廃スペックブラザー

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本編

プロローグ

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オンラインゲームが題材です。

ゲーム内での台詞は


【フレンドチャット】→特定の相手にしか聞こえない


「白チャット」→画面内にいる人全員に聞こえる


『パーティチャット』→パーティを組んでいる人だけに聞こえる


というようにわけてあります。忘れても小説内で気づけるようにしてあるつもりですが、前提として一応覚えていただけると読みやすくなると思います。



────────────
 俺の兄貴はとんでもなくハイスペックだ。
 背が高くて美形で頭がよくて、運動もできる。むしろ、できないということが存在しないように思える。俺はそんな兄貴と比べられて育ったが、優しい兄貴が大好きだったため幸い卑屈にはならずに育った。大人になった今では純粋に懐くことはできないが、尊敬できる大切な家族だと思っていた。

 なのに、どうしてこうなった。

「アズキちゃん、どうしたのかにゃ?」

 パソコン画面の中で、可愛らしい猫耳少女が俺に話し掛けてくる。
 この猫耳少女を分身として動かしているのは、兄貴だ。
 どこぞの掲示板で得た情報によると、兄貴はその方面では有名な廃人プレイヤーらしい。

 そう。俺ご自慢のハイスペックな兄貴は、今や廃スペックな兄貴になっていた……。




 ……。…………。………………。

 はっ。兄貴のあまりの変わりように、呆然としている場合じゃなかった。
 今の俺は弟の和彰(かずあき)じゃない。アズキという、ウサ耳少女なのだ。

 このゲームは、今どき珍しく2Dを中心に描かれている、ヘブンズアースオンラインって名前のネットゲーム。
 アバターは人間、獣人、悪魔、天使から選べる。
 キャラクターはドットでできているからこそ妄想の余地があるのか、インターネットのイラストサイトなんかでは思い思いのキャラが描かれていたりして、そこそこ人気がある。

「な、なんでもないです。それより、いいんですか? こんなにたくさん、装備をいただいてしまって」
「それは初心者向けの装備だにゃん。そんなに高価なものじゃないから、遠慮なくどーぞにゃあー」

 兄貴が……にゃんにゃん言ってる。
 別にこのゲーム、獣人を選んだからつって、ニャンやワンをつける必要はこれっぽっちもない。
 いわゆる、兄貴はロールプレイってやつをしているんだ。まあそもそもネカマだし……。
 あの兄貴がゲームをやってるってこと自体が俺にとっては信じられないのに、それが……ネカマで、廃人で、にゃんとか言ってて、思っていた以上にショックがでかい。今日こうしてゲームを始めるまでは、同じゲームで遊ぶのが少し楽しみだったりしたのに。

 ……いや、兄貴がネカマだってことは、事前にわかってたことだろ、今更だ。それに俺は兄貴をネットゲームに失望させるために、こうしてここにいるんじゃないか。ショックを受けている場合じゃないぞ。作戦を決行するんだ。
 それにはまず、ゲームの中の兄貴と、仲良くならねば。

「あの、私、オンラインゲーム自体が初めてで、何をしたらいいのかわからないんです。よかったら、いろいろ教えてくれませんか?」
「アズキちゃんもこれが初めてのオンゲーなんにゃね。サチもこれが初めて! 一緒にゃ~♪ サチのことは、気軽にサッちゃんって呼んでニャ!」

 あかん。目眩がしてきた。
 兄貴が元からオタクだったら、ここまでの衝撃はない。
 でも兄貴は今までゲームなんてやったことなくて……。普段は理知的でクールで修行でもしてんのかと思うほど己に対して厳しくストイックで、間違ってもこんな……。どんな顔して打ってんだよこれ、ホント……。
 思わず、おい兄貴! と発言しそうなのをグッとこらえ、そこそこの速度でタイピングをする。ちなみに兄貴は神速度だ。

「ありがとう、サッちゃん!」
「アズキちゃんのことはアズアズって呼んでもいーい?」

 思わずリアルでブフォって噴き出しちまった。隣の部屋に聞こえてねーだろうな。
 アズぴょんとかにゃんとか呼ばれたらどうしようかと思ったぜ。いろいろアウトだ。


 ……そもそも俺がどうしてこんなことをしているのか。
 それは、一週間前に遡る。
 …………どうして兄貴がこんなになっちまったのかは、俺のほうが知りたい。

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