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その後の話
クリスマス
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「もうすぐクリスマスだな。楽しみだ」
兄貴が嬉しそうにそう言うので、ああいつものパターンかと。
「クリスマスイベントで1日ネトゲするのか?」
こう返したら、すっかり拗ねてしまった。
兄貴にとっては初めて恋人と過ごすクリスマス……ということで、何やらとても楽しみにしていたらしい。
すっかりゲーマーと化している兄貴だが、元々は超一般人でリア充と呼ばれる部類の人間だ。恋人とのクリスマスデートもスタンダードな想像をしていたんだろう。
間違ってもクリスマスの夜にパソコンのチャットでメリークリスマスなんて打ってゲーム内アイテム交換やイベントアイテムを集めたりするデートなどしない。
俺だってできたら聖夜よりは性夜にしたい。
そんなわけでお詫びにとディナーを予約して伝えてみたら、僕は女じゃないと言ってますます機嫌が悪くなった。
兄貴は寝室に閉じこもり中で、俺はなんとかして出てきてもらおうと甘い声で呼びかける。
まさか引きこもった兄貴をまた引っ張り出すことになろうとはな……。
「兄貴、俺のこと、嫌いになっちゃった?」
「……嫌いなわけない」
兄貴は沈んだような怒ってるような声。
いつも基本的に俺に甘い甘い兄貴が、尾を引いて怒るのは珍しい。それほどショックだったんだろうか。
「このまんまでいいの? 俺、誰か女の子とクリスマス過ごしてきちゃうかもしれないぜ?」
ようやく、開かずの扉が開いた。
「ダメに決まってるだろう」
「良かった。愛されてんね、俺」
出てきた兄貴はいつも通りピシッとしてるかと思いきや、少しだけ髪が乱れてる。宥めるように手をやって撫で付けると、自分から頭を擦り寄せてきた。
撫でてるって思ったのかな……。可愛くて思わず抱き締める。
「和彰には誰か、過ごしたい女の子でもいるのか?」
「まさか。兄貴とクリスマスパーティー、二人きりでしたい」
「僕も……。花束を用意して」
ん?
「家の前まで車で迎えに行って、手を繋ぎながら綺麗なイルミネーションを二人で見て……」
んん?
「夜景の綺麗なホテルでディナー。そのまま、上に部屋を取ってあるんだ、と」
「待て待て。それ、兄貴のほうこそ、俺を女扱いしてねえ?」
「まあ、彼女ができたらこうクリスマスを過ごそうと考えていたプランだからな」
テンプレすぎる。クリスマスプレゼントはブランドモノのネックレスかリングか。
リングなら、いつかホンモノを……とか言いながら左手薬指に嵌めて手の甲にキスくらいしそう。
キザすぎて逆に失笑を買いそうなもんだが、このハイスペックな兄貴ならそれがサマになるから恐ろしい。
ただしイケメンに限るとはよく言ったもんだ。
……だがな、さすがに相手が弟じゃ、いくらなんでも別の話だぞ。
「本気で俺に、それを実行するつもり?」
「お前は僕をなんだと思ってるんだ。さすがにそれはない。……したいけどな」
したいんだ……。
「だよなあ。じゃあ、兄貴はどんなプランを予定してたワケ?」
「お前が行きたいところ全部に行って、したいこと全部してやろうと思っていた」
俺、マジ愛されてんな。なのに酷いこと言っちまった。
今までが今までだったからつい。
恋人同士のクリスマスを相当楽しみにしてたんだろうな……。
俺が予約したディナーも、先を越された感じがしたから機嫌を損ねたのかも。
「じゃ、とりあえず俺が予約したディナー、一緒に行くんでいい?」
「ああ。本当は誘ってくれて凄く嬉しかった。せっかくのクリスマスなのに、僕に気を遣ってネットゲームをしようと言ってくれたことも……」
えっ。兄貴の中ではそんな優しい話になってたのか!?
