正直大変だった。

 別にわざわざヒロインを目指さなくても、君が隣にいればそれだけでぼくの夢は叶っているのに。

「そうだ。少年漫画なら貸すよ。基本的に、漫画全般好きなんだ」
「じゃあ、オレからはこの参考書を」
「檜垣くんの参考書だと、ぼくにはむずか……し……」

 男同士のセックスの、参考書……。
 つまり、これで勉強して君に実践しろと?
 それはなんか凄く恥ずかしくないか。というか、こんなの参考にしてたのか。
 本当に、檜垣くんて相変わらず……面白い。あとエロイ。

「……これなら、借りてく」
「あ。あのな、酒井」

 そこに書いてあること、全部お前としたいから、って耳元で囁かれてもう瀕死。

 漫画を隣の部屋で読まれるのは落ち着かないと家を出ていった華さんが帰ってくるまであと三十分。感想を言えなければ、何をしていたのかバレバレになる。
 そう、わかっているのに、手を出さずにはいられなかった。

 でも本に書いてある内容の実践は、また今度。
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