なら一体何を怒ってたんだ。
俺、酷くないじゃん。超イイ恋人じゃん。
「和彰にそんな気を遣わせてしまったことが情けなくてな……。あわせる顔がなかった、すまない」
相変わらずズレてた。怒ってたわけでもなく、拗ねていたわけでもなく……反省していたとは。まさかすぎた。
「じゃ、もう喧嘩は終わりな?」
「喧嘩なんてしていなかったろう」
「でもちょっとは怒ってたろ?」
「……」
やっぱり何かしら思うところはあったらしい。
顔があわせにくいだけじゃ、謝る俺にあんな態度をとったりしねえだろうしな。
「俺のしたいことしていいなら、クリスマスは1日、ネトゲ禁止。兄貴の時間を俺にくれ。朝からたっぷりベッドで可愛がって午後からデート、夜はホテルでディナー。もちろん、上の部屋でご休憩。ど?」
「……朝から、すると……。出かけられる自信がない」
「可愛がるだけだって。中には入れねえから」
理想的なクリスマスを過ごさせてやるためにも、理性的に抑えたいところだ。
頭を撫でながら他愛ない話をするだけだっていい。
「和彰と過ごすクリスマスは、凄く久しぶりだな」
兄貴が俺の身体を抱き締める。
「……初めて、だろ。恋人同士としてはさ」
「そうだな」
嬉しそうに微笑む兄貴を見て、心の底から楽しい1日にしてやろうと思った。
「……思った、はずなんだけどな」
クリスマス当日。ベッドの中で起き上がれない兄貴。
イチャイチャしてるうち、熱が入って案の定チンコも挿れちまったってオチ。
兄貴が、クリスマスだからかいつもはしないおねだりとかもしてくれて、つい……。ついな。我慢できなかった。
「ベッドの上でケーキとチキン。こんなクリスマスも悪くないさ。和彰が隣にいてくれるなら、僕はそれで構わない」
相変わらず天使……!
「今日は俺が兄貴のサンタクロースだ! なんでも言ってくれ、なんでもするから!」
「ははは、何言ってるんだ。熱でもあるのか?」
額に手をあてられた。素みたいだ。ナチュラルに辛辣だと思う。恥ずかしくなってきた。
「動けないんじゃ、ログインするしかないな。退屈だろう? 幸いパソコンはベッドの横だし……」
……どこからどこまでが作戦だったのかな、なんて考えちゃダメだよな……うん……。
夜には落ち着くだろうし、予約していたディナーとホテルくらいは満喫してやろう。
それまではベッドで寝転んで、コーラでも飲みながらネトゲして。フレンドさんたちとのメリークリスマスもまあ、悪くはないさ。
兄貴が嬉しそうにそう言うので、ああいつものパターンかと。
「クリスマスイベントで1日ネトゲするのか?」
こう返したら、すっかり拗ねてしまった。
兄貴にとっては初めて恋人と過ごすクリスマス……ということで、何やらとても楽しみにしていたらしい。
すっかりゲーマーと化している兄貴だが、元々は超一般人でリア充と呼ばれる部類の人間だ。恋人とのクリスマスデートもスタンダードな想像をしていたんだろう。
間違ってもクリスマスの夜にパソコンのチャットでメリークリスマスなんて打ってゲーム内アイテム交換やイベントアイテムを集めたりするデートなどしない。
俺だってできたら聖夜よりは性夜にしたい。
そんなわけでお詫びにとディナーを予約して伝えてみたら、僕は女じゃないと言ってますます機嫌が悪くなった。
兄貴は寝室に閉じこもり中で、俺はなんとかして出てきてもらおうと甘い声で呼びかける。
まさか引きこもった兄貴をまた引っ張り出すことになろうとはな……。
「兄貴、俺のこと、嫌いになっちゃった?」
「……嫌いなわけない」
兄貴は沈んだような怒ってるような声。
いつも基本的に俺に甘い甘い兄貴が、尾を引いて怒るのは珍しい。それほどショックだったんだろうか。
「このまんまでいいの? 俺、誰か女の子とクリスマス過ごしてきちゃうかもしれないぜ?」
ようやく、開かずの扉が開いた。
「ダメに決まってるだろう」
「良かった。愛されてんね、俺」
出てきた兄貴はいつも通りピシッとしてるかと思いきや、少しだけ髪が乱れてる。宥めるように手をやって撫で付けると、自分から頭を擦り寄せてきた。
撫でてるって思ったのかな……。可愛くて思わず抱き締める。
「和彰には誰か、過ごしたい女の子でもいるのか?」
「まさか。兄貴とクリスマスパーティー、二人きりでしたい」
「僕も……。花束を用意して」
ん?
「家の前まで車で迎えに行って、手を繋ぎながら綺麗なイルミネーションを二人で見て……」
んん?
「夜景の綺麗なホテルでディナー。そのまま、上に部屋を取ってあるんだ、と」
「待て待て。それ、兄貴のほうこそ、俺を女扱いしてねえ?」
「まあ、彼女ができたらこうクリスマスを過ごそうと考えていたプランだからな」
テンプレすぎる。クリスマスプレゼントはブランドモノのネックレスかリングか。
リングなら、いつかホンモノを……とか言いながら左手薬指に嵌めて手の甲にキスくらいしそう。
キザすぎて逆に失笑を買いそうなもんだが、このハイスペックな兄貴ならそれがサマになるから恐ろしい。
ただしイケメンに限るとはよく言ったもんだ。
……だがな、さすがに相手が弟じゃ、いくらなんでも別の話だぞ。
「本気で俺に、それを実行するつもり?」
「お前は僕をなんだと思ってるんだ。さすがにそれはない。……したいけどな」
したいんだ……。
「だよなあ。じゃあ、兄貴はどんなプランを予定してたワケ?」
「お前が行きたいところ全部に行って、したいこと全部してやろうと思っていた」
俺、マジ愛されてんな。なのに酷いこと言っちまった。
今までが今までだったからつい。
恋人同士のクリスマスを相当楽しみにしてたんだろうな……。
俺が予約したディナーも、先を越された感じがしたから機嫌を損ねたのかも。
「じゃ、とりあえず俺が予約したディナー、一緒に行くんでいい?」
「ああ。本当は誘ってくれて凄く嬉しかった。せっかくのクリスマスなのに、僕に気を遣ってネットゲームをしようと言ってくれたことも……」
えっ。兄貴の中ではそんな優しい話になってたのか!?
なら一体何を怒ってたんだ。
俺、酷くないじゃん。超イイ恋人じゃん。
「和彰にそんな気を遣わせてしまったことが情けなくてな……。あわせる顔がなかった、すまない」
相変わらずズレてた。怒ってたわけでもなく、拗ねていたわけでもなく……反省していたとは。まさかすぎた。
「じゃ、もう喧嘩は終わりな?」
「喧嘩なんてしていなかったろう」
「でもちょっとは怒ってたろ?」
「……」
やっぱり何かしら思うところはあったらしい。
顔があわせにくいだけじゃ、謝る俺にあんな態度をとったりしねえだろうしな。
「俺のしたいことしていいなら、クリスマスは1日、ネトゲ禁止。兄貴の時間を俺にくれ。朝からたっぷりベッドで可愛がって午後からデート、夜はホテルでディナー。もちろん、上の部屋でご休憩。ど?」
「……朝から、すると……。出かけられる自信がない」
「可愛がるだけだって。中には入れねえから」
理想的なクリスマスを過ごさせてやるためにも、理性的に抑えたいところだ。
頭を撫でながら他愛ない話をするだけだっていい。
「和彰と過ごすクリスマスは、凄く久しぶりだな」
兄貴が俺の身体を抱き締める。
「……初めて、だろ。恋人同士としてはさ」
「そうだな」
嬉しそうに微笑む兄貴を見て、心の底から楽しい1日にしてやろうと思った。
「……思った、はずなんだけどな」
クリスマス当日。ベッドの中で起き上がれない兄貴。
イチャイチャしてるうち、熱が入って案の定チンコも挿れちまったってオチ。
兄貴が、クリスマスだからかいつもはしないおねだりとかもしてくれて、つい……。ついな。我慢できなかった。
「ベッドの上でケーキとチキン。こんなクリスマスも悪くないさ。和彰が隣にいてくれるなら、僕はそれで構わない」
相変わらず天使……!
「今日は俺が兄貴のサンタクロースだ! なんでも言ってくれ、なんでもするから!」
「ははは、何言ってるんだ。熱でもあるのか?」
額に手をあてられた。素みたいだ。ナチュラルに辛辣だと思う。恥ずかしくなってきた。
「動けないんじゃ、ログインするしかないな。退屈だろう? 幸いパソコンはベッドの横だし……」
……どこからどこまでが作戦だったのかな、なんて考えちゃダメだよな……うん……。
夜には落ち着くだろうし、予約していたディナーとホテルくらいは満喫してやろう。
それまではベッドで寝転んで、コーラでも飲みながらネトゲして。フレンドさんたちとのメリークリスマスもまあ、悪くはないさ。
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